政府のコメ政策が漂流している。石破茂前政権は事実上の減反から増産にかじを切る方針を打ち出したが、高市早苗政権の鈴木憲和農林水産相はすぐに「需要に応じた生産」を表明し方針を転換。わずか3カ月で減反に「先祖返り」した。鈴木氏は高値を容認しつつ「おこめ券」で負担軽減を図る考えで、米価高騰の早期収束は期待しにくそうだ。
すばやい変わり身
「需要に応じた生産が原則。安心して先を見通せる農政にする」
鈴木氏は就任直後の10月22日の記者会見でこう強調し、増産方針を撤回した。「需要に応じた生産」は、米価維持のため作付けを減らす減反の常套(じょうとう)句だ。
政府は1970年に減反を始めたが、農家の競争力向上が叫ばれ2018年に廃止。だが、その後も生産量目安の提示などで事実上の減反が続いた。石破前政権はその脱却を図ったが、高市政権になり元に戻った。
農水省の動きは速かった。10月31日に示した26年産の主食用米の需給見通しで、生産量目安を711万トンと定めた。25年産の収穫見込み748万トンから大幅減産となる。この目安を基に、各都道府県で生産量が決まる。
方針転換の背景には、農家の不安がある。鈴木氏は「生産現場はコメ余りになって米価が暴落するという心配がある」と強調する。自民党が選挙で苦境に立たされる中、集票への影響を懸念する農林族の意向も見え隠れする。
高値容認し購入補助
供給拡大で価格の安定を図る石破前政権の狙いは崩れ、コメ5キロ当たりの平均店頭価格は4千円台半ばに迫る高水準が続く。鈴木氏は「農水省が価格にコミット(関与)すべきではない」との立場で、政府備蓄米の放出などで価格の安定を図ることには否定的だ。高値のコメ流通も容認する姿勢で、おこめ券で補助する考えを示している。
鈴木氏は11日の会見で、おこめ券が米価を高止まりさせかねないとの指摘に「今の価格は手が届かないという声に応えるべきだ」と述べた。だが、おこめ券は一時的な家計支援にすぎない。鈴木氏は「多様な価格帯のコメ生産を可能にしたい」と話すが、農家だけでなく農家を支える消費者の視点も必要になる。(中村智隆、高木克聡)