Deep Obsession 楽曲解説
平素よりお世話になっております。
作曲家の西片瑞樹です。
早春の候、どなた様もますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
今後とも変わらぬご厚情のほどお願い申し上げます。
Introduction
ということで本題です。
2024年5月10日よりcolyからリリースされたスマートフォン向けパズルゲーム「ブレイクマイケース」にパーソナルソング「Code:04 -Deep Obsession-」を提供させていただきました。
2026年2月25日リリースの「ブレイクマイケース パーソナルソング・コンピレーション Vol.6」にも収録されております。
配信はこちら↓
以下Creditです(敬称略)。
歌唱:皇坂逢(CV.古川慎さん)
作詞:前田甘露
作曲・編曲:西片瑞樹
Guitar:ichi_yo
Bass:イマ・イマイ
All Other Instruments:西片瑞樹
Mix:清水裕貴
自分は作曲・編曲・All Other Instruments(ドラム、ピアノ、ストリングスなど…)を担当させていただきました。
今回はこの観点から諸々解説できればと思います(そのため歌詞にはほぼ言及しません)。
こちらの楽曲、歌詞のメッセージ性があまりにも強すぎるのですが音ともリンクしている箇所もたくさんあるので、こちらの解説を経てより楽曲の深みが増せば良いな…と思います。それでは↓
※作品の性質上、皇坂逢さんのことは陛下とお呼びさせていただきます。
楽曲概要
ゴリゴリにシンフォニックロックです。
作曲人生の中でここまで振り切った曲を書いたのは初めてかもしれません。とはいえこういったジャンルは昔から愛聴していたこともあり、今まで表現できなかった好きな部分をこれでもかというほど詰め込みました。
作曲の際に課したキーワードは「本気の大人の重み」「身動きの不自由さ」「繊細な感情の揺れと爆発」などです。
そのため、明確な静と動を一曲を通して随所に仕込ませていただきました。
今回はパーソナルソングの第二弾となりますが、第一弾との対比がここでは、いやこのプロジェクト全体で重要になってきます。
パーソナルソング第一弾「Believe in yourself」です。
陛下、誠にお洒落にございます…。
そのため一聴した時点で「全然前回と(いい意味で)違うやんけ!」となっていただくのがマストだなという思いで制作いたしました。
また、この手のジャンルは下手をすれば少年漫画っぽさに振り切ってしまう可能性が多大にあったため、そちらのチューニングにも時間をかけました。
自分は奏者でもあるので普段はできる範囲なら自分でギターやベースも録るのですが、自分の奏者としての世界観と楽曲の世界観にズレが生じる可能性があったため、仲の良い腕利きミュージシャンに頼みました。このバランス感は自分で録っていたら出なかったので非常に感謝…。
ギター、ベース以外は打ち込みになります。
ドラムはパンチを出すためBFD3、ピアノはパキっとした成分で構成したかったのでAddictive Keys、ストリングスはいつもお世話になっておりますChamber Stringsをメインに構成されています。(どれも程よく他の音源をレイヤーさせていますが)
というわけでここからは各セクションに渡って紹介します。
記事の特性上音楽用語を結構使います。雰囲気だけでも読み取っていただければ…あとは都度ChatGPT等に聞くのもありですね(用語間違ってたらすいません)。
タイムスタンプも貼ってあるのでなぞりながら聴くとより深みにいけます。
0A(0:00~0:05)
なんと歌い出しでしか現れないセクション(メロディ)です。こういう時のセクション記号ってなんだ…?
上述の通り、一聴で前回のパーソナルソングとの対比を感じさせるには初速が肝心です。深く歪んだギターと陛下の張るような歌声。特にBelieve in yourselfを通っている方なら開始1秒であっという間に世界観に引きずり込まれる筈。
Intro(0:05~0:16)
ギターリフとストリングスリフの二段構造です。
ギターには派手にフランジャーをかけ、キメとベースが繋ぎ、今回の準主役とも言えるストリングスが壮大に駆け巡ります。ここで「あっ今回そういう感じね!」と思わせることができればよっしゃというお気持ちです。
一箇所ストリングスとその他でシンコペーションが噛み合わない箇所があるのですが、このゆらぎこそが今作のテーマの一つです。陛下がお抱えになる苦悩とその先の覚悟を表すには重要なファクターとなります。
リバースピアノから大胆にAメロへ。
1A(0:16~0:37)
ここでしれっと転調(Dm→Fm)。
前半はピアノ主体です。パキっとした音はシリアスな風味に合いますね。ゴシックなどでよく聴く音色かも。あと少しPadも鳴っています。
他楽器が入る1小節前からベースはルート弾き(Ⅳ#m7-5 LowD)で入ってきますが、個人的こだわりポイントでもあります。ベースは今回展開の繋ぎとしてかなり重要な役割にいる気がしますね。
後半からバンドin。
1B(0:37~0:52)
頭のキメはメリハリの付与や、フレーズの印象付けに一役買っています。2Bも同様ですがここに強いワードを持ってくる前田甘露さんの作詞力、思わず舌を巻きました…。
キメの後は結構混沌というか、苦悩の表れが見えます。
7-11小節目でのⅣ#m7-5→Ⅶm7-5というハーフディミニッシュ繋ぎ、流石に不安定すぎる。Ⅶm7-5でのストリングスの半音下降も好きですね。
1C(0:52~1:12)
サビです。感情が爆発します。
今までのゆらぎや苦悩、シリアスチックな様相はサビのために存在していました。調もイントロのものに戻ります(Fm→Dm)。
余談ですが、筆者はLUNA SEA生まれLUNA SEA育ちなのでマイナーキーのシンコペこそ至高だと考える派閥です。
G.って本当いい曲で…。
また、サビも爆発力がありながらしっかりと陛下の楽曲と印象付ける捻りとして、歌メロのキーレンジは意識しております。しっかりと低い箇所(ここに縛る など)を設けつつ、サビらしく平均値は高め と設定し、低い箇所はオク上のコーラスで補強(急に下がったな?といった違和感を緩和するため)しています。
ストリングス、ピアノも主張が激しく、歌→ヴィオラ→バイオリン→ピアノ→歌…みたいなせめぎ合いもサビの中で起こっています。意識して聴くとより面白いかもしれません。
1Inter(1:12~1:22)
1Cの流れを踏襲しつつ、ストリングスのリフになります。
Ⅵm7→Ⅴ/Ⅶ→Ⅰ→Ⅵ7/Ⅰ#という段々とルート音が上昇していくコード進行もいいですね。サビの勢いを殺さず高めていきます。
2A(1:22~1:43)
再び転調(Dm→Fm)。
ここで1A前半のピアノ主体に戻るとまた勢いがリセットされてしまうので、Trap的なハイハットロール、ハーフビートのドラム、エモーショナルなオブリのギターといった違うアプローチで展開しています。2Aは新しいアプローチを入れるには最適なセクションなので…
2A後半のハーモニクスを主体としたギターの刻み、カッコよすぎる。本当にありがとう。
2B(1:43~1:58)
1Bと基本的には同様。
ただこの先がサビではないので、少し終わりのメロが変わっています。
2Inter(1:58~2:07)
「どこにもない」と虚空を憂う陛下の御心に降り注ぐ雨…のような繊細な楽器陣とさせていただきました。
当初はピアノのアルペジオ、スタッカートするストリングスに合わせてビートを刻むだけでしたがギターのichi_yo氏にアコースティックギターのフレーズのアイデアを頂き、即採用しました。切なさが増した上にメリハリも付いたので感謝しかないですね。
Solo(2:07~2:21)
そんなichi_yo氏のギターソロが炸裂です。
「感情を解き放ってほしいが、速弾きはし過ぎないようにして欲しい」というディレクションのもと、最適解みたいなテイクをいただきました。
また、展開やコードの進行などはサビと同様ですが、調が違うためサビのキー+3となっています。聴き比べるとわかりやすいかも。
2D(2:21~2:43)
今回、この楽曲のテーマを特に色濃く反映したセクションです。
9小節目以降のタム主体のドラムパターンには深くリバーブをかけており、「絶望の淵の中、尚もしがみつく」様子を表現しております。
ラウドロック、メタルコアでの常套句のひとつですが、意外にもマイナーキーであれば汎用性が高い手法なので気に入っていますね。
終盤はBメロに繋がります。
1番と比較し、サビ前を2小節追加しています。ここでは
①キメのフレーズをユニゾンで弾くギター、ベース
②クロマチックで上昇するストリングス
③支離滅裂にも近いピアノ
が折り重なる、一番のゆらぎ部分です。特に③は単体で聴くと大変なことになっています。
人が強く決意を固める瞬間、脳内では何が起こるか。そこに至るまでの全ての清濁を思い返し、飲み込むのではないでしょうか。この2小節は記憶のフラッシュバックのようなものかもしれません。
2C(2:43~3:04)
ここでサビ転調(Fm→Dm)。
前述のゆらぎからのラスサビ、正に緊張と緩和です。緊張と緩和は全てに通ずる…。
とは言えサウンド的には1Cと同様なので割愛します。
2C'(3:04~3:30)
ラスサビ折り返しです。感情が更に爆発します。
陛下の強い決意に呼応するかのように、ギターもソロを差し込みます。
ここが感情メーターで言うと最高潮なので、「離さない」から上ハモの追加、激情型のワウギターの追加など、ラストに向けてどんどんと勢いを増していきます。クライマックスも近い。
Outro(3:30~3:48)
感情メーターは2C'で振り切ってしまったので、このタイミングでベースソロを差し込み、少しクールダウンを図ります。
この箇所はベースのイマイさんと擦り合わせを行い、「JIROやtetsuyaよりかはJやNATCHINみたいなマインドのフレーズのほうが…」みたいな90年代ロックを共通言語として決めていったのが印象的です。いい現場だ。別テイクが完全にJESUSだったのもいい思い出。
そしてIntroのフレーズに戻り、終幕です。
Outroduction
Outroductionは造語です。
以上です。
商業の場では初のマイナーキー楽曲、今まで使わなかったエッセンスをかなり取り入れて制作させていただきました。
自分、ポップなのもゴリゴリなのも行けます。関係各位よろしくお願いします。
そしてこちらのコンテンツはなんとありがたいことに、インストも配信しております。
特に編曲を担当したものとしては、本当に嬉しいことではございますのでこちらも是非解説とともに楽しんでください。
インストだけでも120点なのに、歌詞と歌が乗ることで見事に50,000点を叩き出す素晴らしい楽曲です。末永くよろしくお願いします。
あと、作者としては是非ライブで(もっと言えば生演奏で)拝見したいですね…。絶対に拳を突き上げてしまいそう。
今後の展開も楽しみにしております。
おわり


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