交通は“移動手段”で終わらない──データが描く次世代インフラ
前編では、「データで未来は読めるのか?」という問いから始まりました。
今回は、その先の話です。
MaaS Tech Japanと中野さんのタッグで、どんな未来を描こうとしているのか。
「まずは、MaaS Tech Japanとその顧客のためにフルコミットします」
そう話す中野さんは、交通の現場一筋というタイプではなく、これまでデータを軸にさまざまな事業や技術開発に関わってきた方です。
複数の業界でビジネスとテクノロジーの両方に携わり、企業の成長を支えてきた経験もある。その延長線上に、いま“交通”というテーマがあるのだと感じました。
壮大な未来像の前に、まずは目の前の意思決定をどう支えられるか。派手さはないけれど、確実に前へ進めようとする意思が伝わります。
交通業界には、ひとつ大きな課題があります。
それは、「移動の後」が見えにくいこと。
どれだけ人が移動したのかは分かる。
でも、その人がその後どこに立ち寄り、何を体験し、どれだけ経済活動につながったのかまでは、十分に可視化されていない。
もしそこまで見えるようになったらどうなるのか。
例えば、ある施策で利用者が増えたとき。それが沿線の売上や地域経済にどう影響しているのか。イベントが一時的な集客で終わっていないか。
勘や経験ではなく、データで確かめられるようになる。
第一回目の記事で、日高さんは「交通は血管のようなものだ」と話していました。街に人やモノを運ぶ、循環の仕組みだと。
その言葉を思い出しながら、中野さんの話を聞いていると、交通は“血管”でありながら、同時にその流れを可視化するセンサーのような役割も担えるのではないか、と感じました。
最初に「交通は経済のハブになる」と聞いたときは、正直に言うと少し大げさに感じました。でも考えてみると、私たちは移動することで初めて、消費し、出会い、経験します。
移動が止まれば、街の営みも止まる。
動けば、経済も、人のつながりも動き出す。
そう思うと、“ハブ”という表現も、あながち誇張ではないのかもしれません。
中野さんが強調するのは、「事業者の意思決定を助ける」ということです。
どの投資が有効なのか。
どの施策が本当に成果につながっているのか。
限られた予算の中で、何を選び、何をやめるのか。
データを通じてその判断を支える。その積み重ねが、結果として交通という社会基盤を強くする。
そしてその先に、もう一段大きな構想があります。
交通データと、購買データ、観光データ、Web行動データ。分断されがちな情報をつなぎ、因果関係を見つける。生成AIや高度な分析技術も活用しながら、異分野を横断する。
交通を単なる移動手段としてではなく、データを軸にした“社会の接点”として再定義する。
それは一企業だけで完結する話ではありません。自治体、交通事業者、小売、観光、テクノロジー企業。多くのプレイヤーが関わる領域です。
だからこそ必要なのは、可能性を見抜く目と、それを形にする覚悟。
私は、この連載を通してモビリティを学び始めました。
第一回では、「移動が選択肢を広げる」という視点で書きました。
今回取材を重ねる中で、その土台をどう支えるかという話にまで広がってきています。
移動は、人の選択肢の入口。そして交通は、その入口を支える仕組み。もしその仕組みが、データによってより賢く、より精緻に進化していくとしたら。
それは単なる技術革新ではなく、街や地域の可能性そのものを押し広げることにつながるのかもしれません。
MaaS Tech Japanと中野さんのタッグが描くのは、交通をハブに、産業を横断しながら再設計していく未来。
“移動”の話から始まったこの連載が、いつのまにか“社会の設計”の話へと広がっている。その変化自体が、モビリティというテーマの奥深さを物語っているように感じています。
中野 賀通 / テクニカルアドバイザー
工業大学の付属高校において、教員としてキャリアをスタートさせる。
マーケティング支援企業に入社。MA領域のSaaS事業の立ち上げや、エンタープライズ領域のコンサルタントに従事。2015年1月、技術顧問先の会社に取締役COOおよびCTOとして、サブスクリプション領域のSaaSプロダクトを創出。開発規模、事業、組織の拡大に貢献。現在、オプスデータ株式会社の代表取締役を務め、MaaS Tech Japanのポテンシャルに可能性を感じ技術アドバイザーとして就任。データ基盤構築やデータ利活用戦略、生成AIの実装設計などを包括的に支援。
サンペドロ アイコ(セシル) / 筆者
モデル、広告代理店、キャリアアドバイザーやコンサルティングなどを幅広く活躍。幼少期より社会課題解決について興味とやりがいを感じ、MaaSのもつ交通やまちづくり、社会課題解決、未来のテクノロジー、MaaS Tech Japanのプロジェクトや特にそこにつながる方々が何を考え目指されているかに興味を持ちMaaS Tech Japanメディアのライターとして参画。


コメント