まちの書店の灯、守り踏ん張る人たち ネットワーク100店、経営や取引の相談・支援

 まちの本屋の撤退が相次ぐなかでも、あえて個人で旗を立て奮闘する書店人たちがいる。大手チェーン店とは一線を画した個性ある書棚から世界をみつめ、読者の出会いの場とするために、現状をどう突破していこうとしているのだろう。

 厳しい時代に独自のやり方で挑む小規模書店を、「持続可能な商い」にしたい。昨年10月に発足した「独立書店ネットワーク」は、そんな目標を掲げている。

 呼びかけたのは誠光社(京都)、本屋Title(東京)、ON READING(名古屋)、メリーゴーランド京都、本屋B&B(東京)という、5店のあるじたち。店主の志向を打ち出した品ぞろえ、手作りのイベントや店のたたずまいなどで、読書好きや書店・出版界でひろく知られたキーマンたちだ。

 ■ライバルだけど

 その一人、文筆家で1月に10周年を迎えた本屋Title店主の辻山良雄さん(53)によると、5店は交流もあり「いい意味のライバル」。近年は、若い世代から開業の相談を受けることも増えており、ゆるやかな互助組合をつくったらどうかという話が持ち上がった。

 約50店でスタート。半年近くで鹿児島から北海道まで約100店が参加するようになった。地方都市の店も少なくない。

 活動は、独立書店としての課題を分かち合うこと、本に関する様々な情報共有、そして経営環境の改善だ。小口の取引になりがちな小規模書店は、大手取次から本を卸してもらいにくい悩みがある。出版社と直接取引する方法を伝えたり、交渉面での支援を検討したりしているという。

 反響は予想以上で「正直驚いた」と辻山さん。まちから書店の灯を絶やしてはならないという決意。書店のない自治体が3割近い中、自分が始めなければと立ち上がる人もいる。読書という、数値ではかれぬ行為の価値と可能性をあきらめず踏ん張る人たちが、確かに存在するのだ。

 「さぼっている店なんてどこにもないでしょう。ただ、志だけでは続かない。出版社や取次も含めた構造的な問題にも取り組んでいけたら」(藤生京子)

 ■8畳の新店、大手取次も後押し

 静岡県西部の菊川市。田んぼの中に民家が点在する県道沿いに、昨年12月中旬、「本屋すみれ」が開店した。決して便利とはいえない場所にできたわずか8畳ほどの書店を、わざわざ目的地に選ぶ人がいる。

 店主の近藤貴也さん(29)は、会社員を経て地元で小学校の臨時教員になった。だが、子どもたちに何をどう伝えればいいのか、思い悩んでいた。そのころ、地元書店チェーン出身の店主が開いたJR掛川駅近くの「高久書店」に足しげく通い、店主とじっくり会話をしながら本を選ぶ時間に救われた。「閉塞(へいそく)感がなく、様々なジャンルの本があった。自分に即した本を見つけられると、肯定される感じがした」。そんな場所を、自らつくりたいと考えた。

 近藤さんは独立書店ネットワークには参加していないが、大手出版取次トーハンが2024年に始めた「HONYAL(ホンヤル)」という仕組みを使った。トーハンと新たに取引を始めるには、取引額の2カ月分相当を保証金として預ける必要があった。HONYALはほぼ毎日の配送頻度を週1回に減らし、雑誌は取り扱わないとの条件を設ける一方、保証金を免除。小型書店の創業を後押しし、書店の減少に歯止めをかけるねらいがある。

 2月中旬の木曜日。浜松市の鈴木省吾さん(41)は、家業の焼き菓子店の定休日に車で1時間かけて初めて訪れた。近藤さんがSNSで書影とともに本を紹介しているのを見て「自分にはない視点がある。いつか来てみたかった」。「読書で自分の言い回しの引き出しが増えていくのが楽しい」と感じ、接客業という仕事にも生きているという。30分ほど滞在し、近藤さんと話しながら、小説やエッセーなど3冊を選び、購入した。

 ■「目的地」の本屋に

 店には売り場とは別に12畳の部屋もある。近藤さんはここをイベントスペースにし、哲学対話や読書会といった催しを開いてファンを増やす構想を温めている。

 「人が何かを考え、知りたいという欲求がある限り、本は残ると思う。だから本と接触する場所が必要。来てくださる方に『目的地』に選んでもらい、ちょっとでもいい時間を過ごせる本屋さんになりたい」(伊藤宏樹)

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