幼なじみの桜#1【二刀流 桜の舞】
「じゃあ行ってくるね」
『ああ・・・』
キャンパスで一番奥にある古い講義棟に向かって歩き出す。
幼なじみの小さな背中が、さらに小さくなっていく。
この妙なシチュエーションにも少し慣れてしまった。
くるっと反転して、小走りで戻ってくる。
「いなくならないでね」
『ああ・・・』
反転して数歩歩くと、
またくるっと反転して小走りで戻ってくる。
「ちゃんと待っててよ」
『分かってるって』
反転して数歩歩くと、
またくるっと反転して小走りで戻ってくる。
「今回も、ちゃんとごめんなさいするから」
『ああ、そうか・・・』
「うん、行ってくる」
反転して数歩歩くと、またくるっと・・・
『ちゃんと待ってるから、行ってこいって!』
唇を尖らせてから遠ざかっていく小さな背中を見送る。
まったく・・・何回転すんだよ・・・
中学時代から数えたらもう何回目だろうか。
他の男に呼び出される幼なじみの背中を見送るのは。
桜とは小学校から大学まで一緒だ。
なかなかここまで続く関係も珍しいだろう。
もう自分の中では幼なじみという肩書きがよく分からなくなってきた。
大学でもそれ以外でも当たり前のように一緒にいる。
それでも付き合うとかそういうことにはならない。
というか、オレはちゃんと桜にフられている。
まあ、詳しいところは割愛させてもらおう。
思い出したいものではないし、後悔している。
オレの告白で、桜をひどく困らせてしまった事を。
疎遠になっても仕方ないと思っていたけど、変わらない距離感で未だに一緒にいるというわけだ。
いや、寧ろ距離感は近くなっているのかもしれない。
曖昧な関係がはっきりして、付き合いやすくなったということなんだろうか。
そして距離感に加えて、元々近かった物理的な距離も年々近くなっている気がする。
普通に話していて身体の一部が触れる事も珍しくない。
敢えてどことは言わないが、桜は自分の成長度合いが分かってないんだと思う。
その度にオレばかりが意識していることを思い知らされる。
それでも変わらずに一緒にいるのは、桜がオレにそういう幼なじみの関係を望んでいるからだろう。
正直、完全に気持ちが吹っ切れてるとは言い難い。
それでもいい相手が見つかれば応援はする予定だ、潔く。
とはいえ予定は未定だし、その時になってオレがどう行動するかは今のオレには分からない。
万が一、桜の恋をオレが邪魔するようなことがあった場合、その原因の一端は間違いなく桜にもあると思う。
今夜も、おやすみ前のビデオ通話がかかってくる。
「お風呂入ってきたよー」
『ん』
「〇〇は?もう、お風呂入った?」
『いや、オレはまだ』
「今日もごめんね。待っててくれてありがとうね」
『ああ・・・』
「ねーえ」
『ん?』
「カメラつけて!」
『ああ、すまん;;』
スマホをスタンドに立てて、顔を写すと満足そうに口角を上げる。
風呂上がりの甘い湿気がスマホ越しに伝わってくるようだ。
「今日も待っててくれてありがとうね」
『いや、別に構わないけど。大変だな、いつもいつも』
「うん、今回もちゃんとごめんなさいしたよ」
『ふーん・・・』
「ふーんって・・・なんで断ったのか聞かないの?」
『聞いてほしいのか?』
「そういうわけじゃないけど・・・」
唇をむうっと突き出して、たぷたぷに潤んだ瞳でオレを見る。
どういう感情?
なんでオレにそんな顔するんだよ・・・
『桜が決める事だし、オレがなんか言うのも変だろ』
「・・・そうだけど」
『まあ、桜が付き合いたい人が見つかったらいいな』
「・・・うん。・・・ああぁっ!!」
『え、どした;;』
「今日、アイス食べてなかった!」
『なんだよそれ;;』
「え、今から食べてもいいかなあ?」
『別に好きにしたらいいだろ』
「ねーえ、ちゃんと一緒に考えて!」
『考えるって、なにをだよ』
「だからこの時間に食べて太らないかなーとか」
お腹を覗きこんで手を当てる桜。
パジャマの裾がチラッと捲れて、脇腹がスマホに映る。
スタイルオバケが何言ってやがる////
『桜はもうちょっとふっくらしてもいいくらいだろ////』
「え、〇〇はそういう女の子の方が好きってこと?」
『いや、別にそういう話じゃ;;;』
「ねーえ、どっち?どっちが好きなの?」
スマホ越しに顔がグイっと迫ってきて、今度は胸元が映る。
さっきからガード甘いって////
『どっちが好きとかじゃないから;;そろそろオレ風呂入ってくるわ』
「えぇ、もぉー。今度ちゃんと言ってもらうからね」
また唇をむうっと突き出して、たぷたぷに潤んだ瞳でオレを見る。
『はいはい;;じゃ、切るぞ』
「ダメ!また忘れてる!」
ツンツンとスマホを指で差す。
『ん?』
「切る前に、ちゃんと桜におやすみって言うことっ!」
桜はあざとい。
そして桜のあざとさは二種類ある。
無自覚に距離が近くて、身体が触れたりガードが甘かったりする
ナチュラルあざとい。
今のセリフのように明らかに狙って放たれる
自覚したあざとい。
この二刀流はどちらもオレに絶大な効果を発揮する。
『はいはい、おやすみ////』
「ダメ!気持ちがこもってないからやり直し!」
『はあ?』
「ちゃんと、やり直して!寝かさないぞ!」
ほんとにどういうつもりなんだよ;;;
桜の心中を察する事はできないが、オレが折れるしかない事は分かる。
『分かったよ・・・おやすみ、桜////』
「ふふ・・・おやすみ。また明日ね」
桜の甘すぎる声が脳にこびりついて、深いため息をつく。
気持ちが吹っ切れないのは
きっとオレのせいじゃない・・・
【続け・・・】
読んでいただいてありがとうございます。
ずっと書きたかった、さくたんで書きました!
感想ほしいですー!お願いですー!
ありがとうございましたー!





また出遅れた(笑) また安心のブランド、ぬめたけ印の作品ですねぇ。 冒頭の待っててよ~わかったのやり取り、、夜トイレが怖くてひとりで行けないときのやつみたいで吹きました(笑) 〇〇…
いつも感想嬉しいです。ありがとうございます。 冒頭シーン気に入っていただけてよかったー。 相変わらずの幼なじみ設定ですが、 今回も最後までお付き合いよろしくお願いしますー! ゆ…
これは胸が痛くなるような 思いのすれ違いが起こりそうな予感 楽しみに待ってます
読んでいただいてありがとうございます。 #1からすれ違いまくってますね;; 上手く着地できるか分かりませんが、最後まで頑張ります。 お付き合いいただけたら嬉しいですー!
小悪魔さくたんの言動や幼馴染との距離感の設定が絶妙で、読んでいて心地良いです。 今作も楽しませていただきました。 早く続きが読みたいです笑
ありがとうございます! 設定決めるのだいぶ悩んだのでよかったー。 心地良いって言っていただけて嬉しいです。 続き頑張りますー。
さくたん作品ありがとうございます。 大作になる予感しかありません! 続きを期待しつつお待ちします。
読んでいただいてありがとうございます。 寄り道しようか、誰か出そうかめっちゃ迷ってます;; 今のとこ最短ルートがいいかなと思ってます。 続き頑張りますー!