仕事でミスをした日、励ましてくれたのは後輩でした
「○○!この資料どうなってるんだ!」
〇:す、すいません!
早速怒られています
大学を卒業してから早2年
社会人生活も3年目に突入していた
この生活にも慣れてきていたし、仕事もできることが増えてきて、段々結果も出るようになっていた
そんな中で今回してしまったミス
「お前なぁ、今になって資料の数字ミスとか誤字脱字なんて話にならないからな」
〇:すいません・・・
あまりにも初歩的なミスをしてしまいました
仕事が出来るようになり、結果も出てきたことでダメな方で慣れが出てきてしまったのかもしれない
最近ではなかったミスに流石に落ち込んでしまう
「とりあえず、修正してもう一度提出するように」
〇:はい
先輩の話が終わると俺は自席へと戻っていく
△:○○、大丈夫か?
〇:まあ・・・
△:最近じゃ珍しいミスだな、何かあったか?
〇:大丈夫、ただ俺が気を抜いてただけだから
△:そっか、今日は金曜だし、仕事終わったら飲みにでも行ってパーッと行こうぜ
〇:おお、ありがとう
途中で同期の△△が声をかけてくれた
同じ部署の同期は△△だけで、こいつがいなかったら俺は続いていなかったかもしれない
そのくらい俺にとって大きな人物だ
本人には言ってやらないけど
〇:はぁ・・・修正するか・・・
自席に戻ると、資料のデータを開いて修正に取り掛かる
いつもならしなかったミス
してしまった自分が情けなくて仕方なかった
?:○○さ~ん、どうしました?
〇:なんでもないよ、”一ノ瀬”
美:何でもない顔してないですよ~
隣の席から話しかけてきたのは1つ下の後輩の一ノ瀬美空
一ノ瀬が新人の時に2年目だった俺が教育担当をしていた
今考えれば、2年目で教育担当なんて俺からしたら荷が重いとしか思えないが、よくやり遂げたと思う
けどそれも周りの先輩たちのサポートと一ノ瀬が頑張ったからでもあるのだろう
〇:まあ、ミスしたら誰でも凹むよ
美:なんか怒られてましたね、何したんですか?
〇:ああ、まあ資料をミスって
美:どんなミスですか?
〇:・・・数字とか誤字脱字
美:ああ~、それ新人の時に私にたくさん注意してたことですね
〇:うぐっ
そう言われると何も言えなくなる
確かに教育担当ということもあって、一ノ瀬には確認に関しては口酸っぱく言っていた
資料の作成時にも何度も確認させたし、その癖をつけるように言ってきた
それを俺がやらかしてしまうなんて、これほど恥ずかしいことはない
美:まあ、元気出してください
〇:・・・そうだな、これ終わらせたら△△と飲みに行ってすっきりしよう
美:・・・え、飲みに行くんですか?
〇:ああ、あいつから誘ってくれてな
ほんとこういう時に誘ってくれる同期は大事にしないとな
今日は潰れるまで飲ませてもらおうかな
最悪あいつの家に泊まらせてもらおう
美:へえ・・・いいですね
〇:ああ、だからこの修正も早く終わらせないとな
美:・・・ですね
そこからは俺は資料の修正に集中していた
自分がミスしたことだから早く取り返さないといけない
幸い、ミスした場所自体はすぐに修正できたし、数も多くはなかった
最後に確認も何度もして、2度同じミスがないように気を付けた
結果、完璧な状態で先輩に提出することが出来た
〇:先輩、出来ました、確認お願いします
「おお、さっきは強く言い過ぎて悪かったな」
〇:いえ、そんな
「○○はちゃんとやれば出来るのは分かってるからな、しっかりな」
〇:はい
先輩からもしっかりとするよう言われた
最近は少し気が抜けていたのかもしれない
ここからまた気を引き締めて頑張っていこう
〇:ふぅ・・・
美:あ、先輩修正終わったんですか?
〇:まあな、一ノ瀬は休憩行ってたのか
美:まあ、そんなところです
〇:とりあえず、何とか終わってよかったぁ
美:お疲れ様です
〇:残りの仕事もしっかりやっていくぞ
美:はい!
その後はその日の仕事に取り掛かった
幸い修正に時間がかからなかった分、定時までには終わることが出来そうだ
〇:よし、出来たぁ
見込み通り、定時までに終わらせることが出来た
この後は飲みに行けるし、楽しみでしかない
△:○○、お疲れ
〇:おお、お疲れ~店どこ行こうか
△:悪い、今日急用入ってさ、どうしてもいくことが出来なくなったんだよ
〇:おいマジかぁ、でも仕方ないか
△:ほんとごめん、また行こ!
〇:おお、またな、お疲れ
さあどうしましょう
今日行くはずだった△△のドタキャンがありました
今の俺は完全に飲みに行く体勢になってましたよ
〇:・・・仕方ない、家で飲むか
美:あれ、飲みに行かないんですか?
〇:あいつ急用できたとかでさ
美:そうなんですか!ええ~それは残念だぁ
〇:??だよな
どこか演技がかった一ノ瀬の反応に若干の違和感を覚えながらも、今の俺には気にするようなことではなかった
とにかく今は帰ろう
〇:じゃあ、お疲れ
美:あ、先輩
〇:ん?
美:どうせなら、私と飲みに行きません?
〇:え、一ノ瀬と?
美:はい、なんだかんだ一回もないじゃないですか
〇:ん~それもそうか、じゃあ行こうか
美:やった!
一ノ瀬からの意外な提案ではあったが、飲みに行くことになった
これまで一ノ瀬とは部署内でも飲み会や何人かでの飲みはあったが、2人での飲みはなかった
後輩で女の子ということもあって、誘うのも憚られていた
今回は一ノ瀬からの誘いだったし、別にいいだろう
美:じゃあ行きましょう!
〇:おお
美:先輩!ここです!
〇:おお、ここか、いいじゃん
一ノ瀬が連れてきてくれたのは駅前から少し離れた路地にある居酒屋だった
中はなかなかいい雰囲気だった
美:先輩、何飲みますか?
〇:じゃあビールで
美:分かりました、すいませ~ん、ビール2つで!
〇:一ノ瀬もビールなんだ
美:意外ですか?
〇:うん、もっと甘いの飲んでそう
美:いやぁ、だいぶ社会人に染まってきましたかね~
〇:そんなところ染まらなくてよろしい
美:へい
しばらくするとビールが届いた
金晩でお客さんも多くてもビールが届くのは早いようだ
美:それじゃあ、乾杯!
〇:かんぱーい、ゴクッゴクッゴクッ、ああっ~
美:美味しいですね~
〇:ほんと、仕事の後のビールは最高
美:同感です!
とりあえず、何品か頼んでいき、ビールも進む
そうすると段々と酔いも回ってくる
美:先輩、ミスなんて珍しいですよね~
〇:そうかぁ?前まではミスばっかだったんだぞ
美:そうなんですか?
〇:そのたびに先輩と△△に迷惑かけたし
美:なんか意外です
〇:そうでもないぞ?
美:だって、教育担当してくれた時はそんな風には見えなかったから
一ノ瀬からはそういう風に見えてたんだな
まあ、教育担当なのにミスばっかりなのはどうかと思うし
〇:それはそう見繕ってただけだよ
〇:ミスばっかの所を見せないように必死だっただけ
美:そうだったんですね
〇:そう、俺は本当はミスばっかのダメダメなんだよ
ああ、やってしまったな
酒の勢いもあるが、後輩の前でこんな愚痴を吐くなんて
〇:ごめん、こんな先輩見たくないよな
美:そんなことないです!私はそんな一面も教えてくれて嬉しいです!
〇:そう?ありがとう
美:それに先輩はいいところだらけですよ!
〇:そんなことないよ
美:だって去年、新人だった私の面倒見てくれたし
〇:まあ、教育担当だからね
美:自分の時間削ってまで私に教えてくれて、それで残業してたり
〇:気づいてたのかよ・・・
あまり気付かれたくなかった
まあ、そもそも俺のキャパが足りてないから残業することになってるんだけど
美:自分のミスのこと言い訳しないところとか、あんなに怒られても愚痴も言わないところとか
〇:まあ、俺が悪いからね
美:それが出来る人が少ないんです!
〇:そうか?
美:私だってそうです!
〇:え、そうなの?
美:同期の子と飲みに行ったら愚痴ばっかり言ってます
〇:だ、誰の?
美:あのクソ部長のです
〇:大丈夫、それは俺も言う
美:あ、言うんですね
そりゃあ俺だって人間だから、愚痴だっていう
部長に関しては、ハゲだデブだ使えねえだのまあ一ノ瀬には言えないことを散々言っている
美:とにかく!先輩にはいいところがたくさんあるんです!だから元気出してください!
〇:ふふっ、ありがとう笑
まさか後輩に励まされるとは思わなかった
それでも元気が出たことには変わりない
情けない先輩だが、一ノ瀬には助けられたな
美:いえいえ!元気な先輩が一番ですから!
〇:そうだな、今日は俺の奢りだから、好きなだけ頼みな
美:やったぁ、先輩好いとーよ
〇:・・・え?
美:へっ
〇:おま、今なんて・・・
美:あ、の、これは、
今間違いなく聞こえてきた
酔ってはいるが間違いなく言っていた
え、好いとーよ?
あの、それって・・・
美:・・せ、先輩、その・・・
〇:お前・・・あれだろ
美:っ・・・
〇:奢ってもらえるからって調子に乗ってるんだろ?
美:へ?
〇:まあそうだよなぁ、奢ってくれる先輩はおだてるのが一番だからな笑
美:えっと・・あははっ、そうですね~
〇:びっくりするわ~
美:えへへっ、
なんて、調子の良いことは言ってみたものの
〇:(あれ、絶対そういうことだよな)
気付かないほど鈍感な俺じゃない
でも、信じることは怖かった
何せ一ノ瀬は男性社員からの人気が高い
そんな一ノ瀬が俺のことを好きなんてありえるのか
それが違っていたら俺はどうやって生きていけばいいのか分からないくらい恥ずかしい目に遭うだろう
となれば、ごまかすのが最善である
席の時間が来ると会計を済ませて外に出る
あれから一ノ瀬は本当に遠慮なく飲み食いしていった
まるで何かの鬱憤を晴らすかのようだった
美:先輩、ごちそうさまでした!
〇:こちらこそ、今日はありがとう
美:また行きましょう!
〇:もちろん
美:じゃあ、私こっちなんで
〇:おお、また来週な
美:はい!
この近くに住んでいる俺に対して、一ノ瀬はここからバスで帰ることになる
バス停近くで別れると、俺は自宅へと向かう
〇:それにしても、びっくりしたなぁ・・・
あの一ノ瀬の一言には驚かされた
何かのふいに出てしまった特に意味のない言葉だったとしても一ノ瀬から言われるとびっくりしてしまう
〇:勘違いだけはしないようにしないとな・・・
美:先輩!
〇:え、一ノ瀬?
バス停に向かったはずの一ノ瀬が追いかけてきた
〇:どうした?
美:先輩、さっきの嘘じゃないですから
〇:さっきの?
美:ふぅ・・・ほんとにほんとに、バリ好いとーよ!
〇:なっ・・・
美:じゃあ、また!
〇:ちょっ、おいっ!
言うだけ言って一ノ瀬は走ってバス停へと向かってしまった
追いかけようとしたが、ちょうどバスが来て一ノ瀬は乗り込んでしまった
結局、俺はひとりその場で取り残されてしまった
〇:・・・えっ
そして残されたのは一ノ瀬の言葉
〇:そんなことあるのかよ・・・
信じがたい事実
一ノ瀬からあんな言葉が出てくるなんて
けど、
〇:一ノ瀬、あんなに顔真っ赤にして言うなんて・・・
あんな一ノ瀬は見たことがなかった
それだけに一ノ瀬の気持ちがストレートに伝わってきた
さぁ、あとは俺がどうするかだけど
〇:・・・だめだ、顔あっつい
今は顔の暑さと、情報量の多さで頭がパンクしている
この週末は一ノ瀬のことで頭が一杯になりそうだ
さあ、週明け月曜日にどんな顔をして会えばいいのだろうか
夕方
美:△△先輩~
△:おお一ノ瀬、休憩か?
美:はい~
△:そうか、何か飲むか?奢るぞ
美:ありがとうございます、じゃあお茶で
△:ほい、
一ノ瀬が俺に話しかけてくるのは珍しい
いつも○○にべったりだしな
美:あ、先輩聞いたんですけど、○○先輩と飲みに行くんですか?
△:おお、まあな
美:いいなあ、○○先輩と飲みに行けて
△:まあ、同期だからな笑
美:私も行きたいなぁ
△:じゃあ来るか?
美:行きたいですけど、私○○先輩と二人が良いんですよね
△:え?
美:だから、先輩、譲ってください
△:えっと・・・
美:譲って
△:・・・はい(○○のことになると怖いわ~)





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