重度の発達障害を抱えられている患者さんのワクチン接種体験記(6月2日こびナビTwitter spacesまとめ)
※こちらの記事は、2021年6月2日時点での情報を基にされています。※
2021年6月2日(水)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:内田舞
内田舞
みなさん、おはようございます。
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース、今日はわたくし内田舞が初めてモデレーターをさせていただきます。
まずは少しだけ自己紹介をさせていただけたらと思います。
私は日本の北海道大学の医学部に在籍している時に、アメリカの医師国家試験 USMLE(United States Medical Licensing Examination)に合格しまして、アメリカの研修医採用制度にあたるマッチングというものに応募しました。
その結果イェール大学の研修医として採用されまして、日本の医学部を卒業と同時にアメリカで臨床医として働き始めました。
今はハーバード大学医学部のアシスタントプロフェッサーで、ハーバード大学付属病院のマサチューセッツ総合病院、通称 MGH(Massacchusetts General Hospital)の小児うつ病センターのセンター長として、小児精神科医として、臨床と研究と教育の三本柱で働いております。
私は先ほど申し上げましたとおりボストンに住んでるので、木下先生とご近所で、木下先生のおうちから15分ぐらいですかね?
木下喬弘
そうですね、20分くらいですかね。
内田舞
今ビザの関係でご帰国中で、日本はいかがですか?
木下喬弘
いやー、もう早くアメリカに帰りたいんですよ、実は…
内田舞
日本はご飯とお風呂が最高ですけれども、いつも燃えてる Taka先生がいなくて、ボストンもちょっと肌寒いので、今フリース着てるぐらいです。
なので早いお帰りをお待ちしております(笑)
ボストンで5人家族で住んでおりまして、この内3人目の息子が今年の2月に産まれたばっかりのとっても元気な3か月児なんですね。
私が今3か月になる子を妊娠してる時の1月初旬と2月初旬にモデルナ製の mRNAワクチンを接種しました。
やはり妊娠中の接種ということで色々考えることは多く、当時は mRNAワクチンを接種されている妊婦さんのデータっていうのはないに等しかったのですが、 mRNAワクチンのメカニズム的に考えて、私は基礎医学的なところの知見から接種に「これは大丈夫だろう」と思え、不安はあまりありませんでした。
それと同時にコロナに感染してしまった場合の重症化リスクの高さに関して、アメリカの中では特に恐怖を感じるものだったので妊娠中に接種をしまして、おかげ様で無事三男が産まれました。
妊娠中に自分自身接種したという経験から、科学的根拠だったりパンデミックの考察だったりということを今こびナビメンバーとしてお話しさせていただいております。
ワクチンだけに限らず科学や医療に関する正しい知識や経験談などをパブリックの方に知っていただきたいな、といつも考えておりまして、その一環として専門でありますメンタルヘルスに関する情報を発信させていただいております。
一番最近のプロジェクトは若いアスリートのメンタルヘルスというテーマでして、フィギュアスケーター長洲未来ちゃんがとっても正直なご自身のメンタルヘルスの経験について私とお話ししてくださった動画が YouTube に載っていますので、皆さんよければ私のアカウントから是非見てみて欲しいです。日本語字幕付きです。
参考:Behind The Podium - A Mental Health Conversation With Mirai Nagasu
https://youtu.be/KpiXmMBKj6Y
アスリートのメンタルヘルスというテーマはちょうどテニスの大坂なおみ選手が、彼女だからこそできる勇気あるメンタルヘルス発言と試合棄権という行動を起こしてくれて、ここ数日でいきなり注目を浴びるテーマになっていて私はすごく嬉しいです。
本当に選手の方がご自身の精神衛生について発信してくださるということをすごくすごく感謝している次第です。
そんな私こびナビ内田舞ですが、今日はどうぞよろしくお願いします。
【重度発達障害ワクチン接種体験記】
では早速本題に入りましょう。
1個目のニュースは、最近私の身近にあったワクチンに関しての「幸せニュース」をちょっと紹介させていただきます。
※参考:今回のニュース詳細
https://www.facebook.com/1067699352/posts/10223784004762570/?d=n
内田舞のFacebook投稿より
私が小児精神科医としてご相談を受けているボストン在住の日本人のご家庭の重度発達障害をお持ちの方のワクチン接種の成功体験というご報告です。
落合典子さん(本名をお伝えしてよいという許可を得ています)のお嬢様の那奈ちゃん(32歳)が重度の自閉症の方で、今まで色々な医療機関に関わるたびに、強い不安を抱かれ、暴れてしまい、その結果押さえつけられてしまったこともあり、多くの医療機関に関わるトラウマを経験されていました。て、医療自体、特に注射に関しては重度の恐怖症を抱かれてしまった方なんですね。
彼女は発達障害に加えて、基礎疾患もいくつかお持ちでいらして、コロナに感染してしまった場合の重症化リスクは高くなります。
また重症化して入院しなければならない状況になった場合に、彼女が本当に大っ嫌いな医療機関の中で、彼女の限られた言語コミュニケーションではどんな治療をされているかも分からない可能性が高いにも限らず、隔離を受けて1人で入院することになってしまったら、と考えるとまたそれは本当に大きなトラウマになってしまうでしょうし、また言語コミュニケーションが取れない中で、本当にちゃんと効率の良い必要な治療を受けられるのかということもご家族の大きな不安だったんですね。
なのでやっぱり感染は絶対に避けなければならない。彼女にワクチンを接種させてあげたいというのがお母さんの典子さんの強い思いで、でも注射恐怖症の彼女をどうしたらいいんだろうという相談を、去年の秋ぐらいから受けておりまして、いろいろと Brainstorm を手伝っていました。
那奈ちゃんのような重度自閉症や発達障害の方は痛みや肌の感覚、また嗅覚・視覚・聴覚の感覚が過敏で、また不快な感覚に対する感情の発生っていうものがものすごく強く出てしまう方が多いです。
なので注射が苦手な方も非常に多いですし、言語と理論でコミュニケートも難しい方も多いので、その中で注射は嫌だと暴れてしまうことも多く、そう考えるとやっぱり集団接種の場では接種できないという方がたくさんいらっしゃいます。
それに加えて発達障害の方はその発達障害に加えて基礎疾患をお持ちの方も一般よりも高い率でいらっしゃるので、そういった点でやはりワクチンの接種は強く推奨されている対象でもあり、アメリカでは重度発達障害の方も優先接種になっています。
私が勤めるマサチューセッツ総合病院の中に発達障害専門のクリニックがあるのですが、このようなお悩みを抱えた方を対象にワクチンをその発達障害専門のクリニックで提供できるようになりました。
私に相談をしてくださったお母様の典子さんはまずこのクリニックで予約を取って、彼女の場合は親だったのですが、家でなくグループホームで暮らしていらっしゃる方だったらスタッフなどの、ケアギバーの方用に設けられた「注射への恐怖を取り除くための対策講座」というものがオンラインであって、それを計3回受けたそうです。
そして予約を取ったこのクリニックで、今までの経験を話し、注射に対してもし拒否反応みたいなものを示してしまった場合にはどんな対応をするのが効果的かということを相談する機会が設けられて、那奈ちゃんの場合はとにかく最短で接種を完了するということを目標にしようと話し合ったそうです。
以前、彼女が MRI を受けようとした時も私は少しお手伝いさせていただいたんですが、MRI 会場に着いてから1時間ぐらい待ち時間があり、その待ち時間中に不安がどんどんどんどんどんどん高まってしまって、結局MRIを受けられなかったっていうことがあったんですね。
そんな過去の経験を繰り返さないために、とにかく最短でセッションを完了するということを目標にしたそうです。
当日出かける前にはまずは処方された抗不安薬を飲まれました。
那奈ちゃんが大好きなお兄ちゃんも一緒にクリニックに向かうことになりました。
しかし、抗不安薬も飲まれ、大好きなお兄ちゃんも一緒にいるにも関わらず、やっぱり那奈ちゃんにとっては不安の方が大きくなってしまって、クリニックに着いたけど、車から出られず、シートベルトをしっかり締めたまま座って動かなくなっちゃったんですね。
それを見た接種スタッフが「じゃあこっちから行くよ!」と言って、駐車場まで出てきてくれ、那奈ちゃんが車に乗ってシートベルトもしたまんま「はい、やるよ!プチュッ、終わり~!」という感じで、瞬く間に接種を済ませてくれました。なんと駐車場着いてから3分で接種終了だったそうです。
3分で終わってしまったことでなんだか「あれ終わったの?」と驚いた様子だった那奈ちゃんは、喋れるお言葉は限られてますが、限られた言葉で「All done!」と笑顔で言われて、今までにない成功体験になったことに一家でびっくりされちゃったそうです。
接種後に関しては副反応は特になく、しかし接種部位のところを突っついたり引っ搔いてしまったり、というスキンピッキングがあったので、お母様の典子さんは機転を利かせてピッキングができないように長袖のタートルネックに着替えさせ、そのあと手があかないようにアートだったりクラフトだったりお料理だったり、手を使わせるアクティビティをたくさんしたそうです。
那奈ちゃんは今まで病院での経験がトラウマになってしまったことしかなかったそうで、必要な医療行為も絶対に嫌だと拒否されており、ほとんど病院やクリニックの近くにすらいけない状況でした。
そんな那奈ちゃんの手を握りながらお母様の典子さんもずっと1人で何とかしなきゃと孤独に頑張っていらした三十数年間でした。しかし、今回はチームでお嬢様のワクチン接種を成功体験につなげられたことに感動されました。
那奈ちゃんも13年ぶりの注射を出来たという自信を持たれたのか、その後ずっと上機嫌で、自分でも感動してるようだというご報告をいただきました。
これはものすごく私自身も感動して、皆さんにお伝えしたいと思い、「このお話を公開してもいいですか?」と伺った際に、典子さんがもう1個だけ伝えたいことがあるって言ってくださったことがあったので、付け加えたいと思います。それは、お母様の「職場の理解」というものに関してでした。
重度発達障害のお子様を持たれる親(特に世界的には母親の確率が高い)というのは、お子さんの世話をするために自己実現、自分の仕事だったり、自分がやりたいことは諦めざるをえないっていう例は少なくありません。
しかし、このお母様の職場に関しては、先ほど申し上げたオンラインの「針恐怖症対策講座」を受けるのも職場からやらせてくれて、また接種当日も「大事なことだから」とお嬢様の接種を優先させてくださったそうです。このような職場の理解とフレキシビリティ(柔軟な対応)がなかったら、可能ではなかったっていう事を、皆さんに伝えたいと典子さんがおっしゃっていました。
このように相談を受けていたご家庭だったので、これを聞いて私も涙が出てしまって、本当にめちゃくちゃ嬉しくて今回シェアできて嬉しいんです。やはりこれだけ緊急性をもった、大人数の接種が必要なワクチンなので、その中で個々人で必要な対応は違うこともありますし、社会の中で弱いな立場にいる方に関しては、できるだけワクチン接種をしやすくしてあげる努力って重要だなーって思わされました。
池田早希
本当に感動的なお話でした。舞先生、シェアありがとうございます。
車で接種するという柔軟な対応が本当に素晴らしいですよね。
ワクチンに限らず、処置において、知的に障害があるお子さんの理解度に合わせてちゃんと説明をし、心に負担がかからないようにするのはとっても大事なことだなと思います。
先生のお子さんの件は「チャイルドライフスペシャリスト」という職種は関わってくださったんですか?
内田舞
この件は関わってないです。32歳の大人の方なので。
でも、チャイルドライフスペシャリストはすごく重要な職なので、ぜひとも紹介していただけたら嬉しいです。
池田早希
チャイルドライフスペシャリスト、またはチャイルドファミリーライフスペシャリストは日本でも数は少ないですがいらっしゃるようです。アメリカでは結構大きな総合病院とか小児病院では一般的なんですが、それは医療環境にあるお子さんとか家族に心理的な支援を提供する職種で、舞先生がおっしゃっていた MRI の撮影だったりとか化学療法の抗がん剤の説明とか、あとは救急外来での処置の時に例えばシャボン玉を使ったり音楽を使って気を紛らわせたり、あとはそのお子さんの特性とか理解度に合わせて説明してくれるような職種なんですよね。
あとは日本でもファシリティドッグがいますけど、ファシリティドッグも一緒にお子さんの心を支えてくれるっていうのもありますね。
本当に医療処置とかの繰り返しが子供の精神状態に影響するとか大人になってからも不安障害につながるっていう研究もありますし、鎮痛剤で処置の時の痛みを取るだけではなくて、いろんな医療介入をポジティブな経験にするっていう、医療のアートの部分にももっと焦点を当てることはとても大事だなという風に思いました。
内田舞
私も全く同感です。
チャイルドライフスペシャリストに関して、私が関わった症例で本当にいてくれて良かったなーと一番思ったのはお子様のがんの告知の時でした。
小児がんになられた方に対して、アメリカではどんな状況であっても、患者さん本人に説明する義務というのが医師にはあるんですよね。
それがお子さんであったとしても、お子さんにわかるように説明する義務があるので、お医者さんでもとっても上手な方たくさんいらっしゃいますけれども、それに加えてチャイルドライフスペシャリストの方が入ってくださって、パペットを使って抗がん剤の治療について説明してくださったりします。もちろんご家族も告知を受けてから、心理的にすごく大変な思いをされ続ける方が多いので、お子さんだけではなくお子さんのお世話をされているお母さんやお父さんだったり、その他のケアギバーの方たちへの心理的サポートもチャイルドファミリーライフスペシャリストの仕事として、ありがたいと思うところですね。
あとはもう1つの小児科の中で入院されてる方で、どんなに検査をしても内科的な理由が見つからない時というのは非常に多くあるわけなんですよね。
すごく痛みがある、足が動かないだったりとかと吐き気がするっていう中で、どんなに検査をしてもどうも内科的な理由が見つからないという時に、時には精神的な理由だったりすることもあります。そういった時にも原因探しをするのではなく、今あるスキルで今の状況をできるだけ軽減できるように一緒に頑張りましょうと、チャイルドライフスペシャリストの方に入っていただくこともあります。
安川康介
内田先生、ありがとうございます。
僕はアメリカのワシントン D.C. の病院で働いているんですが、実際にグループホームに住んでいる知的及び発達障害を持っている方が新型コロナウイルス感染症で何人も入院されているのを見てきているんです。
そういう方は外には行ってないのですが、やっぱり施設の中で結構感染が広がってしまうことがあって、同じ施設から何人も入院されるということがありました。
特にマスクをきちんとできなかったりだとか、そういうことにすごく不安を感じてしまったり、なかなか通常の感染予防するのが難しいという状況もあります。常に介助が必要な方もいるので、おそらく結構人との距離が近いことが原因で感染してしまうことがあると思います。入院したら、普段だったら付き添いの方がずっといてサポートできるんですけども、コロナウイルスが流行していた時はそういった付き添いの方が来られなかったので、ものすごく不安もある中入院生活をされています。
実際に医学的にそういう知的及び発達障害がものすごく新型コロナ重症化のリスクファクターだということがわかっていて、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)はステージごとにワクチン接種の優先順位をわけていて、一番上に医療従事者がくるのですが、その次の 1B にこうした方々を入れて積極的にワクチン接種を進めようというような姿勢をとっていました。
やっぱり先ほど池田先生や内田先生も話してくれたように、車に行って接種をするとか、なるべく不安が少ない形で柔軟に対応していかなければいけないと思うんですね。
僕が見たどこかの記事だと、例えばヘッドホンをして音楽聴きながら受けてもらったりとか、そわそわしたときに手で触るスピナーやスポンジなどのフィジェットデバイスを触りながら打ってもらうとか、色々な工夫ができると思うんですよね。
なので日本でもそうした方に柔軟に対応していってもらえばいいなと思います。
あとそういった方々だけではなくて、やっぱり僕たちは普通に話を聞くことや読むことができる方を中心に情報発信してしまうんですか、目が不自由な方や聴覚障害のある方ですとか日本にいる日本語が読めない外国人の方などに対してもちゃんと情報提供して、ワクチンに関して説明できるような、接種できるような環境が整っていけばいいなと思います。
内田舞
すごくいい意見をありがとうございます。
本当におっしゃる通りでこの社会の中の弱者という立場にいらっしゃる方というのは正しい情報に行きつきにくい状況にある上に、情報に行きついたところでその理解にも苦しむことが多いです。でも、しっかり情報を嚙み砕き、先ほど言ったようにパペットを使うとかの工夫によって、コミュニケートできないわけではないはずです。そのような方に対しての説明義務を軽視してはいけないと思うんですよね。
それから安川先生がおっしゃったように、知的発達障害などお持ちの方はグループホームにお住まいのことが多いので、そういったところでのクラスターが出てしまったという例はアメリカの中で何件もありました。そしてそのようなクラスターを避けるためにグループホームやデイプログラムがこのパンデミック下に閉じてしまったという例もいくつもありました。そのような状況になった時に、では知的発達障害の方々はどこに行くのかというと、ご実家に帰れる状況だったらご実家に帰るんですよね。
そういった場合に、典子さんがおっしゃっていたように、やはりそのようなお子さんを持たれる親、世界的に特にお母さんが、子どもの世話のために自分の仕事を辞めなければならないだとか、自分がやらなければならないことを後回しや諦めるということが必要になってしまうことが多く、アメリカでは特に「お母さん」というカテゴリーの方の離職率がこの1年間非常に高くなってしまいました。
このパンデミック下での女性のストレスの高さ・自殺率の高さの一因なのではんないかと思っております。
そして知的遅滞や、重度の発達障害の方は、安川先生がおっしゃったように、重症化リスクが高い因子が多いので、やはりワクチンはアメリカでは強く推奨というカテゴリーになっています。強く推奨するのであれば、そのような方々が出来る限り気持ちよく打てる環境というものを整備しなければならないなと思っております。
前田陽平先生
感想みたいなことだけなんですけど、先生の話にすごく感動しました。
むちゃくちゃいい話を聞いたな、というのが1つ目の感想です。
もう1つ思ったのが、そういう合理的配慮というのがなされているというのがすごくいいな、と思っていて、合理的な配慮というのはその場のフレキシブルな対応も当然含まれていて、それは医療者側で全体的に多少余裕がある環境で働いているからできるというのもあるのかな、と思いました。
チャイルドライフスペシャリストという職種を僕、知らなかったんですけど、そういう大規模な中の隙間を埋める職種があって、僕らも病院でいわゆるインフォームドコンセントならぬインフォームドアセント、お子さんでもきっちりわかるように説明しましょうね、というようなことを病院でも強く推奨されているんですが、それも全部僕らが追加で当然やってくださいね、というスタンスでやっている病院がほとんどだと思うんですよね。
医師側はいつもの説明に加えて子ども分の説明のことを考えてやるっていうことになるし、また僕らも普段からずっとずっと子供の相手をしてる小児科の先生とかと違って、普段子どもの相手をしていない先生も子どもや発達障害の方に説明するとなると、それが必ずしも得意な先生ばかりではないというふうに思うんです。
やっぱり隙間を埋める専門職種というか、そういうものがあると医師の得意不得意によらず患者さんの満足度が高くなるかなって思いました。
日本と比べて隙間の職種がすごく多くて、こびナビが始まって、自分が聞いたことのない職種がたくさんあるんだな、というのを僕はすごく勉強になってます。そういうシステムはすごくいいな、と思いました。
内田舞
ありがとうございます。私も同感ですね。
このチャイルドライフスペシャリストもそうですし、那奈ちゃんに注射を打つために駐車場まで出てきてくれた方というのは医師でもナースでもなく、メディカルアシスタントという職種でした。メディカルアシスタントというのは注射をしたり、採血をしたり、体温を取るなど、そういったテクニカルなものをクリニックの中でやってくれるという専門の職なんですね。
なので本当に前田先生がおっしゃったように、医学的な決断をする人が医師であっても、その決断を実行するための必要ステップをやってくれる人が、特化した分野を極めて、例えばお子さんへの説明をとっても極められている職種だったり、発達障害がある方などに対して注射や採血をすることに特化されている方がいたりの、スペシャリティパワーがあるからこそ出来たっていうこともありますね。
でもやっぱりフレキシビリティっていうのは最終的に個人の判断っていうのが大きいと思うので、「別にクリニックの中で打たなくてもいい、駐車場でもオッケー!」と、「打つことの方が重要だからそれを優先して、じゃああのルールは今のところ無視しましょう」と思えるその個人の判断が許される場面っていうのがこれまた重要かなと思いますね。
みなさん、本当にいい意見をありがとうございます。
早希先生、どうぞ!
池田早希
日米両方で小児科トレーニングを受けた立場から、そのフレキシビリティとともに、一般的に、アメリカの方が患者さんや家族の気持ちとか、医療のアートのところの研修医トレーニングが系統立てて行われていると思います。
内田舞
患者さんの気持ちを考えることは大切ですよね。
ちょっと時間が過ぎてしまったんですけれども、もう1つ、妊婦さんのことも話そうかなと思ってたので駆け足でそこを話させていただきます。
【妊娠中にコロナワクチンを受けた医師に聞いてみた】
私がこびナビに関わり始めた理由というのが私自身が妊娠中にワクチンを接種して、それに実体験を加えて考察やデータを紹介するっていうことを始めたからです。そのタイムラインを追ってみましょう。
参考:コロナワクチン妊娠中に受けた医師に聞いてみた。妊婦へのワクチン副反応・安全性は?【こびナビ動画】
https://t.co/5rdrOuJOgZ?amp=1
私が接種したのが1月初めで、その直後からだんだん発信を始めてこびナビと出会ったのが1月後半だったと思うんですけど、2月6日くらいに木下先生と池田先生と私にインタビューしていただいて動画を作って、その時点ではまだ臨床データは限られており、わからないことも多かったんですよね。臨床データがないことは、基礎医学的な知見・知識から判断しなければならないってことが多くて、その説明が動画の中でされています。
その1か月後の3月に私は こびナビの Clubhouse で「妊婦スペシャル」みたいなお話をさせていただいて、その時点で妊婦さんについては、アメリカでは接種されてる方が3万人以上いらしたので、そのデータが少し出てきた時期でした。CDCの妊婦追跡調査の中間報告も出ておりましたが、まだまだ追跡されているから「乞うご期待!」というようなことを言って終わったこびナビの Clubhouse でした。それからもう3か月経ち、この3か月間で「乞うご期待」といっていたことのデータを発表した論文というのが、たくさんたくさん出ているんですよね。
なのでキーポイントになるものだけを少しだけかいつまんでお話しさせていただけたらと思います。
その中で一番「ランドマークスタディ」になったのは CDC が行ったワクチン接種された妊婦さんの追跡研究を発表した論文がNEJM(The New England Journal of Medicene)に出たのですが、これは非常に権威のある臨床研究雑誌です。
CDC の行っている V-safe という安全性追跡調査システムに関してはこびナビのスペースをお聴きの皆さんはご存知かと思うんですけれども、この V-safe の中には妊婦さんに特化した「Pregnancy Registry」妊婦登録台帳みたいな感じのものがありまして、この Registry に私も参加しています。ワクチンを接種した後の安全性追跡システム、V-safe に登録する時に「接種時に妊娠していましたか」という質問があって、そこで Yes と回答するとその後個別にメールかテキストが来て、「妊娠・出産経過の追跡詳細を追跡してもいいですか」という質問が来るわけですね。
そこでも「いいですよ」と連絡をすると電話がかかってきます。
電話がかかってきて「こういう理由でこうやって追跡をします」と言われて、主に受診している産婦人科の先生の連絡先、生まれた子どもが通うであろう小児科の連絡先を教えます。
そうすると CDC がそちらのクリニックに連絡を取って、私の場合だったら私の妊娠状況だったり生まれた子どもの状況を確か3か月ごとにチェックするシステムになっています。
なのでこれが12月半ばから始まったので、3月の時点で第一波(First Wave)のデータコレクションが終わって、接種された方が私もなんですが、出産し出している時期だったんですよね。
その時点で Registry に参加されている妊婦さんというのが35,691人で、そのうち妊娠がわかっていた方が3万人強、そしてワクチン接種直後に妊娠がわかった(ワクチン接種時にお腹の中で受精、あるいは着床していた)っていう方が5,000人ほどでした。
この中で私を含めたアジア人は2,000人近くで、妊婦さんの年齢なんですけれども一番多いのが25歳から34歳の22,000人で、凄いのがね、私の感動ポイントがずれてるとは思うんですけれども、感動したのが45歳から54歳の妊婦さんでこの Registry に参加されてる方が2,000人近くいらっしゃるんですね。
これすごくないですか? 私、3人産んだのが32歳・34歳・38歳だったんですけれども、38歳の妊娠・出産は体への負担は重かったなーっていう印象なんですけれども、私がそんな思いをしてる中で45歳から54歳の方で妊娠中にワクチン供給が始まった超早期に2,000人もの方が接種されているというのがなかなかグッと来ましたね。
皆さんの気になるのは結果の部分だと思うんですけれども、ワクチンを接種された方で流産された方が12.6%、これはアメリカの一般率が15から20%程度なので、一般率に比べて低い値です。
死産に関しては1件のみ。この方は本当に悲しいことなんですけど、1件のみで発生率0.1%以下ということで、これも一般率よりも低いです。
流産・死産に関してはそのような値で、同じく早産・子宮内発達遅滞だったり、胎児異常というものも一般率と同じかそれより低いという結果で、新生児死というものに関しては0件でした。
つまりは、ワクチンを接種した妊婦さんと接種していない妊婦さんでこのような事象の発生率は全く同程度か低いぐらいだったということで、ワクチンを起因とする流産だったり妊娠の悪影響というのは見受けられないという結果でした。
なのですごく安心できるデータがどんどん出てきたかなと思いますし、もう今の時点ではアメリカでは新型コロナワクチンを接種された妊婦さんっていうのは12万人に至っているので、アジア人も相当な数が含まれているデータですし、日本人の方も安心材料にしていただけたらなと思います。
この点、何かコメントのある先生はいらっしゃいますでしょうか?
(登壇の先生方より💯リアクションが続く)
私はこびナビの Clubhouse でお話しさせていただいた時も申し上げたんですけれども、日本の女性をすごく応援している、まあそれがライフワークのようなものになっておりまして、やはり昨日もお話があった過去のパンデミック下での女性の自殺率の高さだったりとか、先ほど話したような発達障害をお持ちのお子さんを抱えたお母さんがお仕事を辞めなければならないとか、多くの女性を苦しめてしまったパンデミックだなと感じています。しかし、世界的にコロナ禍で女性のリーダーシップも輝いた1年だったんですよね。
CDC の新しいディレクターの Rochelle Walensky 先生だったり、モデルナの mRNAワクチンを開発されたのも Dr. Kizzy というあだ名で呼ばれている黒人の女性だったり、ファイザービオンテック社の mRNAワクチンを開発されたのもトルコ系ドイツ人の奥様・旦那様カップルでしたし、また mRNA のために必要なウリジンを違うものに変えるという基礎医学的な技術を作り出したのもハンガリー系移民の女性だったんですよね。
非常にマイノリティ・移民の女性が活躍したパンデミックでもあったので、勇気が湧きますね。安川先生、先生が書かれている論文には古事記を医学的に考察したものというのはもちろん、こびナビ内で知られているかと思うんですが、日本の医学界でのジェンダーギャップについても論文を書かれていらっしゃるんですよね。
私、深く読ませていただいております。もしよかったら何か一言いただけたら嬉しいです。
安川康介
女性の研究者の方や、研究者の中のマイノリティの方が世界を救うような発見をしていて素晴らしいと思います。聴いていて感動しています。
日本でもそうやって女性が能力を発揮したり輝ける社会にしていかなくてはいけないんですよ。
全然そういう社会になっていないので、内田先生もそう思っていると思うんですが、僕はジェンダー問題は日本社会の根本的な問題の1つだと思っています。
内田舞
私もそう思います。
早希先生、お願いします。
池田早希
ジェンダーギャップだったりジェンダーの問題を解決することは,
女性だけではなくて、他のマイノリティの方や社会全体として、そして労働とか教育とか様々な問題の解決にもつながるとも思います。ですので、よく内田先生や安川先生、リスナーにいらっしゃる杏奈さん、他の女性医師の友だちと話しているんですけれども、パンデミックとこびナビの活動が終わったら、私たちは女性のempowerment の活動もしたいなと考えています。
内田舞
パンデミックが終わる前から並行してやっていきましょう!
ではこの辺で締めたいと思うんですが、木下先生、何かおっしゃりたいことはございますか?
木下喬弘
皆さんの話を僕も楽しく聴かせていただきました。
日本とアメリカの違いが浮き彫りになるテーマの1つかなと思っていまして、僕は日本という国は結構好きなんですけど、やっぱり改善していかないといけないところはあると改めて思いましたし、こういう情報発信を続けていけたらなと思いました。
池田早希
木下先生のおっしゃることはごもっともで、私たちがこういう発言をしているのは日本により良い国になって欲しいという思いがあるからだと思っています。
内田舞
そうですね。その通りです。
では、大好きな日本の皆さん、今日はいい1日をお過ごしください!
今日はわたくし、内田舞が担当させていただきました、こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース、明日もぜひお聴きください。
それでは皆さん、また👋
See you!


コメント
1どちらもすごく良いお話でした。
特に重度発達障害の方への接種は、これからワクチンが小さい子供にも承認されたあと、役に立つ話だと思います。大人なら雑な流れ作業の接種会場でも我慢できますが、子供だとムリだったりしますので。
医療機関で嫌な思いをしなかった!という経験は、これから那奈さんの人生にプラスになると思います。
一点、34歳の女性を、いくら重度発達障害があるからといって「ちゃん」は違うんじゃないかなと思います。面と向かってなら「那奈ちゃん」と呼びかけるのかもしれませんが、こうしたところで記事にするなら、やっぱり「さん」のほうがいいかなあと。