ローマ字のミクロ構造と指分離
前説
非分離ローマ字特有の概念として、指分離というものがある。
今回はこの概念について。
母子左右分離
ドヴォラック配列や大西配列を筆頭とする左右分離型配列では、左右の手で子音と母音が分離されている。これは母音と子音が交互に繰り返される日本語ローマ字の構造を前提として、両手で母音と子音とを順繰りに打鍵することでリズミカルな打鍵が可能になる、という左右分離配列の基本コンセプトである。
これが由来で母子左右分離配列と呼ばれるわけだが、今回の主題は母子左右非分離配列。つまりこの構造を利用しない配列だ。
母子左右非分離配列において問題になるのは同指連続の処理である。左右分離配列においては左右で交互に打鍵するという形で同指連打は構造上排除されているのだが、左右非分離配列においてはそういうわけにもいかない。片手に母音も子音もあるのだ。デファクトの「ki」のように同じ指に母子音が同居したとき、同指異鍵連打という最悪の挙動が発生する。
母子指分離
そこで必然的に要請される概念が「母子指分離」である。母音と子音を片方の手の中でも違う手に割り当てることによって、同指連打を構造的に予防しながらアルペジオの増加を狙える画期的な概念だ。とかげ配列にはすでにその萌芽が見られる。とかげ配列において母音のAやIと同じ指に同居するのはYBFなど低頻度の子音なのだ。
とかげ配列から派生するいもり配列やククリ配列を自作するときにはうっすらとだがこの概念を気にするようになっていた。当時は(あるいは今も)人さし指に高頻度の子音、中指に母音、薬指に低頻度の母音と子音、さらに外側の小指があるあたりに最底辺頻度の子音、という割り振りを基本にしていた。
疑問
その指分離という概念を大事にして雲乃井配列まで作った私だが、突き当たる疑問が一つあった。私の作る配列群はすべて撥音(ん)促音(っ)長音符(ー)の拡張を含む。この三つのキーが単キーとして配置されているわけだ。これらを配置するとき、私は無考えにとかげ配列の配置をずっと継承していた。つまり子音として扱い、人さし指の部分に配置していたのだ。疑問点はここにある。
こいつら、本当にこの扱いでいいんだろうか…
三種(四種)指分離
考えてみると明白だった。ローマ字の基本構造としては、子音は前、母音は後。
撥促長の特殊音三種類はどこに来るでしょうかと考えると、そう、母音の後。ローマ字のミクロ構造というのは「子音→母音→撥促長」でできていた。
ちなみに、hやyなど拗音用に子音と母音と間に挟まる特殊な子音もあるから、とりわけ拗音のミクロ構造としては「子音→拗音用子音→母音→撥促長」となる。同指連打を防ぐためにはこれらがすべて別の指に割り振られていると良い。
現状
ということでその概念を適用して改善された今の雲乃井配列の配列図を見てみよう。
大きい文字が想定ホームポジション
書き漏れているが、Jが促音(っ)
促音はJ位置、長音はL位置、撥音はC位置
見てもらえれば分かるように、旧雲乃井配列とククリ配列では人さし指の子音群の中に撥促長が混ざり、小指には低頻度の子音が割り当てられているが、新雲乃井配列において撥促長は小指に逃がされ、他の指の文字たちと同指連打で衝突しないようになっている。三種指分離の実践である。
さらにいうと、新雲乃井配列において拗音子音のwhyについてはいずれも薬指に配置されている。一応人さし指から薬指に逃がされているが、この配置では薬指の母音と拗音子音が同指連打で衝突する可能性は残されてしまう。まあしかし雲乃井配列では逆手の子音との子音連打でほとんど拗音をニ打で打てるというニ打拗音を導入しているため、この配置による害はほとんどない。(詳細は別記事を参照されたし)
総括
ということで、母子指分離の派生概念である三種指分離、四種指分離についての解説だった。ぜひとも非分離ローマ字配列を作られる方は参考にしていただきたい。指分離を取り入れない非分離ローマ字も作ることは出来るのだろうが、統計を活用して急所となる母子の組み合わせをあぶり出さないことには実現できないだろうと私は踏んでいる。未だそれが存在しないローマ字配列の現状においてこの指分離という概念の重要性は高い。
また、三種指分離、四種指分離という言い方にあまりしっくりこないものを感じているので、いい言い方を思いついた人はぜひ教えてほしい。



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