「ボーイフレンド2」フーウェイに聞く カムアウト、同性婚、愛

川村さくら
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男性どうしの恋愛リアリティーショーであるNetflixオリジナル作品「ボーイフレンド」。2月にシーズン2の最終話が配信されました。出演者のひとり、大学院生で柔道選手でもあるフーウェイさんは、母にカミングアウトをしたときに「治せないの?」と言われたことを振り返ってくれました。研究している同性婚についても聞きました。(朝日新聞withnews・川村さくら)

フーウェイさん

1998年、タイ出身の母と中国出身の父のあいだに東京で生まれる。その後7歳まで上海で育ったのち、日本へ戻る。現在は神戸大学大学院の博士課程1年目。人類学の分野で日本・台湾・タイの同性婚をめぐる社会運動について研究中。また、8歳で始めた柔道でタイ代表としてロサンゼルス五輪への出場を目指している。

カミングアウト

恋愛リアリティーショー「ボーイフレンド2」に出演したものの、家族には自身の性的指向を明らかにしていなかったフーウェイさん。

昨年の冬に母方の祖母が亡くなって、母とタイに戻ったとき、恋愛対象が同性であることを伝えました。

母から返ってきたのは「治せないの?」という言葉でした。

「母はマレー系なのでイスラム教徒で、同性愛が禁じられているし、自分の息子が同性愛者だと周りの親族に知られたくないという気持ちが強かったんだと思います」

「私か男の人か」

それ以降、日常会話はしても、将来についてお互いに語ることはタブーのような時期が続きました。

「ある時には、母から『私を選ぶのかそのへんで出会った男の人を選ぶのかどちらかにしなさい』と言われました」

フーウェイさんのお母さん自身、実の母に捨てられて養父母に育てられた経験がありました。

「母は『普通の家庭』にあこがれているんです。『(フーウェイには)普通の家庭をつくって子どもを持ってもらうのが夢だった。でも今その夢はもうなくなった』と話していました」

父からの電話

「でも自分は変えられない、どうすることもできない――」

母との関係が行き詰まるなか、変化を生んだのは父の存在でした。

「実の父の彼女から連絡が来て、『お父さんがリアリティーショー見たよ。眠れないくらい一晩中怒っていたけど今は落ち着いたから連絡してあげて』と言われました」

そして旧正月、父から電話がかかってきました。

父は、「そういう研究をしているから『もしかして』とは思っていた。批判しようとは思わないし、研究もおろそかにしないでがんばって」と励ましてくれました。

母の対応に変化

さらに、父は母にも電話をしていたそうで、その後は母の対応が変わり始めました。

配信された番組をひととおり見たという母は、「あなたの言っていることも分かる。この先誰か選ぶなら自分が成長できる人を選びなさい」と言ったそうです。

フーウェイさんは「母は、父から『お前の育て方が悪かった』と批判されるのが怖かったんだと思います。父から電話が来て、母親も楽になったのかなと思います」と話します。

共感の声

母へカミングアウトして「直せないの?」と尋ねられたフーウェイさんの「動揺」は、番組でも映し出されました。

視聴者からは大きな反響が寄せられ、「自分も母親とうまくいかない」といった共感の声が多かったといいます。

「家族とのコミュニケーションという意味では、セクシュアリティーに限らず誰にでも共通する問題なのかなって思ったりもしました」

特権と勇気

出演後は大学院の周囲から「自分のことを語って抑圧の社会から抜け出せることはあなたが持っている特権だ」という指摘も受けたというフーウェイさん。

セクシュアリティーのように、まだ世の中で差別が残っている属性について誰にも言えずに苦しみ続けている人もいる――。

番組への出演をきっかけにセクシュアリティーを社会、そして家族に伝えたフーウェイさんは「それができる立場にいること自体恵まれていることなんです」と話します。

今年最高裁判断

日本では、同性婚を認めない現在の法律は「憲法違反」だと訴える原告たちによる訴訟が続いています。

同性婚訴訟

2019年に全国4地裁(札幌・東京・名古屋・大阪)で一斉提訴。その後福岡でも提訴し、東京での2次提訴もあった。全6件中5件で「違憲」という判決が出ましたが、2025年11月の東京2次判決だけが「合憲」という判断を下しました。2026年内に最高裁の判断が出るとみられています。

「葛藤」

フーウェイさんは「個人的には同性婚が法制化されてほしい」と言います。

一方で、同性婚にまつわる社会運動を研究していて、「葛藤」もあると語るフーウェイさん。

そもそも、2人組のカップルで恋愛して結婚していくことが社会で規範化されてしまっている「カップル主義」の問題があると指摘します。

家族はもっと複雑

フーウェイさんは、「同性婚が法制化されても、女性の家事労働の偏りなど現在の結婚制度の中でも根深い問題となっている部分を考え続けなければいけない」と言います。

その考え方の背景には、自身の家族の「複雑さ」があります。

「僕には母の再婚相手も含めて父親が2人いて、実の父親には今彼女がいて……。けんかする場合もあるけど仲良くもあって、複雑な関係のなかで維持しています」

「同性婚法制化も大事だけど、その先の日常生活を見据えた制度構築をしていくことが大切だと思っています。様々に複雑な家族関係でも、生きていける人を増やすために、同性婚の法制化が1つのステップになったらいいなと」

結婚は契約

フーウェイさん自身は、2025年に同性婚が法制化されたタイの国籍を持つため、結婚制度を利用することはできます。

ただ個人的には「結婚はあくまでロマンではなく契約だと思います」と冷静です。

「今はまだ自分の結婚に現実味がないけど、いつかは『法的に保証されたい』という気持ちが生まれるかもしれないです」

愛とはメタファー

フーウェイさんは番組の中で「愛とは個人的な物語のメタファー」という言葉を残していました。その真意についても聞きました。

「何を『愛』と感じるかは人によって違います。個々の家庭環境や経験によって人それぞれ投影される愛がある。そういう意味で愛は幸せだと思える感情の隠喩なんだと思います」

ぶつかり、向き合う

身近な母でも、自分とは愛についての異なる価値観を持っています。

「母はヘテロ(異性愛)の環境にいて、孫ができることが幸せ。昔から『お嫁さんを連れてくるときはイスラム教徒にしなさい』って言われていました。それが母にとって愛なんです」

フーウェイさんは「でも自分は、そのような幸せの形を愛だとは感じられない」と言います。

さらに、同性を好きになって関係を築き、幸せや愛を感じる自分の感情は「いくら言葉にしても伝えることができない」。

「だけど、お互い共に生きて行こうとしたとき、伝わらず、ぶつかり合いながらも、とりあえず向き合い続けることで、お互いが変わっていくのだと思っています」

誰かの希望に

フーウェイさんが番組への出演を決めた理由の1つは「誰かの希望になれば」という思いでした。

「自分はどう批判されてもいい。性的マイノリティーで、移民の親を持ち、複雑な家庭環境で育った自分がここで生きていること、それを知ってもらうことで救われる人がいるかもしれない。そんなふうに誰かの助けになればいいなと思いました」

自身のことを「常に『普通』から外れた環境で育った」と言います。

社会に「バグ」を

子どものころ、学校の同級生が家族旅行など「円満な家族」の話をしているなか、それに共感できない自分がいました。

自分の家族のことを話しても理解されず、「自分の家は『普通ではない』のだ」と感じながら育ちました。

「でもいまでは、『普通』でないとしても幸せもあったと感じられます」

「普通」イコール「幸せ」ではない。「普通じゃない」から「不幸」ではない。

それを知っているからこそ、「『普通』には当てはまらない『バグ』を起こして社会を変えていきたい。社会に『普通じゃない』ものがあると見せていきたい」。

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この記事を書いた人
川村さくら
デジタル企画報道部|withnews編集部
専門・関心分野
人権、差別、ジェンダー、サブカル