京大・吉田寮から寮生が今月退去 「最古の学生寮」は今後どうなる?
〝最古の学生寮〟として知られていた京都大の「吉田寮」。大学との訴訟・和解を経て、3月末に寮生たちが築113年の「現棟」から退去します。大学が補修して再入居する流れですが、どのような工事が行われるのかは分かっておらず、建築としても価値の高い現棟が失われる可能性もあります。
吉田寮ってどんな寮?
「吉田寮」はそもそも、京大の前身である「第三高等中学校」(のちの第三高等学校)で、1889年に建てられた学生寄宿舎の木材が使われています。
京大が創立されたのは1897年。その後、寄宿舎の木材を再利用するかたちで、1913(大正2)年に吉田寮を構成する2階建ての「現棟」と平屋の「食堂」がつくられました。
さらに2015年には地上3階、地下1階の「新棟」が増設され、吉田寮には近年も120人ほどが暮らしてきました。
「自治寮」ってなに?
京大には他にも「熊野寮」「女子寮」「室町寮」といった自治寮があります。
いずれの寮も、施設の所有者は大学ですが、運営は学生らの寮自治会が行うため「自治寮」と呼ばれます。
寮に関することは、寮生たちが会議を開いて話し合って決めます。入寮希望者の面接も寮生が行っています。
そうして維持されてきたのがとても低い寮費(家賃・光熱水費)で、吉田寮の1カ月の寮費は「2500円」です。
低い寮費で暮らせる自治寮は、学生がどんな経済状況でも、平等に学びの権利を受けられるための施設として、重要な役割を果たしてきました。
大学と寮生、なぜ訴訟にまで発展?
そうして多くの学生の学びを支えてきた吉田寮ですが、近年、存続の危機にさらされ続けてきました。
現棟は老朽化しており、寮と大学の話し合いが継続的に行われていました。
大学は、2012年には「補修が有効な手段」と明言。さらに2015年には「老朽化対策が早急に必要であることを認め、補修を継続して行う」「一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」とする確約書を寮と交わしました。
しかし2017年、大学は態度を硬化させて寮との交渉を打ち切り、2018年9月末までに退去するよう通告しました。
そして2019年4月、退去しなかった寮生の一部へ、明け渡しを求めて京都地裁に提訴しました。
2024年2月の一審判決(京都地裁)は、大学の退去通告の前から寮で暮らしていた被告寮生たち14人の居住を認めました。
2024年2月19日の朝日新聞朝刊の社説は「自主自律を重んじ、個性豊かな人材を送り出す。それこそが大学に期待される役割である。管理を強め、強権を振りかざすのでは、自治を守るべき学府の自己否定につながりかねないと知るべきだ」と指摘しています。
その後、大学と、居住が認められなかった一部の寮生が控訴し、訴訟は大阪高裁へ進みました。
2025年8月には和解が成立。2026年3月末までに寮生が現棟から退去して、大学が補修を行い、その後再入居するというプロセスが決まりました。
姿を消す、全国の「自治寮」
吉田寮の現棟は、日本建築学会関西支部や建築史学会が「保存要望書」を出すほど、建築としても価値が認められているものです。
しかし、大学が行う補修の内容は明らかになっていません。今後、現棟がどんなかたちになるのかは不透明なままです。
国立大学の「法人化」以降、予算の縮小が続いており、全国の国立大でも自治寮が次々廃止されています。
判明しているだけでも、2023年には金沢大、2024年には静岡大で自治寮が姿を消しました。
吉田寮は「国内最古の学生寮」として特に知名度が高いだけでなく、「地域に開かれた大学」としてのシンボルでもありました。
「自由の学風」シンボルだった吉田寮
毎年5月ごろに開催される「寮祭」では、誰でも入場できる食堂でさまざまな催しが開かれてきました。
KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)のサテライト会場になるなど、寮生だけでなく、学生、教員、地域住民が参加したり企画を運営したりでき、地域の文化発信の拠点のひとつにもなってきました。
2025年の寮祭のライブで演奏した京大の細見和之教授は、「京大は建物を壊してでも、土地を『有効活用』する方向を目指しているようです。しかし吉田寮は、それ自体が京都大学の商標のような役割をずいぶん果たしてきました」と指摘します。
「京大は『自由の学風』と『対話の精神』を売りにしていますが、そういうイメージを作り出すうえで吉田寮が果たしてきた役割は限りないと思います」と話しています。
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