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野性の下僕/Novel by ちころ

野性の下僕

7,665 character(s)15 mins

現代パロディ
ヒモ(?)槍×官能小説家弓

privatterより再掲。突発的に薄暗いエロスを書きたくなったので、そんな感じのテイストです。

卑猥な単語や性交を匂わせる表現などの軽度な性的描写を含みます。

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 ぽつりぽつりと街灯があるだけの道を、全身に黒を纏った男が独り歩く。
 歩みに合わせて、ガサリ、手にしたビニル袋の内側で幾つかの酒が外袋と擦れる音。その重みからこの後の心地好い酔いを想像した彼は、周囲に誰も居ないのをいいことにくつくつと笑った。静謐な夜の空気が喉奥から生み出された振動に犯され、甘く深い溜め息のように震える。

 男は名をエミヤといい、この街ではちょっとした有名人である。
 まあその理由は些細なことだ。やれ老婦人の荷物を自宅まで持って行ってやっただの、迷子犬を見つけ家を探してやっただの、道路に飛び出して車に轢かれかかった小学生を助けてやっただの。
 そんな"良い人"のテンプレートのような事をしていれば、街中の人が彼を知らぬわけがない。商店街を歩く度に贔屓にしている店々から声を掛けられる。近所の住人は老若男女を問わず見かければ笑みを向ける。
 彼の一見冷酷に見える容貌に反し、その実穏やかな人柄もそうさせるのだろう、今日も酒屋へ寄るといつもの礼だと、買った数と同じだけの酒をビニル袋へと詰め込まれたのであった。先日急に腰を痛めた主人の代わりに品出しを手伝ってやったのを頭の端に思い出したエミヤは、礼を言って素直に受け取った。
 生憎ながら彼らの好意は男へ通じていない。どれも本人としては当然の事をしただけだと思っているので、買い物をする度に添えられる礼やおまけにも、それで経営は大丈夫なのかと無用の心配をするだけだ。この男、人の悪意には敏感であるが、人の好意にはてんで疎かった。

 さて、そんなエミヤであるが、街中の人々には決して言えない秘密がある。それは彼の生業。
 平日の昼間にも買い出しに出る彼に、人々はデイトレーダーだノマドワーカーだ高等遊民だと、様々な憶測を巡らせているが真実はそれほど高尚なものではない。もっと卑猥で俗物的なもの。
 男と女の交合いを赤裸々に綴り、読者に淫靡な夢と肉欲の衝動を芽吹かせる──官能小説家だ。
 学生の折に趣味と己が性癖を兼ねて始めた執筆活動が不幸にも軌道に乗って、今ではそれだけで食っていけるようになっていた。大きな賞など取れる身分ではないが着々とファンは増えているようで、有り難くも細々とした連載と単行本を幾つか世に出させて頂いている。

 今日はまたひとつ原稿が仕上がり、担当と次作の打ち合わせを行った帰りだ。
 相変わらず贔屓にしている喫茶店の紅茶は美味であったし、新作は担当編集者に絶賛された。帰り道、普段は滅多に飲まないこれらを買い漁ってしまうほどに。
 足の無意識に任せつつ脳内で次回作の構想をつらつらと並べているうちに、エミヤは自宅へと辿り着いていた。それなりに値の張るマンションの七階角部屋。独り暮らしにはやや持て余すそこがエミヤの塒だ。
 鼻歌を奏でそうなほど浮かれ気分で玄関を開けると、解錠の音に気付いたんだろう、美丈夫が室内から顔を出した。後ろで長髪をひとつに括った彼は紅色の瞳を薄暗く輝かせ男のことを迎える。
「おかえりさん、エミヤ」
「ただいま。いい子にしていたか」
「俺が何時いい子で待ってたって?」
 そう言って出迎えた男はクスリと笑い、長い青髪を翻して奥へ戻って行った。揶揄うわりに移り気な男だ。エミヤは小さく笑ってから後を追うべく草臥れた皮靴を脱いだ。
 先に述べたもの加えもうひとつ、決して言えない秘密がこの男。
 男はランサーと言う。エミヤが飼っている犬であり猫だ。無論、生物学上の部類ではホモ・サピエンスであるが、こうして忠犬よろしく家主の帰宅を待つこともあれば、気紛れにエミヤの家を出ていって十日ほど音沙汰が無いのもままあること。本名も住居も年齢も知らない美しい男を、エミヤは愛玩動物として愛でている。……こんな肉食獣のような男を愛玩動物とは。我ながら可笑しな話である。
 玄関からすぐの洗面所で手洗いうがいを済ませ、己の城であるキッチンで食物庫と向かい合う。ペットにさっさと餌を準備してやらねば。
「なぁ、今日の飯は?」
 ほら、言わんこっちゃない。ガサガサと袋を漁る音に反応した獣が、滅多に来ないキッチンへと顔を出した。
「家を出る前に仕込んでいたラタトゥイユが食べ頃だな。あとはほら、土産だ」
 半分を冷蔵庫に仕舞い込み、残りを袋ごとランサーにくれてやった。半透明のビニルを覗き込む顔が喜色に染まる。男の好みに合わせ薫り高いエールや上等なウィスキーを選んでやったのだから当然だろう。
「随分買い込んだじゃねえか。お前さんにしては珍しい」
「半分は気のいい店主のオマケだがね。夕餉の準備をするからリビングに戻りなさい」
 どうせ躾のなっていない犬のことだ、待てはそう長く出来ないだろう。まずは肴からだと、黒いエプロンを慣れた手付きで己の体に纏わせた。



 保温調理していたラタトゥイユ、常備菜の揚げナスの甘辛煮、ハーブソーセージのチリビーンズといったアテを先に飲み始めたランサーにくれてやって、夕食の準備を進める。まあ今日は食事というよりも晩酌が主、腹を空かした大食漢のためメインのもう一品を用意すれば充分だろう。
 塩コショウでしっかりと下味を付けた牛もも肉の塊に強火で焼き色をつける。真っ赤な筋肉が加熱され、濃い赤茶色に変わっていく。オイルと赤身肉がフライパンの上で奏でるジュージューという焼き音、鼻を擽る香ばしい匂い。エミヤの目元が僅かに綻ぶ。
 これを食卓に運べばランサーは少年のように喜び箸を伸ばすだろう。日頃は見目の秀麗さも相まって達観した雰囲気が先立つのに、あれは時々、ひどく幼い顔をする。
 二十半ばから後半、己とそう年の離れていないだろう彼は実に美味そうに飯を食らうから、料理が趣味のエミヤにとってよい食い扶持だ。こうして良いことがあった日だけでない、ストレスが溜まったり筆が進まない時も、二人分には多すぎるくらいの食事を用意しては半分以上をランサーに食わせていた。
 美味そうに食うだけではないのだ。食事という行為は生きることと直結する。己の生み出したものがランサーの生に繋がるというのは気分がいい。
 それに、とエミヤは口元に歪な笑みを作る。
 それに食事時の彼は見惚れそうな程の"雄"なのだ。
 存外に綺麗な箸使いで皿から摘まみ上げ、美しい口を豪快に開ける。そこから覗く赤い舌はなんとも卑猥で。閉じられた中では真白いエナメルが有機物を咀嚼する。分解のため腺から込み上げる唾液と共に細切れにされた食物を内へ飲み込む。胃へ運ぶ途中にうねる喉仏など、己が彼への供物に成りたいと思うほど性的だ。
 生を営む淫猥な彼のことを思い出しながらも、手はくるくると動き本日のメインディッシュを完成に導いていた。
 両面共に焦げ無く焼き上げたものを一度取り出し、油と脂が池になっているところへ刻んだニンニク、セロリ、玉ねぎを加え中火でよく炒める。色が変わったら白ワイン、ブイヨンスープ、醤油を適量。
 水分が弾ける音と共に食欲を誘う匂いがキッチン中に広がった。肉をフライパンへ戻し、焦げぬよう裏返しながらもう10分加熱。
 肉というのはどうしてこう、人の欲を誘うのだろうか。遠い昔、人類の始まりが狩猟で生を成していた時代からこの身に宿る本能。歯牙が筋繊維を突き破り、舌が肉の柔らかな質感を捉え、血肉を味わう恍惚。肉を食した時に摂取される脂肪酸が脳で変化したアナンダミドは、至福物質とさえ呼ばれるそうだ。肉食は即ち人類の幸福源であると言っていい。
 古代から続く生の営みといえばもうひとつある。それもこの後、あの男からもたらされるのだと思うと、腰の辺りがジクジクと疼いた。
 ああ、だがその先を追うのはまだ早い。じっくり調理して、最高の状態で皿に盛り付けなければ。
 目線を手元に戻し、肉の真ん中に竹串を突き立て、引き抜く。穴の開いた肉塊から透き通った液体が滲みだすのを確認する。
 うん、これでいいだろう。食欲とは異なる興奮にじわり、口内に唾液が浮かんだ。己もかの男を笑えぬと苦笑して、アルミホイルにその塊を移す。このまま余熱で赤みを保ったまま火を加え、休ませる。
 食べ頃になるのはもう少し後だ。それまで独りで静かに待てをしている獣を褒めてやらねばなるまい。
「よォ、待ちくたびれたぜ」
 リビングへ向かうと既に幾つかの空き缶とウィスキーのボトルを開封したランサーが、横柄な態度で待ち構えていた。ソファを背に片膝を立て紫煙を燻らせる彼は、こちらには目もくれず、ツマミの乗った皿を少しだけエミヤの前へ移す。まだ空いた物はないからこの男にしてはゆっくりとしたペースで飲み食いしていたらしい。
「……先に始めているのだから待ってはいないだろう」
「分かってるくせによく言うぜ。キッチンに行かないだけありがたいと思え」
「あぁ、君がここにいてくれたお陰で無事にメインディッシュが調いそうだ。それまで私もご一緒してよろしいかな」
「お前が買った酒にお前が作った肴だ。美味いぞ」
 宴の主のように笑ったランサーがグラスにハイボールを作りこちらへ寄越した。酒の味は好むものの、強いとは言い難いエミヤのためだ。作った本人は小さくなった氷を新しいのと入れ替えて原液をそのまま注ぐ。仕度の整ったふたりは軽く持ち上げて乾杯を模し、薄いグラスの縁に唇を寄せた。
 火の前にいたからか身体は想像以上に熱を帯びていたようだ。薄金色を一口飲み込めば炭酸の爽快感とアルコールの苦味が舌の上で弾けた。熱い清涼感に軽く息をつき、ラタトゥイユに箸をのばす。野菜の旨味と食欲をそそるガーリック、ローリエの香り。まあまあの出来栄えだ。
「で? 何でこんなに酒を買い揃えたんだ」
「これからまた暫く、酒を控えるのでね。休肝日に入る前に一杯やろうと言うだけさ」
「ついでに俺も労わってやろうって算段か」
「たわけ」
 ニヤリと猫のように目を細めるランサーを、エミヤは鼻で笑っても否定はしない。この男の存在が己の生業に深く根付いているのは認めざるを得ない事実なのだから、致し方あるまい。
「旨い飯、美味い酒。しかし、褒美はこれだけじゃあねえんだろ?」
「……君はもう少し段階というものを楽しんだらどうだね」
 男から漂う性の匂いを洗い流そうとグラスを呷る。火照った指先を黄金色の液体と氷が冷やす。掌から体を伝い脳までその冷たさが行き渡り、飲み込んだアルコールが食道を胃を脳を焼く。
 冷と熱を一緒くたにした液体は目の前の男と同じだ。冷たそうな色をしているのに呑み込めば熱く、深く酔いが回る。
 確かにエミヤはランサーという男に腹の底から酔わされていた。それも随分、長いこと。初めてこの野良犬に餌をやったのは何時だったろう。
 ぼんやりそんな事を考えつつ飲み進めていると、またグラスを空けたランサーが次を仕込みながら、「そういや、」と思い出したように口を開く。
「こないだ書いてたヤツが出るんだろ。若造が寝取る胸糞悪いアレ」
 その軽い口振りに思わず眉間へ皺が寄る。
 アレというのはエミヤの著作、その内で最も近くに仕上がった新作だ。まだ出版まで日はあるものの編集者からの評判も上々。
 物語は農村から飛び出してきた若者が、血縁を頼りにとある夫婦の元へ転がり込むところから始まる。都会での暮らしを何も知らぬ若者は優しく接する妻に心惹かれてゆく。しかし彼女にはひとつ悩みがあった。年の離れた夫との間に子が出来ぬのだ。義理の父母に冷たく扱われる女は、若い男との関係を疑った男に暴力を振るわれ、日に日に衰弱していく。顔に青痣を拵えた彼女を助けるため、子を成そうと若者は女の柔い四肢を抱く──
 官能小説とは単に姦濫であれば良いワケではないのだ。男女の痴情、淫靡な雰囲気と共に人間の憎愛を描き切らねばならぬ。エミヤは作家としてそうあろうと思っている。
 仕上がったのを一番に読ませるのは担当ではなくこの男だ。その都度「興奮した」だの「今すぐお前にぶち込みてぇ」だの言うくせに、本心では胸糞悪いなどと思っていたとは中々に笑えない冗談だ。今回も読んで早々、肉欲を顕に私を犯したのは何処の誰だったか、忘れたとは言わせない。
「ほう? 君は随分アレが気に入っていたと思ったのだが。お気に召さなかったか」
「いや、相変わらず気が狂いそうなほどエロかったがな。ひとつ我慢ならんのは、お前が人妻のように愛されたいと思ってることさね」
 己の著作が即ち肉欲と通じていることを指摘されても否定は紡げない。また一口アルコールを飲み込んで、すぅと目を細める。
「それが何か、いけない事かね?」
「お前を犯すのは俺だ。俺以外の奴に犯されるのを少しでも脳裏に描いたというのなら、巫山戯た事を考える余裕もないくらい、手酷く犯してやる」
 男の三日月を描いた口元、薄くひらいたそこから覗く赤い肉に視線が奪われる。既に酒は含んでいないのにエミヤの喉はいやらしい音で鳴った。
 この男の言う"手酷く"は逆。痛みを覚えるほど強烈な快感は、エミヤにとってむしろ褒美だと思えるものだ。だからこそ、こういう不機嫌な顔をした彼の施すセックスはひどく優しい。焦らして、溶かして、甘やかして、それはもう止めてくれと泣き叫びたくなる程に。
「……勘弁願おうか」
「あ? 否定しないんだから仕方ねえだろうが」
 俺としちゃどっちでも構わねえんだが、などと恐ろしいことを口走るランサーにわざとらしく肩を竦める。
「他人の妻というのは唆るだろう? それに、私は君に強引に奪われたいんだよ。誰かのモノになるのは業腹だが、その為ならば仕方あるまい」
「……」
「処女だった頃を忘れるくらいに凌辱された女が、新しい男にその内側を晒す。淫らに熟れた四肢は恥じらいながらも無垢には戻れないのさ。初めて知った本当の恋に心奪われても、犯された身体は既に狂おしい肉欲を知っている。男はその女を己のものにするため必死になって腰を振るんだ。それこそ手酷く、な」
 そうだ。如何に外面を取り繕おうと、一度雄を受け入れた胎は純潔には戻れない。目の前の男を喰らおうと、みっともなく、じくじくと疼く。
「だから君は意図せず私の願望を叶えているのだよ。あぁそれなら確かに、褒めてやらんとな」
「ふうん」
 あぁ、とエミヤは内心溜息をつく。どうやら今日は酔いが回るのが特段早いらしい。普段思っても言ってやらぬことさえ口にした気がする。
「……もういい頃だろう。メインディッシュは君好みに誂えたから、機嫌を直してくれよ」
 主人の不満げな色を反射した美しい青髪を掬い上げ、うやうやしく唇を寄せる。乙女ならほぅと見惚れるだろう仕草もランサーにとってみればそよ風に吹かれた程度だろう。事実青年は気にした素振りもなく、琥珀色の液体を飲み込んでいた。



 一通りの食事を済ませた後は残った酒を緩慢に飲み進める。ランサーはというと、狙い通りに働いたローストビーフを食べ終えすっかりご機嫌だ。
 従順だったかと思えば気ままに振る舞う。嗜虐心を顕にしたかと思えば子供のような顔で笑ってみせる。きっと裏表ではない、この男は気まぐれと本能で使い分けているのだろう。不思議とエミヤは、それが嫌いではなかった。野性だ。この男には己のような唯人には見えぬ秩序があるのだ。瞳で語り合う獣のような。
 獣はエミヤの仄暗い羨望に気付いたのだろう。次に喰らうべき獲物へ舌舐めずりをしながら問うた。
「なあエミヤ、今夜はどんな薄暗いセックスをご所望だ?」
 ランサーの瞳は安っぽい蛍光灯の光を反射して深い色で輝き、奥に湛えた情欲を隠そうともしない。血肉を思わせる紅に、エミヤもつられて体温が跳ね上がるのを感じた。
 しかしここで直ぐに応えてやっては何時までも待てが出来ない狗のままだ。野生に食い荒らされるのと同様に、野性を飼い慣らすのにも得も言われぬ背徳感がある。結局のところどう転がってもエミヤにとって悦しか生まぬのだ。そんな自分にも可笑しさが込み上げ、鼻で笑って片目を閉じる。
「人を欲求不満のように言うのは止めろ」
「あぁ、そうだな。お前さんが欲求不満な訳がねぇ。原稿が上がってここら、毎晩のように抱いてやってるんだからな。それに」
 斜向かいに座した男がテーブルに肘をつきこちらを見上げてくる。全てを知っているという顔で。口角を上げ続く言葉を口にする。軽蔑と欲情とを一つにした声色で。
「それに、万人の目に届いちまうような所で、俺にして欲しいことを赤裸々に綴ってるんだもんなァ…… なあエミヤ、テメェのマスターベーションで何人の男が抜くと思う? テメェの犯されたい願望を何人の男が知り、何人が下卑た妄想をし、右手で性を散らすんだ?」
 酒と色に掠れた声は、エミヤの鼓膜を犯す。耳から脳へ、脳から背骨を通って腰骨へ、脚へ、指先へ。じんわりと快感が染み入ってくる。理性を侵すように、蝕むように。
 エミヤの欲望は紅の瞳に絡め取られてしまった。ぐぅと喉が鳴ったのはどちらだったか。さらけ出せと謳う瞳に急かされるがまま、猥りがましい欲望を口にする。
「……喉の、奥。嘔吐くほど奥まで、君を飲み込みたい」
「喉だけでいいのかよ。お前の事だ、カラダもとうに準備出来てるんだろう?」
 淫らな肉体を見透かされて背筋に甘い痺れが走る。そうだ。家を出る前、まだ日の高いうちから洗浄し、蕩けるほど解した後膣が疼く。でもその前に彼の肉を味わいたいのだ。脳が揺れるほど濃い雄の匂いを、膨張した海綿体の感触を、快感に誘われ浮き上がるカウパーを、鼻先に擦れる陰毛を、熱に浮かされた男の顔を、卑猥な水音を。五感の全てで味わいたい。
 不意に男の手がエミヤの頤(おとがい)を持ち上げる。緩慢な動きで立ち上がった男の股座が目の前にくる。視線は絡まない。既にエミヤの目はやわく勃起した雄に捕らわれている。早く。これを。
「俺ので口ん中いっぱいにされて」
 じゅわり、唾液が溢れる。満たされたい。
「上顎の弱いとこも、柔らかい頬の肉も、舌の付け根も、息が出来ないくらい押し込まれて」
 無意識に喉奥が下がる。もっと奥まで。
「胃の中身までつられて出そうなくらい、ひと思いに引き抜かれて」
 胃酸の苦みを思い出す。苦しいほどに。
「口だけで無様にイったら、グチャグチャの服全部脱がされて」
 腰が揺れる。君の性を、全身で。
「ヒクつく穴に、舐めしゃぶったコレをぶち込んでほしいんだろ?」
 後頭部を掴んだ手にグッと引き寄せられ、眼前に彼の性器が迫る。もう、もうダメだ。己が内に、猛る肉棒を呑み込みたいと思ってしまった。

「興奮してんじゃねえよ変態」

 ああ、待てが出来ないのは私の方だったか。



Comments

  • わんわんお
    November 23, 2024
  • August 19, 2023
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