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アンフェでは絶対に辿り着けない女子枠問題の本質

割引あり

 アンチフェミニストの鳴き声は季節によって変わる。今の時期は「ジョシワク」が彼らの鳴き声だ。ギリありそう。アフリカの鳥とか。

 さておき、アンフェのことなので当然、彼らの主張する女子枠の問題とやらは全て妄想に過ぎない。事実を言い当てているところはひとつもない。彼らの妄想とは違い、現状の女子枠が差別として違憲になりそうにはないし、女子枠で入学した学生の能力が劣っているわけでもない。そして、女子枠は (残念ながら) 必要だ。

 しかし、アンフェでは一生辿り着けないところに、私は女子枠の「本当の問題点」を見出している。

 今回はアンフェの妄想の中にしかない女子枠を破壊しつつ、真の問題点を指摘して本当に女子受験生と学問の発展に寄与する女子枠のありかたを主張したい。

アンフェの女子枠被害妄想

 女子枠に問題点があると書いたが、私はアンチフェミニストがSNSで垂れ流す種々の妄想に賛同するわけではない。そのことを明確にするためにも、まず、彼らの女子枠被害妄想とでもいうべき主張を粉々にしておく。

 なお、ここで女子枠と言った場合、特段の保留がなければ高校や大学といった学校の受験における女子枠を指すこととする。

妄想①:女子枠によって男子受験者が機会を失っている

 女子枠被害妄想の第一は、女子枠によって男子受験者が合格の機会を不当に失っているというものだ。まぁ、女子に限定した合格枠を作れば、その分男子受験者が合格する機会がなくなるので、女子枠が全く機会を奪っていないというわけではない。

 とはいえ、客観的事実に基づけば、女子枠は男子受験者にほぼ影響を与えていない。枠が少ないからだ。例えば東工大の女子枠は全募集枠の14%に過ぎない。

 東京工業大学は、2024(令和6)年4月入学の学士課程入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において女性を対象とした「女子枠」を導入します。
 2024年4月入学者の入試では4学院(物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)で新選抜を開始し58人の女子枠を導入、2025年4月入学者の入試では、残りの2学院(理学院、工学院)で新選抜を開始し85人の女子枠を導入します。
 最終的に、全学院の女子枠の募集人員は計143人になり、これは学士課程1学年の募集人員1,028人の約14%に相当します。

東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の「女子枠」を導入

 もちろんどの程度の割合を多いとするか、あるいは少ないとするかは評価の問題で個々人によって判断は分かれる。だが、東工大の2024年時点での学生の男女比では、女子学生は全体の1割程度しかいない。仮に女子枠の合格者が全員そっくりそのまま男子と入れ替わっても女子の割合は2割から3割にしかならない。実際にはこれまで通常の枠で合格していた女子受験者の多くが女子枠で合格するだけに思われるので、さほど大勢に影響はないだろう。これを多いと主張するのは無理がある。

 なお、特段エビデンスがあるわけではないだろうが、女性の割合が少ない組織ではとりあえず3割を目指そうという風潮がある。東工大が女子枠を1割強設定したのは、それがそのまま女子学生の増加に繋がれば男女比で女性が3割になると考えたからかもしれない。

 もうひとつ受験とは異なる例を出すと、大学教員の女性限定公募が挙げられる。以前アンフェが大騒ぎした際に調べたことがあるが、その当時で女性限定の公募は1%と少々しかなかった。これが男性のキャリアに影響があると主張するのはいくら何でも難癖というほかない。

 このように、客観的な証拠は、女子枠は広まりつつあるものの大勢を男子受験者の人生に作用するほどではないことを示している。

女子枠よりはるかに多い男子枠

 その一方、「男子枠」とでもいうべきものは女子枠をはるかに超えて広がっている。

 そもそも、我が国は医学部が長年女子受験者を差別していた。これは、言い換えれば、医学部の受験すべてが薄っすらと男子枠だったということだ。たった1割しかない女子枠と違い全て男子枠なのだから、女子受験者への影響は計り知れない。しかも、医学部はそのことを明らかにしていなかった。

 もっとも、私立中学校の募集人員ではさらに露骨な差別がまかり通っている。例えば、関西学院の中等部では、女子の募集人員は35名で男子の65名の半分しかない。その結果、女子の合格最低点は男子より20点も高いという不条理が起きている。募集人員の3分の2が男子枠なのだから、東工大の女子枠の比ではない。

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 ほかにも、慶応義塾中等部や早稲田実業といった名前を聞いたことがある私立中学も、男子枠を女子の倍に設定している。にもかかわらず、女子枠で合格した学生を侮辱するアンフェたちが、下駄を履かせてもらって私立中学校に合格した男子生徒の成績を侮辱するのを見たことはない。

 こうした私立中学校での「男子枠」は、そこだけを見ても差別的だが、その後の進路にも影響することは想像に難くない。多くの私立中学校は高校や大学も併設するため、生徒の多くはエレベーター式に進学していく。その結果、中学受験で作られた差別的構造が大学まで温存されることになる。また、単純に男子の方が進学校に入りやすいならその後の進学しやすさにも影響があるだろうし、社会風潮的にも男子はエリートコースを進むべきで女子はそうではないということになりやすい。

 百歩譲って、現状の女子枠が男子受験生に大きな影響を与えていると主張することはできなくもない。しかし、そう主張するならば、同様にこうした「男子枠」が女子受験生により大きな影響を与えていることは認めなければならない。それを認められないのならば、その女子枠批判はただ女性差別の欲求から現れるものに過ぎないと断言できる。

妄想②:女子枠は違憲である

 どこかの誰かが振り付けたことでアンフェたちに一気に広がった妄想として、女子枠が法の下の平等を定める日本国憲法に違反しているというものだ。

 こうした主張の根拠となっているのが、アメリカにおいて大学受験のアファーマティブアクションが違憲と判断されたという事例だ。アメリカの大学の中にはアフリカ系などの受験生が受験で有利になるように設定しているものもあったが、それが平等に反するとされたのだ。

 この主張がバカバカしいのは、まず、アメリカの判決をそのまま日本に持ってこれると思っているところだろう。念のために指摘しておけば、日本国内で有効なのは日本国憲法であって合衆国憲法ではない。しかも、アンフェたちは国連や欧米からの批判には盛んに内政干渉だのと文句を言っているにもかかわらず、である。結局、彼らは自分が気に入るかどうかのお気持ちでしか主張の是非を捉えられない。

 アメリカの事例で気を付けなければならないのは、アファーマティブアクションに対する違憲判決が純粋な平等論の観点から出たのではなく、右派・保守派によるバックラッシュの思惑から策動されたものだということだ。南川文里の著書『アファーマティブ・アクション 平等への切り札か、逆差別か』では、アメリカの保守派が黒人に対するアファーマティブアクションを攻撃し妨害するために、アジア系の学生を探し出して訴訟を起こす様子が描かれている。確かにアメリカにおけるアファーマティブアクションにはアジア系といったほかの民族が無視されている問題はあるものの、保守派がアジア系の国民の人権を尊重するために裁判を起こしたわけではないことは明らかだ。

 そして、アンフェたちの知的能力の限界を示唆するのが、彼らは日本の裁判所が「女子枠」というものの大枠すべてに対して判決を下すと考えているらしいということだ。仮にある女子枠制度を裁判に持ち込んだ場合、裁判所はその制度が法に反するかどうかは判断するだろう。だが、「女子枠」の違憲性を判断するわけではない。ある女子枠制度が違憲だと判断されても、別の女子枠制度までそうだということになるわけではない。それは逆もしかりだ。

 実際のところ、女子枠が違憲となるかどうかはケースバイケースというほかない。極端な例を出すならば、既に男女比が半々という大学において、合格者の6割を女子受験生に限る制度を導入するような無茶をやれば違憲になる可能性は高い。一方、男女比が9:1のような大学で10名だけの女子枠を実施したところで違憲になる可能性は低いだろう。

 日本国憲法は法の下の平等を定めているが、それはあらゆる場面とあらゆる側面で人間をすべて同じように扱うことを要請しているわけではない。そうであれば、通常の受験制度も選挙権の年齢制限も差別だから違憲ということになってしまう (むろん、こういう制度への根本的批判はあるだろうが)。違憲と判断されるかどうかは、その制度や行為の目的や程度、方法の合理性などから総合的に判断されるにすぎない。

 もちろん、先に挙げた例のような、男女比が9:1のような大学で10名だけ設定する女子枠のようなものも違憲と判断される可能性が皆無ではない。だが、裁判所がそう判断するなら、(同じ基準で同じように判断する場合) 先に挙げた私立中学校のような例も違憲と判断するはずだろう。もしそうなるなら、別に違憲判断も悪いことではないのかもしれないが。(ただし、そもそも憲法を守る主体は基本的に行政のはずなので私立中学校の制度に違憲判断があるのかという別の問題はある)

妄想③:女子枠はそもそも不要である

 アンフェたちは、そもそも女子枠が不要であるとも主張する。だが、残念ながら女子枠は必要だ。

 なぜ組織に一定数女性が必要なのだろうか。それは、組織内の女性たちへの被害を防ぐため、そして組織内の男性たちの加害 (あるいはくだらない失敗全般) を避けるためである。

 女性への被害についてはさほど難しい話ではない。組織内での少数派は攻撃の対象にされやすいので、一定のボリュームが必要だというだけ過ぎない。アンフェたちは男を加害者と決めつけていると喚くが、彼ら自身の振る舞いを見る限り警戒するなというのは無理な話だ。女性の被害を防ぐ必要があるという主張は、アンフェが女性を攻撃する限り説得力を持ち続ける。

 そして、男たち、というかマジョリティの失敗を防ぐうえでも女性、ひいては多様な人々の存在は組織に重要である。別にマイノリティはマジョリティの教材となるために存在するわけではないが、学問が元来的に多様な視点を必要とすることを考えれば、大学に様々な属性の人がいることは学問自体の利益にもなる。

 ここで分かりやすく興味深い議論として、古賀史健の著書『集団浅慮 「優秀だった男たち」はなぜ道を誤るのか?』を紹介する積読チャンネルの動画を紹介したい。

 『集団浅慮』はフジテレビで発生した中居正広を中心とする性暴力問題を論じた本である。そこで、フジテレビの社員という就活時点では優秀だったはずの人々が愚かな決定を下した理由として、組織の同質性が挙げられている。フジテレビに限らず、日本企業の重役は男ばかりだ。

 では組織の中に女性を入れれば解決するかといえばそうとは限らない。動画の再生時間40分ごろの話が分かりやすいが、著者は組織に少数のマイノリティがいてもかえって同質性が強まると指摘する。本来男性も多様な側面を持つはずなのに、少数の女性が組織に入るとそれとの対比で「男性」という一様な集団に捉えられてしまうからだ。

 学問が発展するには様々な視点からの議論が必要である。それは単に様々な属性の人々との対話が必要というだけではなく、同じ属性に見える人々の間でも違いがあることに気づき、その違いから議論を発展させていくということでもある。それができていない現状、女子枠の必要性は否定できないだろう。

 (なお、全くの余談だが、『集団浅慮』というタイトルの書籍にはアーヴィング・ジャニスによるものもある。こちらの方が専門的に集団浅慮を扱っているのだが、現状では古賀の著書の方に用語を収奪されてしまっている状態だ。古賀は『嫌われる勇気』の著者でもあり、これはアドラー心理学ブームを作った書籍であるが、アドラー個人の考えでしかないものを心理学と呼称するのはかなり違和感がある。全体的に、古賀は心理学にフリーライドするかたちで商売をしている印象が拭えず、腕のあるライターなのだとしても肯定できない人物である)

女子枠の真の問題

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