開幕前に見えた序列 中日・中西が軸…セ新人王レースに潜む“伏兵”
圧倒的な長打力
3番目に注目すべきは、昨年のドラフト会議で目玉だった立石正広(阪神)だ。リーグ戦では通算15本塁打、3年秋に出場した明治神宮大会では大会新記録となる10安打を放つなど大学ナンバーワンスラッガーとして注目を集め、3球団が1位競合の末に阪神に入団した。 最大の武器はその圧倒的な長打力で、一昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿ではフリー打撃で広い坊っちゃんスタジアムの場外へ運び、スカウト陣からも驚きの声が上がった。合同自主トレ中に右脚の肉離れで離脱し、キャンプ期間中の実戦デビューはお預けとなったが、これもマイナスばかりではないようだ。 「阪神のドラフト1位はマスコミの注目度が非常に高く、それだけで大きなプレッシャーになります。ただ、怪我で出遅れたことで自分のペースを保てた面はあるでしょう。練習での打撃を見る限り、佐藤輝明や森下翔太の1年目と比べても遜色ありません。最初からバリバリやっていればさらに騒がれ、相手のマークも厳しくなる。首脳陣は無理をさせず、段階的に仕上げていく方針のように見えますね」(阪神球団関係者) 全国区の注目を浴びる阪神だけに、過去にはそのプレッシャーに苦しんだ選手も多かった。立石にとって“静かなスタート”はむしろ追い風になりそうだ。
思いがけない伏兵が
展開ひとつで主役に躍り出る“ダークホース”として、桜井頼之介(東北福祉大→中日2位)、平川蓮(仙台大→広島1位)、勝田成(近畿大→広島3位)の3人を挙げたい。 桜井は東北福祉大のエースとして活躍し、4年春の全日本大学選手権優勝に貢献。小柄ながら高い制球力とカットボールを軸に試合を組み立てる。2月22日のロッテ戦では2回無失点2奪三振と好投した。現状はリリーフ起用が有力だが、松山晋也や清水達也ら勝ちパターンの投手が出遅れており、重要な場面を任される展開も考えられる。 平川は強打のスイッチヒッター。4年時に大学日本代表へ選出され、日米大学野球では立石とともに4番を務めた。2月28日の楽天戦では右打席から右中間へ本塁打を放ち、長打力をアピールしている。元投手で外野守備に課題は残るが、打撃で結果を出せばレギュラー争いに割って入る道は開ける。 勝田は身長163cmと12球団で最も小柄ながら、抜群の守備力とパンチ力を兼ね備えた二塁手だ。大学日本代表候補合宿を視察した侍ジャパンの井端弘和監督が印象に残った選手として名前を挙げ、注目を集めた。2月21日のDeNA戦でいきなり3安打を記録し、高いミート力を示している。長年セカンドを守ってきた菊池涼介の後継候補として期待は大きい。 セ・リーグはルーキー勢が中心となるが、資格を残す2年目以降の選手にもチャンスはある。昨年は開幕前に本命と目されていなかった荘司宏太(ヤクルト)が中継ぎで台頭し、新人王に輝いた。今年も思いがけない伏兵が主役へと駆け上がる展開があっても不思議ではない。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部
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