宵のうち。萬燈の書斎は古いランプの光に包まれていた。比鷺は、かつての少年の面影を残しつつ、細く引き締まった体躯を黒い着物に纏っていた。彼の瞳は緊張を宿し、微かに輝く。萬燈は机に向かい、筆を走らせていたが、比鷺の気配を感じ取ると、ゆっくりと顔を上げた。
「したくなってしまいました」
比鷺の声は、夜風のように滑らかだった。
萬燈の視線が比鷺の首筋をなぞる。そこには紅斑が、萬燈の愛欲の残滓のように赤く浮かんでいた。
比鷺は萬燈の傍らに立ち、静かに着物の紐を解き始めた。布地が肌から滑り落ちる音が、静寂を破る。萬燈の喉がわずかに動いた。指先が比鷺の肩に触れ、ゆっくりと背中を撫で下ろす。比鷺の肌は、内側から熱を帯び始めていた。
「今夜も?」
萬燈の言葉は挑発に近く、比鷺の心臓を刺す。比鷺は目を伏せ、頷く。萬燈の手が比鷺の腰を引き寄せ、比鷺を見上げた。
比鷺の唇が萬燈の首に触れ、湿った熱が伝わる。萬燈は応じ、比鷺の体をさらに引き込み、二人の夜を一つの糸で繋ぐ。朝が来るまで、影は静かに織り続けられた。
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