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きっとこの略奪は許される/Novel by 紅月@ゆっくり更新

きっとこの略奪は許される

14,479 character(s)28 mins

「この者を愛することを誓いますか?」
「誓わねぇよなぁ?」
秘めやかな結婚式に大きな音を立てて乱入してきたその男は青と白の美しい男だった。男に驚く多くの者を尻目にシルバーのフロックコートの裾を美しく軽やかに揺らしながら目を丸く見開いて固まる花嫁に近寄っていく。花婿はまだ乱入者である男に対してまだ何も対処できず、男は堂々と花嫁の左手を取ると白の手袋を外してその薬指に細いリングを滑らせる。そのままその手を持ち上げて指先に口付ける。
「俺にその愛を誓え」
「なにを今更」
「なら、俺が誓ってやる。二度と手放すものか」
男は花嫁のベールをめくり、紅く濡れ色付くその唇に誓いのキスを捧げて掬うように抱き上げると、くるりと花婿に背を向けて花嫁を連れて立ち去っていく。後日、とある三姉妹の行方不明を告げる記事が新聞の片隅に載った。

(´-`).。oO(今更ですがFateに沼りましたよ)

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自分とランサーは恋人同士で同居もしている結婚も視野に入れた仲だったはずだ。だが、元々剃りが合わず、犬猿の仲だと認識していた故もあってか、二人の喧嘩はよくあることだった。それらのきっかけは恐らく些細な事だった。そんな喧嘩が降り積もって山となれば誰だって爆発ぐらいする。売り言葉に買い言葉、煽りに煽って挑発してなんのために二人で同居を始めたのか分からなくなってしまうほどに喧嘩して、勢いで手短に荷物を纏めて飛び出して来てしまったのはアーチャーの方だった。小振りなキャリーケースに収まらなかった私物は仕方なく置いてきたが、それでも当分は帰らない意志を込めて処分できるものは処分して、当面必要なものは全て纏めて持ってきた。それで、今向かっている先は自分の姉であるエミヤの自宅である。姉は皮肉を言うが家族には優しい。親に先立たれた姉妹の面倒を見てくれたのは少し年の離れた長女のエミヤだった。姉がいなければ露頭に迷って、どうしようもなかっただろう。なにせその時のアーチャーと双子の妹のシロウは中三だったから。姉は社会人三年目だと言っていた。彼女の住むマンションの入り口で、部屋番号を押して多少戸惑ってから呼び出しのボタンを押した。間抜けな呼び出し音が響く中、確認した時刻は夜中の二時だった。

「はい、どちら様で?」
「夜中に、すまない」
「とりあえず上がれ」

短い会話の後にオートロックの自動ドアが開き、閉まる前に足を踏み入れる。ここに辿り着くまでにランサーは追ってくることがなかった。家出先が分かっているから追って来ないのもあるのかもしれないが、愛想つかされたのかもしれない。親しき中にも礼儀ありと厳しく躾けてくれた姉の言葉の通りしていても、駄目なものは駄目だったらしいと苦笑いしかもれない。夜中で人気もない静まり返った建物に自分の足音だけが反響して、それにどうしようもなく泣きそうだった。姉の住まう部屋の呼び鈴を押すと、暫くして玄関を開けて姉が出てくる。その後ろには泣いた跡の残る妹がいた。ああ、妹も喧嘩かなにかしたらしいと思って疑問が浮かぶ。妹の恋人はランサーの双子の兄だ。キャスターと呼ばれる彼は温和であまり感情を荒らげることがなかったはずで、こてりと傾げた自分に妹は苦笑した。

「そこで固まるな、さっさと上がれ」
「すまない。だが、シロウはなぜここに?しかも泣いたのか?」
「詳しくは知らん。ただの喧嘩だとしか言わんからな」
「文字通りただの喧嘩だからな」
「そうか、分かった」
「お前はどうした。真面目が連絡もしないとは珍しい」
「売り言葉に買い言葉で家を飛び出して来てしまった」
「なら、ゆっくりしていけ」

女とはいえ三人もいると手狭な玄関からリビングへと移動すると、妹に出したあまりだろう蜂蜜とブランデー入りのホットミルクの入ったマグを出される。一人がけのソファに座り大雑把な姉が作る唯一と言っていいほど丁寧に作られるものだ。昔の自分達を寝かしつけるためにあれやこれやしてようやっと見つけた味らしく、こればかりは時間をかけて丁寧に作ってくれる。このホットミルクは自分と妹にとって一等好きなものだ。温かいそれに口をつけてホッと一息つくと、自然とこぼれ落ちてしまったものが止まらなくて片手で目を覆う。嗚咽を噛み殺して、俯いているとタオルを頭からかけられて姉の不器用さに思わず笑みがこぼれた。

「シロウ、もう遅いから寝ろ」
「エミヤ姉さんはまだ起きてるのか?」
「仕事があるからな」
「なら、エミヤ姉さんが寝るまで」
「寝ろ、たわけ」

姉と妹の会話に涙も収まってきて、かけられたタオルで顔を拭うと手にしていたマグの中のホットミルクを全て飲み干した。風呂はランサーと喧嘩する前に入っていたが、喧嘩したせいで若干汗臭い。それでもどちらかというと寝てしまいたくて、黙って妹の手を取って姉の寝室に突き進む。待てとか聞こえてくるが、それらを無視して姉のベッドに半ば無理矢理二人して潜り込むと、妹が好んでつける優しいバニラのコロンの香りと姉が好む柑橘系の香りに更に眠気を誘われる。着替えもせず潜り込んでしまったことに妹は一つだけため息をついてしょうがない姉さんだと呟いて大人しく抱き枕になってくれた。ゆるゆると落ちていく意識に姉の寝床を奪ってしまったなとぼんやり思った。

Comments

  • とりめし

    続きをお恵みください!

    December 4, 2018
  • ツキ影
    February 19, 2018
  • 春ト綴

    続きを下さいお願いします!! 続きを!!!!!

    February 19, 2018
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