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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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NAiはコタツで丸くなる

 1.クランハウス-居間


 あけおめことよろー。


 居間でのんびりしている。

 さっさと鍛冶屋に戻りたいところだが、サトゥ氏と約束してメガロッパが原稿作ってくれる手筈になってるからな。果報は寝て待てってヤツだ。


「あけおめ!」


 振袖を着たウチの子たちがきゃっきゃしている。うんうん、可愛い可愛い。和装だと一番似合うのはやっぱりスズキだな。洋モノはスタイルが良すぎて似合わないのかなと思ってたけど、こうして改めて見ると顔かもな。日本人の平たい顔と華美な衣装とのバランスなのか。まぁウチの金髪もそれほどバタ臭い顔立ちはしてないけど。ハーフっぽい感じだ。赤カブトは……派手な髪の色してる割には地味な女だ。特別な属性を持たないから優勝はできないけど常に上位を狙っていくスタイルだな。したたかなやつよ。

 おお、レアキャラのトドマッちゃんも居るじゃねーか。


「レアキャラとか言うなもる」


 ンなこと言ったって事実だろうがよ。週イチ会えるかどうかっつーエンカウント率はエグすぎんぜ。

 ハッ。先生が居間に降りてきた。羽織姿だ。袴は付けてない。おみ足が短くて無理だったのだろう。尊い。


「明けましておめでとう」


 俺は拳をガッと床に叩き付けて素早くひざまずいた。


「謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年も幸多き一年となるよう心からお祈り致します……!」


 先生はつぶらな瞳で天井を見つめている。


「何故だろうか……。とても悪いことをしているような気分だ」


 すぐに気を取り直した先生がお年玉をくれた。やったぁ。

 トドマッが手元のポチ袋を見つめて戸惑いの声を上げる。


「これ私も貰っていいもる……? 別にクランメンバーじゃないのに」


 先生が頷く。


「もちろんだよ。トドマッにはウチの子たちがお世話になっているからね。私からの心付けだよ」


 要らないなら俺が貰ってやろうか〜? 俺は先生の心付けを独り占めしたい。

 俺がちょっかいを出すと、トドマッは素早くお年玉を懐に仕舞った。しばし警戒するような眼差しで俺を見てから、ふと思い付いたように言う。


「コタタマもカレシ自慢大会に参加するもる?」


 えっ、何その怪しいイベント。俺、彼氏とか居ないんだけど……。


「お犬様の主催もる」


 分かった。行くもる。あ、彼氏ってあのカレシか。召喚術師の。

 ふうん。トドマッ。お前、召喚術師なの?


「私は浪士もる。お犬様の理念に感服したもるよ。イベント荒らしを成敗するもる」


 トドマッは自然回帰派の頭だ。種族人間の善性を信じ、悪の心に屈してはならないと訴える不毛な活動を続けている。俺の知らない間にお犬様と通じていたらしい。

 お犬様も魔法職ではないが、ウィザード問題を解決するために色々とやったからな。自慢のペットコンテストを開催してテイマーを強くアピールしたこともある。召喚術師はテイマーの上位職だ。放っておくとドンドン首が回らなくなるお犬様を俺は放っておけない。

 しかしカレシ自慢大会か。まぁ俺にはウッディが居るからな。俺のカレシで謎の発光物体たちを蹴散らしてくれよう。

 で、日時と場所は?

 俺はトドマッから日時と場所を聞いた。

 ほう。プフさんの家庭訪問と同じ時刻か。

 見事にダブルブッキングしたな……。

 いや、イケる。会場は人間の里。女神像が近い。最悪デスルーラすればいい。プフさんもそう長居はしないだろう。一回の面会に時間を掛けてたら回らない筈だ。……いや? そうとも限らない、のか? NAiやら暫定エイリアンのように複数のアバターを同時に操れるとすれば……。

 ウッディ。どう思う?


(それは、もちろん種族による。が、光の使徒を輩出した一族だと言っていたな……。レイド級ならば100体は操れるだろう)


 えっ。100?

 俺ら、リアルとアバターの体動かすので精一杯なんですけど……。


(慣れの問題だ。シンイチ。お前は今アバターの脳を使って考え、こうして私と話している。脳が100あれば100の身体を動かせるのは当たり前のことだと思わないか?)


 ど、どうかな……。正直、自信ないわ。


(そうか。お前たちはハイフレームを持たないからな。感覚的に理解するのは難しいかもしれない)


 まぁ参考になったよ。ありがとさん。

 ……ふむ。プフさんが長居する前提で動くか。俺と連絡を取り合う人員を配置しよう。カレシ自慢大会のほうはトドマッにお願いするとして……。家庭訪問のほうはアットムくんかスズキにお願いしよう。ポチョと赤カブトは、いざという時に備えて待機だ。俺を運んで貰ったりイベント荒らしを抹殺して貰ったりと用途は多岐に渡る。

 という訳なんだが、どうだろう? お前ら予定空いてる?

 ウチの子たちはコクコクと頷いてくれた。


「私たちもプフさんと話してみたいし」


 赤カブトは少し不満げだった。


「……ペタさんのカレシは私なのに」


 しかしウッディは俺の胸中で余裕の態度だ。


(ふっ、愚かな。シンイチのカレシはこの私だ)


 俺のカレシの座をめぐって争うのはやめて!



 2.山岳都市ニャンダム


 アットムくんの予定はどうかなー。

 ささやきで済ませても良かったのだが、年始の挨拶がてらに山岳都市の武家屋敷に向かっている。

 ついでにニャンダム御殿に立ち寄ってもいいかもしれない。あの化け猫様には媚を売っておいて損はないだろう。仮にも俺の元旦那様だからな。二号さんのサトゥ氏には負けたくないという思いもある。

 坂道をえっちらおっちらと歩いていると、通りの向こうからネカマ六人衆が歩いてきた。俺を見つけて嬉しそうな顔をした六人衆がブンブンと手を振りながら駆け寄ってくる。


「ペタ氏ー。ペタ氏ー」


 よーぉ。俺は軽く手を上げようとしてギョッとした。俺の腕が半ばから断ち切られてゴトリと地べたに落ちる。

 刺客か? コイツは凄腕だぜ。いつ切られたのか分からなかった。

 俺は目に力を込めて視野を押し広げるが、ドンと背中に衝撃。乗られた? 俺の視界に入らないよう工夫してる。やるじゃねえか。

 ワンテンポ遅れて六人衆が悲鳴を上げる。


「わぁーっ!?」


 俺はガクリとバランスを崩して片膝を付く。今度は足をやられた。俺は刺客を目で追おうとするが、ことごとく先を行かれる。こうまでまったく歯が立たないのは久しぶりだ。廃人か。それもトップクラスの。

 俺は倒れまいと踏ん張るが、それすら見越したかのように刺客が俺の肩に足を引っ掛ける。くそっ、強すぎる。パンツを見るので精一杯だった。俺の肩を支点にぐるっと回った女が器用に身体を折り畳んで俺の首を跳ね飛ばした。

 この、パンツは……。

 俺の身体がズシャアッと地べたに倒れ伏す。

 六人衆のつんざくような悲鳴。


「ぺ、ペタ氏ー!」

「ペタ氏がやられたっ!」


 メガロッパだ。

 俺を殺害したメガロッパが、俺の上着のポケットにぐいっと紙切れを突っ込む。

 そして、脇目も振らずに駆け去っていった。チラリと見えた耳は真っ赤だった。

 ふわっと幽体離脱した俺は、ダイナミック通り魔の犯行にしばし呆然とする。

 ……お、おぅ。凄ぇな。凄ぇとしか言いようがねえ。いっそ清々しいまでに圧倒されたぜ。

 ダッシュで死に戻りした俺は六人衆と合流するなりメガロッパさんに押し付けられた紙切れを広げた。

 ああ、うん。ョ%レ氏を讃える文書ね。うん、よく出来てる。これなら多分審査に通るだろう。

 六人衆は申し訳なさそうに俺の顔色をチラチラと窺っている。


「な、なんかゴメンね? ウチのメガロッパが……」


 ……いや、いいんだ。気にすんなよ。ウチのとは言うが、アイツは今【目抜き梟】の一員だしよ。お前らに責任はねえ、んじゃねえかな、と思う。

 俺は少し弱気だ。メガロッパさんが俺の殺害に及んだ動機が分からなかったし、残機一つと引き換えにパンチラを拝めるならそう悪くない取引だ。むしろお釣りが出るくらいやもしれぬ。


「あー。んー。す、素直になれないお年頃なのかなぁ。メガロッパは、ほら、ペタ氏のことライバル視してるって言うかぁ」


 あー。うん。あったね、そんな話も。


「あれで健気なのよ。ずっと前の話だけどさぁ。ペタ氏のこと呼び捨てにする練習してるの見たことあるもん」

「あったあった。一人で勝手に照れてたよね。健気だなぁ」


 健気っスなぁ。

 ま、そういうことで。この件はお互い忘れようや。

 それで、今日はどうした? お前ら武家屋敷に寄った帰りか?


「あ、うん。今度さぁ、ウチら特番やるっしょ?」


 ああ、ティナンが映ると放送禁止だもんな。話を通してきたのか。


「それもあるんだけどぉ。ティナンにも放送を見て欲しいんだよね」


 なんで? いや、ずっと疑問だったんだけどさぁ。エッダ戦の検証ってリチェットは何て言ってんの? お前らとしちゃあ、なかったことにしたい黒歴史じゃねーの?


「そういうの考えるのはサトゥの仕事だから」

「俺らはね、ただ数字を取れそうだなって。それだけよ」


 サトゥ氏がゴーサインを出したのか……。てことはリチェットも納得済みだな。単純に【敗残兵】の広告なのかね。エッダ戦は解散の原因そのものだもんな。


「ペタ氏も出る? ウチの特番」


 分かった。出る。

 俺は六人衆のオファーを受諾した。


「早っ。ど、どうしたの? いつもはもっと渋るのに……」


 日時と場所は? 生放送だよな?


「ぐいぐい来る……」

「な、何か企んでたりしますか?」


 企んでないよ。

 俺は顔面をギンギンに黒光りさせて生まれながらのバイプレイヤーであることを強烈に示唆した。

 一緒に6sTVを盛り上げて行こうゼ?

 俺はネカマ六人衆から特番の収録日時と場所を聞き出した。

 なるほどな。トリプルか。

 トリプルブッキングだった。

 ……さ、さすがにキツいか? いや。大丈夫だ。何とかなる。

 俺には査問会という心強い味方が居る。MCはリチェットが務めるらしいが、俺にだけ重点的に話を振ってくることはないだろう。画面の隅っこに小さく顔が映るだけなら、その場面はコタタマシリーズを替え玉にできる。さすがにトークを任せる訳には行かないが……。

 六人衆がおっ建てた6sTV局はスピンドック平原にある。少し遠いが、最悪影武者を立てればいい。我らがクラン【ふれあい牧場】の幻の六人目。モグラさんぬいぐるみの出番だ。

 正月早々タフなスケジュールになりそうだぜ。アットム!




 これは、とあるVRMMOの物語。

 分身ありきのスケジュール。




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[一言] ツンデレ?殺人…あっ
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