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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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ョ%レ氏に贈る詩(うた)

 1.エッダ水道-【提灯あんこう】秘密基地


 新要素の灯火の星は光の化身キーラに操られるファイターたちを解放して仲間にしていくモードだ。どんどん仲間が増えていくワクワク感がスパロボ大戦と似ている。

 もちろんスマブラの話だ。

 仲間たちが俺の助けを待っているのでしばらくはスマブラに専念したいのだが、ウチのAI娘が寂しがると良くないので仕方なく宇宙人が作ったVRMMOにログインしてやってる。感謝しろよ? オーバーテクノロジーだろうが何だろうが新作ゲーム特有の病みつきになる面白さには敵わない。ながらプレイではあるが、ログインしてやってるだけありがたく思って欲しいね。


 このゲームは慣れてくるとアバターとリアルの身体をバラバラに動かせるようになる。

 ゴミブラザーズと崖下で気持ち悪い攻防を繰り広げて吹っ飛ばされた帰りの出来事である。

 俺は小娘どもと一緒にエッダ水道にあるネフィリアの隠れ家にお邪魔した。ガキンチョってのは放っておくとすぐに散らかすからな。ほら見ろ、案の定だ。ゴミ屋敷ってほどじゃないが、あちこちに服が散乱して見苦しいことこの上ない。……このドアノブに引っ掛かってる上着は何ザマス? もしかしてこれで片付けたつもりザマスか?

 小娘どもはぶーぶーと文句を垂れた。


「タマっちウザーい」

「それ借りた服なの。返すねアリガトーってことじゃんか。LINEしてっし効率的っしょ?」


 お前らはそう言うが、事実俺はコレは何だと思ってる訳だ。

 まったく。少し家を空けただけでこれだ。ネフィリアは自分のことはキチッとしてる癖に他人のことには無頓着だからな……。

 俺はドアノブに引っ掛かっていた上着をテキパキと畳みながらトコトコと家宅捜査して小娘どもの粗探しをしていく。

 ……おい、これは何だ。


「食器」

「まとめて洗ったほうが楽だから」

「生活の知恵ってヤツ?」


 それは生活の知恵ではない。怠け者を製造していく工場の一部だ。

 俺はいそいそと腕まくりして小娘どもに宣言した。

 やるぞ。手伝え。


「えー? メンドーい」


 語るに落ちたな。それが本音か。

 俺は繰り返し言った。

 食器を洗います。俺とお前らで。お前らが使って放ったらかしにした食器を。

 俺たちは食器を洗った。まぁこの頭数だ。物の数分で終わる。

 終わった。

 小娘どもに解散を命じて居間に移動する。

 俺がソファに寝転んでダラダラしていると、元気娘のクリケットがマゴットとフリエアの腕を引っ張って居間に入ってきた。ソファでぐったりしている俺を見つけてニマッと笑う。


「タマっち〜。フレンド登録するっスよ」


 ああ、そういえばロストしてそれっきりになってたな。あれ、お前らだけなの? 俺、人望ないのね。


「タマっちと一番仲良しなのは私たちっスからね」


 そうかぁ?

 首をひねる俺に、観念したように溜息を吐いたフリエアが声を掛けてくる。


「タマっちはあんまり友達って感じじゃないかな。小さい頃に遊んでくれた親戚の人って感じ」


 そいつは光栄だね。

 フリエアと適当に話してると、ちんちくりん二号のマゴットが無言で俺の隣に座った。そっぽを向いて俺と目を合わせようとしない。

 何をむくれてんだよお前は〜。


「む、むくれてねーし」


 いや、むくれている。何なんだ。てっきりしばらく放ったらかしにしてたから怒ってるのかと思ったが、どうもそれだけじゃなさそうだ。

 もっとも小娘の一人や二人、この俺の手に掛かればどうとでもなる。

 どうしてくれようかと舌舐めずりをしていると、廊下からぬっとペスさんが姿を現した。てしてしと居間を横切って俺とマゴットの間に居座る。

 俺は歯列をギラつかせて言った。

 よう。ペス。久しぶりだナ……?

 宿命のライバルとの再会に俺の胸が高鳴る。ゆっくりとソファを降りると、内圧を高めるように戦意を研ぎ澄ませていく。この犬コロを屈服させた時、俺はさらなる高みに立てるという確信があった。

 人と犬……。犬と人……!

 猫背になってバッと両手を上げて構える俺に、クリケットが慌てて声を掛けてくる。


「た、タマっち。死ぬ前にフレンド登録を……!」


 俺は死なねえよ。

 だが勝負は時の運。いいだろう。

 俺はペスを見据えたまま小娘三人にフレンド申請した。

 受諾された。

 俺のキャラネにはネタが仕込んである。

 フレンドリストを確認した小娘三人が三者三様の反応を示した。特に顕著だったのはフリエアだ。


「フっ……!」


 顔を背けて吹き出すのを堪えたような仕草だ。

 ネタが分かってないとそういう反応にはならない。コイツ、意外と漫画とか読むのか。

 クリケットは何が何やらという顔。マゴットは少し機嫌を直していた。


「何これ。ダサくない?」


 ダサくない。

 おっとサトゥ氏。サトゥ氏が悪の秘密基地に乗り込んできたぞ。リチェットも一緒だ。

 サトゥ氏の背中からひょいっと顔を出したリチェットがパッと嬉しそうな顔をしてペスに駆け寄る。


「ペス! 久しぶりだなっ」


 ペスさんが嬉しそうに尻尾をパタパタと振る。おや、俺と大分態度が違うね。

 いつの間にやら知り合いになっていたらしく小娘どもはリチェットを歓迎した。女四人と犬一頭がきゃっきゃとハシャいでいる横で俺とサトゥ氏が対峙している。

 サトゥ氏は言った。


「時間が惜しい。手短に済まそう。コタタマ氏。フレンド登録を」


 何故ここが……。


情報源ソースは5chだ」


 ちっ、小娘どもと一緒に居たのを見られていたのか。

 だが、この秘密基地に近付こうとする部外者は【ギルド】が狙撃する手筈になっている。ヤツらはどうした? まさか突破して来たのか?

 サトゥ氏は手のひらからにゅっと剣を生やした。


「仙人とやり合ってからかな。コツを掴んでな」


 い、異常個体め……。会うたびに化け物じみていきやがる。

 ……母体の力だけじゃない。サトゥ氏とリチェットの反則じみたアビリティコンボがあれば【ギルド】の狙撃を掻い潜るのは可能ということか。改善の余地があるな。このことはあとでネフィリアに報告しておこう。

 しかしフレンド登録か。お互い忙しい身だ。ゴネるつもりはないが……。一つだけ訂正しておこう。

 サトゥ氏。俺はコタタマじゃない。


「なに……?」


 サトゥ氏は動揺を露わにした。


「お、お前はコタタマ氏だろ? 違うのか……?」


 俺はサトゥ氏とリチェットにフレンド申請を投げた。親指でクイッと自分を指差して自己紹介する。


「俺は……スーパーコタタマだ」


 漢字表記は受け付けないから正しくはスーパーコタタマなんだけどな。

 サトゥ氏はノッてくれた。


「超コタタマ……? な、なんだそれは……?」


 いちいち説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しな。

 ひとしきりベジータごっこしたところで自己紹介を終える。

 サトゥ氏はペスさんに近寄ろうとしない。生物としての格の違いを肌で感じ取っているのかもしれない。


「リチェットー。狩りの続き行くぞー」


 リチェットはペスさんとの別れを惜しんでいる。


「……セブンが戻ってくるまで待とう」


「セブンはいいんだよ。ワッフルの巣でコタタマ氏と会えるから」


 どういう理屈だ。会えねえよ。以前の俺とは違う。

 俺はサトゥ氏とリチェットを見送ってからデスルーラしてウチの丸太小屋に戻った。マゴットが何か言いたそうにしていたが、俺は少し焦っていた。

 俺はペスのライバルであり続けたいのだ。そのためには魔法使いじゃダメだ。鍛冶屋に戻ろう。



 2.クランハウス-居間


 さて、生産職に転職するにはョ%レ氏を讃える文面を考えなくてはならない。あの暫定エイリアンは無駄に記憶力がいいので使い回しの文章では審査を通らないのだ。

 まぁ読書感想文みたいなもんだと思えば気も楽か。読書感想文の字数を稼ぐコツは現状報告と自己紹介にある。まったく関係ない話を無理やり関連付けて主人公の心境に共感して見せたりだ。

 ペンを片手にああでもないこうでもないと文面をこねくり回していると、いつの間にかログインしていた赤カブトが改まった様子で俺に声を掛けてきた。


「ペタタマくん」


 何でしょうジャムジェムさん。

 俺もつられて改まる。

 神妙な面持ちで頷いた赤カブトが俺の隣に座ってくる。


「思うにですね」


 思うに。はい。


「私たちはもう他人ではありませんから、お互い話し合うことがたくさんあるのではないかと」


 話し合うこと、と仰いますと。


「よ、よよ」


 赤カブトさんはどもった。こほんと咳払いを一つ。


「夜の生活などです」


 俺を殺すつもりなのですね。


「さっそく先生に相談したのですが。秘密のサインを作ってはどうかと」


 先生になんてことを。


「ペタタマくん」


 赤カブトがぐっと身を乗り出してきた。ピンク色の瞳にまじまじと見つめられて俺は気恥ずかしくなる。

 思えばコイツとこうしてじっくり話すのはロスト直前にその場の勢いとノリで告白めいたことをして以来だ。

 ……俺は赤カブト本人に魅力的な女性だと思っていることを伝えたつもりだったのだが、コイツはどう思ったのだろうか。そもそもAIに恋愛感情なんてものはあるのだろうか。俺はピンク色の瞳から目を逸らして、かろうじて答えた。

 お、おぅ。何だよ。


「私、いっぱい考えました。それでですね。ウチのクラン倉庫にペタタマくんが大量生産した藁人形の在庫があるじゃないですか」


 ありますね。紅蓮の天秤ガチャ事件で一度全部焼失しましたけど、その後にコツコツと作り置いたのが。

 赤カブトさんはコクコクと頷いて、自分のアイディアをまくし立てるように早口で言ってくる。


「あれ使いましょう。私たちの秘密のサインに。お誘いで藁人形と釘を置いて、オッケーなら釘を刺して近くに置いておくというのはどうでしょうか」


 俺の藁人形がそんな使い方をされるとは夢にも思っていませんでしたが。微妙に本来の用途にも適っている気がしますね。


「そうでしょう。お試しに一つ持ってきました」


 そう言って赤カブトさんが藁人形と五寸釘をテーブルの上にそっと置いた。

 俺はそいつらを手に取ってしげしげと眺める。……この藁人形が俺ってことになるのか。

 ちらりと赤カブトを見ると、OAに深刻な異常をきたしている残虐AI娘は真っ赤な顔をして俺を凝視していた。

 …………。

 えい。俺は五寸釘をぷすりと藁人形に刺した。


「あっ……」


 ん? 何だよ。もしかして刺し方に指定とかあんのか?

 赤カブトは何やらもじもじしている。


「……い、いえ。でも、まだお昼だし……」


 あ? いや、待てよ。なんで俺の腕を掴む? お、お前が試しに刺せって言ったんじゃねーか。


「だって、でも、それオッケーってことだから。て、テストだから。最後までちゃんとしないと……!」


 そんな理屈があるかぁ!

 俺はジタバタと暴れるが、レベル差は深刻だった。まるで大人と子供だ。嫌がる俺にますます興奮した赤カブトさんが俺を引きずって階段を上っていく。俺は段差を利用して逆襲を目論むが、具体的な案は何も思い浮かばなかった。赤カブトさんの巣穴に引きずり込まれる直前に最後の力を振り絞って壁の凹凸にしがみ付く。部屋の中からにゅっと伸びた赤カブトさんの手が、俺の指を丁寧に引き剥がしていく。あっ、あっ、アットムくん助けて……! アットムくん! 俺はこの場には居ないアットムに助けを求めるが、俺の悲鳴は虚しく廊下に木霊するばかりであった。

 俺を引きずり込んだ赤カブトさんの部屋のドアがばたんと閉まる。



 3.ジャムジェムの部屋


 ゲームっていいな

 普段は喧嘩してばかりだけど

 みんな仲間さ


 La La La…


 灯火を集めよう

 夜空に咲く あの星みたいに

 僕らは仲間


 夜空の向こう

 あなたはどこからやって来たの

 まるで光の化身さ

 いつかきっと 分かり合える

 それが僕らのスピリッツだから


 この道の向こう

 きっと僕らを待っているよ

 一緒に冒険しようよ

 勇気を出して 手を伸ばそう

 もう寂しくないよ

 それが僕らのスピリッツだから


 hm…


 ああ 鳥さんがやって来たよ

 My Angel

 僕を遠くへ連れ去っていく

 My Spirits

 見守っているよ いつまでも

 夜空に輝く あの星になって

 ゲームっていいな



 3.ワッフルの巣


 ワッフルの巣の縁に立って地平線を眺めている。

 セブンも一緒だ。


「…………」


 交わす言葉はない。

 眷属と同じくらい大きく育った雛たちがぢょんぢょんと鳴いている。

 時折、全身の羽毛が火を吹くように赤い輝きを帯びる。

 ワッフルの血、か……。


 俺とセブンは無言でフレンド登録を交わした。




 これは、とあるVRMMOの物語。

 これスマブラですよね。却下、再提出。



 GunS Guilds Online


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二人がまた会えてよかった
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