友情、悲恋、信念、そしてタイムリープ? その面白さに魅了されたロック音楽劇『ガウディ×ガウディ』稽古場レポート
友情、悲恋、そして創造への信念
物語は、“ガウディの伝記”という枠に留まらず、さまざまな側面から、神と崇められた建築士の人間性を浮き彫りにしていく。その1つが友情というテーマだ。ガウディが最も信頼し、数々の建築物を共に造った鋳物職人・彫刻家であり生涯の友であるロレンソ・マタマラ役を串田和美(晩年)と野田晋市(青年)。波乱万丈だったガウディの人生において、唯一揺るぎないものだった友情の物語は、本作の背骨となっている。常にそばにいたはずの2人だが、後悔だらけの人生を送ったガウディと「後悔のない人生が誇らしい」と胸を張るロレンソの対比も印象的だ。 ガウディの後悔とは、無神論者で享楽的であった自身の若い日々に他ならない。もっと真剣に生き、一切の寄り道をせずに、サグラダ・ファミリア建設に全てを捧げていれば「今ごろは…」と悔いをにじませるのだ。 そして出会ったのが、若き日の自分。「言いたいことは山ほどある」と詰め寄る老ガウディと、「悪いけど大きなお世話」と煙たがるガウディ青年の会話が笑いを誘う。また、1880年にやってきた老ガウディに関しては“ある仕掛け”が用意されており、これが要所要所で効いているのも面白い。 過去に舞い戻って、人生をやり直すというタイムリープものとしても、存分に楽しい内容だ。過去をリライトすることで、現在や未来にも大きな影響を与えてしまうのも、タイムリープものの醍醐味だが、『ガウディ×ガウディ』では特に第1幕の最後に、驚きの展開が待っているので、ぜひ期待してほしい。 ガウディの人生を語る上で忘れてはならないのが、生涯で愛を告白した唯一の女性ペピータの存在だ。演じるのは、沢田、渡辺と同様に、歌手に俳優と幅広く活躍する中村 中。ときに上品に、ときに妖艶に、ときに狡猾に。老ガウディが深く後悔し、ガウディ青年を深く傷つける存在だが、ステージに登場した瞬間に放たれるオーラには、やはり視線を奪われてしまう。もちろん、歌唱、ダンスの披露もあり、表現者としてのポテンシャルを発揮している。 友情、悲恋に加えて、建築士として、ひいては“創造という仕事”に対する信念も重要なエッセンスになっている。紆余曲折を経て、ついにサグラダ・ファミリア建設に乗り出すことになるガウディ青年だが、伝統や様式に囚われてしまい、思うように設計が進まない。そんな彼のことを、老ガウディがメンターとなって導き、ことあるごとに衝突し合った“2人”が意気投合する姿も胸を打つ。やがて、信念は狂気と化し、サグラダ・ファミリアは天空の引力によって、天高く伸びていくのだ。 「今日は昨日よりもいいものを作れ」「明日はもっといいものを作ろう」。劇中で繰り返されるガウディの言葉は、何も芸術家だけにあてはまるものではないはず。タイムリープの力を借りて、人生の後悔を上書きしようとしたガウディが、最後にたどり着いた真理とは? 死ぬまで未完成な人生を生きる私たちに、この物語は前を向き、歩み続けるパワーを与えてくれる。 ロック音楽劇『ガウディ×ガウディ』は、2026年3月14日(土) から29日(日) まで東京・EX THEATER ROPPONGI、4月3日(金) から7日(火) まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。追加公演の実施が決定し、東京公演は3月18日(水) と27日(金) の13時回、大阪公演は4月6日(月) の13時回が追加されている。 撮影:渞忠之 <公演情報> ロック音楽劇『ガウディ×ガウディ』 作・演出:マキノノゾミ 音楽:白井良明 振付演出:南流石 美術:石原敬 衣裳デザイン:伊藤佐智子 出演:沢田研二、渡辺大知、中村 中、野田晋市、若杉宏二、有馬自由、すわ親治、森下じんせい、細見大輔、内田紳一郎、串田和美 バンド:白井良明(g)、松江潤(g)、雲丹亀卓人(b)、玉木正太郎(b)、オータコージ(ds)、丸山隼矢(key)、小林俊太郎(key) ※ツインギター、ベース、ドラム、キーボードの5人編成 ※ベースとキーボードは公演によって異なる 【東京公演】 2026年3月14日(土)~29日(日) 会場:EX THEATER ROPPONGI 【大阪公演】 2026年4月3日(金)~7日(火) 会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ