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The Works "シャニPが事故に遭ってルカがお見舞いに来る話" is tagged "斑鳩ルカ" and "シャニマス".
シャニPが事故に遭ってルカがお見舞いに来る話/Novel by ほっぽい

シャニPが事故に遭ってルカがお見舞いに来る話

6,801 character(s)13 mins

螺旋よかったね……

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ルカと出会ってから時間が経ったからなのか。最近はまともに取り合ってくれることが増えた。昔だったら一言二言で終わるような会話も今は少しは長続きしている……と思いたい。俺がそう思っているだけなのかもしれないけど、願わくばルカも俺のことを少しは認めてくれていると嬉しい。
とはいえ、距離感には気をつけないといけない。まだ完全に心を許してはくれていないだろうし、ルカにも色々事情があるのはわかっている。だから慎重に歩み寄っていくことにしよう。
「今日はスタジオで撮影だな」
「……ああ」
「何かあったら言ってくれ。……って言ってもルカの方が慣れてるスタジオだろうし、俺の方が聞くかもしれないけど」
「そん時は助けてやるよ」
「本当か?助かるよ」
「嘘に決まってんだろ。自分で何とかしろ」
「だよなぁ……」
現場に移動するまでの車内での会話。一瞬期待してしまったがまだまだルカとの距離は遠いようだ。しかし、後部座席ではなく助手席に座ってくれているのは少し進歩かもしれない。
「……別に私が助けなくてもアンタはご自慢のコミュニケーションでなんとかすんだろ?」
「自慢するようなものでもないし、スタッフさん達に聞くのって意外と気を遣うんだよ」
「オイ。私には気を遣わないで済むってことか?」
「そうじゃなくて。聞きやすい相手がいると嬉しいってことだよ。ルカを蔑ろにしてるわけじゃないから」
「チッ……」
言っていることは嘘じゃない。実際、スタッフさんに聞くと話が波及していって最終的に全然違う方向に話が転がることがある。その点、ルカなら簡潔に教えてくれそうだ。
その後は機嫌を損ねてしまったのか、現場に着くまで車内には無言の時間が続いた。
「着いたぞ。先に控え室に行っていてもらてるか?俺は一通り挨拶してくるから」
「ん」
ルカはあまり俺とふたりでいるところを見られたくないらしいのでこうして現場に着いても別々で移動することが多々ある。俺としては少し寂しいが、知り合いのスタッフさん曰く顔見知りがいる時だけ見られるのが嫌らしい。
「今日はよろしくお願いします」
「おっ、ルカちゃんのプロデューサーさんじゃないか!よろしくー!」
「はい、よろしくお願いします!」
「ところでプロデューサーさん、実は……」
案の定というべきか、話しかけたら全然関係の無い話を持ち出されて数分の間拘束されることになった。
「ふう……」
元気なスタッフさん達と挨拶を交わしてから控え室に向かう。道中、積み上がった荷物が廊下にあったのが気になってしまう。ちゃんと固定されてるので倒れるようなことはないだろうけど、人通りの多い廊下にあるのは気になる。誰かに言った方がいいかもしれないな。
「すまん、待たせたか?……もう準備はできてる感じだな」
「アンタが遅いからな」
「すまんすまん。ちょっと捕まっちゃってさ」
「まぁ別にいいけど」
時計を見るとそろそろスタジオの中に入る時間になっていた。
「ルカさん、そろそろお願いしまーす!」
「ほら、行くぞ」
呼び出しが入ったのでふたりで控え室を出る。ルカは俺よりも先を進んでいる。廊下には少しばかり人がいて、どうやら例の荷物を移動させている最中だった。俺以外の誰かが言ってくれたんだろうな。
そう思っていた。
「あっ!?」
誰かの驚いたような声が聞こえる。声の方へと視線を向ければ一番上に積まれていた荷物が落下を始めていた。……ルカの頭上目掛けて。
「ルカ!」
名前を呼ぶが先を進むルカは状況に気がついてないみたいだ。このままではマズイ。……間に合わせる。
腕を引っ張ることを考えたが、それでは間に合わない。ルカの背中を押す。入れ替わるような形で俺が落下地点へと移動する。
思い何かが頭に当たる。最後に聞こえたのは誰かの悲鳴だった。

「……あれ?」
目を覚ますと現場ではなく見たことの無い場所だった。何故こんなところにいるのか。仕事は大丈夫だったのか。
ゆっくりと記憶を辿っていく。確か、俺は落ちてくる荷物からルカを庇った。何か重たいものが当たって、それから気を失ったような気がする。
「ルカは……!?」
体を起こすと頭痛が走る。だが、そんなことはどうでもいい。今はルカのことが心配だ。咄嗟とはいえ背中を押してしまった。もしもよろけて怪我をしてしまっていたら大変だ。
ベッドから出ようとすると何かが手に触れていることに気がつく。視線を向けるとそこにはルカがいた。何故か俺の手に自分の手を重ねて。
「……ルカ?」
どうやら彼女は眠っているようで俺が起きたことには気がついていないようだ。……そういえば今は何時なんだ?
枕元にはスマホは置いてなかったが、近くのテーブルに置いてくれたらしい。ルカを起こさないようにしてスマホを取ると電源を入れる。
「……一日経ってるのか」
記憶にある日付から一日が経過していた。時間も夕方だし、もしかすると一日近く寝ていたのか?
「とりあえず……各所に連絡だな」
スマホにはありえないほどの通知が来ていたので一件一件返事をすることにした。
「ようやく終わった……」
少し痛む頭でメールを送ったりしていたせいなのか、頭がくらくらしてくる。一体どんな状況なのかはわからないけど、あと一日くらいはゆっくりしていたい気持ちがある。仕事があるのでそうも言っていられないだろうけど。
ゆっくりと枕に頭を預けると思っていたよりも振動があったのか。ルカが目を覚ましてしまった。
「ん……?」
「すまん、起こしちゃったか?」
「……生きてる?」
「ははっ、見ての通りだ。勝手に殺さないでくれよ?」
「よかった……!」
俺と目が合ったルカは今にも泣きそうな表情をしていた。……こんな表情は見たことがない。どうやらかなり心配をかけてしまったようだ。
「心配かけたみたいだな。すまん」
「謝るのは私の方だから……言うこと聞かなくてごめんなさい……!」
「別にルカが謝ることじゃないよ。悪いのは……まぁ言い方はあれだけど、あそこに荷物を置いた人になるのかな。だからルカは気にしないでいい」
「……気にするなって方が無理」
ルカからすれば言うことを聞かなかったせいで俺に怪我をさせたと思っているんだろう。だけどそれは違う。そもそもあの場所に危険があることを事前に伝えていなかった俺が悪い。更に言うならわかった時点で誰かに言うべきだった。それを怠った俺の責任だ。
「でもルカに怪我がなくて本当に良かったよ。大丈夫だったか?急に背中押しちゃったからさ」
「私は大丈夫。でも……こんなこと二度と嫌だ。私の前から誰かがいなくなるのはもう嫌なんだよ……!」
今思えばもっといいやり方があったのかもしれない。軽率だったとは思う。けど、俺は後悔なんてしてない。少しでも判断が遅れていたらルカが怪我をしていたかもしれないし、場合によってはふたりともだった可能性もある。それに比べたらまだマシだ。
「……ごめん」
俺の手を握りながら涙を流すルカ。こんなことは二度と起こさない。そう心に誓った。
「絶対に安静にしてろよ?」
「わかってるって」
時間が来たのでルカは帰ることになった。何度も念を押されたので流石に無茶なことはできないし、するつもりもない。
ルカと入れ違いで来た医師からは大した怪我ではなく、頭に傷もないらしい。ただ過労による蓄積していたダメージが頭への衝撃と同時に爆発。結果として一日寝込むことになったとのこと。
普通ならその場で起き上がってもおかしくはなかったらしい。……そんなに疲労が溜まっていたのか。全然認識してなかった。
あと一日入院すれば問題なく退院できるらしい。我ながら運がいいのか、悪いのかよくわからない。
そしてこれも医師から聞いた話だが、ルカは俺が倒れてからずっと付き添っていてくれたらしい。はづきさんから送られてきたメールには現場では撮影などと言っている雰囲気ではなくなったらしく後日に延期。スタジオの責任者から事務所へ直々に謝罪があったらしい。
個人的にはあちらは何も悪くないと思うんだが、そういうわけにもいかないらしい。
それにこのことを知っているのはルカとはづきさん、それと社長だけとも言われた。医師の診断通り大した怪我ではないということ、そして余計な混乱を生まないための措置らしい。これに関しては助かったと思っている。
あと一日寝ていれば退院できるのにまるで大怪我をしたような扱いをされたんじゃ怪我のことを言うに言えなくなるし、気まずい感じになる。
「とりあえず休暇ってことにしよう」
何もしない日というのも久しぶりだ。手元にはパソコンもないし、業務連絡も届かない。それに俺からアイドルたちに連絡をすることもできない。唯一連絡が取れるのはルカかはづきさんくらいだ。
「ルカには心配をかけて悪いことをしたなぁ……」
もっと体調に気を配っていたらこんなことにはならなかったと思うと申し訳ない気持ちが出てくる。これからはちゃんと休むようにしよう。
「……あれ、ルカからだ」
食事を終えて後は寝るくらいしかやることがなくなったタイミングでルカからチェインが来た。
『ちゃんと休んでるか?』
「ははっ、心配症だな」
ちゃんと休んでるよと返すとすぐに返事が来た。
『休んでないだろ。スマホ触るな』
「……まさかトラップだったとはな」
チェインの返事をすること自体がダメだったとは。しかし、ちょうど寝つけなかったので話し相手になってもらおう。
『病院の中って案外暇でさ。話し相手になってくれると嬉しい』
『休めって言ってるのがわからない?』
『充分休んだよ。それに怪我も大したことないし、明後日には退院だってさ』
『それは知ってる』
何故ルカが知っているんだろうか。もしかすると帰り際に医師と会ってその辺を話したのかもしれない。別に隠すことでもないからいいんだが。
『いい感じに俺のことは誤魔化しておいてくれ』
『もうバレかけてる』
『マジか』
『マジ。羽那とはるきは勘づいてる』
『すごいな』
『社畜なアンタが急に休むなんて何かあったに決まってるって探り入れてる。私がそれとなく誤魔化してるから戻ってきたら上手く話を合わせろ』
何となく誰かは気がつきそうだと思っていたが……まさか羽那とはるきだとは。どういうふうに誤魔化しているのかちゃんと聞いておかないといけなさそうだ。
「そういうことになってるのか……」
翌朝。不意な眠気に襲われたのでルカがどのように誤魔化したのか寝る前に聞いてみたが、単純に遠出をしたことになっているらしい。しかし続きがあり、偶然ルカの実家に顔を出したタイミングで遭遇したからルカは俺の現状を知っているという流れらしい。
……本当にこれで大丈夫なんだろうか。少しだけ心配だ。
「でもルカが大丈夫と言ってるし、信じよう」
スマホを手に取って何か通知が来ていないか見てみるとルカから一件来ていた。内容は昨日と同じで安静にしていろとのこと。そんなに信用がないのか、俺は。
元々今日までは入院の予定だし、病院の中で動き回るようなこともするつもりはない。何より今は休暇だ。体を休めないといけない。
のんびりとスマホでネットサーフィンをしていると診察の時間になった。あれやこれやと質問を受けたりしたが、医師からは特に問題無しと言われた。これで明日には退院できそうだ。
明日には問題なく退院できることをルカ、社長、はづきさんの三人に伝える。明日退院できるとは言ってもすぐに仕事に戻るわけじゃない。追加で一日休みをもらっているので本格的に仕事に戻れるのは明後日だ。
「何はともあれ、これで一安心だな」
ベッドに体を預けながら呟く。自分の頑丈さに感謝すると同時に仕事のし過ぎには気をつけようと思った。本来なら入院するほどの怪我ではないという話だし、無用な心配をかけさせたくはない。
「……ルカからだ」
朝昼と定期的に来ていたルカからのチェイン。もちろん夜にもそれは来た。内容は同じで安静にしているのかどうかの確認。さっき明日には退院できると伝えたはずだが……それはそれとして気になるんだろうな。
『安静にしてるんだろうな?』
『大丈夫。安静にしてる』
『嘘だったらもう一回入院させるぞ』
『何するつもりだ?』
『入院させるぞ』
『本当に何するつもりだ……?』
恐ろしい脅しを受けている。とはいえ、そう簡単に病院の世話になるつもりはない。前回は疲労が溜まっていたが今回は違う。生半可なダメージでは意識を失ったりしない。
『それよりも明後日から戻るんだろ?』
『そうだな。明日は一日休みだ』
『そっか。じゃあ付き添う』
『え?』
「付き添うってどういう意味だ……?」
不意な言葉に思わず首を傾げる。スマホの予定表を見れば確かに明日はルカも休みだ。だけどわざわざ俺の休みに付き合う必要はない。
『退院するんだろ?』
『そうだな』
『なら付き添いが必要だろ』
『そういうものか?』
『そういうものだろ』
人生で入院するのは初めてだからよくわからないけど、誰か付き添いが必要なんだな。確かに帰り際で何かあった時に大変か。
『それならお願いできるか?』
『わかった。朝迎えに行く』
『助かるよ』
はづきさんか社長でも良かったんじゃないかとも思ったけど、そうなると俺が病院にいることが周りにバレてしまう。そういう意味ではルカが適任なんだろうな。

「ん〜……!」
カーテンの隙間から射し込む朝日で目を覚ます。長いようで短かった病院生活も今日で終わりだ。
「……そういえば俺の服ってどうなってるんだ?」
スーツがあるのはわかっている。肌着も社長が買ってきてくれたので困ることはなかった。しかし、病院から出るのにスーツでも大丈夫なんだろうか。
「最悪スーツでいいか」
事故に遭った時と同じワイシャツに袖を通すのは少し気が引けるけど、背に腹はかえられない。それに帰るだけだから変に意識する必要もないか。
「あー……でもルカが一緒なのか。臭いとか大丈夫だよな?」
あのワイシャツは三日間も放置されていることになる。流石にまずいか。とはいえ、服を買いに行くための服がない状態だ。……困ったな。
「オイ、迎えに来たぞ」
「ルカ?結構早いんだな」
「一秒でも早く出たいんじゃないのか?」
「ははっ、そこまで病院にマイナスなイメージは持ってないよ」
頭を悩ませていると病室にルカがやってきた。彼女は手に少し大きな紙袋を持っている。買い物ついでに来てくれたんだろうな。今日は休みだし。
「というか着替えてないのか?」
「服がないんだよ。いや、あることにはあるんだよ。でもないんだ」
「……?」
あるにはあるけどないものはない。本当にそう言うしかない。案の定、ルカは頭に疑問符を浮かべているような表情をしている。
「スーツはあるんだけどさ、ワイシャツが無くて。着るに着れないんだよ」
「んだよ、そういうことか。紛らわしいこと言うなよ」
「すまんすまん。適当な服でもあればワイシャツだけでも買いに行けたんだけどさ、それもなくて」
「あー……それならこれ使え」
「え?」
ルカから紙袋を渡される。中には男物の服がいくつか入っていた。
「アンタの趣味がわからないから適当に買った。それ着てワイシャツでも買いに行け」
「……いいのか?」
「今更ダメって言うわけないだろ……」
「ありがとう。使わせてもらうよ」
取り出してみると基本的には黒を基調とした大人しめの服が多く、私服としても充分に使えそうだった。それにサイズもピッタリで違和感がない。
「すごいな。ピッタリだ」
「そりゃよかった」
「適当に買ったんだよな?よくサイズがわかったな」
「見てりゃわかんだろ、そんなの」
「……そういうものなのか?」
「そういうもんだよ」
ルカは当たり前のように言っているけど俺にはできそうにない。仮に今からルカの体型にあった服を買ってこいと言われても多分失敗するはずだ。
「なるほどな……。よし、これで帰ることにするよ」
「……スーツは着なくていいのか?」
「今日は休みだからな。休日までスーツに袖を通したくはないよ」
「ふぅん……まぁ好きにしたらいいんじゃねぇか?」
ルカにはそう答えたけど、本音のところではせっかく来てくれたルカにあの日のことを思い出して欲しくないからだ。スーツ姿を見たら否が応でも思い出してしまうだろうし。
「じゃあ行くか!」
「はいはい」
そうして俺はルカと共に病院を後にした。

Comments

  • 悦 菊多
    November 1, 2025
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