沢田研二 9年ぶりにロック音楽劇に挑む 作演出マキノノゾミ、音楽・白井良明が語るガウディと骨太ロック
沢田研二とマキノノゾミが9年ぶりにタッグを組んだロック音楽劇『ガウディ×ガウディ』とは?
沢田研二と劇作家・演出家マキノノゾミが9年ぶりにタッグを組んだロック音楽劇『ガウディ×ガウディ』が、3月14日東京・EX THEATER ROPPONGIで開幕する(~29日、4月3~7日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)。音楽を手掛けるのはこれまで沢田の楽曲のサウンドプロデュース数多く手がけてきた、今年50周年を迎えたムーンライダーズのギタリスト・白井良明。
没後100年を迎えた、晩年のガウディの内面に焦点を当てたロック音楽劇とは?この音楽劇を書き下ろしたマキノと、長いキャリアの中で舞台音楽は初となる白井にインタビューし、どんな舞台になるのか、聞かせてもらった。
物語の舞台は1924年秋のスペイン・バルセロナ。72歳になったガウディ(沢田研二)は、持病のリウマチに苦しみながらも、独り仕事場に住み込み、サグラダ・ファミリアの建設に没頭している。 ある朝、五十年来の親友であり、視力を失った鋳型職人のロレンソ(串田和美)との別れの時を迎える。来し方を振り返り、「若い頃にもっと真剣に生きていれば、今頃はもっと……」と悔恨を滲ませる老ガウディ。そんな彼が、告解へ向かう道すがら、不思議な体験をする。40年前の「若き日の自分」(渡辺大知)と遭遇してしまうのだ――。
3年前、沢田からマキノと白井が受け取った言葉
「ロック音楽劇をやりたい」――マキノと白井が沢田研二からそのひと言を受け取ったのは、3年ほど前のことだった。2017年、それまで11作にわたる音楽劇を作り上げてきた沢田とマキノはその集大成とでもいうべき作品『大悪名~The Badboys Last Stand!』が、最後のタッグになった。あれから9年、沢田から「ロック、ガウディ」というキーワードが二人に伝えられた。
「正直に言えば、9年前の第11作目が集大成で、達成感もあった。でも月日が流れる中で、沢田さんの中に『まだやり残したことがあるのではないか』という思いが芽生えたのではないでしょうか。沢田さんから『ガウディを題材にロック音楽劇をやりたい』というお話を聞いた瞬間、面白い!と思いました」(マキノ)。
2026年はガウディの没後100年にあたり、それも沢田の感性を刺激したのかもしれない。さらに1882年に建設が始まったサグラダ・ファミリア大聖堂のメインタワー「イエス・キリストの塔」がついに完成したというニュースも記憶に新しい。偶然が重なった。「ガウディと沢田さんの誕生日が同じだそうで、そこにも運命を感じるとおっしゃっていました」(マキノ)。
「ガウディの極端すぎる人生の反転に強く惹きつけられた」(マキノ)
マキノは題材と向き合うにあたり、まずガウディの伝記と周辺資料を読み込んだ。それまで「サグラダ・ファミリアを建てた人」程度の知識から始まった調査の中で、彼が惹かれたのは人物としてのその人生の落差の大きさだった。「若い頃のガウディは無神論者で、仕立ての良い服を着こみ葉巻を燻らせ、レストランで美食に耽る上流階級への憧れを抱いた青年でした。それが晩年になると、粗食をつらぬき、身なりも気にせず、神に仕える建築家へと変貌していくんです。でもその転換点は、どの伝記を読んでもはっきりしない」(マキノ)。だからこそ、そこに劇作家の想像力が入り込む余地があった。
「極端すぎる人生の反転に強く惹きつけられました。落差が激しいからこそ二人のガウディが絡んだら面白いんだろうな、と思って」とマキノは言う。沢田が演じるのは晩年のガウディ、そしてロックバンド・黒猫CHELSEAのボーカルであり、俳優や映画監督としても高い評価を得るなど、多彩な才能を発揮し続けている渡辺大知が演じるのが、若い頃のガウディ=アントニだ。アントニは後悔しない。晩年のガウディは後悔する――その対比を軸に、タイムスリップ的な構造でストーリーが組み上げられた。「そのままでは二人が絡まない。同じ場面に出ることが基本的にないことになってしまう。それはつまらないので、そこからストーリーを考えた」(マキノ)。
写真家・操上和美による撮り下ろしたメインビジュアルが話題
写真家・操上和美による撮り下ろしたメインビジュアルは、沢田が操上に47年ぶりの撮影を依頼したという。老いたガウディと青年ガウディの強烈かつ斬新なビジュアルは、このロック音楽劇の全てを“物語っている”。そのインパクトは否が応でも目に飛び込んでくる。本作の最大の見どころは、やはり沢田研二と渡辺大知という、世代を超えた二人のボーカリストの競演だろう。
舞台音楽を初めて手がける白井良明が作り出す、骨太ロック
音楽を書き下ろしたのは、今年50周年を迎えたロックバンド・ムーンライダーズのギタリスト・白井良明。沢田のアルバム『MISCAST』(1982年)のアレンジを始め、これまで数多くの沢田の作品のサウンドプロデュースを務めてきたが、音楽劇を手掛けるのは50年のキャリアの中で今回が初となる。
「沢田さんから連絡をいただいた時、僕のことをロックミュージシャンという認識でいてくれているんだな、と思ってそれだけで嬉しかった(笑)。マキノさんと話をしていく中でクルト・ワイルとかチープ・トリックとか、色々なジャンルのアーティストの名前が出てきました」(白井)
「最初は何をどうロックにすればいいのかが、わからなかった。でも僕もロックが好きで、レッド・ツェッペリンや、ディープパープルを聴いてきた世代なので、白井さんと打ち合わせで色々なアーティストが出てきてもすぐにイメージできました。白井さんに先に歌詞を何曲かお渡しして楽曲を作っていただきました。バラエティに富んだ楽曲が完成して、これで“勝った”と思いました」(マキノ)
「キング・クリムゾンやニルヴァーナ、プログレからグランジまで、70~90年代のロックの要素を取り込んだ骨太なロックが出来上がりました。一枚のロックアルバムが完成したような感覚です」(白井)
「いざ制作が始まると、沢田さんから『例えばカフェで流れるような、しかし魂はロックな音楽』『声を張り上げすぎない、でも熱量があるもの』という、非常に高難度なオーダーが届きました(笑)。すごい課題だけど、でも逆にそれが面白かったんです。マキノさんが先に何曲か歌詞を書いてくださって、マキノさんの書く言葉にはすでに独特のリズムとメロディが宿っていたので、それを僕がロックの文脈で解釈して、例えばキング・クリムゾンやニルヴァーナ、プログレからグランジまで、70~90年代のロックの要素を取り込んだ骨太なロックが10数曲出来上がりました。一枚のロックアルバムが完成したような感覚です」(白井)。
「5人編成のバンドで、ちょっとご迷惑をかけてしまうかもしれないくらいの音圧を楽しんでいいただきます」(白井)
白井率いるバンドは、ツインギター、ベース、ドラム、キーボードの5人編成で「僕が『スパイ大作戦』(1973年)のように、こういう音が欲しいからこのミュージシャンという感じでそれぞれの役割をイメージしながらオファーした精鋭です。ちょっとご迷惑をかけてしまうかもしれないくらいの音圧です(笑)」(白井)
「沢田さんの歌を聴いていると何かが吹っ切れているように感じる。心がえぐれるほどの“何か”を感じます」(白井)
白井は今回、初めて演者の後ろ側から稽古を見ている。そこで白井が目撃しているのは、セリフを体に入れながらそれを膨らませ、おちゃめさまで滲ませていく77歳の沢田研二の姿だった。そしてその歌に衝撃を受けたという。精力的にライヴツアーを行なっている沢田の今の歌は強靭で、色気も瑞々しさも、そして渋さも湛える無敵状態だ。
「沢田さんの歌を聴いていると何かが吹っ切れているように感じます。高い声には執念が入っているというか、絞り出しているのが生き様のように感じて、それがビンビン響いてくるんです。そこに強い執念を感じるし、本能的にやっているのかもしれないけど、とにかく心がえぐれるほどの“何か”を感じます」(白井)。
「20年以上沢田さんと向き合ってきましたが、今の沢田さんは表現の純度が極限まで高まっています」(マキノ)
「私は20年以上沢田さんと向き合ってきましたが、今の沢田さんは表現の純度が極限まで高まっています。お芝居に関しては、遠慮をしても失礼なので、伝えるべきことはしっかりお伝えしますが、一歩離れれば私もただのジュリーファンです。77歳にして、なお進化しようとするその姿には本当に感心するばかりです」(マキノ) 。
W主演の一翼を担う渡辺大知は「出演のオファーをいただいた時から、沢田研二さんと共演できることに感動していましたが、実際に稽古場にいて、沢田さんと日々セリフや歌を交わす中で、何度も心が震わされております」とコメントしている。
共演陣にも注目
物語を彩る共演陣も、9年ぶりの音楽劇にふさわしい顔ぶれが揃った。 老ガウディの親友であり、視力を失った鋳型職人ロレンソを演じるのは串田和美 。二人の大ベテランが向き合う姿は、劇中の設定を超えて、長年日本の演劇・音楽界を牽引してきた者同士の深い敬意が滲み出る。また、中村 中が演じるのは、青年ガウディが唯一愛したとされる女性・ぺピータ 。彼女の持つ神秘的な透明感のある歌声は、ガウディが建築に込めた“永遠の憧憬”そのものを象徴しているようだ。内田紳一郎が演じる神父やパトロンたちの存在も、世俗と聖域の間で揺れ動くガウディの孤独をより際立たせている。
稽古に入って白井は驚いたことがあるという。
「全員で行うラジオ体操です。音楽業界ではまず見られない光景ですが(笑)、沢田さんの座組では恒例だそうで、稽古前にスタッフもキャストも全員でやるんです」(白井)。
「沢田さんとご一緒するようになってからいつの間にか始まったのですが、これが意外と良くて。真面目にやると肩甲骨がしっかり動いて、肩こりも治る(笑)。ベテランから若手まで、同じ体操をしてから一日を始める。何より全員の呼吸が整うんです」(マキノ)。
若い頃は無神論者、晩年には神に仕える建築家へと変容する。後悔しない若者と、後悔を抱えた老人が時を超えて対峙する。その物語を、沢田研二は77歳の体と声で全力で生きる。独特で型にはまらない唯一無二のスタイルと、革新的な精神の表現者・ガウディ。沢田もまさにそうだ。熱狂的創造者同士が舞台で交錯し、眩しい光が生まれ、それが大きなエネルギーとなって観る人の心に潤いを与える。
前売りが好評につき追加公演も決定している(東京公演は3月18日(水)、27日(金)の13時開演回、大阪公演は4月6日(月)の13時開演回)。
ロック音楽劇『ガウディxガウディ』
作・演出:マキノノゾミ/音楽:白井良明/振付演出:南 流石/美術:石原 敬/衣裳デザイン:伊藤佐智子
出演:沢田研二、渡辺大知、中村 中、野田晋市、若杉宏二、有馬自由、すわ親治、森下じんせい、細見大輔、内田紳一郎、串田和美
バンド:白井良明(G)、松江 潤(G)、雲丹亀卓人(B)、玉木正太朗(B)、オータコージ(Dr)、丸山隼矢(Key)、小林俊太郎(key)※ツインギター、ベース、ドラム、キーボードの5人編成で、ベースとキーボードは公演日によって異なる
<東京公演>2026年3月14日〜29日
会場 EX THEATER ROPPONGI
※完売公演多数
※追加公演(3/18(水)13時と3/27(金)13時)
お問い合わせ:サンライズプロモーション 0570-00-3337
<大阪公演>2026年4月3日〜7日
会場 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※全公演完売
お問い合わせ ページ・ワン 06-6362-8122