light
pixiv's Guidelines will be updated on March 18th, 2026.
View details
The Works "公園にて/まよいご" includes tags such as "Fate", "腐向け" and more.
公園にて/まよいご/Novel by タカムラヤヨイ

公園にて/まよいご

2,358 character(s)4 mins

三槍弓熱が上がりに上がって、辛抱堪らなくなって旧槍弓書いてしまった…。もっとほのぼのする話を書くつもりだったのに、どうしてこんなしんみりした話になったのか解せません。教えておじいさん。 *弓は何故か旧Fateの世界に召喚されてしまったはぐれ英霊ツンデレ系。今は綾香・旧セイバー組にお世話になっている、という前提条件でお願いします。

1
white
horizontal

夕暮れの公園で見慣れた青い髪を見た気がした。

帰り道から外れると判っていたが、足は自然と公園へ向かっており、気付けば彼の側に立っていた。
見慣れた青い髪、けれどこの癖の強い髪は私の知っている「彼」ではない。
「何をやっているんだこんな所で」
「誰かと思えばアンタか」
背後からしゃがんでいる男に声を掛ける。振り向いて自分を見上げる男の顔は私の知っている「彼」よりも幾分か若く、また印象も異なって見えた。
ああ、やはり私の知っているランサーでは無いのだな、とやや落胆しながらも私は彼―この世界の『ランサー』が手に持つ物体に目を向けた。
「子犬?」
「おう。煙草買った帰りにふらっと此処に寄ったらよ、そこの茂みからコイツが飛び出て来たんだ」
私に見せるように高く上げたランサーの腕の先には、尻尾をぶんぶんと左右に揺らし大きな瞳でこちらを見つめる茶色の小さな子犬の姿。
ピンと立った耳に丸まったふわふわの尻尾。少し面長な顔は日本犬の特徴だ。首輪をしている所を見ると野良ではなく飼い犬らしい。
「てっきり君の所の猟犬かと思ったんだが」
「こんなちっこくて人懐こそうなのに、人だの人じゃないのだの追わせられっかよ」
なあ?と子犬を自分の視線まで下げながら言うランサーに、子犬は「わん!」と高い声で鳴いて返す。意思の疎通でも出来ているんだろうか?子犬は随分とランサーに懐いているようだった。
顔を舐める子犬に「おい止めろって」などと言いながらも離すどころか遠ざける事もしないランサー。
それを見て、ふと別のランサーの事を思い出す。そう言えば彼もやたらと犬に懐かれていたっけ。
思い出し笑いが漏れていたのだろうか、子犬と戯れていた筈のランサーがいつの間にか私の方を見ていた。その顔は怪訝そうだ。急に背後で笑われては確かに奇妙に思うだろう。
「何笑ってんだよ」
「いや別に。ちょっと以前の事を思い出しただけだ」
「以前の、ねえ」
子犬を地面に降ろし、ランサーは私に背を向けたまま子犬の頭や顎の下を撫でている。
どこか不貞腐れたような先程の呟き、拗ねたように丸まった背中。どうやら私は彼の機嫌を損ねてしまったらしい。
笑った事に腹を立てたのだろうか、ランサーの背中からは如何にも「オレは今不機嫌ですよ」と訴えるようなオーラが出ている。
全くアイツより子供っぽいなと思いながら、私はそのしょぼくれた子犬のような青い頭をわしわしと撫でてやった。
「おいこら犬みたいに触んな」
「落ち込んだ犬みたいな後ろ姿をしておいて良く言う。君の事を悪く言った訳ではないと言っただろう?何をそんなに不貞腐れているんだ」
「不貞腐れてなんかねえし!ちょ、もう頭撫でんの止めろよエミヤ!」
エミヤ、と呼ばれてぴたりと手を止める。この世界では既に『アーチャー』は存在しているから(驚いた事にあの英雄王だ。こちらも私が知っている英雄王よりも若く、また異なる印象の人物だった)仕方なく真名を名乗っているが、彼にそう呼ばれると『彼』との違いを感じて少しだけ胸が痛んだ。
それを悟られまいと私を見上げるランサーの前髪をくしゃりと乱して視界を遮り、いつの間にか私の足元にじゃれ付いていた子犬を拾い上げ抱き抱えてやる。
ランサーが前髪を掻き上げて私を睨みつける頃には元通りの私だ。感傷は胸の奥にしまい込んでしまえば相手には判るまい。
「ったく、いきなり何すんだ」
「君が止めろと言うから止めてやったんだ」
なあ?と腕の中の子犬に問い掛けるが、すやすやと眠ってしまった子犬は答えない。
「そいつどうすんだ?アンタんとこで飼うのか?」
「まさか。居候の私が綾香に頼める訳無いだろうが。君を見付ける前、迷い犬のチラシを見かけてね。どうやらこの子がその迷子のようだから家まで届けてやろうかと」
「ちぇ、そういう事かい」
対して付いてもいない膝の埃を払いながらランサーは立ち上がり、私の方へと向き直った。
彼は私よりいくらか背が低く、そして今は子犬を見降ろすように見ているため、私には彼の顔が見えず青い髪だけが視界に映っている。
もう一度その髪に触ろうとして手を動かそうとしたが、腕の中の存在を思い出し伸ばし掛けた手を止めた。
子犬の柔らかな肉球を名残惜しげに触った後、彼は私の横を通り抜けて公園の出口へと向かっていく。
立ち去っていくランサーの後ろ姿をぼんやり見送っていると、垣根の辺りで彼はくるりと振り返った。
「迷子にならねえようにオレが送ってやろうか」
「迷子?私が?流石にこの街の地理は把握しているから問題無い。君こそ、飼い主に怒られる前に早く帰った方が良いんじゃないかね」
「走って帰りゃ余裕だぜ。んな事よりもエミヤ、アンタ自分がどういう顔してんのか気付いてねえの?」
「は?」
顔?と繰り返せばランサーはガシガシと己の頭を掻き、それから呆れたように溜息を吐いて、今度は怒ったような顔で人の事を指差した。
「さっきから人探ししてる迷子みたいな目ぇしやがって。…オレはアンタの探し人じゃねえんだよ!いい加減にオレを見ろ!」
そう言うだけ言って、ランサーはその最速のサーヴァントという名に恥じぬ速さで公園から正に消え去ってしまった。
彼の言葉を反芻し、動けなくなった私の腕でもぞりと動く子犬の体温だけがやけに熱い。
身体が冷えていた。冷たい夜風のせいではなく、投げかけられたランサーの言葉で。
「だって、仕方ないじゃないか」
ぽつりと、誰に聞かせるでもない言い訳が口から零れる。

「何も知らないこの世界で、君の色だけが、私の知っている色と同じなのだから」


Comments

  • ラビット

    続きがほしいです。

    September 4, 2019
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags