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The Works "私の麻婆豆腐を食べて欲しい" is tagged "槍弓" and "FGO(腐)".
私の麻婆豆腐を食べて欲しい/Novel by にょろり

私の麻婆豆腐を食べて欲しい

3,582 character(s)7 mins

麻婆豆腐って無性に食べたくなることありますよね。神父に令呪をもって食べさせられたとか知って書かずにはいられなくて…。ギャグちっくな感じだと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございます!
ブクマありがとうございます!すごい嬉しいです!!

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目の前に置かれたそれは、マグマを彷彿させるように赤く煮えたぎり、鼻をつん裂く様な刺激臭だが食欲を増進させる様な香ばしさを秘めていた。喉が鳴る。

----俺は、こいつを喰いたい。

横でほくそ笑むそれはまるで悪魔の様だったと後に語られた。


* * *

突如として館内に緊急アラームが鳴り響いた。
「なんだぁ?」
少し間の抜けた声を出しつつ、管制室に向かった。
「あ、ランサー!よかった!食堂にはいなかったんだね!」
「お、おぅ。自室で寝てたからよ。」
マスターはこちらに手を振り、こちらへ来るように促した。管制室にはいたのはマスター、マシュ、ダ・ヴィンチの3人。遅れてちらほら他のサーヴァントが来そうなところだが誰一人として現れる様子がない。
「他の奴らは来ねぇのかよ。飯時だからかぁ?」
そう、ちょうど昼食の時間だった。そろそろ食堂に赴こうと思った矢先にアラームが鳴ったのだ。何か様子がおかしい。
「クー・フーリン…聞いて欲しい。」
これ以上は招集に応じないと判断したのかアラームが止められた。そして、静かに告げられた。
「今、食堂が地獄と化してる。」
暫しの沈黙の後、間抜けな声が出たのは仕方がないと思う。
「はぁ〜〜〜〜?」
被りを振りながらマスターが同意を示す。
「わかる、わかるよ。ランサー。言いたいことはわかる。わかる、わかるんだけどさー。」
マスターの目が泳いだところを確認し、マシュが話し出した。
「あの、その、落ち着いて聞いていただきたいのですが、ランサーさんが来られるまでに少し調べたところですね。原因が、エミヤさんなんです!」
先程より間抜けな声が出たのは想像がつくだろう。

話によると、食堂が燃え盛らん地獄のような暑さになっているそうだ。暑さの原因はサーヴァントから発される熱である。またその熱を発するような状態にしたのが赤い弓兵・エミヤだという。
「ちょうど、お昼時というのがあり、エミヤさんが出された料理を食べた皆さんはもれなく…」
「燃えているわけだよ。どう、笑えるだろ。もともと燃えてるような彼らでさえ、その熱には抗えないようだけど。」
どうやらこの三人はダ・ヴィンチにたまたま呼び出されて工房で軽食を取ったため被害に遭わなかったそうだ。運が良いとしか言いようがない。いや、しかしだな。
「笑えねーよ!だいたいなんなんだその料理っていうのはよ!!」
三人が口を揃えて言った。
「「「麻婆豆腐。」」」
目眩がした。気のせいだと思った。腹の底から、いやむしろ腹が自分に何かを訴えてくる様だった。瞳孔が開き、喉がひゅっと鳴る。
「麻婆豆腐…だと。」
「おやおやおやおやおや?どーしたのかな、"クランの猛犬クー・フーリン"?君は一体何に恐怖してるんだい。」
「んだよ。別に、なんてことねえよ。」
そう、なんてことない筈だ。だが汗は止まらないし、腹が悲鳴をあげる様に痛い。
「先輩…。」
マシュはマスターの裾を掴んで何かを訴えている様だった。
「…ランサー。その、調子が悪そうだけど、お願いがあるんだ。」
マスターは険しい表情で続けた。
「エミヤの、麻婆豆腐を、食べてきて欲しいんだ…!」
カランと遠くで音がした気がした。いや、したのだ。自分の側で。
「クー・フーリンさん!」
気がつくと先程まで手にしていた槍が床に落ちていた。これほどまで動揺している自分などフェルディアが立ち塞がった時以来だろうか。
「どうしてだ…?」
絞り出した声は疑問となって現れた。
「最期の一皿なんだ…。」

中華鍋いっぱいに作られたそれは沢山のサーヴァントに振る舞われた。だがそれも残るは一皿分。マスター達がたどり着いた時には死屍累々の熱を発するサーヴァントが席に突っ伏していたという惨状だった。その中で立ち尽くす彼は言ったのだ。
「この一皿は上手くできた。私は彼に食べてもらいたいんだ。」
その顔はまるで少年時代のそれの様だったと見たものは語った。

「まぁ、私が考えるに、その一皿を作るためにエミヤは作り続けたんだろう。そして至高の一品にたどり着いた…。彼は、君に食べてもらいたいんだろうさ。」
彼と言ったのだからマスターのことではと思ったがその場に着いたマスターが指名されなかった、残されたサーヴァントを見ると自分しか当てはまらないことになる。
「クー・フーリンさんっ…。無理に、無理にとは言いませんが、…ですがっ。」
「ランサーお願い。麻婆豆腐苦手なのかも知らないけど、…みんなを助ける為なんだ。」
マスターの瞳は陰りなく自分の顔を見つめる。覚悟を決めるしかない。
「はぁっ。嬢ちゃんに、マスターにこんなに頼み込まれちゃぁな…。わかったよ、マスター。だが、令呪だけは使ってくれるな。」
「使わないよっ!」
泣きそうな顔でマスターは安心した様に笑みをこぼしながら、自分を見送った。


食堂の扉をくぐるとそこは、灼熱地獄だった。ということはなく、クーラーが効き始めたのか適温といったところだった。
「やっと来たかね、ランサー。」
響く声の先には第二再臨姿にエプロンを纏った、英霊・エミヤだった。
「ふん!てめぇが俺に食わせたい飯があるって聞いたんでなぁ。来てやったぜ。」
冷や汗が止まらない。微かに香る唐辛子の匂い、確かにこの匂いを嗅いだことがある。
「座りたまえ。折角の料理が冷えてしまったからな、少し温め直すとしよう。」
座る前に目視出来たのは赤と白のコントラストだった。
「変な顔をしているな。」
慣れた手つきでフライパンを揺らしながら弓兵は続けた。
「何故、麻婆豆腐かと思っているのであろう?」
「あぁ。そりゃぁな。」
机の上で手を組み、必死に何かわからない気持ちに耐えた。
「前に、言っていただろう。嫌いな食べ物はないが麻婆豆腐はあまり好まないとな。」
「俺が、いつそんなこと…!」
「私と呑んでいた時だな。たまたま何を思ったのか君はそう呟いていた。」
少し悲しそうな顔を弓兵がした。
「本能的に、麻婆豆腐が苦手というのはわからんでもない、わからんでもないのだが…。赤は私の色でもあるだろう…。」
目が合う。その先は言わなくてもわかった。
「はんっ!犬じゃねえって言ってんだろ!喰ってやろうじゃねぇかアーチャー!!!」
頬を染めながらこちらに笑う弓兵を余所に鼓動は早くなった。
「待たせたな。さぁ、召し上がれ。」
赤い情熱の色を纏うそれには不思議と忌避感はなく、むしろ喉が鳴るくらいだった。時間も時間だったのでついでに腹も鳴った。
「いただきます。」
れんげで掬って口に入れる。熱い、火傷しそうだ。だがそれ以上に美味い。こんな麻婆豆腐食べたことがない。瞬く間に皿の中は空になった。
「はぁっ…。……うま、かったぜ。」
「それは何よりだ。」
したり顔の弓兵はコップ一杯の水を目の前に置いた。一息に飲み干した。
「熱い。」
「そりゃ辛いものを食べた後だからな。」
「堪らなく身体が熱い。…アーチャー、お前。この熱の冷まし方、知ってんだろ。」
意趣返しだと言わんばかりに熱がこもった瞳で睨みつける。
「ラ、ランサー…。」
立ち上がった槍兵は弓兵を肩を抱き自室に消えていったという。


食堂に残された彼らは思った。「他所でやってくれ…。」と。最期の一皿を槍兵が完食したことにより、エミヤの熱が放熱され、サーヴァント達は正常に戻っていたのである。
「はいはい!みんなお疲れ様ー!起きた起きた!!やることあるんだから突っ伏したままでいない!」
事が終わったのを感知した三人は食堂に戻り、残されたサーヴァントたちのケアに努めたのであった。
「エミヤの愛のこもった麻婆豆腐、俺も食べてみたかったなぁ。」
「エミヤさんのことですからお願いしたら作っていただけるのではないでしょうか。」
そうだね、と笑い合う二人であった。しかし、2柱の女神がメニューへの追加に拒否の姿勢を示したため再度作られることはなかった。深夜の裏メニューとしてたまに作られているとかいないとか。



「君の熱は、いつまで経ってもこの身を焦がし続けるな。」

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