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【倉本聰 ここだけの話40】「かっちゃん(勝新太郎)とはね、何度も仕事しかけてるんですよ」

メディア文化評論家
ミモザの花 2026(筆者撮影)

脚本家・倉本聰さんと交わしてきた「ドラマをめぐる対話」を、取材ノートから再構成しています。

碓井 倉本作品にはさまざまな役者たちが起用されてきました。脚本を具現化する配役へのこだわりが人一倍強い倉本先生の目に、彼らはどう映ったのか。とても興味があります。
倉本 映画『海へ~See you~』(1988年)を書いたときは、中森明菜でやる予定でした。本当は明菜とマッチ(近藤真彦)でやりたかったんですよ。
碓井 えー! 実際には桜田淳子さんでしたが、明菜さんならまた別のものになってたと思います。
倉本 映画『冬の華』(78年)の池上季実子の役も、山口百恵で書いたんですから。
碓井 そうなんですか。池上さんの美少女ぶりが際立ってましたね。
倉本 『駅 STATION』(81年)に登場した3人の女優は倍賞(千恵子)、いしだ(あゆみ)、烏丸(せつこ)でしたが、烏丸の役はもともと大竹しのぶで書いたものです。

碓井 それは初耳です。
倉本 でも、しのぶがつかまらなくて、烏丸になった。烏丸も良かったんですけどね。
碓井 ええ。一方の男優でいえば、勝新太郎さんはどうなんですか。
倉本 かっちゃんとはね、何度も仕事しかけてるんですよ。けど、全部潰れているんです。
碓井 結局、実現しなかった。
倉本 本当に僕と気が合ったし、しゃべって飲んだんですけどね。ものすごくひらめきがいいんですよ。ただ、ひらめきはあっても構成するのは苦手。

碓井 勝さんらしいです。

倉本 「これはこうやってこうするけど、どうだ?」と言われて、「いいね」と返す。すると「じゃあ、今度はこれでどうだ」っていう感じなんだけど、話としてつながらないんですよ。
碓井
 個々の発想は面白いんだ。

倉本 面白いんだけどねえ。それでいつもケンカの寸前まで行って「これ以上、しゃべってるとケンカになるからやめよう」って別れちゃう。ずいぶん一緒に旅館にこもったりしましたよ。
碓井 ものを創ることに関してはとことんのめり込む。
倉本 クリエーターとしての情熱はすごかったですね。
碓井 他に関わってきた男優といえば石原裕次郎さん、高倉健さん、田中邦衛さん、それから……。
倉本 笠智衆さんですね。
碓井 笠さんは、僕も『波の盆』(日テレ系、83年)でご一緒しました。ぜひ伺いたいです。
倉本 僕の中の印象として、笠さんは小津(安二郎)さんが亡くなってから変わったと思うんです。
碓井 どういうふうに?
倉本 以前、NHKが映画『東京物語』(53年)をリメークしたんです。

碓井 71年の『海の見える家』ですね。短期の連ドラだったと思うんですが。
倉本 ええ。原節子の役を八千草(薫)さんがやったんですけど、この時の笠さんが素晴らしかった。小津さんの束縛から完全に抜けた感じだったんです。まあトシも取って、役柄の年齢と重なっていたし、なんとも良かったですね。
碓井 小津監督から箸の上げ下ろしの位置まで指示される芝居じゃなくなってたと。
倉本 自由になった。解放されたんでしょうね。笠さんは秀逸でしたし、八千草さんも良かった。あのテレビ版『東京物語』はすてきだったなあ。

(次回に続く)

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ありがとうございます。
メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術選奨」選考審査員(2025年度、18年度~20年度)、「芸術祭賞」審査委員(22年度)。

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