ピンク色の彼女に花束を
金を回して金で金を増やす仕組みを作ったやつが強いんだ。
1.山岳都市ニャンダム-露店バザー
「どけゴミどもー! プレーリードッグ様のお通りじゃ〜!」
冒険者ギルドのゴミどもと一緒に露店バザーを肩で風切って歩いてブイブイ言わせている。
廃人オークションと冒険者ギルド。
それら二本の柱によって俺は適当に喋ってれば巨額の金が入ってくるようになった。
金ってのは女と似てる。使ってやらないと拗ねるんだ。
俺は散財を惜しまない。景気良く金をバラ撒く俺にゴミどもは付いてくる。
結局のところ世の中金よ。金を持ってるやつが強いんだ。
飛ぶ鳥落とす勢いの俺であった。
とはいえ俺みたいなゴミが調子に乗っていれば、それが気に食わねえってんでブッ叩いてやろうとするゴミも居る。
木を隠すなら森の中。ゴミを隠すなら夢の島だ。俺の取り巻きに身をやつして潜んでいたゴミが俺に襲い掛かってきた。危なーい。俺はころりと地面を転がって回避。九死に一生を得たぜ。チッと舌打ちした刺客が素早く反転して駆け出す。に、逃がすな! 捕えろー!
捕縛成功。
さあ、お待ちかねの尋問タイムだぜ。
俺はゴミに羽交い締めにされてる刺客の頬を札束でブッ叩いた。おらー!
幾らで雇われた! 倍出すぞ! 俺の側に付けやー!
刺客がハッとした。
「あなたが俺のマスターか」
よしよし、なかなか賢いゴミだ。そうと決まれば話は早えな。よっしゃ飲み行くぞー! 付いて来いやー!
ゴミどもが喝采を上げた。
「奢りっスかマスター!?」
たりめーだろが! 俺に付いてくるヤツにはイイ目を見せてやる! ギルドの綺麗どころを集めろ! ギルドマスター直々の依頼だ! 依頼内容はオメェらの接待だよォー!
「女っスか!? またジャムジェムさんに刺されますぜ〜!」
いンだよ! ちょっとくれー刺されたからってオタつく俺じゃねえ! 行くぞぁ!
「どけどけーぃ! プレーリードッグ様のお通りじゃ〜!」
ええ気分じゃのう! わっはっはー! わっはっはー!
2.クランハウス-ジャムジェムの部屋
人間は考える葦である。
…B.パスカル
3.翌日-クランハウス-居間
さて、赤カブトさんに命乞いしてお持ち帰りされて恥ずかしがるAI娘にブッ刺された次の日の朝の出来事である。
ポチョを抱っこしてミルクを飲ませてやっていると、玄関のほうで物音がした。至福の時にうっとりしていた金髪が跳ね起きて俺の横にキチンと座り直す。
「客人のようだな」
元騎士キャラなりに赤ちゃんプレイを誰かに見られるのは恥ずかしいという認識はあるようだ。俺も心得たもので、腹の収納スペースに哺乳瓶を仕舞い込む。そしてポチョの肩にガッと腕を回して抱き寄せた。
あんまり離れるなよ。俺が寂しがり屋なの知ってるだろ?
「う、うん」
ポチョは素直にコクリと頷いた。よしよし。
さて俺と金髪の至福のひと時を邪魔する奴は誰だ?
フリエアだった。
ネフィリアのクラン【提灯あんこう】に所属しているノミ女だ。マゴットのリア友でクラスメイト。直接そう聞いた訳じゃないが、ガキンチョ同士で話してるのを聞けば自然と分かる。あいつら今日の授業でさーとか平気で言いやがるからな。マゴット辺りの言葉を借りれば新世代のネトゲーマーってことになるのか。身バレをまったく気にしてない。
ウチの居間にトコトコと上がってきたノミ女はちらっとポチョを見て、
「私、邪魔?」
邪魔だが気にすんな。何か相談があって来たんだろ? 先送りにされても面倒だ。いいよ。どうした?
フリエアは小さく頷いて向かい側のソファに腰掛けた。……キレイに座るな。こういう何気ない所作に人間の育ちは出る。
フリエアは俺の頭部に飾りで付いてるつぶらな瞳をじっと見て口を開いた。
「なんか最近マゴットさんに避けられてる気がするんだけど」
具体的には?
「くっ付いても嫌がられるとかじゃないんだけど、マゴットさんのほうから近付いてくれない。多分、私の近くに居ないようにしてる」
ふうん。まぁ大体分かったよ。
お前さ、ずっとマゴットに興味ないふりしてただろ。それが急に近付いてきたもんだから戸惑ってるんだよ。お前が前に何かやって嫌われてるとかじゃなければ、だけどな。まぁ八方美人のお前のことだ。その線はないだろう。
「その八方美人って言うのやめてくれる? 前にタマっち言ってたでしょ。私の立ち位置がどうこうって。あれ半分くらい当たってるかもしんない。あの時は私もちょっとイラ付いてたから意地になっちゃった。ゴメンなさい」
そういうところだろうな。
フリエア。お前はバランス感覚がいい。だったら分かるだろ。グループの中には力関係ってモンがあるんだよ。どんなに仲良くてもそうさ。言ってみれば村社会に近い。集団生活してればどうあっても役割ってモンが生まれる。
マゴットはな、お前と仲良くすることで自分のグループの力関係が変わることを警戒してるんだよ。極端な例になるが……。ジャイアンが急にのび太とつるみ出したらスネ夫は困るだろ。スネ夫はドラえもんが何かやったと疑うさ。ジャイアンとのび太の間に何かがあったとは考えない。それは、のび太がドラえもんのひみつ道具に頼ってきたツケでもある。簡単じゃないんだ。人間関係ってヤツは。
「それ私がジャイアンのポジなの?」
どちらかと言えば出木杉くんなんだけどな。出木杉くんはできすぎるから劇場版でハブられるんだよな。皮肉な話だよ。窮地に陥ったメンバーでのび太が解決案を出すのは劇場版の見せ場だからな……。そこに出木杉くんが居たらおかしな話になっちまうよ。
「あの、ゴメン。ドラえもんの話はべつに……」
いいや、フリエア。お前は劇場版のキレイなジャイアンになるんだ。
ジャイアンのイイトコはな、劇場版ののび太が頼りになるからってスネ夫を決して蔑ろにしないトコなんだ。自分はコイツらのボスだから、いざって時に身体を張るのは自分だと決めてる。ボスがそういう姿を見せるからスネ夫ものび太と協力するのさ。ジャイアンの陰に隠れがちだが、劇場版のスネ夫はそりゃあもう勇ましいもんだぜ。戦友なんだ。
まぁさっきも言ったが人間関係は簡単じゃねえ。マゴットと仲良くなりたがってるお前を、お前のダチはどう思ってるのかな? マゴットの反発の理由はその辺りにあるのかもな。それに……お前モテるだろ。そういうところから火が点くんだ。
そうさ。人間関係は簡単じゃねえ。ウチの金髪が俺の腕をへし折ろうとしているようにな。おい、ポチョ。俺の腕はそっちに曲がらねえぞ。
「わ、私が曲げてあげる」
誰もそんなこと頼んでねえ。
やい、フリエア。無理を承知で言うんだが、俺のことを守ってくれねえか。
「キレイな彼女さんですね」
そのキレイな彼女さんとやらが俺の腕をへし折った。頬を赤らめてポツリと呟く。
「……見た目より折れやすいの。コタタマのそういうところが可愛くて」
もじもじと内ももを擦り合わせたポチョが俺の手を取って指を一本ずつへし折っていく。こら。そういうのは二人きりの時だけって約束だろ?
フリエアがじっと俺たちの遣り取りを見ている。ポチョは慌ててパタパタと両手を振った。
「い、いつもこういうことしてる訳じゃないからっ」
可愛いやつめ。俺は頭部をぐりぐりとポチョに押し付ける。
俺たちがイチャイチャしていると、いつの間にかフリエアは姿を消していた。空気を読んで帰ったようだ。
俺はポチョの部屋に連れ込まれてじわじわとなぶり殺しにされた。
ポチョを抱っこして居間に戻る。
ゴブサタということもあって金髪はすっかり俺にメロメロだ。ぴったりと密着して身体を押し付けてくる。
ウチの子たちは俺を殺すことに幸せを見出しているようだし、俺も経験値稼ぎして少しでも残機を伸ばしておかねえとな。ソファに腰掛けた俺はせっせと藁人形をクラフトしていく。
時にポチョよ。何か欲しいものとかあるか? お前らには何かと苦労を掛けた。だが今や俺もブルジョワの仲間入りよ。お前らを金で不自由はさせねえ。どうだ? 何でもいいぞ。
「ん〜。考えとく〜」
そうしてくれ。
問題はジャムジェムだな。あいつ、ペットを飼いたがってる。どうしたものか……。
「あ。思い出した。ママ。ポチョ子ね。追加ディスクが欲しい」
うん? 追加ディスクって……。リアルのアドレス交換はダメだぞ。身の危険を感じる。俺はお前らのことを大切に思ってるが、そこはネトゲーマーのケジメとしてだな。
ポチョはふりふりと頭を小さく横に振った。
「ジャムのこと。コタタマがペットになってあげて?」
……ぱらぱらと雨が降っていた。
カッと雷光が走り、雨足が強くなる。
俺のピンクバージョンに大いなる進化の時が訪れようとしていた。
これは、とあるVRMMOの物語。
税抜きで¥6980になりまーす。
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