種族人間再生計画
1.クランマスター会議
「レギオン?」
「そう。まぁ呼び名は何でもいいんだけど」
主だったクランマスターを集めて会議をしている。
先生も居るぞ。
俺はサトゥ氏の斜め後ろに立って会議の成り行きを見守る。
サトゥ氏はぐっと身を乗り出すと身振り手振りを交えて熱っぽく構想を語り出した。
「俺はクァトロを救い出したい。けど、人を集めるなら目的を絞る必要はないよなって思ったんだ」
「……サトゥ。そんなことより、あんたの後ろに立ってる黒いのは何なんだ?」
サトゥ氏は無視して続ける。
「ユーザーイベントに付き纏うある種の芋臭さは、やっぱり俺たちはプロじゃないってことなんだと思う。告知が甘い。規模が小さい。色々な要因はあると思うけど、どこか内輪ネタに走り気味というか、本気でプレイヤー全員を巻き込んでやろうっていう気持ちが欠けてるんじゃないか」
俺は胸に生えてる顔をぐるぐると回した。ルーレットみたいにくるくると回って最後には定位置の上下逆さまに収まる。
知らないゴミが俺を指差して吠える。
「おい。おい! そこの黒いの! お前だよ。何してる。お前、何だ?」
俺に興味津々かよ。仕方ねえな。俺は自己紹介した。
俺はペタタマ。しがない鍛冶屋さ。俺は廃人じゃないが、今回はサトゥ氏の補佐に付くことになった。こいつはさっき呼び名は何でもいいと言ったが、要はクランでもギルドでもない集団を作ろうってことさ。どちらか片方に偏りたくねーんだ。なんでかっつーとコイツは……サトゥ氏はな、プレイヤーと【ギルド】の垣根を取り払おうとしてるのさ。つまりレギオンの最終目標は最高指揮官の説得ということになる。そう、クァトロくんと一緒さ。
どうだい? 大それた野望だろ? だが俺は案外マトを射てるんじゃないかと思ってる。
見ての通り俺は【ギルド】だ。ラム子に洗脳されてる。だが人の心を持ってる……。そして可愛い。
俺は両手を組んで胸を突き出しながら全身に力を込めて黒光りする二の腕を強調した。
「今の俺は限りなく着ぐるみ部隊に近いということだ」
「殺すぞゴミが」
「汚いプレーリードッグだよお前は」
「ドブだ。ドブの底だッ。ドブネズミ野郎!」
おいおい、そう殺気立つなよ。
話の続きをしよう。俺はぺらぺらと口を回した。顔もぐるんぐるん回る。
見ての通り俺は人間を超えた。俺に更なる力を与えたのはラム子だ。きっかけは【狙撃兵】の洗脳を振り切ったことだった。
そのことから【狙撃兵】はラム子の命令で動いていなかったことが分かる。それがヤツの特性なのかどうかは分からない。もしかしたら単なる雑兵じゃないのかもしれない。元よりレベル2000越えは行きすぎだと思っていた。
どうだ? 【ギルド】側の仲間は便利だろう? これで俺の助けなんざ要らねえなんてヤツが居るならそいつは単なるアホだぜ。
つまり俺は少なくともお前らがクァトロを遺跡の最下層から連れ出すまでは最大限の協力をできる。ラム子がそれを望んでいるからだ。利害の一致だな。
だからサトゥ氏は俺を補佐に置いたのさ。俺は【ギルド】を支配できる。【狙撃兵】クラスは無理でも【歩兵】なら意のままに操れる。
クァトロくん救出後までは保障できんがね。新たな命が下るかもしれん。お前らと敵対することもあるだろう。だが俺なんてレイド級と比べたら可愛いもんさ。
分かるだろ? 俺はお前たちの味方さ。この身体は凄いぜ……。力がドンドン湧いてくる。
そこでさっそく壺を作ってきた。
俺は部下に命じて壺を会議室に搬入した。
さあ、どうだい? イイ色してるだろ。苦労したんだぜ。壺はただ綺麗に焼けばいいってもんじゃないからな。
俺は歯列をギラつかせて言った。
「幸運の壺さ」
俺は会議室から追い出されてしまった。悲しい。もるるっ……。
ともあれ、種族人間はクァトロくん奪還に向けて動き出すことになった。
会議室から追い出されたので詳細は分からんが、ひとまず現実を直視しようという話になったらしい。
俺たちは人間の里の跡地へと出向き、そこで地獄を目の当たりにした。
2.ポポロンの森-人間の里-復興中
不特定多数のゴミどもがもるもると威嚇しながら遮蔽物を利用して殺し合っている。
人間の里が滅ぶ前、曲がりなりにも種族人間が共存できていたのは惰性と暗黙の了解によるものだった。
初期に解放された攻撃魔法【全身強打】は非生物を透過する性質を持っており、家を破壊することはできなかった。しかし【重撃連打】は違う。家を破壊することができる。
積み木を見れば崩したくなるのが種族人間の習性だ。
出る杭は打たれる。転がってる資材があれば落し物と見なす風潮。土地の奪い合い。様々な要素がゴミどもを争いへと駆り立てる。
先生は深くお嘆きになられた。
「原因は女神像だ」
女神像の存在が一等地を明確なものにしてしまっている。だから互いに譲り合うことができない。いっそ破壊してしまえばいいのだろうが、生憎と女神像は何をどうやっても壊れない。
遮蔽物から飛び出したゴミとゴミが交錯し、残像の尾を引いてパッと離れる。
野生化した種族人間の唸り声が聞こえる。
俺はハッとした。サトゥ氏っ、囲まれてるぞ……!
言うが早いか、身を潜めていたゴミどもがぞろぞろと出てきて俺たちを取り囲む。
「もるるるるるっ……!」
サトゥ氏が剣を抜いて構えた。
「まずはここからだ。始めるぞっ。人間の里を制圧する!」
俺はぐるんぐるんと顔を回した。
これは、とあるVRMMOの物語。
邪悪な生命体がゆるキャラみたいな顔して立ってる。
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