松浦勝人が知る、世界的DJ達のジレンマ「マリアではマニアックな曲をかけて、すごく楽しそう」
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約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのこととは。 【写真】松浦勝人「最初から“最高”を提供する」日本でEDMフェスULTRAを開催した理由
メインはダメ、サブの方がいい
アジアのなかで、タイとインドネシアはクラブ文化が盛ん。バリ島なんかはクラブだらけだし、バンコクにも、日本よりも全然大きいクラブがたくさんある。かかっている音楽は世界共通。なぜなら、世界的に有名なDJが、タイやインドネシアにもどんどん行って回しているから。僕たちも六本木でクラブ「オクタゴン」を運営しているけど、規模の点ではやはり負ける。DJたちからは「なんで東京にはもっと大きなクラブがないの?」と言われる。悔しい。 集客数の問題があって、世界的なトップDJを気軽に呼ぶわけにはいかない。それで、まだ若手だけど勢いがあるDJを中心に呼んでいた。そういうDJたちと仲良くなって、そのなかから有名になるやつも出てきた。もうすっかり世界レベルの有名人なんだから、僕のことなんか忘れていてもおかしくないんだけど、なぜか覚えていて、親しくしてくれる。それが素直に嬉しい。 先日見に行ったタイのEDCでも世界的なDJが全員そろっていたんだけど、やっぱり本家ラスベガスを超えることはできていなかった。観客の熱量とか規模感とか。なんだろうね、悪くないんだけど何かが足りていなかった。 12月にはトゥモローランドがタイのパタヤで、アジア圏で初めて開催される。もうチケットを取っておかないと間に合わないほど人気になっているみたい。本拠地のベルギーと同じ規模感でやってくれるのではないかと期待して、またタイに行ってみようと思っている。 タイのEDCで面白かったのは、メインステージよりもサブステージのほうが熱気があったこと。ステージが5つぐらい用意されていて、同時にパフォーマンスが行われている。観客は自分で好きなところに移動して楽しむという仕組み。 有名なDJは当然メインステージに出演して、観客もそこがいちばん集まる。サブステージは、若手が中心。観客の数はメインステージよりも少ないんだけど、熱気というか盛り上がり方はサブステージの方が上回っていた。 ある有名DJと一緒に見ていたんだけど、彼も「メインはダメだ。サブの方がいい。サブのやつらの方がいい」と盛んに言っていた。「こういう熱くて若いDJがメインに出なければダメなんだ」と酔っ払いながら力説していたけど、僕もそのとおりだと思った。 有名DJが登場して、いつもの曲をいつものように回すだけではいまいち盛り上がれないよな、と思う。 手抜きをしているとか、そういうことではない。みんなが喜ぶ曲というのは大体決まっていて、それをみんなが望むタイミングでかけなければならない。このパターンでやれば確実に盛り上がるという計算が入ってくるから、慣れてきて、お仕事感が出てきてしまう。メインステージはその計算に頼りすぎているところがあった。 人気DJは、世界各地を飛び回っている。今日はプーケット、明日は東京、みたいな生活をしているから、疲れも出てきてしまうんだと思う。有名なDJでも、USBで回している人もいた。わかっている人が見ればこれも手抜きではないんだけど、やっぱり観客は盛り上がれない。有名DJには課せられているものがあるから、仕方のないところもあるんだよね。