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The Works "三度目の正直(春コミ無配)" is tagged "槍弓" and "腐向け".
三度目の正直(春コミ無配)/Novel by たまこ

三度目の正直(春コミ無配)

3,097 character(s)6 mins

春コミではありがとうございました!
当日スペースで配布してた無配です。Twitterで流してたカルデアバレンタインに加筆したものです。

通販分が予想外に早く終わってしまった(ありがとうございます…!)ので再販しようかちょっと迷っております。もし欲しいよって方いらっしゃいましたらご意見お聞かせください。

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一昨年は朝食のトレイにコーヒーのふりをしてこっそり乗せられたホットココア。去年はまるで隠すかのように部屋の冷蔵庫へしまわれていたガトーショコラ。どちらも残さずに美味しくいただいたけれど、さて今年はどんなもんかね。いけすかなくて素直じゃなくてでもそこがどうにも好ましい連れ合いのことを考える。三度めになる今回も、ランサーは『彼』になんの催促もしていない。ひとえに強請られたから仕方なく用意してやった云々の姑息な逃げ道を潰すためなのだが、再召喚されてからこっち、初日こそは肌を合わせたものの、その後はとんとご無沙汰どころかろくに二人きりで会話もできていないとなると話はちょっと変わってくる。
ランサーにほんのちょっとの期待と不安と覚悟を抱えさせながら、カレンダーはあっさりバレンタインデー当日を迎えていた。
新しい本拠地でも変わらず繰り広げられている、甘ったるく仁義なき聖戦。今年はまさかの本狩りがメインイベントだ。いらぬとばっちりを受けぬ程度に茶々を入れながらも、青い尻尾はなんとはなしに弓兵の姿を探していた。数時間前に食堂で背中を見かけたのが最後だが、まあほっといても部屋に来るだろう、いや来てくれるはず。と慢心して早々に自室へ戻ったのがいけなかった。
まあ待てど暮らせど奴は来ない。部屋の小さなテーブルにも、冷蔵庫にも、ベッドの下にもバレンタインの贈り物らしき代物は全く見当たらない。なんのアピールもおねだりもしていないのだからまあ当たり前と言えば当たり前なのだがアレッおれたちってそういう仲じゃなかったっけ…とランサーに一抹の不安がよぎる。
いっそあいつの部屋で待ち伏せしてやろうかと胡乱な目が据わったところで、空気が抜ける音と共に出入口のドアが開いた。
「……っと、いたのか」
「自分の部屋にいて何が悪いんですかねェ」
「随分と御機嫌斜めのようだな」
「誰かさんのおかげでな」
「それは重畳」
「るっせ。ほっとくお前が悪い」
フリーパス設定がしてあるのは己と、マスターと、懇ろの仲の弓兵だけのそのドア。ぱちぱちと慣れた手つきでホログラムキーを操作し、ロックをかけたアーチャーが振り返る。その右手には小さな箱がひとつおさまっている。
なんだよやっぱ準備してんじゃねえの。
単純だと笑わば笑え。そんな小箱ひとつで地を這っていた槍兵の機嫌が上向く。
腰かけた寝台でそわそわと肩を揺らすランサーの目の前で、するすると解かれていく箱にかかった真紅のリボン。中にはこれまた小さなガラス瓶。茶色と、白と、ピンクのごくごく普通のビー玉大のチョコが詰められている。今までの変化球と比較するとオーソドックスなタイプだ。まじまじとその瓶を眺めているところにアーチャーの宣言がふりかかる。
「……最初に言っておくが、私は今酔っている。そりゃもうべろんべろんに」
「……おう」
その割には耳も額も赤くないし酒精の香りも何もしないが、彼が酔っているというなら酔っているのだろう。そういうことにしておく。
「なので、これから行うことは酔っ払いの蛮行だということにしてくれると嬉しい」
そう高らかにのたまったのち、きゅぽ、とコルク製の栓が抜かれてチョコレートボールがひとつ、褐色の手のひらに転がり落ちる。そのまま、チョコレートはアーチャーのくちびるに吸い込まれた。
「あっ」
てっきりもらえるものだとばかり思っていたそれの行方を追いかけ、つい腰を浮かせた不安定な体勢のところに容赦のない体当たりを食らう。咄嗟のことに受け身も取れぬままベッドに倒れこむと、視界に広がるは白い無機質な天井…ではない。
照明を背に落ちる陰と、その中でとろとろに蕩けた鋼のまなこ。への字に突き出されたぽてりとした口元が、まっすぐに近づいた。
「へ……待っ、んぐ」
それは勢いあまってがちりと前歯がぶつかる不器用な接吻。弓兵の咥内でとろけたミルクチョコに塗れた舌がもたりと歯列を割って、粘膜を絡めるように侵入してきた。衝撃でじんと痺れた上顎をそっとつつきながら慎重に。そして大胆に咥内を肉で満たし、火傷しそうな熱さにチョコレートがさらに融解していく。
ただただ暴力的に甘いそれは口移しのチョコレートなのか、彼の魔力が混じる唾液の所為なのか。なるほどこいつはたしかに蛮行だ。開きっぱなしのランサーの目には、伏せた瞼で白い睫毛がぴくぴくと震えているのが映る。日頃の翻弄されっぷりを復讐するかのように、ちゅくりと舌の側面を嬲られ、ランサーの胴がぶるりと戦慄いた。
「……ふ、んぅ」
嚥下する体液に香るカカオの芳香。尖らせた舌先で辿られるエナメル質ごと融けてしまいそうな甘ったるさが鼻について仕方がない。
ひとしきり自称酔客の好きにさせていれば、集中しろと言わんばかりにこちらの舌先を食んでくる。一方的な交接では物足りないとでも言うような甘噛みを何度か受けるうち、お互いの咥内からすべてのチョコレートが舐め取られて姿を消していた。
ようよう離されたくちびるに、思わずぷはりと息が漏れる。
「……んっだよ……随分と熱烈なプレゼントだな」
「こういうのは気に入ららいか?」
「舌まわってないやつに言われたくねえー」
「うるひゃい」
もごもごと舌を動かす恋人の口まわりは溶けたチョコレートでべたべただった。ということは自分のそこも同様の惨状なのだろう。指先で拭うのは簡単だがそれも何か勿体無い気がして、濡れそぼった眼前のそこへ舌先を伸ばす。ぺろりとひと舐めすれば簡単に仰け反る顎先に思わず苦笑が溢れた。
「……で?この瓶に入ってるチョコをぜーんぶその無防備なお口で食わせてくれるわけ?」
「……まあ、それもやぶさかではない、が」
きみからは食べさせてくれないのか?
耳元にダイレクト、あの艶めくバリトンボイスで囁かれてはたまったものではない。
アーチャーの持つ小瓶を奪い取り、その勢いで体勢をひっくり返す。己よりもガタイのいい身体を組み敷けば、その負荷を受けてぎしりと大きな悲鳴をベッドがあげたが気にしない。
「いつもより煽り方が雑じゃねえ?」
「酔っぱらいだからな、色々とせっかちになってる」
「……つまり?」
「……はやく、」
続く単語はふさがれて喉奥に消えた。シーツの上、ころころと転がりでるまんまるのチョコレート。無造作に口に放り込んだそれは何色だったろうか。まあどれだって相当に甘ったるい代物だけれど。

翌日。
ベッドのシーツ一式を替え、シャワーを浴びたはずなのに未だ濃厚でスウィートな香りが辺りに残る中。うつ伏せに倒れこんだまま身じろぎもしないアーチャーが、夜の名残をまとわせながらも底冷えのするかすれ声で呟いた。
「……だからといって一晩で全部食べろとは言ってない……」
「あぁ?バレンタイン限定のサービスだろ?」
じゃあ当日中に食わなきゃ、と全裸でベッドに腰掛けるランサーは最後の一粒をくわえ、そしてそのまま枕元へ顔を伏せて数十秒。
「それともなにか、いつでもこうしてほしいとか?」
鼻に抜けるカカオの芳香と、さらりと落ちてくる蒼糸と、こっくりと融解した朱いひとみに無防備なまま曝されてアーチャーが無事でいられるはずもなく。わたわたと紡いだ戯言は文字通りで皮肉にもならなくて。
「…………べつに、お前がしたければそういう、つもりがないわけでも、ないというかいやなんでもないそうだ、そうだな限定だ!残念だったな続きはまた来年ということで」
「ほーお、来年」
せいぜい楽しみに待ってやるよと、掘られた墓穴に土をかぶせてやるランサーなのであった。

Comments

  • ゆきもん!

    March 5, 2019
  • そー
    March 3, 2019
  • sei@万年金欠病
    March 3, 2019
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