なぜ貴重なコメを精米して1か月強で売り場から撤去し処分してしまうのか
あるスーパーで取材しているとき、精米して1か月経ったら「廃棄する」と聞いて驚いた。
他のスーパーにも聞いてみたら、「廃棄する」と答えたスーパーがあった。そのほか「従業員に安く売る」「フードバンクに寄付する」「コメの納入業者に返品する(その後、外食産業にまわす)」などの回答を小売店からいただいた。
精米1か月強で売り場から撤去する商慣習
精米は、JAS法と食品衛生法で「生鮮食品」として扱われるため、賞味期限の表示義務がない。そのため、スーパーなど多くの食品小売店では精米後1ヶ月強で売り場から撤去し、処分する商慣習がある(1)。
以前は「精米年月日」まで表示していたので、精米後30日で売り場から撤去していたが、現在は「精米時期」として旬表示になっているので、スーパーによっては40日というところもある。
農家「精米回数や出荷回数が増え、手間や人件費が増大している」
このことについて3月8日に記事(2)を書いたところ、小売店にも出荷しているというコメ農家の方から次のコメントを書いていただいた。
小売店にも出荷している米農家です
この精米後1か月で売り場から撤去は本当に改善してほしい
冷蔵庫じゃなくて冷暗所に置いておくだけで、数か月以上は普通に食べれるので、せめて2か月ほどにしてほしい
この1か月のために精米回数を小分けにしたり、出荷個数を少なくして回数を増やしたり手間や人件費が増大しています
少しでも安く消費者に届けるためにも本当に改善してほしい
「精米後1か月強で売り場から撤去」のルールによって、農家が精米する回数や出荷する回数を増やさなければならない状況になっているという。
研究者「25度保存で2ヶ月の賞味期限」
精米の賞味期限について研究した研究者は、保存温度25度で2か月の賞味期限があるとしている(3)。保存温度が20度なら3か月、15度で5か月、5度で7か月、おいしく食べられる。
スーパーの冷蔵ケースに精米を置くのは現実的ではないが、もうすこし販売期間を延長することはできるのではないだろうか。前述の農家の方が「せめて2か月」と言っているように、2か月に延ばすだけでも、コメ農家の方々の手間や人件費は減らせるのではないか。
アイリスオーヤマは「賞味期限1年間」
台湾では、市販のコメは真空パックで販売されているらしく、賞味期間は1年間に設定されていると、台湾在住の方から伺った。
日本の業界団体に取材したところ、真空パックは「コストがかさむ」「流通段階で破損が生じる可能性」で難しいとのこと。
アイリスオーヤマは、15度以下の低温管理で品質を保ちやすく、包装材として窒素入り高機密パックを使い、脱酸素剤を同封することで、精米後、賞味期間を1年間に設定している(1)(4)。
すべての流通米で、今すぐアイリスオーヤマと同じような方法をとるのは難しいと思うので、せめて食品小売店の「精米後1か月強で売り場から撤去」のルールを見直してほしい。
参考情報
1)『私たちは何を捨てているのか 食品ロス、コロナ、気候変動』(井出留美、ちくま新書)
2)同じコメなのに、精米して1ヶ月強で処分してしまうものと、精米して1年間売れるものがあるのはなぜ?(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2026/3/8)