論考⑨─③ 比喩の表記

比喩は48種類あるとされる。その中でも換喩について取り上げてみようと思う。

Aさんは歩く辞書だ、という換喩の表記は、正確に語りえているわけではない。この換喩の表記は何かを示しただけにすぎない。語りえることのない表記でも示すことは可能である証にほかならない。歩く辞書という換喩の表記は辞書を記憶に留めていることを示していることが懸念されうる。歩く辞書という換喩の表記では語りえていないことについては反駁があるかもしれない。歩く辞書という語で語りえていると考える視点があるからである。しかし歩く辞書という語では語りうるのに不足を感じることが考えられる。したがって、Aさんは歩く辞書だ、という語では語りうることにアクセスしようとしても語りうることにアスペクトしていない、ということを導き出せる。ただ、歩く辞書だ、という語は示すという一点においては十分な要素命題である。もしかしたらAさんは辞書だ、という、歩くという要素命題を省いて表記することも、示すという一点において十分であることも懸念されうる。Aさんは歩く辞書だ、という表記とAさんは辞書だ、という表記は似つかわしいのである。歩く辞書という語は辞書という書物を嗜んでいることを仄めかしている。Aさんは辞書だ、という意見においては辞書という書物を嗜んでいることを仄めかしている。Aさんは辞書になれない、という語においてはAさんは辞書の多くの箇所を憶えるには至らない、ということを仄めかしている。Aさんは歩く辞書になれない、という語においてはAさんは辞書の多くの箇所を憶えるには至らない、ということを仄めかしている。(歩くという語がないときと同じ仄めかすアスペクトが考えられる)。しかし、Aさんは歩く辞書になれない、という語においては、辞書を大量に憶えてもそれを売りにすることはできない、というニュアンスも考えられる。言語の表記が多ければニュアンスや解釈にも幅がみられるか、という疑問があるが、それは言語の命題を取り上げることによって追々明らかになるであろう。予想としては言語の表記が多ければ多いほどニュアンスは多くなることが考えられるが、言語を入れ換えて表記したときはニュアンスに幅が増えるわけではない。「この世は明るくなる」という語においては、この世は良くなっていくというイメージが齎される。「この世は暗いところから明るくなる」という語においては、「この世は暗いところから良くなっていく」というイメージが齎される。言語(暗いところからという語)が増えるとイメージも追加されることがある。「私は騎士である」という語においては、私は騎士という存在であるというイメージが齎される。「私は大丈夫である」という語においては、私は大丈夫である存在であるというイメージが齎される。述語を入れ替えてもイメージが増えるという感ではない。「私は大丈夫である」と「私は大丈夫だ」というように断言の仕方を入れ換えてもニュアンスに変化はない。しかし、私は大丈夫である、という言い方の響きと私は大丈夫だ、という言い方の響きには少なからず差異がある可能性がある。私は大丈夫である、という言い方の方が私は大丈夫だ、という言い方より好感度があるかもしれない。エクリチュールにおいては、私は大丈夫である、という書き言葉より私は大丈夫だ、という書き言葉の方が自然感があるかもしれない。私は大丈夫ではない、という言い方より私は大丈夫じゃない、という言い方の方が砕けた印象を受けるかもしれない。私は大丈夫ではない、という書き言葉より私は大丈夫じゃない、という書き言葉の方が否定した感があるかもしれない。

表記には言語を意図的に使用することは当たり前であると考えられるが、現表記においては詭弁とは区別されるしっかりとした文章を書くことになる。意図的に詭弁を呈する文章は現表記とは区別される。現表記で書きなさい、という命題があるとき、詭弁を書くわけにもいかないであろう。しっかりとした文章と詭弁は区別されるべきである。詭弁を呈するのではなく現表記しか書かないスタイルの方が面白い文章であることも懸念されうる。

私は面白い文章を書きたい、という言い方と私はしっかりとした文章を書きたい、という言い方では、どちらに好感度が高く受け入れられるであろうか。この二つの現表記は、文章の向上性を思わせる内容である。面白いというよりしっかりとした、と言った方が好感度が高く受け入れられることも第一感である。

私は面白い人を呼びます、という言い方と、私はしっかりとした人を呼びます、という言い方では、面白い人を呼びます、と言った方が関心を持たれることも懸念されうる。

私は面白いことをします、という言い方と、私はしっかりとした行為をします、という言い方では、面白いことをします、という方が興味をそそられる可能性があるであろう。

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