透「プロデューサーが若返った」
ふとした拍子で10年若返ったPがノクチル4人の通う高校へ訪問したら……と妄想して書きました。
n番煎じのネタなので作者の解釈とご理解いただければ幸いです。
過去にも透やノクチル関連で何本か書いてますので、未読の方は宜しければお時間ある際にどうぞ。
【余談】
Pは10年前の時点で身体は殆ど出来上がってると思います。
ベージュのカーディガンも似合う気がするのですが、単に作者の考えが古いだけかもしれないです。
また、作中の若返りの原因の元ネタは『白乾児』です。
原作と効能は逆になるので『黒乾児』ですかね、読み方がわからないですけど。
日頃から、すき!いいね!ブクマをありがとうございます!
Twitterも宜しければ、次回投稿作やシャニマス関連の事を時折、呟きます。
ご感想や次回作要望ありましたら、お気軽にコメントやDMなど何かしらの手段でいただければ幸いです。
㊗️2021/11/04~2021/11/10の[小説] ルーキーランキング54位
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「ふあぁ……」
自室のベッドで目を覚ますと、重い筋肉痛のような痛みが全身を襲う。
枕元の携帯のアラームを止めて、時刻を確認する。
年齢からか、寝起きの身体の痛みに耐えつつ洗面所へと向かった。
「え……誰?」
洗面所には知らない誰かがいた。
……いや、正確には鏡に写っている。
前日の深酒の影響か、ずきずきと痛みだす頭を咄嗟に手で押さえると、目の前の鏡の中の人物もトレースしたかの様な動きだ。
「……俺なのか?」
少しずつ冴えてきた頭で、よくよく見るとどうやら自分自身で間違いない。
ただ、10年程は若返っている、中学か高校ぐらいの思春期の自分だ。
夢かと思い、冷水で顔を何度も洗い、見直しても結果は変わらない。
「……どうしよう、これ」
~~~~~
「朝起きたら若返ったから、元に戻るにはどうすればいいかってことですか~?」
事務所内のはづきさんは首を傾げて溜息をつく。
「……なんでプロデューサーさんが。私だったら良かったのに」
「……はづきさん?」
「こっちの話です」と軽く咳払いをされ、仕事に戻ろうとするはづきさんを呼び止める。
「助けてください!切実かつ危機的な状況なんですよ!」
「……私のことドラ●もんだと思ってるんですか?ひみつ道具とか何も持ってない只の事務員ですよ〜」
「そんな……一生このままだと、俺はどうすれば……」
「逆に何が困るんですか?プロデューサーさんの見た目が15.6歳に若返ったということは、その分は長生き出来るじゃないですか〜?」
「いや、まぁ……寿命とか別にいいですよ。最悪、家族や友人、担当アイドルにも説明すれば済むと思います。だけど……」
そこで、一呼吸して呟く。
「……お酒買えないですよ。年齢確認されて、免許証出した時に、この顔で信じられますか?どう見ても兄貴の免許証で買おうとする非行少年に見えますよね」
財布の中から免許証を取り出し、はづきさんに写真と見比べてもらう。
「……確かに、兄弟に見えますね。仕事といえば社用車なんて運転したら一発で免停ですね〜」
「免停どころか、もっと厄介な状況になりますよ!戻る方法とか一緒に考えてくれませんか?」
「うーん。仕方ないですね〜。じゃあWahoo!知恵袋に相談してみますね」
「ちょ、はづきさん!真面目に……」
「いや、真面目にと言われても。他にどうすればいいか、プロデューサーさんは分かりますか~?」
そう言われると、ぐうの音も出ない。
はづきさんは知恵袋へ端的に、この状況を書き込んだ質問を投稿する。
「すぐに回答は来ないと思うので、その間はお仕事しましょうね〜。プロデューサーさんは特に今日は打合せとか無いですよね?」
確かに今日の予定は珍しく溜まった事務仕事の処理ぐらいで、担当アイドルや外部の打合せも無かった。
「……ところで、なんで若返ったかの見当はつきますか~?」
「うーん。帰宅するまで普段通りですが……強いて言うなら中国に出張した友人から古酒を送ってもらって、それを寝る前に少し呑んで……」
「……その話、詳しく教えてください」
〜〜〜〜〜
「あっ……そういえば」
午後になった頃、PCを叩く手を止めて携帯を取り出す。
「どうされたんですか〜?」
はづきさんはニコニコと珈琲入りのマグカップを側に置いてくれるも……なぜかミルク入りだった。
「いや、昨日透にノートを返すの忘れてたんです。帰りに事務所へ寄ってもらおうかと」
「なら、プロデューサーさんが行って届ければいいじゃないですか〜」
はづきさんは「ちょっと待っててください」と席を立ち、どこかへ行ってしまう。
確かに、こっちの不手際で家から遠い事務所へと寄ってもらうのも悪い。
それに今の自身の姿は高校生ぐらいだからイケるか……いやいや、そんな訳ないよな。
「……これ着てみてはどうですか?ちょっと大きめだったので、アイドルの皆さんじゃ着れなかったんです〜」
はづきさんはベージュのカーディガンを手に持って戻ってきた。
「いま着ているジャケットとネクタイを外して、これを羽織れば見た目は高校生ですよ〜」
確かに、普段から4人が通う高校には未だに足を踏み入れたことなかった。
今から向かえば放課後ぐらいに到着するだろう。
またとない機会だし、変装?してこっそり行ってみるのも良いかもしれない。
「……そうですね。なら、お借りします」
「……その代わりなんですが、1つお願いがあるんです〜」
〜〜〜〜〜
事務所を出た後、4人が通う高校の正門前へ到着し、最後の授業が終わるまで待機する。
今の服装は白いYシャツの上にベージュのカーディガンを羽織り、下にはスーツ用の黒いスラックスだ。
見た目は自分でもなんだが、高校生くらいに見える。
はづきさんが事務所の倉庫から引っ張り出した、一昔前の紫色のスクールバッグを肩に背負い、正門前の壁へともたれかかる。
しばらくすると、チャイムが鳴ってちらほらと学生が正門から出てきた。
「ねぇねぇ、あの人誰か待ってるのかな?」
「他校の人かなー。話しかけてみる?」
「えー、彼女さんでも待ってるんじゃない」
「でも、身長高くて顔も格好良くない?」
目の前を通り過ぎる女子高生達が何やらヒソヒソと話しているような。
……やっぱり、ちょっと恥ずかしい。
近くのコンビニに透を呼び出そうか考えていると、見慣れた2人が目の前を横切った。
「お、小糸ー!雛菜ー!」
「ぴゃっ!」
「へ〜?」
雛菜は不思議そうな表情で、小糸は雛菜の背中へ隠れてしまう。
「えーっと、誰ですか〜?」
雛菜は当然の疑問を口にする。
そうか、まず説明しなくては。
「あー、えっと、君らのプロデューサーの〇〇です」
胸元から免許証を取り出すも「はぁ?」といった反応。
……そりゃそうだよな。
正直、上手く説明出来る気がしない。
「あー、雛菜わかったかも〜。ドッキリでしょ〜?」
「え……雛菜ちゃん。ドッキリなら言っちゃ駄目じゃないかな?」
「確かに、今後の仕事で、もし気付いたとしても絶対に言っちゃ駄目だぞ……でも、これはドッキリじゃないんだ」
2人にこの前の仕事や、送り迎えでのやり取り、担当プロデューサーでなければ知らない事を説明する。
……そして今朝起きたら若返っていたことも。
「よくわかんないけど〜、本当にプロデューサーなら、一緒に写真撮ろ〜」
「……一応理解しましたけど、プロデューサーさんは何でここに?もしかして……転入手続きですか?」
「いや、確かに高校生に戻りたい気持ちは少なからずあるが……透に届け物を渡しにきただけなんだ」
鞄からノートを取り出そうとして思い浮かぶ。
このまま2人に預けてしまえばいいか。
「なぁ、2人とも。これを……」
「透先輩は、課題の居残りだってチェインあったね〜」
「円香ちゃんなら、まだ残ってると思います。プロデューサーさんが来てるって伝えましょうか?」
居残り課題を邪魔するのはよくないし、2人にそれまで付き合ってもらうのも悪いよな。
「いや、それなら自分で校舎に入って届けにいくよ。透の教室を教えてくれないか?」
「……教室じゃなくて、今は図書室にいるって〜」
「え……雛菜ちゃん、それは……」
「……図書室か」
こそこそと小声で話し合う様子の2人に図書室の場所を聞く。
「また明日、事務所で」と手を振って、2人が帰宅していくのを見送り、正門をくぐった。
〜〜〜〜〜
下駄箱の横にある来賓用のスリッパを1組借りて校舎内を歩く。
廊下の掲示物や時折すれ違う学生を見ると、つい自分の学生の頃を思い出して感傷に浸ってしまうのは、社会人になってからだろう。
HR後に教室に何人か残って机を挟んで話す男女のグループや、部活の準備でユニフォーム姿のまま廊下を走る生徒、どこに寄って帰ろうかと話しながら下駄箱へ向かう帰宅部の集団とすれ違い、いつの時代も変わらないのが妙に心に響いてしまう。
校舎内の図書室は上階の廊下の端にあり、そっと中に入って見渡すも、テーブルの利用者は誰もいないようだ。
「……あの、ここの生徒ですか?」
背後から声を掛けられ、咄嗟に振り返って頭を下げる。
「あ、すいません、ちょっと用事があって……」
顔を上げると、見知った顔が腕を組んで不思議そうに見つめていた。
「……って円香じゃないか」
「失礼ですね……急に名前呼びですか?」
「はは……すいません。あの……」
そうだ、円香は透と同じクラスだったよな。
透の居残りを待っているのならば、ノートを渡してもいいかもしれない。
「急なんだけど、ま……樋口さんに渡したいものがあって……時間いいかな?」
「……渡したいもの?」
「あぁ、ここで渡したいんだ」
「……っ……ここで?」
鞄を探っている間、円香は顔を赤らめてそっぽを向く。
「あった、これなんだけど……」
「ノート?……こういうのって普通は手紙じゃないんですか」
「?……これ透への届け物なんだが渡してくれるか?」
「……はぁ?まったく……自分で渡しなさいよ」
「えーっと、ここにいるって雛菜に聞いたんだけど?」
「浅倉なら教室で居残り課題やってます。というか、そもそもあなたは誰?」
かくかくしかじかと自身の状況を説明する。
「信じられない……というか、万が一信じたとしても、校舎の無断侵入は許されるんですか?Mr.逆コナン」
「それは申し訳ない……けど見てみたくなったんだ。4人の通う学校の中を」
「……そうですか。浅倉は4組にいますから、私は委員会の仕事があるので」
「ありがとう。渡したらすぐに帰るからさ」
〜〜〜〜〜
円香に伝えられた教室の前に到着するとドアには『居残り者課題中』と張り紙がされていた。
扉の隙間から室内を覗くと、透は一人だけで机に向かっていた。
ただ、ペンも握らずに窓の外をぼんやりと眺める様子で、いつ課題を終えるかわからない。
廊下に人がいなくなるタイミングを見計らって、音を立てない様に教室の後ろのドアを開ける。
「……透、課題やってる時に悪い」
背中に向かって、小声で呼びかけた。
「……えっ」
透は驚いた表情で目を見開き、こちらを見つめる。
そりゃ、いきなり後ろから声かけられたらびっくりするよな。
「えーっと、俺は……」
「……うん。待ってたよ」
ん……?連絡はしてなかったが、3人から伝えられてたのか。
安心して近づこうとすると、席から立ち上がった透の目からはポロポロと大粒の涙が溢れていた。
「本当に……ずっと待ってた。遅いって、迎えにくるの」
まずい、寄り道しすぎたか。
透の前へ急いで近づき、目の前で鞄からノートを取り出そうとすると、不意に抱きしめられる。
教室に差す夕陽は傾き、黒板をキラキラと照らし出していた。
「透……?」
「……もう、先に行かない、私を置いてどこにもいかないって約束して」
……ん?何の話だ?
「えっと……あの」
「……大好きだよ。もう絶対離れないから」
まずい、誰かと勘違いしてるのか?
というか、透は好きな人いたんだな。
「透!俺はノートを持ってきただけだから。課題は終わったか?」
「ノートとか課題とか、どうでもいいよ」
何とか引き離そうと抵抗するも、より力強く抱きしめられる。
「あなた達、何してるの!」
教室のドアが開き、女性教諭が入ってくる。
「あの、すいません。助けてください」
すぐに両手を挙げ、抱き着いて離れようとしない透を指差し、助けを乞う。
室内の状況を察したのか、女性教諭はゆっくりと近づいてくる。
「浅倉さん、課題終わったの?あと、そこの男子を離してあげなさい」
「嫌。もう二度と離さない」
「……というか、あなたはどこのクラスの生徒なの?」
「いや、自分はここの生徒じゃなくて……」
〜〜〜〜〜
何とか背中に回された手を離してもらうも、今度は片方の手をぎゅっと握られる。
「あの……透、手を離してくれるか」
無言で首を振られ、抵抗したら腕にしがみついてきそうな勢いだ。
「浅倉さん、この課題やらないと留年するかもしれないですよ。まずは、そこの男子の手を離してあげられませんか?」
「構わないです、留年でも退学でも。手を離すとすぐどっか行っちゃうんで、この人」
「おいおい、留年も退学も駄目だって。どこにも行かないからさ」
「ちょっと職員室から他の先生方も呼んできます……」
そう言って女性教諭は教室を出てしまう。
どうしよう……これ以上大事になると困る。
先生集団には、この状況をどう説明すべきか見当もつかない。
どうにか透の気を逸らすには……
「透……あれUFOじゃないか?」
「あっ、そう」
不意に、窓の外の空を指差すも反応は無い。
あさひだったら即座に窓に飛びつくんだが……
「……透、目を瞑ってくれないか」
「え……うん」
言われた通り、透は目を瞑って顔を向ける。
なぜか顔を赤くして唇をとがらせてもいた。
……やりたくないけど、これしか思いつかない。
ポケットから携帯を取り出して準備する。
「ゆっくり、目を開けてくれるか」
「……うん」
「……悪いな、また会えるから」
携帯のライトを最大輝度にして目に当てる。
ほんの一瞬だけ、透の手の力が抜けた際に振り払い、教室から飛び出した。
走りづらいスリッパをその場で脱ぎ捨てて、廊下を全力で走る。
後ろから追いかけてくる足音は透だろうか。
来たところの下駄箱へ飛び込み、急いで靴を履き、正門へと駆け出す。
高校からある程度離れたところで、何とか振り切れた様子だ。
「……ノート渡しそびれた」
〜〜〜〜〜
次の日、寝起きで恐る恐る鏡を確認すると、普段の自分自身の姿に戻っていた。
「……あれは、夢だったのか?」
冷蔵庫にある酒瓶と鞄の中にあるノートを見て、何とも言えない気分になる。
……後ではづきさんに聞いたところ、知恵袋の回答の中に『呑む量に寄るが、大体1日で元に戻る』と書かれていたらしい。
だが、自身で呑むことはもう無いだろう。
〜〜〜〜〜
「あら、はづきの持ってきたお酒珍しいわね」
「千雪もどう?」
「中国のお酒……?」
「そう、プロデューサーさんから貰ったの」
「なら、少し貰おうかな」
「……ちょっと待って、明日は千雪もお休みよね?」
「そうだけど、なんで?」
「ふふ、一緒に原宿や渋谷とか巡りましょ」
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