地に落ちる…“和牛日本一”のブランド信頼――「畜産県に大打撃」「偽装は許せない」。怒りあらわの同業者 水迫畜産が表示不正
農林水産省は10日、水迫畜産(指宿市山川)が牛肉商品の牛種や原産地、個体識別番号を正しく表示せずに販売したとして、食品表示法や牛トレーサビリティー法に基づく表示の是正や再発防止策の実施を指示・勧告する行政指導をした。商品の原料に黒毛和種以外や他県産を使用しているのに「黒毛和牛」「鹿児島県産」と表示、事実と異なる個体識別番号を使うなどしていた。 【写真】〈関連〉不適正表示が確認された水迫畜産の商品(農林水産省提供。赤線部分が不適正表示)
水迫畜産はステーキや切り落としなどの原料牛肉に肉専用種や交雑種、ホルスタイン種を使っていながら「黒毛和牛」と表示。沖縄県産や宮崎県産を含んだ商品も「鹿児島県産」として販売した。さらに、異なる個体識別番号の原料牛肉を複数使っているのに一つの識別番号のみを表示した。 ◇ 水迫畜産(指宿市山川)の牛種や原産地、個体識別番号の不適正表示が10日、明らかになった。県産和牛の需要は新型コロナウイルス禍での消費低迷から回復途上で、県は一層のブランド力向上や国内外での販路拡大に取り組む最中だった。県内畜産関係者からは「畜産県にとって大ダメージ」「偽装は許せない」などの声が上がった。 帝国データバンクによると、水迫畜産は業種別売上高が県内2位の大手。和牛の生産から加工まで手がける北薩地方の畜産業者は「(水迫畜産は)かなり規模が大きく、鹿児島の畜産業全体の信頼失墜につながるのでは」と危惧する。 加工・販売の際は、個体識別番号などに間違いがないよう気を遣っており、「交雑種を黒毛和種とうたうと、キロ単価が1000円ほど上がる。偽装はあってはならない」と強調した。
水迫畜産と業務提携を結ぶ食肉卸大手のスターゼン(東京)の担当者は一報に触れ「驚いている」。阿久根と南さつま両市の工場で水迫畜産の牛を仕入れている。購入した牛は個体識別番号を厳重にチェックしており、安全性に問題がないことを急ぎ確認した。「水迫畜産の改善への取り組みを注視したい。取引先や消費者へも誠実に対応する」 県内のある生産者は「風評被害を受けかねない。(ライバルの)宮崎牛を選ぶ客が増えるのでは」と憤る。不適正表示のあった2023年はコロナ禍の影響が残り外食需要も戻らず、業界は苦しい時期だった。「黒毛和種が動かない代わりに、交雑種やホルスタインなどの安い肉を加えて売り上げを伸ばしたかったのでは」といぶかしむ。 鹿児島県は全国和牛能力共進会(全共)で2連覇し、県は「和牛日本一」を掲げ応援店の登録や県外でのキャンペーンなどPRに注力していた。県畜産振興課などの担当は「関係機関と一体となって取り組んできた矢先。出はなをくじかれた思い」と口をそろえた。
県内畜産関係の不適正表示問題は、県外産牛肉を鹿児島県産などと表示していたことが24年に判明した蓬の郷(よもぎのさと)=志布志市=以来。蓬の郷は牛肉約50キロ、豚肉約85キロを志布志市の返礼品として販売し、九州農政局から是正勧告を受けた。
南日本新聞 | 鹿児島