「東大が掲げる“多様性”なんて完全に欺瞞です」高校中退→引きこもり→早稲田卒業→議員秘書→フリーター→…38歳で東大医学部に入った男が痛感させられたエリートの“冷たい壁”
「あの先生、ちょっと精神的に参ってるな」
――治療が医師自身のセルフケアにも繋がっていると。 西村 ええ。例えば「内観療法」という、自分の過去の記憶や親との関係を徹底的に掘り下げて認知の歪みに気づいていく治療法があるのですが、これをやろうと思ったら、医師自身が自分の過去に向き合っていないと絶対にできません。 ――しかし、深刻なトラウマを持つ患者さんと日々向き合う中で、医師自身が患者の重い感情や境遇を受け止めきれないこともありそうです。 西村 あります、あります。患者さんの重い感情や境遇を真正面から受け止めてしまって、医療者側が病んでしまうことは実際にありますよ。人間関係のドロドロした部分を毎日聞かされるわけですからどうしても引き摺りこまれそうになるんです。ただし本当に優秀な医療者とは患者と自分の間にキッチリと線引きができる人です。その点、私などはまだまだ未熟なんでしょうねぇ。 ――そうした危うさもある依存症の分野に進もうと決断されたのはどうしてですか。 西村 吉田先生のお仕事を拝見して、こうした分野において自分のバックグラウンドを活かせると感じたことは大きかったと思います。あと、もうひとつ、東大の医局に入れてもらえなかったという事情もあります。 ――医局に入れないというのは、どういう状態ですか。
西村 医局というのは、その大学病院や関連病院の診療科ごとの巨大な人事を握っていて、キャリア養成機関としての役割を担う場所です。通常、出身大学の医局に入れないことはあまりありません。体感では8〜9割ははじかれないと思います。
“社会からこぼれた”人を拒絶する東大医局に感じた違和感
――ほとんどの人が入れるにも関わらず、西村さんはなぜ入れなかったのでしょう。 西村 私の年齢や経歴が怪しいからでしょう。履歴書でみたとき、あまりに寄り道が多すぎるし、いわゆる“外れ値”と思われたのだと思います。実際、同時期に医局に入ったメンバーをみても、特に自分の能力が劣っているとは思いません。怪しげでかつ年齢が行き過ぎていることが原因だったと思わざるを得ません。 ですから、東大が「多様性」を強調することに非常に強い違和感を覚えます。もっといえば、このような大学が多様性を語るのは笑止千万です。世の中に当たり前にいる “社会からこぼれた”人たちの声を聞く準備が整っているようには感じられません。 ――幸か不幸か、それでキャリアの方針が決まった。 西村 そうです。仕方がないので自力で探していたら、アルコール依存症に力を入れている成増厚生病院が後期研修を受け入れてくれ、そこで専攻医研修を行いました。その後、さらに深い勉強をしてみたいと思って久里浜医療センターに移り、その後、同病院の精神科病棟長を拝任しました。そして、昨年4月に、ここ「こころのクリニックひだまり」(東京都練馬区)を開業しました。 すると、これまでは見えてこなかった精神科医療の別の闇に触れることになるんです。 「3ヶ月でマイスリー2700錠」お薬手帳を悪用して30の病院を回って…精神科医が赤裸々に明かす“転売プロ”の巧妙な手口 へ続く
黒島 暁生
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