Beginning
UBWとFGOのクロスオーバー?ぽい士弓主従の捏造if。短いです。
UBW一気見で滾って書いたもの。自カルデアにはリミゼロさんは居ません…
ベッターにあげたものを修正してアップしました。
- 32
- 20
- 2,759
「告げる!」
朝焼けに染まる衛宮士郎のその顔も体も笑えるくらいぼろぼろだった。
実体が解けかけている私の体は日光を遮る役目をほとんど果たせなくなっていて、目を射る光に眩しげにそれを細めながら、それでも奴はこちらをまっすぐに見つめて契約の言葉を紡いでいく。
信じられない事だが、この馬鹿は私に契約せよと迫っているのだ。
だが、契約を求めて伸ばされた手を取るつもりは私にはなかった。
留まる理由も意味も無い。
この現界で成そうと企てていた、八つ当たりにも等しい望みはすでにこの身にはない。
そもそも、それを私から奪ったのはこの愚か者なのだ。
何を思ってこんな無意味を行おうとしているのか気にはなったが、消滅を思い留まるほどの理由にはならなかった。
だがまあ、契約を断られた間抜け面を見ながら消えてやるのも一興だと、目を向けたその姿に、オーバラップするように何かのイメージが重なっていく。
——それは、赤い髪と琥珀の目をした青年だった。
——それは、真紅の籠手を肩に装着し、刀を携えていた。
——それは、無数の傷をその身に刻んでいた。
そしてそれは、衛宮士郎の顔をしていた。
閃くものがあった。
これは、英霊にも守護者にもならない、この男のまた一つの可能性だと。
熱した鉄を何度も何度も槌で打ち刀を鍛えていくように、只人が己を鍛え、果てしない研鑽を積んで辿り着いたその果て、その境地を、存在でも現象でもなく、概念へと昇華させたもの。
そしてその不可視の分岐の糸は、認めたくも気づきたくもなかったが、自分に向けて差し出された衛宮士郎の手を起点としていた。
迷う時間は残されていなかった。
この身を構成するエーテル体の分解は進行していて、すでに足の存在は感じられない。同じく末端である手指の感覚も、そうと意識しなければ認識できなくなっている。
ほとんど衝動的に、伸ばされた衛宮士郎の手を私は掴んでいた。
パスが繋がり、自分の存在が再びこの世界に固定されていくのを感じる。
そしてすぐに、自分でそうしておきながら、最大級の「やってしまった」という後悔が猛烈に湧き上がった。
苦々しい思いで睨みつけた青年のイメージは、私ににこりと笑いかけると唐突に消えた。
後には、私の顔と繋いだ手をびっくり顔のままキョロキョロと見比べている衛宮士郎が残った。
(End)