「船の建造能力は232倍」中国に危機感あらわ…海洋覇権争い見据えるトランプ米政権 ニーズ取り込みへ、競い合う日韓
港に灰色の軍艦が2隻隣り合って停泊していた。韓国海軍の揚陸艦「独島」と、米海軍の多目的補給艦だ。2月中旬、韓国・釜山市にある造船中堅のHJ重工業の影島造船所。周辺は情報流出の防止を理由に、市民の立ち入りやドローン撮影が禁止されている。 ■米海軍と海上自衛隊の多くの艦船が停泊する長崎の佐世保港【写真】 中国との海洋覇権争いを見据えるトランプ米政権が造船業復興に乗り出す中、日本と韓国が米国のニーズを取り込もうと競い合っている。韓国は昨夏に約23兆円の投資を約束するなどして先行。日本も2月に米海軍佐世保基地がある長崎県佐世保市で官民連携会議を開くなど巻き返しを図る。
「米軍艦の整備」先行する韓国…官民一体の支援策が奏功
「中国の船の建造能力は米国の232倍」―。米海軍情報局は、世界の船舶受注量シェアで圧倒的1位の中国に対し、危機感をあらわにする。米国の商用船のシェアは1%に届かず、軍艦の製造能力でも中国に後れを取っている。中国の艦隊は世界最大規模を誇り、アジア太平洋地域で存在感を増す。 トランプ大統領は2025年12月、「トランプ級」と命名した大型戦艦の建造を発表。衰退した造船産業の再生につなげる狙いがある。だが、国内造船所は設備の老朽化に加えて人手不足が深刻で、計画に最大3年の遅延が続出。今年2月13日に公表した「海事行動計画」では、同盟国の日韓両国に協力を呼びかけた。
米国との連携に前のめりになっているのが、造船シェアで中国に次ぐ韓国だ。李在明(イジェミョン)政権と造船企業は、米国の造船業を支援する「MASGA(米国の造船業を再び偉大にの意)」を掲げ、昨夏には1500億ドル(約23兆円)に上る造船投資を打ち出した。 米国では軍艦の海外建造を国内法で禁じており、艦艇の整備、補修、分解修理(MRO)の一部を同盟国に委託している。韓国勢は24年からMROに相次いで参入し、既に6件を受注した。
造船大手「ハンファ・オーシャン」は、米海軍の横須賀基地(神奈川県)を拠点とする第7艦隊などへの多目的補給艦を、九州に近い南部の巨済造船所で整備した。さらに、米東部ペンシルベニア州のフィリー造船所を買収したほか、元米高官(国家安全保障担当副補佐官)をグローバル最高戦略責任者(CSO)に引き抜き、米海軍への営業力を強化している。 他社も相次いで参入し、造船中堅「HJ重工業」が1月から影島造船所(韓国・釜山市)で米艦艇の整備を引き受ける。韓国メディアによると、米海軍のMROの市場規模は年間約20兆ウォン(約2兆1千億円)と推定されている。
韓国は日本が担ってきたインド太平洋地域における米艦艇のMRO需要に照準を合わせ、将来的には米韓の両造船所での軍艦建造も視野に攻勢を強める。米政府関係者は「トランプ政権は日韓両国からの投資額しか見ていない」と述べた。 (ワシントン古川幸太郎、ソウル竹次稔)
西日本新聞社