言語化が苦手、金銭管理ができない、恋愛が一方向…境界知能の人が直面する「厳しい現実」

7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。

言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?

注目の新刊『境界知能の人たち』では、当事者を見てきた第一人者の医師が、全体像をわかりやすく解説する。

(本記事は、古荘純一『境界知能の人たち』の一部を抜粋・編集しています)

-AD-

就労後の困難さは境界知能によるもの

十分な配慮が受けられた高校と異なり、職場内で環境の変化等による不安や不満が増えてきました。就労は継続していますが、日常生活や勤務内容に関する悩みを訴えるようになりました。

ケンタが直面した問題は次のようなものです。

①金銭管理ができない

電子マネーやクレジットカード決済が管理できず、家族が給与を管理している。たとえば、時給が50円上がったことで1日1000円散財する、安いものを買ってもどうせ使わないという理由で短期間に高額の買い物を繰り返す、など。

②ネットリテラシー(ネット情報に対する判断力や活用する能力)のなさ

ネットで検索し、出会った情報をすぐに信じて、都合のよい方に解釈してしまう。

③コミュニケーションの困難さ

自分の困りごとを、他者にわかりやすく説明することができない。職場内のジョブコーチに思ったことを十分に相談できない、またジョブコーチからの助言を正確に家族に伝えることができない。家族は本人の話と職場から得られた情報に差異があると説明。職場内での意向調査のときは、自分の意見を説明できないため、多数の意見に合わせるが、その後自分の意見とは異なることに気づいて悩む、など。

④臨機応変な対応ができない

たとえば、電車の運転見合わせがあると、自身で情報を収集したり、駅員に聞いたりすることができず、家族に電話する。買い物を頼まれても、目的の商品がなければ、そのまま帰ってくる。

⑤健康管理ができない

外見にこだわり、極端な食生活とサプリ摂取やトレーニングを行う。サプリの能書きを鵜呑みにし、他者のトレーニングをそのまま模倣しようとして、自分の健康状態に合わせた調節ができない。寒くても暑くても、自分の気に入った服を着て出かける。

⑥恋愛感情の一方向性

職場内で他の人から好意を寄せられることがストレスで身体不調を呈したが、一方で知り合った女性(境界知能)と安易に同棲することを希望。真面目で倫理感のあるケンタは、家族が反対したため、考えを取り下げ現在も家族と同居している。同棲を希望していた女性とは些細なことで関係が壊れ、何事もなかったかのように思いがなくなった。

⑦自己弁護ができない

コミュニケーション能力とも関連するが、他者に疑われたり、誤解された場合、相手に説明したり諭すことができない。他者から見ると、すぐに行動化する、逃避すると思われてしまう。

これらの困難さは、ADHDや不安障害と直接関連するものではありません。一方で、軽度知的障害(おおむねIQ50〜70)の人に類似するものです。

おすすめ記事