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【槍弓】カラフル×モノクロォム【学パロ】/Novel by 梨:次は5月

【槍弓】カラフル×モノクロォム【学パロ】

9,294 character(s)18 mins

■芸術科槍×普通科弓の学パロです。課題の題材を探していたランサーさんが、アーチャーさんのボディにきゅぴんときてモデルを頼む話。
ついったでちらっと言ってたのはこんな感じでした。続きをもりもり書きたい所存!

■5/5スパコミありがとうございました! 在庫切れとなっていた「愛してると言ってくれ!総集編」(文庫)は再版します。とらさんにて予約受付中(https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031146284/ 5/20頃までは順次増やせます)&次回6/30蒼天にも搬入予定。ご希望ありがとうございます、よろしくお願いします!

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「失礼しましたー」
 おざなりなお辞儀で教官室を退出したランサーは、スケッチブックを小脇に廊下を歩いていた。開け放たれている窓から初夏のうららかな風が吹き込むが、心は生憎の曇り模様だ。
 ――『要旨くらいは早く提出しろよ。作業室の予約も早い者勝ちで埋まってしまうぞ』
 課題の進捗確認に呼び出されたのだ。
 展示会に向け、制作作業はおもに夏休み中に行われる。この時期になって、借り受ける設備や必要資材の申請さえしていないのはランサーだけらしい。
「ったってなあ。アタマで考えて出てくるモンでなし」
 窓の近くにぽつんと設置してあるベンチは、この階に出入りする者が満場一致なら構うまいと置かれた喫煙所である。もちろん学校側に知られれば大目玉を食うので、灰皿は各自携帯しているが。
 もはや自動操縦のように窓辺へ寄りかかり、ランサーはフィルターを咥えた。けれど火はつけずに、スケッチブックを広げる。
 様々なポーズの女性、犬猫などの動物、目についた机上の道具類。食べかけの駄菓子やわりばしを投げ入れたカップラーメンなんてものまで描いている。
 頁を埋める取り止めのないそれらは、まさに迷走の痕跡だった。
 テーマさえ絞り込めていないのに、「まあ、おまえなら大丈夫だとは思うが」と期限の通達のみで放免されたのは、これまでの実績ゆえだろう。
 ランサーは直感タイプである。
 事前申請と異なる作品を提出したことは数知れず、ちまちまスケジュールを決めるのは性に合わない。思うまま、感じたままに手を、体を動かす。その結果、たまたま大衆が良いと思う作品が出来上がる。
 惰性でも及第点は取れるだろうが、つまるところ、コレ!と来る題材がなければやる気の出ない性質なのだった。手を付けては放置する、残骸だけが増えていく。
「どうすっかなァ……」
 ぼやきながらスケッチブックを捲っていると、ビュウと突風が吹いた。
「げっ」
 室内にいるランサーの後ろ髪が踊るほどの風だ。咄嗟にスケッチブックを押さえたものの、バララッと捲れた勢いで数ページが千切れ、空に舞い上がった。
 いくら長身のランサーとはいえ、窓から身を乗り出したところで届くわけもない。二階なら飛び降りたかもしれないが、三階ではさすがに無理だ。
「ちょ……っ、待った待った、待っ――、あっ! そこのあんた! それ!」
 ひらひらと空を泳ぐ頁に向かって叫んだランサーの声が聞こえたか、地上を歩いていた学生のひとりが天を仰いだ。舞い落ちる紙へ、不思議そうに手を伸ばす。
「それ、オレんだから! 今取りに行くんで!!」
 人に見られるのが前提の完成品ならともかく、どうでもいいラクガキだからこそ恥ずかしい。中にはちょっとエッチなスケッチだってあるのだ。落とし物として掲示板に貼り出されてみろ、女のコにどんな目で見られることか。
(通りがかったのが男でよかったー!)
 少なくとも一枚は掴まえてもらえたらしい。飛んでしまった頁をすべて回収すべく、ランサーは急ぎ駆け出したのだった。

 とはいえ、縁も縁もない通行人がランサーの到着を待つ義理などない。歩道脇にでも避けておいてもらえれば御の字であったのに、彼は偶然キャッチした一枚のほかにも拾っていてくれたらしい。
 紙束を手に、街路樹の下で背伸びをするシルエットがあった。あれが先程の男だろう。見下ろした時にはわからなかったが、ランサーと張る長身のようだ。
「ああ、悪い! 助かっ――」
 謝辞を述べようと片手を上げたランサーの足がゆるんで止まる。
 枝に引っ掛かったものを難なく回収した彼は、続けて花壇の中ほどに落ちた一枚を拾い上げようと腰を折ったところだった。
 布地の余らないシャツの背に、体格の良い男なのだと判じた。腕を伸ばす肩の動きに伴って漲る、鍛え上げられた筋肉の隆起が見事であった。半袖から覗く腕は言わずもがな、太く逞しい。
 肉感の生み出す陰影が映える褐色の肌は、ランサー同様に海外にルーツを持つ者か。
 その長い指の届くぎりぎりの位置まで体を倒し、けれどよろけもせず、支えの手のひらを突きもせず、まるで天から糸で吊られてでもいるかのように、指先に頁を引っ掛けると、すっと直立の姿勢へと戻る。
 流れるような所作は、古風な武道を思わせた。
 一種、清浄なその空間。
「上から叫んでいたのは君か。目視した限り、これで全部だと思うが」
 振り向いた彼は、鋼色の瞳をしていた。淡い髪も根元まで真っ白なので、地毛かもしれない。カラコンや脱色は珍しくもないが、そういった洒落気の感じられない地味な服装だった。
「そんなに慌てなくても、私は普通科だよ」
「は」
 くすりと微笑われ、彼をじっと見つめてしまっていたことにランサーは気が付いたが、言われた内容がとんとわからないのは、自分が呆けていたせいではないだろう。
「このような素晴らしいデザイン画をうっかり拝見してしまっても、盗用できる能もなければ機会もないということだ。今時アナログであれば流出もしない。安心したまえ」
 ばかなのか?と言わんばかりに首を傾げ気味にし、揃えた頁を差し出して寄越す。
 卑下だか厭味だか、甘さのある低音が発したその内容に呆気に取られたが、男が実に〝イイ性格〟をしていることだけはよくわかった。
「そりゃどーも、お気遣いいただいて。拾ってもらって助かったよ」
 気に入らぬ、が、ランサーは彼に礼を言わねばならぬ立場だ。すぐに拾ってもらわなければどこまで飛ばされたかもわからない。
 紙束を引っ手繰ろうとすると、しかし何故か寸前に避けられた。
「なんだ、礼に食券でも寄越せってか」
 学食ランチくらい吝かではないが。こちらから言い出すならともかく、要求されると気分はよろしくない。
 男はまたも厭味ったらしい仕種で首を振った。
「謝礼は断っている。善意の拾得者としては、正当な持ち主かわからぬ相手にほいほい渡してしまうのもどうかと思ってね」
「は?」
「これが確かに君のものだと証明は出来るかな」
 ランサーはぽかんと口を開けた。彼は目視で頁の行方を追ったと言ったのだ。目が悪いわけではないだろう。
「持ち主かわからんって……、オレが上で飛ばしたの見たろうが」
「飛ばしたところは見ていないな」
 それは確かに。と、肯いてしまったのが敗因か。
 有名メーカーの同じスケッチブックを使っている学生は多い。当然表紙に記名はあるが、ランサーはページごとにいちいちサインを入れてはいなかった。入れていたとして書き殴りのペンネーム。証明する公的書類などない。
 学生課へ届けておくから後ほど取りに行けと言うのであれば結局、ランサーが恐れていた掲示板貼り出しの刑に処されてしまうではないか。
「よしわかった。今から同じタッチで描いてやる」
「え?」
「何にする。あ、そこに描いてあるモンのが比べやすいか」
 今度ぽかんとしたのは男のほうだったが、ランサーは構わずにスケッチブックを開いた。筆記用具は喫煙道具以上にいつでも取り出せるよう、常に持ち歩いている。
「いや待て、そんなことをしなくても」
「なんだァおい、普通科だから絵はわからねえとか言うんじゃ、」
「礼はいらないと言っただろう!」
「……あ?」
 彼我の間で話が食い違っているようだった。
「誓って、私は人の物を盾に金品を脅し取るような真似はしない!」
 謝礼の強要を疑われたと憤慨した男は、ランサーの広げたスケッチブック本体の上に、拾った頁の束を投げ出した。
「っと、また飛んだらどうすんだ、こら!」
 形の良い指がトンとそれを押さえる。
「いいか。同じサイズ、同じ紙質のスケッチブックは世に星の数ほど出回っているだろうが、ここ、リングに残っている断片。こちらの五枚もの断片とすべてぴたりと一致する偶然性は、それこそ天文学的確率だろうさ。サインなど入っていなくとも、君の持つこの一冊から千切れた頁だということは明らかなのだよ、〝芸術科・造形コースのクー・フーリン〟くん?」
「……なるほど」
「これがこうで、こう、だな。あとで貼り付けるなりするといい」
 紙綴じのリングにぶら下がっている小さな三角形の切れ端。風にもぎとられ、不揃いのそれらは唯一無二であろう。
 元の状態を知らぬ男が、頁順を正しく重ねられたのもそれゆえだ。表紙の記名もしっかり読み取っているし、やはり彼は目が良いらしい。
 ただし円満解決、これにて一件落着となるのは、その探偵じみた指摘をしたのが第三者であった場合に限られる。
「――つまりテメェは、はじめっからオレをからかってやがったんだな?」
 ランサーが赤眼を眇めると、男は目を逸らした。
「いや、ほら、本人確認は義務というか、トラブルに巻き込まれぬための自衛というか……、ともかく気を付けろよ。飛んできた新聞紙で前が見えず、事故になった例などもあるのだからな!」
 反論はなくとも何かしら憎まれ口を叩かずにおれない性分なのか、ランサーへ注意をくれると、彼は背を向けた。小走りに去っていく歩調が罰の悪さを示している。
「もれなくおまえの口がトラブル起こしてんじゃねえのか?」
 それでもぴんと伸びた背筋が開き直りを感じさせ、ランサーは構えていた鉛筆を走らせた。こちらは名前も知らぬのだ。手配書めいた気持ちがなかったとは言えない。
 普通科と芸術科はうっすら仲が悪い。頭でっかちのお堅い普通科にこんないけすかないヤツがいたと、話の種にでもしてやろうと。
 去っていく後ろ姿、木立ちへ腕を伸ばす横顔、それから花壇へ腰を屈めた――
「……ん?」
 己が記憶を紙の上へ切り取って、ランサーは首を捻る。何故彼はあのような、下手をすればすっ転びそうな体勢で拾いものをしたのだろう。
 ランサーは男の立っていた花壇の縁へ、自分も足を掛けてみた。ぐらつくレンガはすでに安定が良いとは言えない。その場でしゃがんでも頁の落ちていた位置に手は届かず、一歩踏み出したいところだが。
「あー、なるほど?」
 長身の自分たちは足もでかいのだ。どう踏み込んでも花を踏む。あの男はやわらかく手入れされた花壇の土に、爪先ほどの足跡をつけるのさえ善しとしなかった。
 まあ単純に靴に土汚れをつけたくなかったとか、かいかぶりかもしれないが。
 それなら他人の落とし物など最初から見向きもしないだろう。思い返せば彼は間違ったことは言っていない。対応自体は真摯であった。
「なんつーか……、生きづらそうなヤツだな」
 絵を描き出したら礼は要らぬと怒った。彼はこんなものが謝礼に値すると、素晴らしい絵だと本心で言っていたのだ。
 足を退けたレンガに腰を下ろし、一心に鉛筆を繰る。ランサーの原動力は興味である。あの皮の中には何が詰まっているだろう。
 削れた黒鉛の粉が散る。風にさらわれる一瞬のきらめきが、男の瞳と似ていた。


 欠伸を噛みつつ校門に背を預けていたランサーは、ようやく現れた待ち人の前にぱっと飛び出した。
「よお」
 その顔を見た途端にたじろいだ相手が、ランサーのことを覚えているのは明白であった。尤も、牙を剥いた猛犬のような表情で立ち塞がれては、負い目があろうがなかろうが、難癖をつけられるものと身構えるのは当然だったが。
「探したぜぇ? エミヤっつーんだってな」
 言うほど苦労はしていない。普通科の白髪というだけで候補は絞られ、何人かに聞き込めばすぐに「それならエミヤくんじゃないかな。困ってると手伝ってくれるよ」と返ってきた。男と女とで待遇が天と地ほども違うらしい。思わず半眼になったものだ。
 それよりも、男の登校時間が早朝すぎて宵っ張りのランサーにはつらかった。
「……こちらには探される覚えなどないが。何か用だろうか」
「おお、重大な用事がな」
 エミヤは警戒もあらわに、ランサーへ半身を向けている。やはりこの男、武道の心得がありそうだ。
 毛を逆立てる様子をとくと眺めた後、ランサーは剣呑な気配を霧散させた。打って変わって、にかりと笑う。
「やっぱイイカラダしてるよな。おまえ、オレのモデルやらねえか?」
 丸く見開かれた瞳が、やはり黒鉛の煌めきに似ていると思った。


Comments

  • あい

    鮮やかで元気な槍くんが可愛い! 続いてください🙇‍♀🙇‍♀

    May 18, 2024
  • わんわんお
    May 18, 2024
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