【槍弓】海賊パロ小話まとめ
以前から海賊パロ書きたいと言い続けていて、短いですがようやく書けました。ついでに憧れ(?)の槍弓に巻き込まれる士も書けたので満足です。
需要あるんだろうか……と思いつつ折角出来上がったので供養します。書いててめちゃくちゃ楽しかったのでヨシ!
世界観は某海賊漫画のようなものをイメージしてます。
●船長槍×クルー弓+キャス
●海賊槍×海兵弓
●海兵槍×海兵弓+士
以上の三本でお送りします。
二つ目は少し前に書いたので他二本と毛色が若干違います。槍弓未満で戦ってるだけ。
三つ目は弓と士が兄弟設定。
どれも違う世界線ですが世界観は同じ。
海賊パロと言いつつ海賊ムーブはあんまりですが、これは海賊パロなんです。
- 56
- 54
- 1,371
船長槍とクルー弓とキャスター
「ふざっけんじゃねぇ!!!」
船が真っ二つに割れるんじゃないかと心配になるほどの怒号と雷鳴のような音が響いたある日の午後。
この船の頭脳たる航海士のキャスターは衝撃で手に持っていた羽根ペンをばきんと折ってしまい、深い溜め息をついた。
「何が、彼の気に障ったのだろうか」
少ししてからキャスターの私室にその特徴的な眉を八の字にしてやってきたコック兼狙撃手の男は、適当に案内した椅子に座るなりそう零した。
「今度は何やらかしたってんだ」
「わ、私は何もしていない。ただ……」
「ただ?」
狙撃手、アーチャーが語るには。
ことが起こったのはご存知の通り今日の午後、お天道様が頭の真上にいるくらいの時間帯だ。数週間の航海の末見つけた島の海岸へ船を着け、下船の準備をしていたアーチャーにこの船の船長――ランサーが声をかけた。
「アーチャー!早く町に出ようぜ!」
「流石行動が早いな、ランサー。私は買い出しの準備があるから後で向かうよ」
「そうか、じゃあもう少し待っ」
「ああそうだ、この島には娼館があるのだろう?女性に乱暴を働くのは承服しかねるが、ああいった場でしか発散できないものもあるだろう。久しぶりの陸だ、私に構わず楽しんでくるといい」
「………………あ?」
ランサーに背を向けたままそう告げたアーチャーはそのまま食料庫へ向かおうとする。確か保存食用のチーズももう残り少なくなっていたはずだから、数を確認してリストに加えておかなければ。そうして買い物メモ用の羊皮紙とペンを手に取ったアーチャーの背中にかけられたのは、数秒前の底抜けに明るいものからがらりと変わったランサーの地を這うような低い声だった。
「テメェ、それは冗談かなにかか?だとしたら全く笑えんぞ」
「……は?何のことだ」
「娼館がどうのって話だよ。んな所に行けとほざきやがったのかテメェは」
「いや、私は指図をしたわけでは」
「そういう事言ってんじゃねぇんだよ。じゃあ質問を変えるがお前、オレがそこに行って女と宜しくやってても何とも思わねぇってのか」
「そこで何故私の話が出てくるのかが分からんが……島に降りてからの行動は自由だと君が決めたんだろう。ならば、私が君の行動に口を出す権利などないと思うが」
アーチャーが答える度にランサーの赤い瞳がさらに濃く染まっていき、トドメのアーチャーの返答に遂に雷が落ちたのだという。
それが、キャスターが一つ前の島で安く手に入れた羽根ペンを一本駄目にすることになった冒頭のあの出来事だ。
ちなみに船中に響き渡った音はランサーが怒号と共にキッチンの扉をぶち壊した音なのだとアーチャーは続けた。
キャスターは事のあらましを聞いてペンを折った時よりも更に深く、肺の中にある空気が底を尽くくらいの長い溜め息をついた。
「そりゃあお前さんが悪いわ」
「なっ何故だ!?私はこの長い航海で溜まった鬱憤を少しでも晴らせるようにアドバイスをしただけだというのに」
「そこから間違ってんだよなあ」
まず航海の上でランサーの鬱憤が溜まることなどほとんどと言っていいほどない。そんなものは近日名が売れてきたおかげで毎日のように勃発する海軍や別の海賊団との戦闘で発散できているだろうことは、船に帰還した奴のやたらと艶の良い肌を見れば察せられる。
特にここ数日は、現在キャスターの目の前で鍛え上げられた自慢の筋肉を縮こまらせてしおらしくしているこの男と無事気持ちを確かめ合ったとかで、稀に見る上機嫌さだった。三日前など、わざわざキャスターの私室にまで押しかけて酒盛りをし始めたのには流石に目を丸くしたものだ。キャスターも酒は好きだしランサー秘蔵の酒を分けて貰えると言うので、勿論誘いを断りはしなかったが。
「あー……、一応訊くが、お前さんはランサーのことどう思ってんだ」
「……?嫌っていたらこの船には乗っていないが」
少しずれた答えが返ってきたのでキャスターは苦笑を漏らす。前から薄々感じてはいたが、この男かなりの鈍感さである。
アーチャーが相談と一緒に持ってきたマグカップに一度口をつけてから、今度はランサーがアーチャーに愛の告白をしたと人伝に聞いたが、と直接的に尋ねてみることにした。
ランサーが己の部屋で蛮勇に語るには、アーチャーからも言質をとったと言うのだ。ならばランサーの想いもはっきりと伝わっている、と踏んだのだが。
「彼が私に?ああ……そうだな、以前宴の席で『好きだ』と言ってきたことはあったが、周囲には他のクルーも大勢いたし、彼も相当酔いが回っていたようだったのでな。本気になどしていないさ」
伝わっていなかった。
ここまでいくと我らが船長が気の毒に思えてくるが、いやそもそも時と場所が宜しくないので一割くらいはランサーにも非があると言えなくもない。
なんとなく予想できつつも、そこでなんて返したんだと問えば『私も君を好ましく思っている』とのこと。
なんて悲しいすれ違いだ。
キャスターは己の部屋で酒を呷りながら感慨深げにアーチャーとの思い出を語っていたランサーの顔をもう一度思い出しながら込み上げる笑いを必死に抑える。マグカップに注がれているのが酒でなく珈琲なのが悔やまれた。
他人の恋愛事情ほど酒の肴になるものはそうないのである。
「それに、ランサーが私なんぞをそういう目で見ているなど有り得ないことだ」
「何故そう言いきれる?」
「以前皆が食堂で好みのタイプの話をしていた時にな、話を振られたランサーが言ったのを聞いたんだ」
『オレは胸がデカくて、腰が細くて、ケツがデカい奴が好みだ』と。
「どう考えても私には当てはまらないだろう」
ついにキャスターは吹き出した。珈琲を口に含んでいなくて心底良かったと胸の内で安堵する。折角四日もかけて作成している海図に危うく真っ黒い染みを作ってしまうところだった。
これだけ相手にアピールをしておいて全く気付かれていないとは、とんだお笑い草じゃねぇか。
一頻り笑い終えたところで、キャスターは目尻に溜まった涙を拭いながらアーチャーに向き直った。当の本人はいきなり腹を抱えて笑い出したキャスターを目の当たりにして眉間に皺を寄せている。
「あー悪い悪い、想像以上にあいつが不憫でな」
「発言と態度が合っていないぞ」
「まあなんだ、要するにお前ら二人で腹割って話せってこったな」
「は……?」
「おい、キャス」
キャスターがついとアーチャーの後ろに視線を送ったと同時に、がちゃりとキャスターの前――そしてアーチャーの背後――の扉が開かれる。
扉の向こうから相変わらず不機嫌そうな声色で現れたのは渦中の船長殿である。
「…………なっ」
「コイツ、貰ってくぞ」
「ああ、ドーゾドーゾ」
島に降りたきり暫く船には戻って来ないと思っていたのか、予想外の人物の登場に驚きのあまり固まっているアーチャーを軽々と肩に担ぎこみ、ランサーはさっさと部屋を後にする。私室の扉が閉まるまでの間にアーチャーの悲痛な叫び声が遠ざかっていくのが耳に入るが、キャスターは特に気にする様子もなく机の引き出しを漁った。
「あの感じだと三日は宿から出して貰えねぇな」
引き出しから取り出した愛用の煙草に火を灯して肺に煙を送り込む。
当初は二日滞在の予定だったが、これは一週間ほど延ばさざるを得ないかもしれん。
キャスターは机の上に広げた航海日誌に2daysと書かれた部分に新しく取り出したペンで二重線を引き、その隣に1weekと付け足した。
どのシチュもハマってて素敵です!続きが…続きが気になります!