駒鳥と歯車
ぷらいべったーより、FGOベースの緑茶と紅茶の話。
リアリスト同士でロビエミには至らないけれどおそらく腐向け。
玉藻さんが出張ってます。
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そう大した因縁は無いが、実のところあのクソ狐ほどは根底の相性が悪い訳じゃなく、むしろ共通点の多さ故に癇に障る男なのだ。
小器用で素直じゃなく、地位も栄誉も持たない、ただの一般人から派生した栄光や崇高さとは掛け離れた英霊らしくない英霊。
「キャラが被ってる」と評した自分の言葉を自画自賛したくなるほどには似通ったところがあり過ぎて、だからこそオレとアイツを隔てる狂気という差異を、心の底からおぞましく思う。
ーーーオレは最初から、輪の中には入れない存在だった。
何故、と思ったことが無いとは言わないし、幼い心を悩ませもしたけれど、結局オレは現実主義で諦めるのが早かったから、己の領分を弁えのらりくらりと生きて生活するのは容易かった。
悩んでもどうにもならないことはある。
オレが妖精憑きであるのも、天涯孤独の身の上であるのも。誰を責め誰を恨んだところで変わるようなものじゃない。
だったら、己の領域でやれることやって楽しんじまった方が賢いに決まってる。
終始においてそういうスタンスだったから、若さ故の義侠心と成り行きから己が運命を定めた時も、ある種割り切るのは早かった。
何せこの辺りには、圧政に抗う手段を持つ者が知り得る限りオレくらいしか居ない。オレは英雄にはほど遠い、ただの人間だったけれど。戦う術は無くも無かったし、戦うための動機と目的は相応にあった。
ではせめて、仮初めの英雄が機能する程度には顔の見えぬ義賊として奮戦するしかないだろう。
テメエで決めた役割をやりきると決めたからには、取れる手段は何だってやった。
狩猟で使い慣れた長弓ではなく、殺傷能力に優れたクロスボウを選んだのもその辺りだ。狙撃の為の射程距離よりも暗殺の為の威力と隠匿性を選択し、仕上げとばかりに毒矢を仕込んだ。
誇りと名誉の為に戦う騎士サマ連中に、長弓と違いそこまでの練度と習熟を必要としない弩が、騎士道にそぐわぬと忌み嫌われているのを承知の上で。
卑怯、卑劣、その通りだ。
誇れたことを出来た身じゃない。ただ何もこの手に得られまいとこの道を選んじまった以上、可能な限りやりきらないと嘘だと思った。
どうせヒトの一生などは己の意には儘ならず、後悔と未練を残して惨めたらしく死ぬのなら。今やれることはやりきらなくちゃもったいないってモンだろう。
そうさ。英雄の真似事を始めてしまったからには、もうマトモな人生を送れるはずも、マトモな死を迎えられるはずもない。
覚悟のとおり。
当たり前の終わりが来て、最期に願う想いがあって。
後悔なんて山ほどあるが、それはそれとして惜しいものだと噛み締めつつも、いつものように諦めてしまえる。
そう、たった一つを除いて。
……そのたった一つは、散々にボヤきながら文句を言いながらも、あの時あの月で反りの合わないマスターに叶えさせて貰ったに違いない。
ああ、違う。違うんだ、オレの話じゃないんだよ。
そう、そうだ。
一度や二度やり合って負けたってくらいで、取り立ててアイツとの間に因果やら因縁やらといったモンはないのだけれど。
彼処で逢った赤バカ野郎とほぼほぼ同んなじ存在の、前に出たがるスットコ気障野郎な弓兵は、以前に逢った時よりも公より私に近い状態らしかった。
とは言っても無銘という側面が無くなった訳ではなく、抑止力、社会正義の体現者であることには変わりないらしい。
此処で呼ばれて初めて顔を合わせた時は「げぇ」とあからさまに顔を歪めてしまったし、アイツはアイツであの余裕ぶったニヒルな笑みを浮かべて「奇遇だな」なんて返してきた。
偶然顔を合わせて嬉しくない顔見知り。そのくらいの立ち位置ってとこだろう、お互いに。
イヤミと皮肉交じりの会話を投げかわし、かと言って戦闘で組まされれば、言葉をかわす必要すらなく痒いところに手が届くような援護が入る。
いけ好かない知り合いという間柄を崩す気は毛ほども無かったが、気を遣わなくて良い相手であるのは確かだった。
だってホラ。
ぽつぽつと英霊の数が増えていくこのカルデアって不可思議な空間は、どうしたって周りに英雄殿や騎士サマ方ばかりが揃ってるもんで、オレ程度の霊格じゃイマイチ尻の座りが悪いっていうか。
だからまあ。
気にくわないけど、楽ではあるんだ。
打てば響く憎まれ口の応酬。くだらないことで張り合ったりもするけれど、それでもあの狐みたいに本気で頭に来ないのは、アイツがオレですらも英霊として敬っている部分があるからなのだろう。
面と向かって言われるようなことはなくともそれがわかるからか、オレはアイツのことを好きにはならないが嫌いにもならない。
オレにとってアイツは、悔しいけれどそこそこ話しかけ易いタイプの知己で、同じマスターに仕えるサーヴァントの一人だ。
でもこのカルデアってトコは色んな英霊が集まっているから、アイツをよく知る連中ってのも居て、そいつらとの距離感は驚くほど近い。
その、フユキの第5次聖杯戦争のメンバーだという奴らは、殺し合いも祭りも潜り抜けてきた間柄らしく、端から見ていて奇妙に映るほどに親密だ。あの、人から一線引いた小姑みたいな性格の男すら、あんなナリで末っ子気質なのか、からかわれて遊ばれている時がある。
そういう姿を見たときの、なんとも言えずモヤっとした気持ち。
アイツが誰と仲良くしようが、誰と恋仲になろうが。
マスターの命のついでに、世界とやらを修復し、守ることが出来たらどうでも良いじゃないか。
アイツが、あの男が。
好きかと聞かれたら好きなわけがないって答えるし、嫌いかと聞かれたら好きにはなれねえなと答えるだろう。
言い分が素直じゃなくて弁明やゴマカシが多いのは性分だ、これくらい許されてくれ。だが本当に好きでも嫌いでもないんだ。
アイツの顔はムカつくけれど、その苛立たしさの原因は判然とせず。
誰かとつるむと言っても、料理をしたり狩りをしたり罠を仕掛けたりと、アイツと被ることしかやってない所為で結局アイツのツラばかりを拝んでる。
相談相手すら居ないとか言われるとイタイんだけれど。
ムカつく相手と顔を合わせてばかりで、でも嫌うまでの要素がなくて更にムカつく、といった感じの不毛なループを、割り切りが早いオレにしてはズルズル繰り返していた。