笑顔
1.マールマール鉱山-【敗残兵】前線基地
メイド服に身を包んだ宰相ちゃんがぶるぶると屈辱に身を震わせている。
ほう。似合ってるじゃねえか。俺は本日限定メイドの出来栄えを上から下までじっくりと眺めて感嘆の声を上げた。
普段の飾り気のないワンピース姿もイメージとマッチしてて良いセンスしてると思っていたが、普段とのギャップで清楚さが際立っている。後ろ髪をアップにしたらもっと似合うと思うぜ。ヘッドドレスの主張が強いからな。
「そ、そうやっていつも女性をたぶらかすんでしょうっ。お前という人は……!」
くくくっ。さあ、どうかね? 俺は口が回るからな。だが、お前だって分かってるんだろ? 鏡の前に立ってメイド服を着た自分をどう思った? それが答えだと思うがね。
宰相ちゃんは高校生くらいに見える女キャラだ。
左右で色の異なる瞳、オッドアイが長い前髪越しにちらつく。漫画とかでよく見る前髪を上げたら実は美少女っていうパターンだけど、別に目元が隠れてても普通に美少女って分かる。まぁお約束にケチを付けても仕方ないけども。大切なのは、俺だけは本当はコイツが可愛いって知ってる!みたいな独占欲をそそることだろうし。
それとな。俺は気を取り直して言った。その腰にぶら下げた物騒なものを置け。お前んトコのクランじゃ家の中でも武器を常に持ち歩くのか? いや、いつも持ち歩いてるな。ここ、いつモグラさんが攻め込んできても不思議じゃないからなぁ。とにかく剣は置け。ご主人様の命令は絶対だぞ。
「…………」
宰相ちゃんは聞こえなかったふりをした。ニコッと笑って誤魔化そうとしている。
コンニャロ〜。もう一度言うぞっ。剣を置け! 今すぐにだ! 待て、違う。鞘ごとだ。鞘ごと剣を置け。抜くなっ。その物騒なものを引っ込めろ! 俺を殺して有耶無耶にしようったってそうは問屋が卸さねえぞっ。
チッと舌打ちした宰相ちゃんが渋々と剣を鞘ごと置く。
「……本当は殺されたいくせに。素直じゃないんだから」
俺は一体何者なんだよ? 本当は殺されたいってそんな筈あるかぁ! 吠える俺。宰相ちゃんはハイハイと適当に返事をした。ニコリと微笑んで言う。
「何かお飲み物でもご用意致しましょうか。ご主人様はビールがお好きでしたよね?」
茶だ。茶を持って来い。俺を前後不覚に陥らせるつもりか。その手には乗らんぞ。
ハイハイと適当な返事を寄越した宰相ちゃんが、俺たちの遣り取りを慎重に窺っているネカマ六人衆に声を掛ける。
「イッチさんたちもお茶でいいですか?」
イッチというのはネカマ六人衆の内の一人のキャラネだ。重複したらしいがお構いなしに行ったらしいと聞いている。
重複ネームは避けるというのが、このゲームの暗黙の了解である。フレンドリストに同じ名前のキャラが乗るとプロフィール開かねえと区別つかねんだよな。まぁメニューはカスタマイズできるから、フォルダで整理するなり備考を付けるなりすれば解決する問題ではあるのだが。俺なんかは余計な書き足しはせず、まとめて一斉に名前とログインマーカーが並ぶよう調整している。俺は目がいいからな。その特性を活かそうとするとそうなる。
ネカマ六人衆はコクコクと従順に頷いた。
「お茶で」
「ありがとね」
「一番いい葉っぱをお出しして」
「ペタ氏にはお世話になったからね」
「メイド服似合ってるよ」
「可愛い可愛い」
宰相ちゃんは六人衆に優しい。嬉しそうに笑って「ありがとうございます」と素直に感謝の意を述べた。一礼して居間を出てキッチンに向かう。
六人衆は宰相ちゃんの行く末を心配しているようだった。幹部に昇格したとはいえ、【敗残兵】最古参のコイツらからしてみればまだまだケツの青いガキンチョみたいなものなのだろう。
「ペタ氏は〜……。ウチのメガロッパと、どうなの?」
どうとは?
「仲良いよね。お付き合いしたり、とか」
結婚システムが実装したら考えるよ。仕様によるけど、俺は鍛冶屋としちゃあイイトコ中の下だからな。メガロッパって相当稼いでるんだろ? 何しろトップクランの幹部様だからなぁ。俺と資産を共有してくれるってーなら有難い話だと思うよ。
俺の忌憚なき意見に、六人衆は寄り集まって相談を始めた。
「サトゥと同じこと言ってる……」
「ちょっと頭おかしいよね」
「VRだよ? なんでここまで頑なにMMOと同じノリを貫こうとするの、この人」
「やっぱりもう人間らしい感情が残ってないんだよ。セブンと同類の匂いがぷんぷんする」
「セブンは俺らの知らない内にまったく知らない人と結婚してそうなイメージだよね」
「昆虫めいてるよね。愛を知らない男……」
セブンは侮れねえぞ。俺も六人衆の輪に混ざった。前にワッフルの巣に連れてかれた時にさぁ、ワッフルからエサを恵んで貰ってたんだけど。急に愛に目覚めたとか言い出してさぁ。あいつ、結婚したらベジータみたいになりそう。放任主義なのにトランクスへの期待が半端ないよな。俺の子だし、できて当然みたいなこと言うけどメッチャ嬉しそうっていう。
「ツンデレいいよね……」
「ベジータは師匠が居たら悟空超えてたと思う」
「いつも重力部屋で延々トレーニングしてるだけだもんな」
ベジータトークに花を咲かせていると、宰相ちゃんが戻ってきた。ポニーテールになってる。俺はテンションが上がった。イイネ!
「う、うるさいなぁ。もう」
照れているらしく、俺と目を合わせてくれない。お盆に乗ったティーカップをテーブルに置いていく。紅茶だ。ウチでお茶と言えば緑茶なんだが、こういうところに細かな違いがあるよな。少し金持ちの友達の家って感じだ。
俺は鷹揚に頷いた。うむ、ご苦労。カップを手に取り、いやチョット待て。俺はカップを宰相ちゃんに差し出した。お前、この場で毒味してみろ。
「毒なんて入れてませんよ! そ、そんな交換日記みたいな……」
交換日記ではないだろ。どちらかと言えばデスノートに名前書くようなもんじゃねえか。いいから毒味してみろ。ほれ。
「心外です。……分かりましたよ。飲めばいいんでしょ、飲めば」
念のために言っとくが飲むふりしても無駄だぞ。減ってなければ分かるからな。
宰相ちゃんがカップに口を付けてくいっと傾ける。……よし、飲んだな。確かに毒は入っていないようだ。いいだろう。俺は宰相ちゃんからカップを受け取って口を付けようとして、
「えっ。ちょ、ちょっと待って。少しずらして飲んでくださいよ。そ、そこ私が口を付けたトコでしょ……!」
一番怪しいのはカップの縁なんだよ。お前が口を付けたトコなら毒が塗られてる心配がないだろ。メガロッパよ。お前は賢い。俺が毒味をしろと言ってくるのは読み筋だったんじゃないか? だから一部にだけ毒を塗らなかった。あり得そうな話だ……。
まぁその理屈を抜きにしてもだ。ラブコメとかで、ヒロインが間接キスを気にしてるのに主人公はまったく無頓着で口を付けて真っ赤になったヒロインに「顔が赤いけど大丈夫?」みたいな展開があるだろ。
ハッキリ言うぞ。俺は違うぞ。間接キスを意識してるし、チャンスがあれば貪欲に狙って行く。それはな、お前がキレーな顔してて俺が男だからだよ。理解したな? しろ。では、頂きます。俺は宰相ちゃんと間接キスした。
「あーっ!」
喚き声を上げる宰相ちゃんを無視してコクコクと紅茶を一口飲む。うまし。美少女メイドに毒味して貰ったお茶は最高だぜ。まさに甘露の雫よ。ふぅはははーっ!
おっと廃人三連星が家に帰ってきたぞ。リチェット、セブン、サトゥ氏の三人だ。俺の隣にドカッと座ったリチェットさんのテンションが異様に高い。メイド服の宰相ちゃんを指差し、ばちっとウィンクを飛ばした。
「似合ってる! 髪型もグッドだ!」
宰相ちゃんは恐縮した。ぺこりと頭を下げ、
「はい……。ありがとうございます。お茶を淹れますね」
「いや待て! 私がやろう! たまにはな!」
宰相ちゃんを制止したリチェットさんが居間を飛び出して行った。何なんだ。
俺はサトゥ氏に尋ねる。あの人、どうしちゃったの?
ところがサトゥ氏のテンションもおかしかった。
「もるぅ!」
ああ、いや。もういい。寝てないのか。どうやらマラソンバトルの帰りらしい。徹夜明けでハイになっているようだ。放っておけば、すぐに電池が切れて大人しくなるだろう。
リチェットが戻ってきた。早いな。宰相ちゃんが沸かしたお湯を使ったのだろう。カチャカチャと両手に持ったティーカップをテーブルに並べてドカッと座る。
「ふふ……! どうだ、サトゥ……! 例の野良パ巡りは……!」
サトゥ氏はニヤッと笑った。
「どうもこうも……! まぁウチの新人くらいだ……! 使い物になるのは……!」
そう言って俺をじっと見る。
「もるぅ!」
寝ろ。俺は人が生きていく上で最低限の睡眠を取るよう勧めた。セブンがハッと鼻で笑う。珍しく生きてる。何だよ、セミ野郎。
「勿体ねえな」
あ?
「お前のことだ、崖っぷち。聞けば、サトゥと対等にやり合ったらしいじゃねえか。まぁマトモな手口じゃないらしいが、結果が全てだ。これでミドル層じゃなけりゃあな。そう思ったのさ」
社会の底辺が随分と上から見下してくれるじゃねえか。一体どういう了見なんだよ? あん?
「知るかよ。お前らが勝手に苦労してるだけじゃねえか。スマイルみてえに上手くやったらどうだ? お前ならやれるだろう。そしたら、ちったぁマシになるかもな?」
今ここに居る俺とリアルの俺を同一視するな。リアルの俺は虫も殺さねえと世間じゃ評判の心優しい男だぜ。
俺の言い分をセブンはまったく信用していないようだった。鼻で笑って、それきり口を閉ざす。死んだか? いや、生きてる。しかし放っておけば勝手に死ぬだろう。セブンはそういう男だ。
おや、クァトロくんが居間に入ってきたぞ。ラム子も一緒だ。廃人三連星に同行していたのかもしれない。クァトロくんはソファで寛ぐ俺を見つけてぺこりと頭を下げた。
「あ、コタタマさん。こんにちは。お邪魔します」
よう。今日も可愛い彼女を連れてんね。
「彼女だなんて。そんなんじゃないですよ〜」
クァトロくんは照れた様子もなくパタパタと手を振った。……彼女じゃないなら何なんだよ? 俺は喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。ラム子は何の変哲もない新規ユーザーだ。俺はそう信じてる。そうさ、少しばかり絶望的な力を持ってるくらいだ。可愛いもんじゃねえか。俺はそう自分に言って聞かせた。
【敗残兵】の面々もラム子の存在を自然と受け入れているようだ。特に異論を上げるでもなく、別の話題に移る。三次職のクルセイダーについてだ。リチェットがセブンに水を向ける。
「セブン。クルセイダーの件についてはどうなってる? 条件は分かったか?」
セブンが調査を担当しているようだ。張本人のサトゥ氏はレベリングで忙しいだろうからな。生まれたてのキャラクターは赤ん坊みたいなものだ。多分、初期の経験や習慣付けはキャラクターにとって大きな意味を持つ。サトゥ氏をクランぐるみで計画的に育成することは、【敗残兵】にとって計り知れない価値を生むだろう。
一方、セブンのクルセイダー調査は難航しているようだ。
「色々と試したが、サトゥ以外の成功例が出て来ねえ。だが……。もしかしたら、と考えていることはある」
「それは?」
セブンが俺を見た。言う。
「死ぬ側の意識の問題だ」
セブンの推測はこうだ。
クルセイダーは男版のヴァルキリーだ。蘇生魔法の拡大解釈とアクティブスキルを備えた、聖騎士の上位職。ヴァルキリーと同一の職性能。【戒律】も同じだろう。ならば、クラスチェンジの条件もほぼ共通する筈だ。
イベント……誰が為に鐘は鳴る。
作者はヘミングウェイ。有名な小説のタイトルだ。映画化もした。
つまり、対象が逆なのではないかとセブンは言った。
リチェットがヴァルキリーにクラスチェンジした時、リチェットはサトゥ氏を失いたくないと強く思ったことだろう。
同じことを試しても、ヴァルキリーになれたのはレベル20以上で司祭の女キャラだけだった。
サトゥ氏がクルセイダーになれたのは、死にゆく俺がサトゥ氏を救ってやりたいと強く願っていたからなのではないか……。
しかしリチェットは懐疑的だった。
「ええ……? コタタマだぞ?」
セブンも懐疑的だった。俺の頭を引っ叩き、
「コイツはデサントだ。【戒律】はデスペナルティの倍加。そしてハードラックのアビリティを持っている。通常よりも死が持つ効果が高いのかもしれない」
お前を殺したいが、いいだろう。続けな。レベルに関してはどう見る? お前の推測が正しければ、クルセイダーの転職条件は最低でもレベル20以上の聖騎士ということになる。だが、サトゥ氏のレベルは精々5か6だろう。
「サトゥは例外だ。ロストする前のレベルは24。そして【英雄】の称号を持っていた。一時は君主となり……。ロストは運営絡み。更にスキルチェインのアビリティ……」
セブンはサトゥ氏の頭を引っ叩いた。
「コイツの例は当てにならん。三次職のレベルは20以上。それは間違いないと俺は見ている。そうでないなら、とっくのとうに誰かしらが条件を満たしたろう」
しかし……。いや、ヴァルキリーとの条件の釣り合いは取れている、か。ただ……。
「ああ。クルセイダーの場合、俺たちの遣り方じゃダメってことだな。ヤク漬けにするしかないだろう」
それが落とし所だろうな。セブンが頷く。
「具体的には……」
おっと、ラム子がセブンに興味を示している。お前の形はこうじゃないだろと言わんばかりにセブンの片腕をもぎ取った。大して力を込めたようには見えなかったが、きゅっとひねるだけでセブンの腕は肩からネジ切れた。
セブンは噴出する血をちらりと見てから、すぐに話の続きに戻った。
「具体的には、クラスチェンジの対象となる人物と親しい人間を捕まえる。薬を嗅がせて思考力を奪い、洗脳する。そしてクルセイダー候補に殺させる。面倒だが、これが一番確実だ」
段々怪しい儀式みたいになってきたな。
ラム子がもぎ取ったセブンの腕を俺の脇腹にジョイントした。得体の知れない金属片が俺の脇腹とセブンの腕を強力に繋ぎ合わせ、俺は腕が三本になった。やったぁ。わきわきとセブンの腕を動かす。
しかし思ったのと少し違ったらしく、俺はラム子に両腕を肘から取り外された。せっかく三本あったのに腕一本になっちゃった。しょぼん……。
セブンがぱたりと倒れる。腕を根元から行かれたので血が足りなくなったのだろう。
俺は脇腹から生えた腕をわきわきと動かして紅茶を飲む。さすがはセブンの腕だ。俺の腕にはなかった力強さを感じる。
これにはサトゥ氏も苦笑し、
「俺もうかうかしてられないな」
リチェットが淹れてくれた紅茶を飲もうとして、ぴたりと動きを止めた。そっとリチェットの顔色を窺う。
リチェットさんはサトゥ氏と目が合うと、もじもじして視線を逸らした。
「…………」
サトゥ氏は手に持つ紅茶とリチェットを交互に見る。
何だよ。毒殺を警戒してるのか? 仕方ねえな。俺が判定してやるよ。
俺はセブンの腕を器用に扱って懐からリトマス紙を取り出した。俺とサトゥ氏の紅茶にそっと漬けてやり、慎重に引き上げる。変色した二枚のリトマス紙をじろじろと見比べる。うん……うん……。
サトゥ氏がぐっと身を乗り出して言う。
「ど、どうなんです?」
俺はニコッと笑った。
通常の反応だ。毒は入ってない。安心しろ。
サトゥ氏はホッと胸を撫で下ろした。肩の荷が降りたといった様子だ。ガッとティーカップを掴み、グッと紅茶をあおる。サトゥ氏がむせた。おいおい、そうガッつくなよ。ゴホゴホと咳をするサトゥ氏の背中をリチェットさんが優しくさすっている。
ようやく咳が止まり顔を上げたサトゥ氏が、何となく自分の手のひらに視線を落としてギョッとした。
サトゥ氏の咳に赤いものが混じっていた。
悪いな。俺は謝罪した。アンパンの毒はリトマス紙じゃ判定できねえんだ。俺、リチェットに協力するって約束したからよ。お前の警戒を解くために一芝居打った……。そんなところだ。
サトゥ氏の咳が再発する。吐血しながらも、俺に気にするなとジェスチャーした。ひゅーひゅーと掠れた呼吸音を立てて、咳の合間にかろうじて言葉を紡ぐ。
「お前も……もうお休み」
俺もだと? その真意を問い質す暇もなく、サトゥ氏はコテリと倒れて死んだ。
俺は鼻で笑う。ふん、俺にプレッシャーを掛けたつもりか。何を世迷いごとを。
俺は宰相ちゃんが淹れてくれた紅茶を優雅に飲み干し、ギョッとした。宰相ちゃんがこぷっと血を吐いた。遅効性の……。
な、何故だ? 何故そうまでして俺を殺そうとする? 俺が一体何をした?
宰相ちゃんはコホコホと咳き込みながら俺に近寄ってきて、自分の人差し指をはぷっと咥えた。口から引き抜いた指に真っ赤な血が付着している。その指を、俺の口に突っ込んだ。宰相ちゃんの血の味がした。何しやがる。
宰相ちゃんはニコッと笑って死んだ。最期に、こう言い残して。
「こういうの、好きなんでしょ?」
ちっ……。
俺は舌打ちして、席を立った。歩き出した俺の背に、クァトロくんが声を掛けてくる。
「コタタマ、さん?」
来るな! 俺は言葉で冷たく突き放した。
……セブンは死んだ。サトゥ氏も。メガロッパも。
俺も……じきに逝く。あいつらの傍に行かせてくれ。
俺は強くねえから。近くに誰か居たら、泣き言を漏らしちまう。だからよ。だから……。
最後に、俺は一度だけ振り返って笑った。
「お前らは、生きろ」
俺はダッと【敗残兵】のクランハウスを飛び出した。
そして軒下で血反吐を撒き散らして、誰にも看取られることなく、ひっそりと息を引き取った。
いや……。一人じゃねえよな。
ふわっと幽体離脱した俺を、セブンとサトゥ氏、宰相ちゃんがにっこりと微笑んで見つめていた。
ああ、お前ら。こんなところに居たのか。会いたかった。会いたかったんだ、俺は。一目だけでも。これからは、ずっと一緒だ。
俺たちは輪になって仲睦まじく天に召されていく。
いや、俺たちだけじゃなかった。種族人間はゴミだから。弱すぎるから、街の外に出れば大抵は死ぬ。山の奥で、森の中で、洞窟で、波にさらわれ、地に埋もれ、街中ですら種族人間は簡単に死んでいく。
数え切れないほどの魂たちが、青空を背景に大輪の花を咲かせるかのようだ。
その一員となった俺が、後からやって来て不安そうな面持ちで漂っている知らない人たちの霊魂に、そっと手を差し伸べる。ニコリと微笑み、口パクで思いを伝える。
一緒に。
知らない人たちは嬉しそうに頷き、おずおずと手を伸ばしてきた。
触れ合うことはできないけれど、一人じゃないから。人は、一人ではないから。こうやって笑えるんだ。
そこに愛があるから。
手と手が、重なる。
これは、とあるVRMMOの物語。
寄り道してないでさっさと像に来なさい。
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