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【槍弓】お願い、一生許さないで/Novel by もあ

【槍弓】お願い、一生許さないで

4,695 character(s)9 mins

前作の評価・ブクマありがとうございます。

▽弓「ばかばか!地獄に落ちろランサー」槍「はわわ」って感じの槍弓
▽魔が差して浮気してしまった槍とめちゃめちゃ怒る弓の少女漫画のような現代パロ
▽槍視点ギャグ時空。槍に夢を見ている節がある
▽槍弓の言い合いは強めでお願いしたいんですが洋ドラの様なウィットに富んだやつが出せなかった
▽UBW履修したのに弓も槍も口調掴めてない

▼エミヤの色々を考えると頭が割れそうに痛くなるのでカニファンとかカルデア時空でハッピージャムジャムしてて欲しい
▼この前FGO一部を終えたんですがエミヤにカルデアを返してやってくれと思いました

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「君のデリカシーのなさはもはや敬服に値するよ。盛りのついた野良犬か?良識的な価値観をシャノン川にでも捨ててきたのか?」

なんて口の悪さだろう。
他人にこんな口を効かれたら間違いなく叩きのめしてしまうのだが、悲しいかな目の前で腕を組みふんぞり返る暴言の主は間違いなくランサーの恋人、アーチャーだ。

なんだ突然こいつは。

これが情人に対する態度とは些か信じ難いが、ランサーとアーチャーは間違いなく恋人同士である。
学生時代はよく相手を再起させまいという気概のもとお互い殴りあっていた相手で、紆余曲折を経てその延長線上に愛情と性欲が上乗せされただけの関係なので、これでも右腕を骨折させたり鎖骨を折られたりしていた学生の頃よりは随分マシなのだ。

ただランサーの記憶が正しければ最近はもっとずっとマシになっていたはずだった。
このアーチャーのこの悪様な口調も久方ぶりだ。

「いや……訳が分からん。何だっつーんだよ、土産の文句ならキャスターに言え」

「君が土産で怒髪天を衝く程の人間を恋人にしていたとは驚きだよ、流石ランサー、特別な恋人をお持ちのようだな」

お前のことだろうが!と怒鳴らないのは、この状態のアーチャーに口ではかなわないからだ。何に怒っているかもわからないのに、勝ちようがない。

「土産の話な訳がないだろう。キャスターは流石にセンスがよかったよ。重々よろしく言っておいてほしい」

「じゃあなんだってんだよ?」

訳の分からないランサーを尻目に、アーチャーの眉間のシワはどんどん深くなっていくのを確認して、
ランサーも、さして長くもない導火線にちりちりと火がつき始めた自覚があった。

アーチャーの怒りはいつも突然だ。
アーチャーから言わせれば積もり積もった結果らしいが、じゃあその時言えとランサーだって常々ムカついている。

それにしても、なんだって今日始めるんだ。と思う。
会話から分かる通り、今日はランサーが実家の関係で一時帰国していたから1ヶ月半ぶりの再会だと言うのに、この恋人は!

すぐ胃の腑が煮えるような気待ちになり、何と言い返してやろう、と逡巡したところでランサーは待てよと思った。

寝そべっているソファも、先程借りたシャワーも、今ランサーが着ている服も、冷凍庫からくすねたアイスも、小一時間前にご馳走になった絶品のローストビーフも、全てアーチャーから提供されたものだ。
ここはアーチャーの家で、ランサーは空港から着の身着のまま招かれた立場で、つまりめちゃめちゃに分が悪かった。

ここで何か失言してアーチャーとの理性的な対話が望めなくなった場合、ランサーは最悪追い出されてしまうだろう。それはつまり大変な事になる。

そうだ、まずい。いやおい待てそりゃないだろう。
今日セックスはなしってことか?

ランサーはここで始めてようやく事態の重さを飲み込んだ。
そして俄然負けられなくなった。
こいつ、アーチャーこの野郎……俺が今日どれほど浮かれて空港のタラップを歩いたかもしらないで!!

ごく個人的な怒りでやる気を漲らせたランサーは、その溢れた感情のまま迅速に立ち上がったのだった。

「お前の怒り方毎度毎度まともじゃねえけど、ほんとにひでえな。俺が犬ならテメーの癇癪は赤ん坊だ。」

でけえBabyだ。迷惑だから夜泣きはベッドの上だけでしてくれ、と英語圏特有の流暢な発音で余計な挑発をしてしまったのが悪かった。

「死んでくれランサー」

あ、やばいと思う間もなく、ランサーの台詞がおわるやいなや、アーチャーの拳が飛んできたのはもはや必然の自業自得と言える。

正確にランサーの眉間に振りぬこうとしている空を切る拳を避けられたのは、ランサーが母国で槍術を師事していた師匠がとんでもなく優秀だった証明に他ならないだろう。

ありがとうスカサハ師匠!

そのくらい速い打擲だった。
ランサーはその拳が己を昏倒させることも可能な威力である事を十二分に分かっていたため、怒りに任せたわかりやすい軌道のそれをいなして迷いなく反撃する。

アーチャーを抑えつけるのに手心なんか一切加えない。というかそんな余裕はない。
ランサーが何よりアーチャーの実力を理解しているし認めているからだ。
それにきっと、そんな腑抜けた真似をすればアーチャーにそれを悉く看破され明日にでもICU送りになっているのはこっちの方だ。

完全に火がついたらしいアーチャーと幾分か冷静なランサーの数瞬の攻防は、もちろんランサーの方に軍杯が上がった。
アーチャーを床に引き倒す事に成功したランサーは、よし!と内心ガッツポーズしきりだった。

もうこのまま上手いこと持っていこう。
存外こいつは流されやすい。なんて、最低の思考回路で久方ぶりの恋人の身体に触れた。
そしてすぐに。ん?と気づく。
なんだか少し痩せたような気がする。これは可及的速やかにベッドで確かめなければならない案件だとランサーは判断した。早くアーチャーの機嫌を取らなければ。

「ぐ、貴様今私の上に乗れる立場か?!……おい、変なところ触るんじゃない!」

「その理由を教えろって言ってんだよ。なに怒ってんだ」

1ヶ月半もの間恋人をお預けされてるのだ。その括れた腰やら綺麗に筋肉の乗った胸部やらしか関心がいかなくなるのは全くもって仕方の無いことだろう。
だが、明確にいやらしい意図を持って手をアーチャーの体の上で滑らせても全く動じないどころか、アーチャーの体どころか視線までも氷のように冷えきっていた。
馬乗りになっているランサーの方がだんだん焦れてくる。

「……祖国は楽しかったか?うるさい恋人から開放されてさぞ有意義に過ごせたろうな」

そうして、ゆっくりと低く呻き睨みつけてくるアーチャーに、ランサーはあからさまに狼狽えた。

こいつは、まさか知っているのだろうか。
アーチャーが恋しかった祖国での1ヶ月半の間に1度だけ、本当に魔が差したたった1度きりの不始末を。

ランサーはアイルランドにいた。
アーチャーが知るはずも無い。久しぶりの女の体もそりゃもちろんよかったのだが、やっぱりアーチャーがいいなとそれなりに自己嫌悪してしまい、一生秘匿するつもりだった己の醜態を、何故こいつが。

冷や汗を垂らして黙ったランサーに、拘束のゆるくなった隙を見逃すはずもなくアーチャーは自由になった腕でランサーを突き飛ばした。じっと見つめてくるその視線はほとんど冷酷と言っていい。

ちらと脳裏を過ぎった予想がまさか的中した事を確信した。

「…………初めからそう言ってくれ。それならお前を引き倒したりなんかしなかったし大人しくボコボコにされてた。
でも言っとくが1ヶ月半もお前と会えない状態で1度だけだぞ……、いや待て、ほんとにどうしてバレた?」

「君オルタになにかしたんじゃないのか。報告してくれたぞ」

「あんの野郎……」

唸るランサーに、アーチャーはふんと鼻を鳴らす。
先程まではアーチャーの癇癪とすら思えていたこの事態がまるっと自分のせいだとわかると、ランサーはわかり易く窮地に陥った。

完全に立場が逆転した。
これでは今度はランサーが許してもらう立場だ。

馬乗りになっていたアーチャーの上から迅速に退く。

上に乗れる立場か、とはアーチャーの言っていたことは真実だ。本当にそんな場合ではなかった。

「でも1回だ。店であったどこの誰かも知らない今後一生会うつもりもない。それに実際お前には一緒にアイルランドまで来てくれとも言った。俺にはお前だけだ。以上が俺の申開きだが、アーチャーこれは浮気か?」

「誠実な恋人は普通はその1回もしないんだランサー。恋人に悪いとか道義的な考えが頭を掠めてその内に理性を取り戻すんだ。貴様はそうはならなかった、つまり犬だ」

「お前は右手に『アーチャー』なんて名前付けて女に相手されない様な可哀想な男が恋人の方がよかったってのか?」

「ああその方がよかった!ちょっとその低俗な発想は出てこなかったが、私が貴様の立場ならそうしたし1ヶ月半くらい我慢もできないのか!」

羞恥からではなく、怒りで顔を真っ赤にしたアーチャーの平手は今度はなんの障害もなくランサーに届いた。
バチンという乾いた音に一番驚いたのは多分アーチャーで、それを甘んじて受けたランサーは丁度、『え、平手打ち?』と考えていたからだ。

アーチャーの手が出てしまった以上、これ以上の問答はないだろうがこれで済むのなら本当に安いものだった。
というか、本当に思わず手が出てしまったのだろう、本気で暴力で手打ちにするつもりなら、アーチャーならグーで容赦なく鼻っ柱を折りにきていたと容易に想像がつく。

「……すまない」

「……それは俺の台詞だわな」

僅かな沈黙のあと、次は許さない。とアーチャーは鋭く切り出した。

「そしてやるなら、もっと徹底的にやれ。私にバレるような杜撰な事はするな。オルタにはもう次からは報告してくれなくていいと言う」

聞いた瞬間にランサーは目眩がした。
本人に自覚があるのか分からないが、アーチャーの言っていることはつまり、許してしまうから浮気するならバレないようにしてくれという事だ。

もし、アーチャーがランサーと同じ事をしてそれを不幸にもランサーが知ってしまったら。

男だろうが女だろうがそいつは最初アーチャーが言っていたシャノン川にでも浮かんでいただろうなと、ランサーは自信があった。
絶対にそうしてやるという信念すらあるというのに、同じだけの感情をアーチャーに持ってもらえていない。いや、アーチャーから誰よりも好かれているのはわかるのだ。
ただそれはなんとなくランサーを汚さないような、崇拝めいたもののように偶に思う。

こいつ面食いだからな。
ランサー含めアルスターの兄弟は時代が時代なら纏めて石像にでもされて飾られていそうな顔貌を有しながら案外俗っぽいし、そんな事は付き合いの長いアーチャーはとうにわかっているはずなのに。

ランサーはアーチャーの思考回路をよく理解している為、アーチャーの己をすり減らすような後ろ向きな考えがそういう解に至った事がなんとなくわかった。
何だってそんなに自己評価が低いのかまるで不思議だが、キャスターもオルタも何故か目をかけているこの恋人に浮気を許容させたなんて、そんな耐え難い醜聞は地球の4分の1の距離にいる兄弟の耳に入ったら最後、地獄を生む事態になるだろうと容易に想像がつき、ランサーは身震いする。
最悪の場合アルスターの屋敷が跡形も無く燃えるかもしれない。

だから尚更ここで償い、誓わなければならなかった。

「アーチャー」

いつの間にかうっすらと涙で濡れた(悲しいとかそういう殊勝な涙ではなく興奮した為の怒りの発露)アーチャーの眦にちゅっと子供のようなキスをおくると、ぱちりと、冴えた刃のような鉛色の瞳をアーチャーが瞬かせた。

「一生許さないでくれ」

もうしない、と祈る様な誓う様なランサーの声色に少しだけ目を見開いたアーチャーは、少し逡巡した後、
「じゃあ許さない」とはっきりと言った。

「そうしてくれ」

紐でもつけて一生見張ってて、と僅かに笑ったランサーが告解するように頭を垂れた。

額が合う、至近距離で見つめる瞳にお互いの姿を見つけて、アーチャーはようやく1ヶ月半ぶりに恋人を素直に抱きしめる事ができたのだった。


Comments

  • ゆんこ
    February 21, 2021
  • 哉太
    October 14, 2018
  • ハルタ
    October 9, 2018
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