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【槍弓学パロ】槍が隣の席の弓くんの顔をずっと眺めていた話/Novel by 九三九

【槍弓学パロ】槍が隣の席の弓くんの顔をずっと眺めていた話

3,115 character(s)6 mins


青い夏って恋をするにいい季節ですねって思った結果できた学パロ槍弓。短い。

何とは言わないけど件のあれは以下の感じ
「あっ、ランサー教科書忘れたのか?大丈夫だろうか(そわそわ)」
「あっ、ランサーまさか正答が分からないのか?これは先週の内容で、(こそこそ)」

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始まりは灰色の雲が垂れ込めた梅雨の日のこと。
半端な時期にもかかわらず転校生が1人出て、真ん中にぽっかりと空席ができた。色紙についた黒い染みのような空虚。思春期のオレ達はそういうものに過敏だ。だから、誰かが席替えをしようと言い出した。梅雨の半ば。6月のこと。

くじ引きの結果、オレとヤツが隣同士になったのは全くの偶然で、それからオレはその男の横顔ばかりを見ている。

同じクラスで数ヶ月過ごしたソイツ、アーチャーのことをオレはよく知らない。オレだけでなく皆、知らないだろう。お世辞にも社交的とは言えないやつだった。褐色の肌と白い髪、低い彩度をした鋭い目。珍しい容姿をしているうえに、それについてなんの申し開きもしないものだから、誰しも遠巻きに見ていた。ああ、しかし何人かの女子と話し込んでいるのを見かけたことがある。あまり興味はないが、隠れた人気があるのかもしれなかった。それでも遠巻きにされていることには変わりがないが。

さて、それじゃあソイツの横顔とオレの出逢いについて話をしよう。
忘れもしない。ばたばたと大粒の雨が煩い日だった。

雨粒が窓ガラスを叩くのがひどく煩く、不真面目な学生だったことも手伝ってオレは窓の外へ視線を向けた。ソイツは窓際の席で、つまりこちらと窓の間に座っていて、そして何より真面目な学生であったので、オレの視界にソイツの横顔が入り込んだ。

綺麗な横顔。

風変わりな色の髪は雨の日の少ない光でもきらきらと光っていた。睫毛が結構長い。目元を陰らせるそれも同じ髪と色をしていた。睫毛を染めるやつなどいないから、やはり噂の通りあの白い色は地毛なのだ。一分の隙もまだらもない褐色の肌もきっと自然なまま。不躾な視線も浴びせている間も授業に集中してぶれない視線。けれど奥の瞳は板書よりもっと遠くを見ているようにも見えた。教科書に出てくる遊牧民を連想する。それから目頭の辺りから迷いなく下りる鼻筋。前を注視する拍子に閉め忘れたのか微かに開いた唇。柔らかさの少ない作りの顔立ちの中で、上唇と下唇に開いた隙間が妙にあどけない。そして、それら全部を台無しにする時代錯誤に分厚い銀縁眼鏡。
ああこいつ、無愛想でとっつきにくいやつだと思っていたけれど、こんな長所があるとは。これは、もしかすると自分だけがとんでもない秘密に気づいてしまったかもしれない。オレは銀縁眼鏡で台無しになっているソイツの綺麗さに気づいて、密かな優越感に胸を踊らせて。

それから1ヶ月、その横顔を熱心に眺めている。傍目には窓の外を見ているのだと、そういう素振りで。

さて、6月から見つめ続けて1ヶ月なので7月になった。この時期と言えば蒸し暑く、怠い。興味のない授業であればなお怠い。ゴミ溜めと化した机の中から教科書を引っ張り出すのも億劫で、だらだらと例の横顔越しに夏空を眺めていたオレへ、何の前触れもなく張本人が振り向く。

「良ければ、教科書、見るかね?」

何の話だと訝る槍に、弓は顎をしゃくって台詞を継ぐ。

「君の向こう隣、休みだろう。」

そう言えばそうだ。どうやらいつまでも授業の準備をしなかったので、教科書を忘れたのだと思ったらしい。勘違いだけれど、気のつくやつだなと思う。さてどうしようか。全く想定になかった展開なので少し頷き難い。
オレが考えあぐねていると、相手はふんと鼻を鳴らして皮肉げに笑った。

「なに、『私』にたった1授業分ばかり関わりを持ったところで、どうという事もないさ。まあ怖気付いたのであれば、そのまま断ればいい。君が次の授業で恥をかいたとしても私は一向に構わないからな。」

は?
コイツは今何を言ったのだ?
つまり、オレが周りの視線を気にしてためらっていると、周りの噂怖さにアーチャーの申し出を断ろうとしていると、そう思われたらしい。
生来、頭に血が上りやすいオレである。そうまで言われて引くのは腹立たしい。率直に言うとムカついた。売られた喧嘩は言い値で買い取るのが流儀である。まあそれにだ、それに、見たくないかと言われれば見たい。
普段と違う角度で見るコイツの顔はどんなものか。
興味があるか?もちろんある。学生の好奇心は猫を殺しても止まらない。どうもオレは腹を立てていると同時に、コイツが気になって仕方ないようだった。どうもコイツは嫌なヤツだけれど、しかしその横顔は整っている。すらと上がった眉尻は、真っ直ぐで綺麗だ。
だから、オレは少し迷って、折角なので縦に首を振ることにした。
しかし何も返さないのでは腹の内が治らない。

「テメエ、一言多いぞ。」
「よく言われる。」

ふん、と鼻を鳴らし合ってどちらからともなく机をくっつける。
がたがたと机をくっつけて、隣同士もっと近くなって、教科書の背表紙が丁度机の境目に来るように置いて、アーチャーの横顔はいつもより数十センチ近い。
始業のチャイム鳴るのを待って、どうしてか何となくこそこそと、オレはその顔を伺う。
思ったより落ち着かない。居心地はあまり良くない。だからといって、目を離すのもちょっと惜しい。なぜって、近ければ近い分見たいものがよく見える。
不規則に瞬く二重に折られた目蓋も、時折こくりと動く喉仏も。
青い青い、かさの高い夏雲を背景に、オレはいつもやるようにソイツを眺めていた。
真っ青の空はひどく高く見えて、高くから降り注いだ陽光がアーチャーの髪の毛の先っぽがきらきらと光らせる。
青空との相性も悪くないと感想にもならない感慨を覚えていると、誰かがオレの名前を呼んだ。

「あ、やべえ。」

誰かと思えば、教師である。
よそ見をしていたので声を掛けられたらしい。慌てて立ち上がったものの参った。
まずい。とてもまずい。当然だがなんの話やらついていけない。先生は何事かをオレに尋ねたが全く答えが分からない。
外ばかり眺めて早く遊びに行きたいとでも思っていたんだろうと揶揄されて、正直に説明するのも面倒だから黙っていると、すぐ隣からぬっと腕が伸びてきた。
その手は教科書の端っこに何かを走り書きして、トントンと示したり、くるくると二重三重に円で囲って見せたりする。

ひょっとして、今オレが一番求めているものだろうかこれは。
アーチャーのペンが今度はその単語に下線を追加する。

間違いない、どうも助けてくれようということらしい。本当によく気のつくやつだと驚く。さっきは嫌なヤツだと思ったが、本当はいいヤツなのだろうか。
何はともあれ、厚意はありがたく受け取っておくものだろう。
これ幸いと単語を読み上げると、納得したのか教師はいつも通り紋切り型の授業に戻った。後でお礼にジュースの一本でも奢ってやらなくては。それを機に少し親しくなるのも悪くないかもしれない。
ありがとなと念を込めて笑って見せると、アーチャーはにやりと共犯者じみた笑みを返した。
親しさのような、誇らしさのような、ふてぶてしいほど得意げな、平素より幼いような、色んなものが入り混じったその顔を見て。

それを見て。

オレはそれを見て、席に座って。今度はきちんと黒板の方へ向き直って。それから授業が終わるまで、一度もアーチャーの横顔を見なかった。
もちろん真面目に授業を受ける気になったからじゃない。とんでもない。そんなんじゃない。それどころじゃない!
オレは、さっきまで、今の今までアーチャーの悪ぶって笑ったその顔を見るまでずっとその横顔のことばかりで頭をいっぱいにしていたのに。今では、そう、今ではアーチャーの好きな飲み物は何かと、そればかり考えているのだ。オレは。

Comments

  • ポリゴン
    October 26, 2023
  • 伊達マキ

    とんでもなく甘酸っぱいです…!!最高でした!!

    December 11, 2019
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