貴族槍と使用人弓1
謎時空の貴族槍と使用人弓です。槍弓です。
弓と士郎が兄弟で凛ちゃん家の使用人してます。
なれそめ編です。
続きました。novel/8958477
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その男と初めて出会ったのは、遠坂家の屋敷の応接間であった。
今日の二時に一人客が来ること。その相手が相当な地位のある貴族であること。要件が冬木で始める商売の相談であること。そこまでは主人である凛に聞いて知っていた。
アーチャーの仕事はいつもと同じだ。部屋を綺麗に整え、凛と客の分の茶を用意し、配膳する。準備を済ませ主人と共に部屋で客人を待った。別の使用人に案内され、時間ぴったりに客人はやってきた。
「クー・フーリン・ランス・アルスターだ。よろしくな、嬢ちゃん」
その輝くような美しさに、私は目を奪われた。
「あなたの提案は理解した。基本的にはそれで問題ないわ。細かいところを詰めていきましょう」
「ああ、頼む」
応接間のソファーでは凛と客が商談を進めていた。何かあれば対応できるように、また話を一応聞いておけと凛に指示されているため、凛の左斜め後ろに待機している。
目の前の客は苗字をアルスターと名乗った。アルスター家といえば、貴族の中でも三本の指に入る名門だ。古くからある家で、元をたどれば王族にたどり着くと言う由緒正しき家系だ。その癖古い風習にとらわれずに新しい文化も積極的に取り入れることで、今なお発展し続けるやり手な一面もある。現にこの客は新しい地域でビジネスを広げるために、冬木を管理している遠坂家に商談にやってきたようだ。
しかし、アーチャーが一番驚いたのはその家柄に対してではなく、その非凡な外見に対してであった。
髪は日が沈む直前の東の空のように深く青く、肌は陶器のように白い。青白く輝く白目にルビーのような虹彩が赤く映え、その縁は髪と同じ青に彩られている。そのような繊細な造形にも関わらず、その表情は野性味に溢れ、赤い視線の強さは見る者の心を打ち抜く。
由緒正しい貴族とは外見までこうも凡人とは違うものかとアーチャーはこっそりとため息を漏らした。
頭も回るようで、遠坂家当主との商談もスムーズに進んでいる。同じレベルの頭脳とのやりとりに、心なしか凛も楽しそうである。
ふと凛が時計を見上げる。
「あらもうこんな時間。ランサー、あなた甘いものはお好きかしら」
「ああ」
「ではまだ時間がかかりそうだし、一度休憩がてらおやつはいかが?この男が作るケーキは絶品よ」
そう言って凛がアーチャーを指し示す。初めて客人の目がこちらに向けられる。
「へぇ、こんな大男がねえ。人は見かけによらないもんだなあ」
意外でしょうというように凛が数度うなずく。いたずらっぽい視線を二つ浴びて少し居
心地が悪い。視線をいなすように軽く頭を下げ、ゆっくりと部屋を退室した。
今日用意していたのはクルミのタルトであった。見た目こそ派手ではないものの、その香ばしい甘さとナッツの触感が楽しく、凛もお気に入りの一品である。タルトに合う紅茶を淹れ直し、応接間へと運ぶ。扉を開けると待ちわびたというキラキラした顔の凛に出迎えられた。しかしそれも一瞬のことで、慌ててすました顔を取り繕う。客人の前だということを思い出したのだろう。
「お待たせいたしました」
客人と凛の前にケーキと紅茶を配膳していく。全ての用意が揃い、アーチャーは凛の一歩後ろの定位置に戻った。「ではいただきましょうか」
「おう」
客人がフォークを手に取りタルトを崩す。フォークに刺さった一口目が口に運ばれていく。この一瞬はいつも緊張する。自信を持って出している品とは言え、好みに合うかどうか、工程にミスはなかったか、様々な不安が渦巻く。客人の端正な口元が開き、洋菓子のかけらが吸い込まれていく。いつも以上に自分の中で何かが張り詰めるのをアーチャーは感じた。
数度の咀嚼の後に客人はくしゃりと笑った。
「うめえ」
美しさは少し崩れたはずなのに、温かみのある魅力に目が離せない。まぶしくて目を細める。その表情を引き出したのが自分の作ったものであることが誇らしい。品は失われないながらもフォークが忙しく動き、あっという間にケーキが消えていく。賛辞に偽りがないことがどこからでも見て取れ、アーチャーは胸が温かいもので満たされるのを感じた。
「おいしかったぜ。ほんとにあんたケーキ作るのうまいんだな」
「お褒めにあずかり光栄です」
「仏頂面に見えると思うけど、これおいしそうに食べてもらってすごく嬉しいって顔だから」
「なっ…」
平静を装って返事をするも自らの主にこれ以上ない解説をされて言葉に詰まる。決まりが悪く咳ばらいをして立て直そうとするも逆効果だったようだ。一層視線を感じて何とも言えない気持ちになる。
その後、口にあったならと差出したケーキは次々と客人の腹におさまり、大分多めに作ったはずが、気づけばほぼなくなってしまった。その間に商談も進み、ある程度の目途はついたようであった。次回は二週間後と定められ、本日の会合はお開きとなった。
客人を伴いアーチャーは屋敷の門へ向かっていた。
凛の客人を見送るのもまたアーチャーの役目である。屋敷に来る客の大半は貴族であり、使用人であるアーチャーに対して特に興味を持たない者が多く、話しかけてくることはあまりない。そのことに不満はなく、アーチャーとしてはむしろその方が楽なのだが、今回の客人は違った。
「しっかしこの街も変わったな」
持ち前の人懐こさを前面に発揮し、ためらうことなく話しかけてくる。というかそもそも肩を並べて歩かれているのだ。使用人の自分としては、案内のために数歩先を行くか、数歩後ろを付き従うかが慣れた立ち位置である。にも関わらず、この客人は友人のようにわざわざ肩を並べて歩いてくる。初対面の、さらには自分よりだいぶ高い地位の貴族にそんなことをされるのはなんとも落ち着かないものであった。
「以前にも冬木にいらしたことがあるのですか、アルスター様」
「小さいころに一度だけな。アルスターと呼ばれるのは落ち着かねえ。ランサーでいいぜ」
「ではランサー様と」
要望に応えたはずが少し微妙な顔をされる。
「年の近い大男に傅かれるのはあまりいい気がしねえな。たいした立場じゃねえし友達だと思って接してくれ」
とんでもない要求をされて目を見張る。アルスター家の者がたいした立場じゃないなどと。さらには使用人に友人のように接してくれなどと、無茶ぶりにもほどがある。自らの主ならまだしも客人にそんな振る舞いができるわけがない。
「ランサー様、いくらなんでもそれは…」
「あーあーそういうのめんどくせえから、さくっと変えちゃってくれよ、な?」
頭をガシガシと乱暴に搔き、歯を見せて豪快に笑う。見た目の高貴さに惑わされていたが、この男、出自のわりに言動が非常に荒いような気がしてきた。
「嬢ちゃんにはいつもそんな感じなんだろ?俺にも同じで構わねえよ」
「なっ…それは昔からの付き合いがあるからであって…」
予期せぬ角度からの攻撃に思わず声が上ずる。凛め、客人の人懐っこさに絆されて口が滑ったに違いない。ここにはいない主を恨む。
「では命令だと思ってもらっても構わん。砕けた口調で話せ」
動揺しているところに鋭い一手を刺された。表情だけでなく声音まで多彩なのかと舌を巻く。自分なりの妥協点を探り、口にする。
「善処…する」
こらえきれなくなったようにランサーが噴き出した。腹を抑えてくつくつと笑っている。
「おもしれーやつ。そういや名前聞いてなかったな」
「アーチャー・エミヤだ。アーチャーと呼んで…欲しい」
無礼を働いている違和感がぬぐえず口ごもったが、ランサーはそれで満足したらしい。
「よろしくな、アーチャー」
ニカっと笑って右手を差し出される。仕方なしに手を握れば力強く握り返された。
不本意な命令をされてしまったが、そうそうこの男と話す機会もないだろうし、こんな気まぐれはそうそう長引かないだろう。そう高を括っていたアーチャーであったが、その予想は大きく覆されることになるのだった。
ランサーが遠坂家の当主に変わった頼み事をされたのは屋敷を初めて訪れたときであった。
「さっきの使用人と友人になってほしいの」
突拍子もない内容に思わずぽかんと口が開いた。向こうもその自覚はあるらしく、先程までの堂々とした態度はなくなり、一気にしおらしくなっている。
「変なことを言っているのは分かってるわ。でも少し訳ありなのよ」
もしかしたらこの話をするために、使用人にケーキを取りに行かせたのかもしれない。心底困り果てたという彼女の様子にとりあえず続きを聞くことにする。
「昔からのなじみでね、私にとっては使用人というより家族のような存在なの。屋敷のことばかりにかまけてるあいつに少しでも外の世界と交流を持ってほしいんだけど全然言うことを聞かなくて」
凛が深いため息をつく。その様子には今までの苦労がにじみ出ている。まるで引きこもりの息子を心配する母親のようだ。口に出せば確実に彼女を怒らせるであろう想像をそっと心の底にしまう。
「対等な関係になれとは言わないわ。積極的に話しかけてくれるだけでもいいの。多分強情だから骨が折れると思うけど」
強情という言葉に話題の本人の容貌をおぼろげながら思い出す。屈強ながたいといい、意志の強そうな眉といい、確かに言うことを素直に聞くタイプではなさそうだ。
ランサー自身に目下のものと親しむことに対する抵抗はない。次男坊であり、跡継ぎが兄に決定していることもあって、ランサーは比較的自由な生活を許されていた。それに持ち前の好奇心も加わり、身分を隠して勝手に街に出ることも多かった。その度に家の使用人たちをひやひやさせたものだが、おかげで様々なタイプの人間とかかわることができて良い勉強になったと思っている。そのせいか少し言動が粗暴になってしまったのはご愛敬だ。
だから、この不思議な頼み事を受けるのもやぶさかではなかった。
「冬木でのあなたの事業は全面的にバックアップさせてもらうわ。だからお願いランサー。気のいいあなたにだから頼めるの」
冬木の管理者様に協力を得られる上にいい女のお願いときたら断る理由などどこにもなかった。軽い気持ちでランサーは遠坂家当主の依頼を受けることに決めたのだった。
凛との会合を終えて庭に出ると、アーチャーが庭園の手入れをしていた。初めてこの屋敷を訪れてから半年以上がたち、季節は春から秋へと移った。まだ日差しは温かいものの、少し風が冷たくなる頃合いだ。
「へぇ、お前庭の手入れもできるのか」
「庭師は三か月に一回程度しか来ないからな、その間は私が手入れしている」
声をかければ手元から目を離さないまま返答された。いつもしっかりとジャケットまで着込んでいるアーチャーだが、動きやすいようにか今はシャツの上にベストのみの装いとなっている。
「今日はお早いお帰りで?ランサー様」
わざわざ丁寧な呼び方をするのは今となっては揶揄以外の何物でもない。凛から聞いていた通り、この強情な男に敬語を崩させるのには大変な労力を要した。時には甘えるように、時には命令に近い形でアーチャーを翻弄し、ようやく対等に話せるようになったのだ。逆に丁寧な物言いがおふざけのようになった現状はランサーの努力のたまものである。
「いいや、お前が外に出てるっていうから来ただけだ。まだ帰らねえ」
「どうせ私の作るおやつが目当てなのだろう」
「まあそれもあるな」
この男が作る洋菓子は絶品であり、凛との打ち合わせを必要以上に組んでこの屋敷に来てしまう理由の一つになっている。
「嬢ちゃんはやることがあるから後で食べるって言ってたぜ」
「少し待っていろ、ここの手入れを終えたらすぐに用意する」
庭に用意されているガーデンチェアに座るように促されたが、無視してアーチャーの横に立つ。
「しかし、てめえと花とはまた似合わねえ組み合わせだな」
「似合わなくて結構。代わりに今日のケーキはなしだ」
「冗談冗談、そう怒んなって」
反応が面白くてついついちょっかいを出してしまう。かわいくないはずの返事も遠慮の消えた証拠だと思えばかわいく見えてくるから不思議だ。
庭園を見渡せば冬に近づこうという時期にも関わらず、様々な色の花が緑を飾っている。
「ここはいつも色々咲いてんな」
「寂しくならないように咲く時期が違うものを植えているからな。うまく剪定すれば長く咲きもする」
そう言いながら、執事兼庭師の男は伸びすぎた枝葉を手際よく取り除いていく。いつ来ても綺麗なこの庭園はアーチャーの細やかな気遣いによって成り立っていたのだろう。
ふと眼前の真紅の大輪に目が留まる。
「この薔薇綺麗だな」
「ああ、それはコンラッド・ヘンケルという品種だ。茎が真っ直ぐ長く伸び、花びらも傷つきづらい。強くて美しい薔薇だ」
すらすらと花の情報を述べたのちにふと何かを思いついたようにアーチャーがこちらを見た。目を覗きこまれるように見られ少したじろぐ。
「なんだよ」
「君に似ているなと思って」
目の色も同じだしな、とつぶやき、息を緩めるように微笑まれる。反対にこちらの息が詰まった。
「恥ずかしいことを言うやつだな…」
思わず漏れた言葉はうまく伝わらなかったようで、アーチャーは小首をかしげている。
こいつは今まで他人との交流が少なかったせいか、相手との距離感が分かってない節がある。懐に入らせないかと思えば、今のように平気で口説き文句を口にしたりする。しかも全て無自覚だからたちが悪い。
こっちの煩悶などいざしらず、アーチャーは手早く園芸道具を片付けだした。作業が終わったようだ。
「待たせたな、茶の用意をする。館に戻ろう」
「いーや、今日は外で食べる」
「ダメに決まってるだろう。少し寒くなってきた頃だし君に風邪をひかせるわけにはいか
ない」
「てめえが手入れした庭見ながらてめえの作ったケーキが食べたい」
「…まあいいだろう」
さっきの仕返しとばかりに甘えてみれば、あっさりと要求が通る。意外にもこの男は甘えられるのに弱く世話焼きだ。そのことに気付いたのはこの屋敷に来て何回目だったか。
何か視線を感じて振り向けば一人の使用人がこちらを見ていた。少年と青年の間くらいで、赤茶の髪が印象的だ。アーチャーもそちらに気付き、なんでもないことのようにああ、弟だ、と言った。
「弟?まじかよ、おーい!エミヤ弟こっち来い!」
アーチャーがなっ、と抗議の声を出す。そんな面白そうなことを聞いてランサーが黙っているとでも思ったのだろうか。大声で手招きすれば戸惑いながらも弟はこちらに近づいてきた。アーチャーはこめかみを抑えながら自らの失態を悔やんでいる。弟が目の前までやってきたところで諦めたらしく、冷めた口調で紹介をしてくれた。
「こちら客人のアルスター様だ」
「初めまして、アルスター様。使用人の士郎です」
礼儀正しい挨拶にアーチャーと初めて話したときのことを思い出す。
「ランサーでいいぜ、口調もかしこまらなくていい」
「い、いえそんなわけには」
とんでもないと慌てる様はますますアーチャーに似ていて噴き出した。
「反応がそっくりだな、さっすが兄弟」
「ぜんっぜん似てない!」
士郎が思わずむきになって反駁する。それから無礼な物言いをしてしまったことに気付き、表情をこわばらせる。少しつつかれれば素が出てしまうところはアーチャーと違い、まだ青さを感じさせた。全然かまわないという意図も含めてけらけらと笑えば安堵と不本意さの混じった微妙な顔をされた。
「では私は用意をしてくる。士郎、ほどほどにして持ち場に戻るように」
弟と共にからかわれることを恐れてか、逃げるようにアーチャーが屋敷に向かった。その背中を見送ってしばらくしてから士郎が口を開いた。
「随分アーチャーと仲がいいんだな」
「そうか?」
「アーチャーがあんなに楽しそうに話してるの初めて見た」
そう言う士郎の表情はとても複雑だ。嬉しくて、悔しくて、そしてとても驚いている。兄と呼ばないところからも、二人の間には何らかの壁があることが感じられた。
「貴族のあなたにこんな言い方をしていいか分からないけど」
ためらうように少しの間をおいて、士郎は続ける。
「まるで友達みたいだ」
「俺はそうだと思ってる」
向こうがどうかは知らないがな、と照れ隠しのように笑ったが士郎は笑わなかった。依然として真剣な表情を崩さない。
「アーチャーは昔から人のことばっかりで、全然自分が幸せになろうとしないんだ。俺だけ大学にまで行かせて、自分はずっとお屋敷で働いてる。親しい友人だって作ろうとしなかった」
だから、と言って士郎は初めてランサーに柔らかな笑みを見せた。
「あなたみたいな人がアーチャーの友達になってくれて嬉しい」
予想以上に優しい言葉に目を見開く。この弟は、不器用だけれど兄の幸せを心の底から願っている。
「そろそろ行かないと。それではランサー様、失礼します」
近づいてくるアーチャーに気付き、士郎は一礼してランサーのもとを立ち去った。
「何を話してたんだ」
いまだ驚愕の余韻が残るランサーにアーチャーが怪訝な顔をする。
「まあちょっとな」
「余計なことを言っていないだろうな…」
そう言ってアーチャーは既にこの場にいない自らの弟をにらんだ。
すぐに視線を緩め、アーチャーは本来の作業に戻る。テキパキとテーブルに持ってきた紅茶とケーキを広げていく。今日のケーキは苺のミルフィーユだ。見るからにサクサクした生地の上にふわふわの生クリームと真っ赤な苺が乗っている。今すぐにでも飛びつきそうなランサーを制し、アーチャーは紅茶をこぽこぽと注ぐ。全ての準備ができ、ランサーは待てを解かれた犬のようミルフィーユに手を伸ばした。
「本当にうまいな」
一口食べて心からの感想を述べる。生クリームのちょうどいい甘さと苺の甘酸っぱさに、今デレデレに溶けきった顔をしている自信がある。
「君にそういってもらえると嬉しいよ」
アーチャーはいつもランサーが料理を褒めると本当に嬉しそうな顔をする。ランサーは前々からの疑問をぶつけた。
「てめえほどの料理の腕があれば褒められ慣れてるだろうに」
「大抵の方に褒めてはいただけるが、君ほどおいしそうに食べてくれる人はなかなかいまいよ」
一層目を細めてそんなことを言うこの男は、自分が今どれだけ甘いセリフを吐いているか自覚があるのだろうか。ランサーの頬に血が上る。
ここ半年のアーチャーとの付き合いで、ランサーはアーチャーの性格をだいたい把握してきていた。皮肉屋だったり、世話焼きだったり、そういう特徴をひとまとめにして出てくる答えはこいつがとても良いやつで、魅力的な人間だということだ。士郎と凛が彼の幸せを願う気持ちがよく分かる。こんな人間には誰しも幸せになってもらいたいと思うものだ。
それなのに、なぜかアーチャーは自らを縛り、幸せになる道を選ぼうとしない。それには自分の知らない訳がまだあるのだろう。それについて、ランサーはアーチャーが自分から話してくれるまで聞く気はなかった。
ランサーもアーチャーに幸せになってほしいと思う。でもそれだけでは足りないと思う自分もいる。自らの手で、アーチャーを幸せにしたい。
そのためには友人という立場では不十分だとランサーは薄々気付いていた。
しかし同時に、今まで他者との交流が少なかったアーチャーにとって、友人であるランサーがいかに重要な存在であるのかも分かってしまう。ランサーが一歩踏み出すということは、アーチャーから大事なものを奪うことにもなりかねない。
「ランサーどうした。顔が赤いぞ」
ランサーは凛の頼みを軽々しく受けたことを後悔し始めていた。
Comments
- ハルタNovember 29, 2017