アーチャー幸せ計画
※UBWのネタバレあり
※別人注意
2ndシーズン早く始まらないかなと思ってるけど、始まったら終わってしまうのでこのまま始まらなければいいのにって思ってる。
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アーチャーは自分に対して興味が無い。家事や人助けと他人の世話には意識が向いているが、肝心の自分のこととなるとさっぱりで、食や娯楽などを勧めてみても一個も食い付かない。俺としてはあの美しい朝日の中、すっきりとした顔で帰ろうとしたアイツと「まだお前にはやることがある!」とかなんだかんだ理由をつけて無理やり契約をした手前、とにかく幸せにしてやりたいと思っているわけだ。これは俺のエゴであってアーチャーが望んでここに留まっているわけではない。でも、正義の味方として自分の人生を費やしたアイツを、死んだ後も守護者として働くアイツをこのまま座に帰すなんてことが果たしてあっていいのか?
いいわけが無い。
というか想像するだけでムカつく。
俺は、今も皿洗い中の、自分ではなく他人の為に働いているアイツに一発言ってやらなきゃいけない。そんな訳で居間に陣取り、皿洗いが終わったアーチャーに話があるから座るように言ったのだが。
「何だ、衛宮士郎。まだ家事が残っているので後にしてくれないか」
「大事な話だ」
「貴様のその大事な話とやらが風呂掃除と洗濯に勝るとは思えないのだがね」
いや、待て。最近マスターとそのサーヴァントとなった俺達だけど、そこに至るまでの経緯が複雑だったせいか、本人達は割とふわふわした関係のままだ。マスターになったからといってアーチャーが素直に従うわけがないとは思っていたし、俺もアーチャーには対しては大概だから人のことはあんまり言えないがこれはひどすぎないか。いいんだけどさ、別に、いきなり反応が変わっても戸惑うだけだし、いいんだけどさ。もうちょっと歩み寄りが欲しいというか・・・。現状、取り付く島もないこの状態では俺が何言っても相手にしてもらえない。むしろ話すら聞いてもらえないだろう。だからとりあえず、脳内で起動修正を行う。
アーチャー幸せ計画ステップ1。
まずは、俺という人間に向き合わせる。
話はそこからだ。幸いにも桜と藤ねぇが部活で遅くなるってことで、まだ時間はたっぷりある。いいから座れと言葉と目で促してやれば、かなり不満げに俺の前に腰を下ろした。
「アーチャー」
「・・・」
「おい」
「・・・何だ」
はいストップ。無理やり座らせたからと言って当然のようにうんざりとした顔をしない!口に出そうになった不満を慌てて飲み込む。今日は喧嘩をする為にアーチャーを呼んだわけではない。
「あー、最近どうだ」
「変わったことは無い」
「そうか・・・、えっと・・・」
「世間話などはいいからさっさと本題に入れ」
「何だよ、少し話するくらいいいだろ」
不機嫌そうな声に、俺もつい声を低くしてしまう。俺は仲良くなろうとしているのにお前が喧嘩腰になってどうするんだ。アーチャー幸せ計画ステップ1は俺の脳内の計画なのでアーチャーに伝わらないのはしょうがないと思っている。大事な話と言っておきながら脈絡もなく世間話から始めた俺も悪いのは分かっている。でも、
「私にはお前が何をしたいのかさっぱりわからん。私に『まだお前にはやることがある!』と言っているが結局それについても曖昧なままだ。いい加減、人を振り回すのはやめろ」
アーチャー幸せ計画ステップ1続行中止。
これはいただけない。自分でも気にしていることを、しかもはっきりと本人の口から言われてしまい、思考が正常に動かない。気付いた時にはアーチャーに掴みかかろうとしていたのか、両手を前にのばしていた。しかし、流石英霊というべきか。その手はアーチャーには届かず、両手を掴まれたと思ったら次の瞬間には床に転がっていた。ぐるりとまわった視界に興奮した気持ちが冷めていく。・・・何やってるんだ俺は。図星を突かれたからといって、まさかアーチャーに掴みかかろうとするとは恰好が悪いにも程がある。「悪い」と声をかけ体を起こすと、アーチャーは俺がさっき暴れたせいで微妙に崩れた髪型が目にかかったのか、それを鬱陶しそうに払っていた。
あぁ、かっこいいなぁ。
・・・いや、違う。断じて見惚れてなんかいない。最初は憧れを抱いたがコイツは未来の俺だ。俺はナルシストではない。うん、本来の目的から完全に脱線している。俺がどう思っているかはどうでもいいんだ。今日はアーチャーをどうにかする日なんだよ。このままじゃ、先ほどの二の舞になりそうなので俺の決意と考えを一から丁寧に説明したところみるみるうちにアーチャーが呆れ顔になっていくのが見て取れる。分かってるけど、『何言ってるんだコイツは』って顔止めろ。
「だからさ、もうちょっとアクティブになっていかないか」
「意味が分からない」
「人助け以外であれやりたいこれやりたいとかどんどん俺に言えよ」
「私にやりたいことなど・・・」
「そうやってすぐに突っぱねるんじゃなくて少しは考えろよ」
あ、ヤバイお互いにまた喧嘩腰になってきている。違うんだアーチャー。俺はお前に幸せにしたいだけなんだよ。先ほど説明したはずなのに微塵も伝わっている気がしないけど。
「・・・貴様はどうなんだ」
「俺?」
「貴様には人助け以外であれやりたいこれやりたいとかはあるのか」
『どうせないのだろ?』と馬鹿にしたような顔で言われてむっとくる。だがアーチャー、やっぱり伝わっていなかったか。確かに今までの衛宮士郎ならそんな願いなかったのかもしれない。
「この話は終わりだ。私は失礼する」
「あるぞ」
ただし、今の衛宮士郎になら願いはある。
「俺はお前を幸せにしたい」
「・・・何を言って」
「その第一歩目として、」
ずいっと開いてた距離を詰める。これには不意を突かれたのか難なくアーチャーの右手を掴むことが出来た。
「とりあえず俺等の仲を深めようか」
「なんでさ!!!!!!」
アーチャー幸せ計画ステップ1続行決定。