米国とイスラエルが2月28日にイランを攻撃。最高指導者のアリ・ハメネイ師を殺害した。これに報復すべく、イランの革命防衛隊が3月2日、ホルムズ海峡の封鎖を発表した。今、両者の攻防が続いている。イランは今後、どのような道を歩むのか。核開発疑惑の行方はどうなるのか。中東地域の国際関係を専門とする田中浩一郎・慶応義塾大学教授に聞いた。(取材は3月4日に行った)
(聞き手:森 永輔)
田中さんは米国のトランプ政権がイランを攻撃した意図をどのように考えますか。
田中浩一郎・慶応義塾大学教授(以下、田中氏):イランの体制転換を目的としていると思います。イスラム共和国体制をぶち壊す。そのために、最高指導者であるハメネイ師を殺害しました。米国は、1979年のイスラム革命以来続いているイスラム共和国体制が続く限り、核開発疑惑やミサイル能力の拡充、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラをはじめとする代理勢力の活動が続くと考えています。なので「火元を絶つ」決断をした。
2025年6月の12日間戦争(関連記事「米国が核施設攻撃、今後の展開は イランの体制とホルムズ海峡封鎖の行方」)*の中で体制転換を図る考えもありましたが、結局、あの時はやり残しました。
ハメネイ師の殺害に成功したにもかかわらず、米国はなぜ攻撃を続けているのでしょうか。
田中氏:事前予想に反して、イランがまだ力を残しており報復攻撃を繰り返しているからです。また、攻撃を継続することが今後の体制転換に資するとも考えているでしょう。
トランプ政権はイランの体制転換を図るべく、現体制を軍事力で支えるイランの革命防衛隊を壊滅させる意向でしょうか。
田中氏:その点についてはまだ揺れている状態だと考えます。
第1のシナリオは、分離独立派が力を得て内戦へ
ここまでうかがった状況認識を基に話を先に進めます。イランは今後、どのような道をたどるのでしょうか。
田中氏:私は、このまま紛争が続いた先にあるシナリオとして次の2つを想定しています。第1のシナリオは、米国による体制転換が成功し、イランが破綻国家(failed state)になる道です。革命防衛隊が弱体化し、国を守ることもできなければ、国内の反体制派を抑えることもできなくなる。そうなると、イラン国内にいる反体制派や分離独立を望む勢力が力を得て、内戦に発展する恐れがあります。
イランに暮らすアラブ系住民やバルチスタン人、クルド人の中に分離独立派がいますね。
田中氏:その通りです。こうした人々が動きを活発化させる余地が生じます。これまでは革命防衛隊が力で押さえつけてきました。現体制の打倒を目指してきた国内外の大半のイラン人にとって、分断され分裂したイランが彼らの目指すところだったのでしょうか。
さらに、この動きがイランの国境の外に波及する恐れがあります。例えばクルド人はイランのほか、トルコやイラクで暮らしています。イランのクルド人が独立に向けて立ち上がれば、トルコに暮らすクルド人も同調する可能性がある。トルコ政府は、これを押さえるのに手を焼くこと必定です。イランの混乱はアラビア半島側にも波及する恐れがあります。
第2のシナリオ、革命防衛隊によるクーデター
第2のシナリオはどのようなものですか。
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