超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。

アンケートの結果ですが、私が確認した時点で533:2600でした。

何らかの意図があって「そのままで」に投票された方もおられるとは思いますが、それを考慮に入れたとしても、5倍近い得票数の差から「大多数の方はこの展開を支持してくださっている」と判断しました。
よって当初の構想通り、このまま続けさせていただきます。


この展開に納得がいかれない方は申し訳ありませんが、もっとご自身に合っている他の作品を探されますようお願いいたします。


第64話 撤退と顛末

 

 

 

 原作においても、この世界においても、デラーズ・フリートによって奪取されたコロニーは2基あった。

 アイランド・イーズとアイランド・ブレイド。

 2基のコロニーは衝突し、アイランド・イーズは月の重力に掴まって、月へのコロニー落としが敢行される――ように見せかけて、月面上空で推進剤に点火して、追撃部隊の推進剤を枯渇させつつ、標的を地球へと変更する。

 

 これが俺の知っている原作の『星の屑』の展開だ。

 

 だがこの世界のデラーズは違う計画を立てていたようだ。

 派手な展開を見せたアイランド・イーズですら囮。

 弾き飛ばされて消息が不明になっていたアイランド・ブレイドを、誰の目も届かないところで地球に向けて推進させる。

 連邦軍、ならびにデラーズ・フリート内の『獅子身中の虫』が完全に引っかかった以上、見事な作戦だと言わざるを得ないだろう。

 

 通信機に、デラーズ・フリート宛ての戦闘停止命令が入っている。

 おそらくだが、代替シーマ様が命令を発したのだろう。

 

 だが、その直後にエリック・マンスフィールド大佐からの通信が入り、その命令が即座に撤回された。

 デラーズ・フリートの内情が慌ただしすぎるな。

 

 断片的に聞こえてくる情報を整理すると、デラーズをアサクラが襲撃してその身柄を確保したらしい。

 

 お前だったのか獅子身中の虫。

 

 そしてアサクラはデラーズの身柄を盾にして、デラーズ・フリートに投降するよう呼びかけたのだが、それはデラーズが事前に可能性の1つとして考慮していた事態でしかなく、アサクラにはもう1つのコロニーの存在は伏せられていたようだ。

 

 アサクラの存在がまったく見えていなかったので、デラーズ・フリートに合流していない可能性も疑ってはいたのだが、どうやら徹底的に冷遇されていて出番がなかったのが正解のようである。

 マンスフィールド大佐が「部下に責任を押し付けて逃げるような、分別のない輩」とか、アサクラのことをボロクソに言っている。

 

 実際にコロニーが落ちようとしている上、マンスフィールド大佐の号令がかかった今、デラーズ・フリートにアサクラの停戦命令を聞く人間はいないだろう。

 

 そもそもとして、ここからは当然、先ほど崩壊したアイランド・イーズの位置からですら、今から全速力で移動してもアイランド・ブレイドの落下には間に合わない。

 この宙域に存在する連邦軍もデラーズ・フリートも、戦略目標というものを喪失した状態だ。

 

 ならば、もういい加減いいだろう。

 俺は通信機のスイッチを入れた。

 

「この宙域におけるデラーズ・フリートの総員に告げる。

 こちらのコロニーを囮にするという貴殿らの作戦目標は達成された。

 直ちに撤退行動に移行しろ。

 このモビルアーマー、ノイエ・ジールが援護する」

 

 俺の通信に従って、即座にデラーズ・フリートがアクシズ先遣艦隊の方角に向かって移動を始める。

 

 連邦軍もあわてて攻撃を再開するが、ソーラ・システムⅡを展開することを最優先とした部隊であり、ソーラ・システムⅡのようなものの防衛はともかく、積極的に攻めることを前提として編成された部隊ではない。

 おまけに連中の前方には、崩壊したアイランド・イーズの破片が大量に散乱している。

 元々が不得手な追撃戦の上、大量のデブリに追撃のルートを塞がれた形だ。

 

 散発的にメガ粒子砲を撃つぐらいしかできていない。

 

 撤退ルート上で仁王立ちしているノイエ・ジールの横を、デラーズ・フリートの艦船やMSが続々と通り過ぎていく。

 この先のルート上の連邦軍も、俺が沈黙させた友軍の救助で手いっぱいである。

 アクシズ艦隊に辿り着くのにそう苦労しないだろう。

 

 ただ、アイランド・ブレイドの周辺に展開している部隊はそうはいかない。

 ここからでは距離がありすぎる。

 アクシズの艦隊の駐留期限までに、艦隊に辿り着くのは不可能だ。

 冷たい物言いではあるが、彼らは彼らで何とかしてもらうしかない。

 

 通り過ぎていくムサイの1隻から、プロペラント補給の申し出があったのでありがたく受けることにした。

 推進剤が満タンになっていれば、最悪ノイエ・ジール1機が残ってもどこへなりとも逃げられるだろう。

 

 と、連邦軍が二手に分かれたようだ。

 

 一方は間に合わないことを承知の上でアイランド・ブレイドに向かう艦隊だ。

 勘でしかないが、おそらくこの中にバスク・オムがいるのだろう。

 こちらから撤退している部隊は、奴の視点ではコロニー落としに失敗した兵だ。

 そんな連中よりも、アイランド・ブレイドに展開している部隊を殴りつけないことには奴の気が収まるまい。

 

 もう一方は、アイランド・イーズの残骸を迂回しながらこちらに追撃をかけてくる少数の艦隊だ。

 回り道を余儀なくさせられる以上、ほとんどのデラーズ・フリートの部隊を取り逃がすだろうが、僅かなりとも……といった感じなのだろうか。

 

 撤退部隊の最後尾にいる部隊からのデータリンクによると――追撃部隊に1隻のチベ級と数隻のムサイ級が混じっている。

 ということは、アサクラたちはこちらに回されたか。

 大方、意気込みよくコロニー落としの情報をリークし、デラーズを捕縛して連邦軍に下ったは良いものの、肝心のコロニーが囮だったと判明してバスクにどやされたといったところだろう。

 

 コロニーが落ちるのが避けられない以上、アサクラたちにとっては1隻でも多くのデラーズ・フリートを撃沈するしか未来はない。

 ある意味では哀れだと思うが、この3年、俺の部下のような立ち位置でよくやってくれたシーマ艦隊の境遇を考えれば、見逃してやる理由も特にない。

 

 俺は、ゆっくりとチベ級にメガカノン砲の照準を合わせる。

 同時にマルチロックオンを用いて、すべてのムサイ級にメガ粒子砲の照準を合わせた。

 同行しているサラミスは放置で構わない。

 1隻しかいない上に距離を取っている以上、彼らはアサクラの監視役に過ぎないだろう。

 

 俺はゆっくりと引き金を引く。

 

 そして宇宙に数輪の花が咲いた。

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 コロニー、アイランド・ブレイド周辺宙域。

 連邦の展開が間に合わず、後はデラーズ・フリートがコロニーを落とすだけ、という状況の中――。

 

 なぜかこの宙域で激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「なぜだ!?

 なぜ邪魔をする!」

 

 エリック・マンスフィールド大佐は、自身の乗機であるガーベラ・テトラを駆って、ビーム・マシンガンを相対するゲルググへと撃ち込んだ。

 ゲルググは爆散するが、その後方からさらに新しいゲルググが2機、襲い掛かってくる。

 

「このコロニーを北米の穀倉地帯に落とす。

 そうしなければ、スペースノイドの発言権は永久に地に落ちたままだというのに!」

 

 エリックの怒号に、返ってきたのは冷笑の声だった。

 

「お前たちギレン狂信者のような、御大層な大義など俺たちには必要ない!」

 

「何っ!」

 

 コックピットに響いたロックオン・アラートに合わせ、ガーベラ・テトラの機体を反射的にひねる。

 先ほどまで、機体のあった位置をビーム・ライフルのビームが通り抜けていくのが確認できた。

 

 射撃元を目の動きだけで確認する。

 ダークブルーとダークグレーを主体とした濃い色合いの――アクト・ザク。

 

 この機体のパイロットは2名。

 そしてそのうちの1人はここにいるはずがない。

 ならば……。

 

「マレット・サンギーヌ大尉か!

 どうしてこのような真似を!」

 

 マレット・サンギーヌ大尉、元ジオン公国軍キシリア配下の特殊部隊、グラナダ特戦隊の隊長である。*1

 常日頃からキシリアを敬愛していたらしいが、この土壇場で暴挙に及ぶ理由がエリックには分からない。

 エリックにとって、キシリアはギレン閣下を暗殺した怨敵ではあるのだが、連邦によって冷凍刑となった以上、敵は同じ連邦軍のはずだ。*2

 

 アクト・ザクとゲルググ2機を相手取って、そのまま高機動戦闘へと移る。

 

 いかにアクト・ザクといえどもパイロット次第ではその性能を活かしきれない。

 このガーベラ・テトラと自分ならば、1対1では十分勝てる相手ではある。

 だが、相手の方が数が多い。

 2対1や3対1を常に強制されると、最新鋭機のガーベラ・テトラをもってしても攻めきることができない。

 

 周辺の友軍もよく健闘しているが、相手の数に阻まれてコロニーに近づけていない。

 このままでは、コロニーを北米に落下させるための最終調整ができない。

 

「どこにこれほどの部隊が……」

 

 エリックはうめいた。

 

 エリックは知る由もないが、デラーズ・フリートに合流したグラナダ特戦隊は、他のキシリア傘下の部隊であるマッチモニードや屍食鬼隊と合流し、秘密裏に大きな部隊へと変容を遂げていたのだ。*3

 

 なんとか猛攻をしのいでいるエリックのガーベラ・テトラへと、マレットの笑い声が届いた。

 

「このコロニーはジャブローに落とさせてもらう!

 キシリア様の敵だ。あのお方の墓標にも、コロニーほどの大きさなら相応しい!」

 

 ガーベラ・テトラに回避行動を取らせながら、エリックは聞き返す。

 

「……キシリア様は冷凍刑になったはずだ!」

 

 連邦の機嫌次第だが、キシリア・ザビという存在は明確には死亡していない。

 ならば、コロニーを北米に落とし、スペースノイドの発言権を引き上げることによって、連邦と交渉する道もあるのではないか。

 

 そういう意味合いを込めて発したエリックの発言に帰ってきたのは、さらなる嘲笑だった。

 

「それを生きていると言える頭の緩さがうらやましいね!

 あのお方は既に亡くなられたのだ。ならば敵を討たねばならない!」

 

 それはエリックにとって、信じがたい発言である。

 思わず絶句する。

 

 

 本来の歴史なら、錯乱してキシリアの死を認めなかったマレットだが、この世界においては『キシリアが永久冷凍刑』という生死が断言できない状況に置かれたこと、そしてそれから3年という時が流れたことによって、彼の思考は変化していた。

 

 つまり――『キシリアの無念を晴らし、新たな指導者になるのは自分しかいない』という考えに彼は至っていた。

 彼の中でキシリアは、少なくとも政治的指導者としてのキシリア・ザビは既に死んでいたのだ。

 

「これは正当な敵討ちなのだよ、マンスフィールド大佐!」

 

 マレットの言い分に激高し、相対していたゲルググを1機撃墜する。

 

「ギレン閣下を暗殺した女狐の部下が、どの面下げて!」

 

 すぐに1機のゲルググがマレットに加勢し、2対1となった状況がすぐさま3対1に戻される。

 エリックにも分かっている。

 これは時間稼ぎだ。

 さらに多くのゲルググで包囲してこないのは、ギレン派の絶望する姿が見たいからだ。*4

 

 焦るエリックに、マレットの声が積み重なっていく。

 

「暗殺される方が悪い!

 父親を暗殺しておいて、自分が暗殺される予想もしていない人間に宇宙が統べられるものか!」

 

 もはや語っても無駄だと思ったエリックは、静かにガーベラ・テトラの操縦レバーを握りしめた。

 ただ、マレットの狂気を孕んだ笑い声だけが響いていた。

 

「俺は選ばれた人間なんだ!

 連邦を駆逐しキシリア様の敵を討つ。

 そしてアースノイドもスペースノイドも超越した、新世界をこの手に握るのだ!!」

 

 

 

 

 

 

「これですべてが終わる。

 いや、始まるか」

 

 コロニーの制御室で、マレット・サンギーヌはそう呟いた。

 ある程度デラーズ・フリートの軍勢を押し留めることに成功した彼は、後を友軍に任せてアイランド・ブレイドの内部に単身で乗り込んでいた。

 

 すでにコロニーの軌道計算は終わっている。

 後は指先ひとつで、やるべきことはすべて完了だ。

 

「思い知るがいい。

 俺からキシリア様を奪った連邦ども!」

 

 コロニーの姿勢制御のためのバーニアのスイッチを入れ、バーニアを点火させる。

 これでコロニーの落ちる位置は、地球連邦軍総司令部ジャブローである。

 

「ざまぁみろ。

 あっはっはっは――」

 

 マレットの笑い声は銃声によって遮られた。

 

 自分の背中から腹部を貫通した銃創をぼんやりと見つめたマレットは、そのまま崩れ落ちる。

 自身を撃った者の姿を目でとらえ、マレットは呟いた。

 

「マンスフィールド……どうやって」

 

 拳銃を向けたまま、エリック・マンスフィールドは静かに告げた。

 

「同胞たちの決死の奮闘の結果だ」

 

 元より、コロニー落とし別動隊であるエリックたちに生きて帰るつもりなどない。

 相打ち覚悟で友軍が攻め立てた結果、ガーベラ・テトラの機動力ならばなんとか潜り込めるだけの綻びが戦線に生じた。

 そこに強引に突っ込んだだけである。

 

 被害はとても大きい。

 友軍にもかなりの犠牲が出た上に、強引に突破したガーベラ・テトラは既に大破している。

 コロニーの軌道を変更したとしても、自分が脱出することは難しいだろう。

 

 だが、それで構わないとエリックは思っている。

 制御室のコンソールを再操作して、北米へと軌道を再変更するためのルートを算出していく。

 

「コロニーをなんとか北米へ……」

 

 その時、この制御室に2発目の銃声が響いた。

 

「ぐ……お」

 

 マレットと同じように、背後から腹部を撃たれて、エリックは崩れ落ち――なんとかコンソールにしがみついて、倒れるのを逃れた。

 エリックを背後から撃ったマレットは、最後の力を振り絞った後のように、床に大の字になって仰向けに倒れていた。

 

「させはしない。

 コロニーは……ジャブローへ落ちなくてはならないんだ」

 

 そう言ってマレットは静かに目を閉じた。

 

「ぐ……ぬぅ」

 

 エリックは最後の力を振り絞り、コンソールのレバーを引く。

 機動計算は途中であるが、キシリア派の思惑通りにはさせないという意地が彼を突き動かしていた。

 

 そして、レバーを引いたエリックはそのまま、マレットと同じように力尽きて崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 その日、オーストラリア中央部の砂漠地帯に、コロニーが落下した。

 

 

*1
ギレンとは別ベクトルで選民思想強めというか、キシリア傘下だけ生き残ればいいと思っている辺り、ギレンより強烈。

*2
なお、彼は本気でこう考えている。

*3
屍食鬼隊はさすがに話が通じなさすぎるので、合流したのは一部である。

*4
これはマンスフィールドの読み違い。キシリア派の寄り合い所帯に仲間意識などというものはない。コロニーを落とした後、自分たちだけ逃げるため戦力を出し惜しみするという姿勢の連中が多いからである。




読んでいただきありがとうございます。


だから勝者などどこにもいなかった。
という展開。

0083編を書き始めた当初から決めていました。
デラーズは生きてますが、バスクの艦で拘束されています。

ジャブローに落ちようとしていたコロニーを強引に軌道変更するとオーストラリアに落ちる。
オーストラリアは泣いていい。


というわけで星の屑作戦は終了です。
続きを書いた以上、前話までの展開は変更しないことになりますのでご了承ください。



主人公の行動等にご不満がおありで、どうしても我慢できない方は、遠慮なさらずに別の方の作品を探してください。

一晩寝て考えましたが、『こういった展開も宇宙世紀ガンダムにならあるものだろう』という結論に至りましたので、迷いは消化できました。

残念ながら、私の筆力ではすべての読者の方にご満足いただける作品を執筆することは難しいです。
ならば、せめてより多くの読者の方が指示してくださる方向に動くのが、私の作者としての矜持であると考えました。

また、すべての感想に目を通させてもらう方針ではありましたが、以後、この件に触れる感想は読み飛ばさせていただきますのでご了承ください。
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