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寝てるPに莉波が「ふーっ」として変なものに目覚める話/Novel by 八条レイラ

寝てるPに莉波が「ふーっ」として変なものに目覚める話

2,604 character(s)5 mins

莉波視点で初めて書いてみました。
難しかった......
変なとこあったらすみません。
あと、諸事情で名前とアイコンをすこしの間変更します。
このまま変えたまんまかもしれないし、3日ぐらいたったら戻すかもです。

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カチ、カチ、と時計の音がやけに大きく聞こえる。

それから、少しだけ重たげな、安らかな呼吸の音。

「……プロデューサーくん?」

そっと名前を呼んでみたけれど、返事はない。

事務所の扉を開けるとそこにはデスクに手を広げて、眠るプロデューサーくんがいた。

無防備で誰か悪い人が来たら連れ去っちゃうんじゃないかと思うぐらい可愛い。

ここに来たのが私でよかったね。

いつも私を導いてくれる頼もしい背中も、今は小さく上下しているだけ。

普段なら「風邪引いちゃうよ」って優しく肩を叩くけど……。

でも、今の私は、どうしようもなく"女の子"なんだと思う。

気づけば、私は椅子から立ち上がり、音を立てないようにプロデューサー君の隣まで歩み寄っていた。

膝をついて、彼の顔を覗き込む。

「……ふふふ。少し近すぎるかな?プロデューサーくんっ」

囁く声は思わず語尾が弾んでしまう。

整った鼻筋に少しだけ開いた唇。

ここから手を伸ばせば、簡単にその柔らかな髪に触れられるし、頬の温度を確かめることだってできる。

でも、もし指先が触れて、プロデューサーくんが目を覚ましてしまったら?

私がこんな、余裕のない顔で彼を閉じ込めていると知られたら、きっと今の関係の場所には戻れなくなる。

触れたいと感情が膨れ上がっていくたびに、やっぱり──触れるのは怖いと思ってしまう。

そんな矛盾した気持ちが私の指先を縛り付けて、あと数センチの距離が、まるで深い溝みたいに遠く感じられた。

「──だったら、触れない方法でなら、いいよね?」

私は、吸い寄せられるようにプロデューサーくんの耳元へと顔を寄せた。
 
唇をほんの少しだけ窄めて、彼の髪を揺らすくらいの、息を吹きかける。

「……っ」

プロデューサーくんの肩が、ぴくりと跳ねる。

くすぐったそうに、首筋を窄めて身じろぎするその仕草。

それが私の吐息ひとつのせいで、プロデューサーくんはこんなにも、いとも簡単に揺らいでしまうのがなんだかゾクゾクする。

心臓の音がやけにうるさい。

「ふふ、首元敏感なんだね」

触れていないのに、まるで深く繋がっているような。

自分だけが知っているプロデューサーくんの反応を、この静かな部屋で独り占めしているような――。
 
今度は、もっと近く。

うっすらと開いた彼の唇に向けて、私は自分の吐息を重ねるように、ゆっくりと息を吐き出した。

「ん……姫崎さん?」

不意に、眠りの中にいたはずのプロデューサーくんが、掠れた声で私の名前を呼んだ。

胸の内がうるさくなる。

逃げなきゃいけないのに、腰が抜けたみたいに動けないでいて、薄く開いたプロデューサーくんの瞳に、赤く染まった私の顔が映り込む。

「あ……あの、プロデューサーくん、えっと……」

咄嗟に出たのは、情けないほど震えた声だった。

心臓は警鐘を鳴らすみたいにうるさくて、顔が火照って、視界がちかちかする。

それなのに、プロデューサーくんの瞳は、まだ眠気でとろんとしてる。

それがまた、私の罪悪感と独占欲を同時に煽って、思考をぐちゃぐちゃにかき混ぜた。

「……姫崎、さん?今……何を、して」

「ち、ちがうの!違うの、プロデューサーくん、あのね」

必死に言葉を探す。

でも、脳内にある言い訳を探してみてもなにも見つからない。
 
まさか、プロデューサー君がどんな反応をするか見たかったから、なんて言えるわけない。

プロデューサー君の唇があまりに近かったから、なんて、口が裂けても……。

「あ、あのね……その、ほら、ゴミ!ゴミが付いてたの。プロデューサーくんのまつ毛のところに、すごく……すごく取れにくいゴミが!」 

自分でも驚くほど苦しい言い訳が口をついて出た。

私は慌てて、指先をプロデューサーくんの目の前に差し出す。

触れるのが怖くてあんなに迷っていたはずなのに、今は動揺を隠すために必死だった。

「手で取るのは危ないかなって思って、その、……息で、飛ばそうとしたっていうか……えへへ」

自分で言っていて、顔から火が出るかと思った。

そんなわけない。

普通、ゴミを飛ばすのにこんなに顔を近づけるわけがない。

プロデューサーくんが少しでも冷静になれば、すぐにバレてしまう。

「……あ、ありがとう、ございます。姫崎さん。気にしなくてよかったんですけどね」

プロデューサーくんの頭はまだ覚醒しきっていないようで、私の嘘をそのまま受け取ってくれたみたいだった。

ふにゃりと、いつもの優しい笑顔を向けられる。

「ははは。目に入ったらどうするの!危なかったんだからね」
 
それだけで、私の胸は締め付けられるように痛んだ。
 
――だめだよ、プロデューサーくん。

そんなに簡単に信じちゃ。
 
本当に悪い人が来ちゃったら捕まっちゃうじゃん……。

「……本当に、プロデューサーくんは無防備なんだから」

私は胸の鼓動を悟られないよう、わざとらしくため息をついて見せた。
 
私にこんな嘘をつかれているとも知らずに、そんなに優しく笑うなんて。

「……ねえ、プロデューサーくん。あんまり他の人の前で、そんな風に寝ちゃダメだよ?」

私がそう言うと、プロデューサーくんは「……そうですね。気をつけます」と、まだ重たそうな瞼を擦りながら背伸びをした。

プロデューサーくんに悪いことしちゃったな……。

でも、心の中ではそれ以上に、プロデューサーくんとの間に"私だけが知っている秘密"が一つ増えたことが、どうしようもなく嬉しかった。

「……ほら、まだ眠そう。お仕事も大事だけど、ちゃんとお家に帰って寝てね?」

私は努めて"いつもの私"を演じて、プロデューサーくんの背中を軽く叩く。

いつか、この嘘が必要なくなるくらい、特別な関係になれたら。

その時は、息を吹きかけるだけじゃなくて……。

「……あ。姫崎さん、顔、赤いですよ?熱でもあるんじゃ……」

「ひゃっ!?な、なんでもないの!ほら、早く片付けて帰る準備して!」

慌てて背中を向けて、私は事務室を飛び出した。

夕暮れの廊下、冷たい空気に頬を晒しながら、私は深く、深く息を吐く。

――次からは、もう少しだけ、バレないようにしなくちゃ。

おしまい。

Comments

  • シンヤ

    あ~~~~~好き~~~~。 めっさ最高でした

    Jan 31st
  • しーたろ

    ほああああああああ 可愛いいいいい マジ感謝感謝

    Jan 30th
  • 0

    すごく良いです…めっちゃ好きです…とにかく良いです…こういうときはイタズラっ娘なの莉波っぽいです

    Jan 30th
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