山猫の嫁
1.ニャンダム山脈-野良人間の集落
どぉん どぉん
太鼓が鳴り響いている。
戦士の試練である。
戦士の転職条件は同門以外のプレイヤーに戦士と認められることだ。
だが少し考えてみて欲しい。
戦士とは何だろうか?
学歴社会と言われて久しい日本国において戦士などという職業はない。仮に似たようなものを挙げるとすれば自衛隊員だろう。
つまり俺たち日本人は、普通に生きていて他人を戦士と認める習慣などないのだ。
それは、例えばモンスターと戦って傷付き倒れながらも立ち上がり劇的な逆転勝利を収めたとしても同じことである。
ゲーマーの目は厳しい。基本的に他人に興味がなく、勝てば自分の手柄、負ければ他人の責任という考えが根底にある。良い仕事をしたプレイヤーを褒め称えはするものの、経験値稼ぎを日常とする中で掛ける言葉は作業になっていく。さも感激しているように見せても、それは表面上のものでしかないのだ。
では、どのようにして戦士と認めさせるのか。
答えは就職活動という言葉にあった。
免許である。資格と言い換えてもいい。
運転免許然り英語検定然り、日本人は公的な資格を重んじる。実際にできるかどうかではない。本当にできるなら資格を取れという考えなのだ。
よってこうなる。
ロープを四方に張ったマットの上で、半裸のサトゥ氏が両手に嵌めたグローブを突き上げた。
「エイドリアーン!」
プロボクサーライセンスである。
ここ野良人間の集落はボクサーの聖地だ。
ティナンが暮らす山岳都市でネクタイも付けずに半裸になろうものならブタ箱行きは免れない。人間の里はゴミが多すぎて試験にならない。
何らかの事情があり、一日も早く戦士になりたいプレイヤーはニャンダム山脈を目指すのだ。
野生の人間たちが太鼓を叩き、角笛を吹き鳴らす。
都会の喧騒に疲れ人里を離れた彼らにとって、この試験場の提供は貴重な収入源の一つである。
サトゥ氏がマットの上でキレのある左ジャブを放っている。もうテストに受かった気でいるのだろう。まぁ無理もない。認めるのは癪だが、サトゥ氏は強い。格闘技は専門ではないが単純にレベルが高く、パワーとスピードだけでそこらのゴミを圧倒できる。また国内サーバー最強の男という触れ込みは一定の宣伝効果を持つ筈だ。普通に考えればそうなる。
サトゥ氏は調子に乗っている。
「挑戦者を求ーむ! 早い者勝ちだぞっ!」
しんっ……
おっと痛いほどの沈黙だ。
やはりこうなったか……。サトゥ氏のセコンドに付いている俺は目頭を押さえた。
……サトゥ氏は国内サーバー最強の男だ。試しに戦ってみたいというプレイヤーが居てもおかしくはない。
だが、サトゥ氏はやり過ぎたのだ。
運営ディレクターを殺した男。それが現在のサトゥ氏の肩書きである。レベルは24。
つまりこうだ。
サトゥ氏は、国内サーバーで頭二つか三つ抜きん出た存在になってしまった。
出る杭は打たれる。最強の男に挑戦してみたいというチャレンジ精神が、最強の男が無職というインパクトを下回ってしまったのだ。
無論……。俺は胸中で零した。国内サーバーにチャレンジャーが皆無ということはないだろう。普通に挑戦者が現れ、サトゥ氏があっさりと復職する可能性もあった。
しかし今日は違った。それだけのことだ。
両手を突き上げたまま硬直しているサトゥ氏に、試験希望者の一人が告げる。
「あの、サトゥさん……ですよね? えっと、後がつかえてるんで、いったんリングを降りて貰っていいですか?」
サトゥ氏が吠えた。
「うるせえ! 戦ろう!」
ど ん !
いやドンじゃねえよ……。さながらピエロだ。哀れなヤツよ。
ちっ、仕方ねえな。こうなるんじゃねえかと思ってたぜ。
俺はバッと上着を脱ぎ捨てた。
「いいや、リングを降りる必要はねえ。俺が相手だ」
サトゥ氏が目を剥く。
「こ、コタタマ氏」
へっ。サトゥ氏。お前とはいっぺん本気で戦いたいと思ってた。言っとくが、負けてやる気はねえぜ?
俺はロープを潜ってリングに立つと、サトゥ氏をびしっと指差した。
お前を倒せるとすれば、それは俺だけだろう。サトゥ氏。お前は俺に手の内を見せすぎた。すぐに後悔することになる。すぐにな。
対策はある……。俺は本気だ。サトゥ氏は一見すると派手なKO劇の連続で勝ち上がってきたように思えるが、本当に怖いのは基礎の積み重ねだ。大技を封じればそれだけで勝てるほど単純なボクサーじゃない。
サトゥ氏との対戦は予想していた。この日のために、俺はつい先ほど徹底的にボディを鍛え上げてきた。名前も知らない女族長に事情を話して腹をストンピングして貰ったのだ。ヘソ出し女はこう言っていた。
(コタタマはやるべきことをよく分かっている)
何度でも耐えれる腹筋を作ってみせる。そう意気込んだ俺だが、さすがに付け焼き刃もいいトコだ。楽観はしない。耐えられたとして5発か、6発か……。
俺の両拳にグローブを付けてくれている女族長が、肩越しにサトゥ氏を見つめながらアドバイスをくれる。
「コタタマ。お前は目がいい。カウンターを狙え。まともに打ち合おうとするな」
そのつもりさ。もっとも足を使って逃げ回るにも限度はある。ヤツの強打にどこかで向き合わなくちゃならないんだ。
ゴングが鳴った。
俺はマウスピースを咥えてリング中央に進む。ちょんとサトゥ氏とグローブを当て、身体を左右に振って牽制の左。サトゥ氏が頭を振って俺の左を掻い潜る。
下だ。ボディが来る。くれてやるぜ。腹筋は鍛えに鍛えてきたんだ。俺は下っ腹に力を込めて腹筋を固める。サトゥ氏の左拳が俺のボディに刺さる。
「げえっ……!」
俺はマウスピースを吐き出した。
な、何だ? 俺は頭の中が真っ白になった。ガクガクと膝が笑っている。理解が追いつかない。内臓をえぐり取られたかのような衝撃にプランが吹き飛んだ。
は、腹は!? 俺の……ある。な、何て拳してやがる……。
女族長が何か叫んでいる。下がれ? くっ、そうだ。足を止めたらおしまいだ。
だが、俺の足はぴくりとも動いちゃくれなかった。サトゥ氏が迫る。あんなパンチを顔面に貰ったら……。俺はゾッとしてガードを固める。それを見越していたかのようにサトゥ氏は身体を沈め、俺のガードの隙間を縫って左を叩き込んできた。ご丁寧にも一発目のボディと同じ箇所だ。
俺の身体がくの字に折れる。
「〜〜〜〜っ」
悶絶する俺。
あ、あんなに鍛えたのに。俺の腹は耐えられないのか……。
俺は泣き言を漏らした。
強え。強えよコイツ……。
サトゥ氏が拳を振り上げる。うわーっ! あまりの衝撃にガードが疎かになっていた。俺は慌ててガードを上げる。かろうじて間に合った。ガードの上から叩かれ、大きくよろめく。俺はコーナーに追い詰められた。
サトゥ氏がじりじりと距離を詰めてくる。くそっ、化け物め。
落ち着け……。俺は自分に言って聞かせた。種族人間はレベルが上がっても劇的に強くなったりはしない。刃物で刺されたら普通に死ぬし、ブン殴られてまったくのノーダメージってことはない。カウンターを取るんだ。そのためには、まず仕切り直しだ。左フックを引っ掛けて身体を入れ替えればコーナーを脱出できる。アウトボクサーの定石だ。
俺は何一つ諦めちゃいないぜ。
サトゥ氏は俺を追い詰めたつもりでいる。右の大砲を撃ってくるだろう。よし、来た……! 俺は左フックを放った。サトゥ氏の身体がふっと沈む。え? 俺の左を掻い潜ったサトゥ氏が上から左をかぶせてきた。お、俺のカウンターを狙い撃ちだと……!?
絶対に貰ってはいけないパンチを貰ってしまった。俺は吹き飛んでロープを横滑りする。倒れまいと踏ん張った両腕がロープに絡んだ。俺はニィ……と笑った。
「サトゥ氏……」
サトゥ氏はファイティングポーズを崩さない。そうかい。お前は俺を敵と認めてくれるんだな……。
かはぁっ。俺は盛大に喀血して膝から崩れ落ちた。腕に絡まったロープが反動で俺の身体を前へと押し出す。
へへへっ。サトゥ氏……。お前は強え。だがな、俺は別に戦士になりたい訳じゃねえんだよ。あるのは一つ……勝利して支配する! それだけが満足感よ! 過程や……! 方法なぞ……!
「どうでも良いのだぁーッ!」
俺は口内に含んだ血をサトゥ氏の顔面に吹き付けた。
「ぬううっ!」
どうだ! この目潰しはッ! 勝った! 死ねいッ!
サトゥ氏の閉ざされたまぶたから青白い雷光が漏れ出で走る。
「オラァッ!」
女族長がタオルを投入した。
サトゥ氏の右が俺のボディを穿つ。
直感の、アビリティ……。
アビリティを発動したサトゥ氏に死角はない。それゆえにタオルが投入されたことを直前で悟った。勝利を確信して気が緩んだ。そして、この瞬間を俺は待っていた。
ゴングが高らかに鳴っている。だが関係ねえな。ここからは俺とサトゥ氏の「時間」だぜ!
死ぃッ! 俺はエルボーを繰り出した。俺の肘を額で受けたサトゥ氏が吠える。
「おおおおおおおおおおっ!」
【条件を満たしました】
【イベント】【戦場の産声】【Clear!】
【Class Change!】
【サトゥ さんが戦士にクラスチェンジしました!】
視界を埋めるアナウンスですら今のサトゥ氏にとっては障害にならない。
アナウンスを突き破ったサトゥ氏の両拳が残像を引いて俺の身体に叩き込まれる。
くそがぁっ! 俺はサトゥ氏のラッシュを受けながらも目に力を込めた。
奥義ッ、月食輪廻の型ァ!
俺の目は男には使えない。より正確に言えば使いたくない。だがセクハラ神の依代となることで一時的に対象の性別を反転しッ男の娘と見なすことができるッッ。ネトゲーマーのリアル性別は常にシュレーディンガーの猫。観測を以ってしか確定することはない。その一分にも満たない可能性を俺は押し広げることができるッ。
だがサトゥ氏は俺のセクハラを物ともしなかった。それは「覚悟」だった。セクハラを乗り越え、荒野を切り裂くような気高い「覚悟」だった。
「んぃぃぃぃっああああああアッー!」
俺の両目が酷使に耐えきれず潰れた。闇雲に突き出した俺の両手をサトゥ氏が弾き、更なる猛攻を俺に浴びせる。なおも俺は反撃を試みる。隕石よォー! ガチッと歯車が噛み合ったような感触があった。確実に今、俺のアビリティが作動した。ハードラックのアビリティ。不運の裏返しは幸運だ。世界と繋がったような全能感があった。アビリティは精神の才能だ。放っておけば誰かが何とかしてくれる。その精神ッ。俺のスキルこそが真に世界の頂点なのだ!
女族長の放ったタオルがぱさりとサトゥ氏に掛かる。今だッ死ねぇー! 俺はこんなこともあろうかとグローブに仕込んでおいたナイフをサトゥ氏に突き立てた。腕? 腕か? 腕で受けたのか? くそっ、このっ、どこまでも……! 死ねオラァァァ! 傷口を広げに掛かる俺に、サトゥ氏はまったく怯まない。火を噴くような連打が俺の両腕をへし折り、全身を余すことなくブッ叩いてくる。
は、速すぎる! 「時」を止められたみたいに速すぎる! や、やめてくれ! 降参する! これ以上殴られたら死んじまうよ! 俺はシューズに仕込んだ毒針を、
「URYYYYYYAAAAAAAAAAAA!」
「ヤッダーバァアァァァァアアアア!」
毒針は空を切った。無念。
サトゥ氏に殴り飛ばされた俺は、場外にボテリと落ちて死んだ。
マナを使い果たしたサトゥ氏が、がくりとマットに片膝を付いて悪態を吐いた。
「くそッ。殺るしかなかった……」
それでいいんだ。サトゥ氏……。
聴こえる筈もない俺の声にサトゥ氏がぴくりと顔を上げる。
「コタタマ氏……。俺は……」
俺は本気でお前に勝ちたかった。全力を尽くした。そして負けた……。
心のどこかでは、こうなることを望んでいたのかもしれない……。今となってはそう思う。途中まで完全に唐沢戦の流れだったしな……。
でもよ、お父ちゃんがこっぴどく一歩にやられて、唐沢の息子がよ。まだ小さなガキンチョがだぜ。何かを受け取ったんだよなぁ。ありゃあ強くなるぜ。何かを受け継ぐっていうのはああいうことなんだろうな。前に進むってことなんだよ……。
サトゥ氏。お前も同じさ。俺の命はお前に宿ったんだ。ようやく分かったよ。命の火は意志の灯火なんだ。始まりはどこなんだろうと、ずっと考えていた……。そうじゃないんだな。あれは受け継がれてきたもの。その火を絶やすなというメッセージなんだ。
へへっ。気付くのが、ほんの少し遅かったみたいだがな……。
雲の切れ目から光が差し込む。その光に吸い込まれていくかのように、俺の幽体が天に昇っていく。
「こ、コタタマ氏ぃーっ!」
俺、リタイア。To be Continued…
2.野良人間の集落-酒盛り
まぁリタイアしてる場合じゃねえな。
新しい戦士の誕生を祝って宴会するってんでダッシュで死に戻りした俺は上機嫌でサトゥ氏と肩を組んでタダメシとタダ酒に舌鼓を打つ。
酒だ! もっと酒持って来ーい!
女族長が酌をしてくれた。ありがとね。
野生の人間たちは全員が獣の皮を被ったような格好をしている。ロールプレイの一環だろう。化粧のけの字も知らないような連中であるが、例によって例のごとく女キャラはアイドルじみた美女揃いである。
ヘソ出し女がもじもじと内股を擦り合わせて何か言っている。
「コタタマ。私はお前と結婚することになりそうだ」
ん? けっこん? けっこんって何だ?
あれか? いわゆる、性質変化を二つ合わせて新しい性質を生み出すっていう……。俺はちらっとヘソ出し女を見た。
「?」
ヘソ出し女は首を傾げている。ぬぅ。俺はちらっとサトゥ氏を見た。サトゥ氏がコクリと頷く。
「それを血継限界って言うんだ。聞き覚えあるだろ?」
イェーイ! 俺とサトゥ氏はハイタッチした。ネタが通じるというのは幸せなことだ。
まぁネタはさて置きとして、結婚? 結婚イベントは実装してねえぞ。その筈。だよね? サトゥ氏。
「だねぇ。実装してないもんは仕方ない。仕方ないっつーか結婚しても意味ないよね」
だよね〜。
「ね〜」
俺とサトゥ氏は二人一緒に小首を傾げた。
ヘソ出し女が食い下がってくる。
「もるっ。システムとかじゃなく。け、契約だ。もるるるっ」
はぁん? 言ってる意味がよく分からねえが、察するに政略結婚ってことか?
「そう、それ。形だけのっ。形だけのものだからっ。もるぁっ」
ふうん。よく分かんねーけど、綺麗な嫁さん貰えるってのは悪い気分じゃねえな。
んで、なに? 婚姻届にハンコでも押せばいいの?
「ターイム!」
サトゥ氏が突然叫んだ。おぅ、何だよ。びっくりしたぜ。どうした急に。
「待て待て待て。ヤバいヤバい。コタタマ氏待て。形だけって形だけで済まないでしょお前の場合。ヤバいよ何より俺がヤバい。ブッ殺されるっていうね。その場に居たってだけでヤバい」
えっ。ヤバいの? でも別に結婚イベントじゃないって言ってるぞ。
「お前マジか。お前ちょっと。お前ジャムもヤバいけどポチョさんとかスズキさんとかどうすんだ。俺がさん付けだぞ。この俺がさん付けだぞ。あれはちょっと普通じゃないぞ。知らんけどリアルでヤバいぞ」
マジか。まったく頭に入って来ないけど俺はどうしたらいい?
「よぉし俺に任せろ」
サトゥ氏はヘソ出し女の説得を始めた。
「あのですね。コイツは下界にイイ人が居ます。本当のところは分かりません。でもヤバいのでコイツのことは忘れてください。ヤバいので。俺がヤバいので」
ヘソ出し女はなるほどと頷いた。
「もるっ。ひとまずニャンダムに会って貰う。ややこしい話はその後で」
なんでニャンダム? ニャンダム関係なくね?
「ある。ニャンダムに報告せねばっ。もるるっ。少し待つ」
そう言ってヘソ出し女はさっと立ち上がると、頭の上にぴょこんと両手を立てた。
サトゥ氏がギョッとする。
「えっ。あれ? 今、俺ダメって言ったよね? 完全にスルーされてない? 気の所為?」
俺はヘソ出し女のヘソをじっと見つめる。うんうん。いい形のおへそだねぇ。
ヘソ出し女が叫んだ。
「にゃあああああああああああああっ!」
おぅ、いきなり何だよ。
あ、そういうこと? へえ、ニャンダムを呼べるんだ? 立場からいって逆じゃねーの? 大丈夫?
大丈夫らしい。巨大な化け猫が木々をひとっ飛びして山に降り立った。前足を揃えてキチンとお座りして、じっと俺とサトゥ氏を見つめてくる。
にゃあと底意地悪そうに口元をひん曲げたのは気の所為かな? いや気の所為じゃなかった。
【ゲストの血の匂いがするぞ】
しゃしゃしゃ喋ったぁー?
え? 俺、酔ってる? レイド級って普通に喋れるの?
ぴたりと寄り添ってガクブルする俺とサトゥ氏を化け猫様が見つめてる。
【ワシは穴ぐらどもとは違う。ゲストとてワシを縛ることはできぬ】
穴ぐら? マールマールのことか?
つーか頭ん中にガンガン声が響く。これ、ささやきか? 何か違う。そもそもささやき魔法は【NAi】の固有魔法だ。レイド級がささやきを使えるのはおかしい。
ニャンダムがにゃっと笑う。
【ははァ。苦しいか。そうだろうな。知ってるぞ。お前たちはワシの声を共振で聞いているのだろう】
共振? 何の話スか?
化け猫様はつまらなそうに鼻を鳴らした。
【ふん。未だその程度か。此度の人形は随分と出来が悪いと見える】
はぁ。そうなんスか? なんかゴメンなさい。俺とサトゥ氏はぺこぺこと頭を下げた。ヤバいよ化け猫様ヤバい。ナルトの尖ってた頃の九尾を彷彿とさせる迫力がある。
【だが、ゲストに血を流させたか。見所がある……】
ゲストってョ%レ氏のことだよな?
マズいぞ。過大評価されてる。ョ%レ氏を追い詰めたのはジョンだ。俺とサトゥ氏は、そのお零れに預かったに過ぎない。
ヘソ出し女が何やら慌てた様子で俺の手を取る。
「ニャンダム! コイツはコタタマ! 新しく山の民になる。だから紹介」
誰が山の民だ。でも言えない。化け猫様が怖い。このプレッシャーは何だ? 魔法、なのか? 俺とサトゥ氏はニャンダムに何かされてる……?
化け猫様は顔を洗うような仕草をした。
【気に入った。女。その二人をワシの元へ寄越せ】
一方的にそう告げて、ニャンダムは飛び去って行った。人間の都合など知ったことではないとばかりに。
……えっ。どういうこと?
気に入ったって……。俺とサトゥ氏、化け猫様のお嫁さんにされちゃうの?
ヘソ出し女はぶるぶると震えている。俺とサトゥ氏の背中をばんと叩き、こう言った。
「大出世!」
俺とサトゥ氏はもるもると悲しげに鳴いた。
これは、とあるVRMMOの物語。
やったね。
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