ちっちゃいってことは便利だね
素敵なイラストに影響を受けて書かせていただきました。元ネタ(?)は、らん(user/3416057)さまのこちら(illust/29140601)の作品です。見ていない方は是非先に見てから!拝見してから!こちらの駄文を読んでください。というかイメージ破壊すみませんでした。と謝っておけば許されるだなんて思わないことだなって赤い弓兵さんが言ってました。☆タグありがとうございました。ケリィはショタ弓に無条件に癒されてればいいよ……!そして雁夜おじさんが閲覧者さんの中にいらっしゃるようですねwwwそうだよ俺たちのショタアーチャーは最萌えなんだ!☆うわー! Fate小説50users入りということでありがとうございました!これもらんさんのお力です……!ありがとうございましたありがとうございました!
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【英雄王の場合】
「フェイカーよ。フェイカー!」
遠くで英雄王の呼ぶ声がする。洗濯物を畳んでいたアーチャーはその姿に似合った大きさで小さくため息をついて、いったん畳んでいたタオルを床の上に置いて立ち上がった。てとてとて、と歩いていって、テレビの前に寝転がる英雄王に声をかける。
「呼んだかね、ギルガメッシュ」
「呼んだとも。我が呼んだらすぐ来ぬか、下僕としての心持ちがなっておらぬぞ」
「下僕になった覚えはない」
むっすりとした顔で言うアーチャーの眉間の皺をつついて、子供がそんな顔をするものではないわと英雄王は溌剌と笑った。
「子供は笑っていれば良い。そんなしかめっ面をしていると老けて見えるぞ」
「子供はどんな顔をしても子供だ。それに老けて見えるのなら大歓迎というところだよ」
そもそも誰のせいでこんなことになったと思っているのだね、と腰に手を当てぷりぷりとアーチャーは怒る。端正な顔をきょとんと崩して首を傾げる英雄王に、その尊顔に丸い指先を突きつけてアーチャーは言った。かつぜつよく、大きな声で、はっきりと。
「君の若返りの薬のせいだ! しかも記憶と姿はそのまま持ち越されるという、都合のいい薬のせいだよ! 全く……あの忌々しい衛宮士郎に戻ることがなかったのは僥倖と言えるが、こんな姿になるのだけは勘弁してもらいたかった」
「何を言う。そのような愛い姿、どこを探してもなかなかいないぞ? この我が愛でてやろうと思うまでの愛らしさよ。光栄に思え」
「…………」
はいはい、と早々にまともな会話を諦めて、アーチャーは英雄王の前から立ち去ろうとする。その腕を、力ある者が引いた。
「!」
子供のか細さでは大人に敵わない。あっさりとアーチャーは力ある者――――英雄王の胸の中へと収まってしまって、その鋼色の瞳をきょとん、と丸くしたのであった。
「……ギルガメッシュ! ふざけるのは止めて、すぐに手を離さんか!」
「だが断る。我が命じるぞ。貴様はしばしこの我の抱き枕となれ、フェイカー」
「…………!?」
だきまくら。
その響きに何故だか不穏なものを感じて何とか英雄王の腕の中から逃げ出そうとするアーチャーだったが、元々筋力Dの上に子供の姿になってしまっているものだから敵わない。
「ほう。ふにふにとして、もちもちとしている。なかなかの抱き心地よ」
「何だその表現は! 王ならばもっとまともな言葉で喋れ!」
「我はフィーリングを大事としている」
ニヤニヤと笑みながら言われ、ますます眉間の皺を深くするアーチャー。
「私は忙しいのだ! まだ畳んでいる途中の洗濯物が残っている。洗い物も済んでいない! 今すぐ私を解放するんだ、いいな!」
「そのようにキャンキャンと吼えても恐ろしくも何ともないぞ。むしろ愛らしいほどだ」
ニヤニヤとした笑みを消さずに言い返した英雄王はそれに、と口にする。
「洗濯物など、下女に畳ませておけばいい。洗い物は全自動食器洗い乾燥機がやってくれるだろう。つまりだ。フェイカーよ、おまえはただ我の抱き枕となっておれば良いのだ」
「下女!? そんなものどこにいる!」
「雇えばいい。金ならある。いくらでも積んでやろう。それを見れば涎を垂らした狗のように目の色を変えた女共が群がってくるだろうよ」
「……そんなもの必要ない! 私が全てやる! 食器洗い機も信用出来たものか! 汚れは結局残ってしまうんだぞ、それに――――」
「ええい、うるさい」
むぎゅっ。
「むぐ」
英雄王のてのひらがアーチャーの口を覆い、むぐむぐむぐとお小言を全てシャットダウンしてしまう。なおもむぐむぐむぐと呻いているアーチャーを見て、ギルガメッシュは甲高く笑った。
「ははは! 力では我に敵わぬとわかっているのに無駄なことを。……ふむ。しかし全てが聞こえぬとなると少々退屈だな。少しはおまえのささやかな意見でも聞いてやろうではないか」
「……っぷはっ」
ようやっと解放されたアーチャーは大きく息を接いで、はーはーと肩を動かしながら荒い息を整える。そして英雄王を見据えると、声もきつく言い放った。
「今日のおやつは抜きだぞ!」
「我が悪かった」
速攻だった。最速のサーヴァントは他にいるというのにその上を行った。
アーチャーを素早く離すとばっと正座して、三つ指をついて頭を礼儀正しく下げて、「我が悪かった。だからおやつ抜きだけは勘弁してくれ」と英雄王は希った。
「……よし」
それを見ながらアーチャーはふん、と鼻から息を吐くと、腰に手を当てておやつごときに屈した英雄王を見下ろす。
「もう悪さはしないな?」
「しない」
「無理に人を拘束したりしないな?」
「しない」
「下女を雇うことも、食器を洗うのに食器洗い機を使うのを強制したりもしないな?」
「しない」
「よし」
「だから」
英雄王は顔を上げると、真剣な表情をその上に広げて。
「苺のたっぷり乗ったショートケーキは必ず作るのだぞ」
「……了解した」
「三時までに間に合うようにな」
「君が私の邪魔をしなければ余裕で間に合わせるよ」
「期待しているぞ!」
「…………」
自分の方がよっぽど子供のようにきらきらと赤い瞳を輝かせて自分を見つめてくる英雄王に、アーチャーは目を閉じてため息をついた。
それを不思議そうに眺める英雄王へとひらひら手を振り「何でもない」と曖昧にごまかすと、放置された洗濯物の方へと向かう。
苺のたっぷり乗ったショートケーキ。
子供味覚の英雄王相手だ、クリームは甘めにした方がいいだろうと結論付けて、アーチャーはレシピに多少の修正を加えた。
砂糖の量を、少々多めに。
ただし食後の歯磨きをきちんとさせることを忘れないようにと、重々自分に言い聞かせて。
なるほどここがヘブンか