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デジタル主権、サイバー戦略、認知戦

来年、いくつかの催しで登壇する機会をちょうだいしたので資料をまとめている。その一部をこちらで公開しておこうと思う。
昨年から「オルタナティブな視点」の提供を心がけている。なぜかというと、グローバルのノースの民主主義国、特に日本では、いまだに議論の大前提としてアメリカやEUがやってきたことを先行事例して尊重しているように思えるからである。まるでアメリカやEUが成功しているかのようだ。今のアメリカやEUを見る限り、とてもそうとは思えないので、あえてそれとは異なる視点を提供することを心がけている。
ここでご紹介する視点に立つと、アメリカもEUも失敗したという話になる。

エリューシスのゲーム

エリューシスというトランプのゲームがある。ディーラーがルールを決め、プライヤーはゲームのルールを推測しながらゲームを進めてゆく。EUとトランプ以前のアメリカは、ポーカーと思ってエリューシスのゲームをプレイしているようなもので、これまでポーカーをやってきたんだから今回もポーカーに違いないと思い込んでひどい目に遭っている。認知戦で言うと、世界でもっとも研究された、と言われているロシアのドッペルゲンガーの目的すらわかっていないのが、それを象徴している。

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同じことはサイバー戦略についても言える。毎年、莫大な人員と予算を注ぎ込んでいるのにいまだに甚大な被害を受け続けている原因、閾値以下の攻撃への対処がいまだに確立されていない状況を考えれば、「根本的になにかが間違っている」と見直しそうなものだが、いまだにポーカーだと信じてゲームを続けている。
先日、NewsWeekにもそんなことを書いた
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2025/10/40.php

ゲームの構造

おそらくこのゲームのルールは国家や排他的統治権のとらえ方を変えないとわからない。アメリカやEUの民主主義にはもともと欠陥があった。それが急速なネット社会の到来で深刻な脆弱性として露呈してしまった。

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サイバー攻撃、サイバー防御、認知戦、監視システム、評価システムといったものは「国家のあり方」、「排他的統治権」のあり方、統治システムによって決定されるものでなければならない。そうしないと一貫性がなく統合的な運用ができず、領域横断的な脅威(ハイブリッド脅威など)には対応できない。現状は既存の枠組みで対応しようとして(ソブリン・クラウドなど)、行政が排他的統治権を管理するという逆転現象が起きていて、当然うまくいくはずがない。そもそもデジタル主権に注目した枠組みと、地理的国家に注目した枠組みでは概念そのものが最初から違っている。

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デジタル主権の本質

デジタル主権とは排他的統治権を指し、それを実現するために情報・行動誘導・評価システムがある。データ主権、技術主権、ソフトウェア主権、運用主権はその基盤となる。

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民主主義国やSNSプラットフォームもこの仕組みを持っている。SNSプラットフォームは国家ではないが、統治単位と言えるのだ。統治単位だから地政学的アクターになり得る
デジタル主権の定義によって、統治単位は変わり、国際的パワーバランスに影響を与える統治単位が国家以外にいくつも存在しうることになる。

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ちなみに民主主義国の多くはデジタル主権を侵害されている。

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デジタル植民地

排他的統治権は排他的統治権を実現するための情報・行動誘導・評価システムを他国や地域に拡大することでデジタル植民地化することができる。

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たとえば中国はスマートシティなどと称して排他的統治権のシステムを輸出してデジタル植民地化している。SNSプラットフォームの海外展開はデジタル空間における排他的統治権システムの海外展開であり、他国のデジタル主権の侵害に当たる。主権の侵害というと深刻に聞こえるが、その通りで深刻だから社会問題になっているのだ。だから規制しろ、というのはEUのような短絡的、対症療法的発想で自滅するだけとなる。国家のあり方と、そのための排他的統治権をどのように定義するかなのだ。

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閉鎖ネットによる戦略的優位性の実現

デジタル主権と排他的統治権を統合管理システム実現する方法は、サイバー攻撃や防御においても効果的だ。閉鎖ネットの戦略的優位性については、Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence = CCDCOEの『Cyber Threats and NATO 2030: Horizon Scanning and Analysis』の第1章「Cyber Threats and NATO 2030: Horizon Scanning and Analysis」に詳しい。以前、このnoteでも紹介した。ロシアの事例だが、中国についても同様のことが言える。
ロシアのサイバー非対称戦略「The Russian National Segment of the Internet as a Source of Structural Cyber Asymmetry」
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc725e0c9d580

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デジタル植民地と並行して植民地を地域としての閉鎖ネット化することで複層的な閉鎖ネットを実現できることになる。
また、この閉鎖ネットは認知戦においても非対称的な優位を保てることは中国を見れば明らかだ。中国企業のSNSプラットフォームは世界中に広がるが、中国国内に他国にSNSが普及するのは難しく、内容は検閲されている。

AIはSNSに次ぐ排他的統治権システム

その影響力や広がりから考えてAIはSNS以上の排他的統治権システムになりつつあり、他国のAIを利用することはデジタル主権を毀損することにつながる。米中のAIはそれぞれが自国の主張を反映したものになっているので、認知戦におけるその効果はSNS以上だ。
OpenAIはStargateプロジェクトのOpenAI for Counrtiesで民主主義的価値観に基づくAIインフラの普及を掲げているが、その民主主義がどのようなものかは今のアメリカを見ればわかる。

課題

米中のSNSやAIを完全に排除することは無理だろう。対策を考えるにしても現状を認識することが前提となる。そのためには、プレイしているゲームのルールを知ることと、そのルールにおける自分の手札の意味と価値を評価することが前提だ。
そのための「オルタナティブ」な視点なのだ。
この観点に立つと、先日発表された我が国の「サイバーセキュリティ戦略」がアメリカやEUと同じくポーカーをプレイしているように見えてしまうことがわかってもらえると思う。

SE:サイバーセキュリティ戦略がよくわからない
https://note.com/ichi_twnovel/n/ncbb01bd9e57d

このお話の続きを聞きたい方は私のXアカウントに連絡してみてください。私が登壇する予定のイベントをお知らせします(いろいろ参加条件ありそうですが)。


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もう一度 We Failed The Misinformation Fight. Now What? https://www.noemamag.com/we-failed-the-misinformation-fight-now-what/

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コメントありがとうございます。 おっしゃる通りだと思います。

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