経済

2026.03.09 14:00

従業員の4割を解雇、数字が示すジャック・ドーシーの経営危機

Blockのジャック・ドーシーCEO(Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com)

Blockのジャック・ドーシーCEO(Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com)

米国時間2月27日、ジャック・ドーシーは、CEOを務めるBlock(ブロック)が4000人超、つまり全従業員のおよそ40%を解雇すると発表した。CEOはAIを主な動機として挙げ、「私たちがつくり、使っている知能ツールは、より小さくフラットなチームと組み合わさることで、新しい働き方を可能にしており、企業をつくり運営することの意味を根本から変えつつある」と述べた。

Blockは、AIを理由に大規模なレイオフを正当化するテクノロジー企業、ソフトウェア企業の列に加わった。すでに一部からは、ドーシーが「AIウォッシング」をしているとの批判が上がっている。つまり、AIの脅威を自らの経営上の失敗を覆い隠す煙幕として使っているというのだ。今回のニュース以前にも、Blockは2024年初め以降にすでに約2000人を解雇していた。

「今回の動きは、とりわけ、過去の過剰採用を巻き戻すための隠れみのとしてBlockがAIを使っているように感じられる」とドイツ銀行の株式アナリスト、ネイト・スヴェンソンはいう。ドーシーは別のXへの投稿で過剰採用を認め、それは、個人間送金部門のCash Appを中核の決済処理ビジネスから「誤って」切り離してしまったからだと説明した。ドーシーはまた、自身の実績を擁護し、「私たちは効率的な会社を運営してきたし、今もそうだ……大半よりも優れている」と述べた。

ドーシーがそう話すのも無理はない。Blockの取締役会は依然として彼を支持しているものの、ドーシーは会社の業績を立て直すよう株主から圧力を受けている。同社株は2021年のピークから70%下落している。匿名職場コミュニティBlindで行われた、現職(およびまもなく退職する)Block従業員271人を対象とした投票では、回答者の87%がドーシーはCEOを解任されるか辞任すべきだと投票していたことが、Forbesに共有されたスクリーンショットで明らかになった。

ドーシーの華々しいキャリアを長年追ってきた人々にとって、Blockとツイッター(ドーシーが2006年に共同創業し、CEOを2度務めた)との類似は明白だ。Blockと同様、ツイッターも上場企業として成長維持に苦しみ、最終的にイーロン・マスクが450億ドル(約7兆1400億円)のレバレッジドバイアウトで非公開化し、従業員数を8000人超から1500人へと約80%削減した。さらに理解しがたいのは、Blockが復調を目指すなかで、ドーシーが依然としてこのフィンテック企業を率いる最適任者だと取締役や株主にどうやって納得させてきたのか、という点である。

次ページ > 「ドーシーは大きく成長した会社を2つ立ち上げ……どちらも従業員の大部分を解雇することになった」

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事

Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2026.02.19 11:00

なぜ女性の健康課題が社会テーマなのか オルガノンが向き合う「日本のアンメットニーズ」

2021年設立のオルガノンは、女性の健康向上を目的とし、幅広い医薬品やソリューションを提供するグローバル企業だ。70以上の製品を軸に、女性特有の疾患や女性が直面しやすい健康課題の解決に注力している。ステークホルダーとの共創によって同社が描く、新たな解決への道筋を追う。


月経前や月経中に起こる心身の不調は、長らく「我慢するもの」として個人の努力に委ねられてきた。しかし近年、こうした女性の健康課題は、労働参加率や生産性、さらには経済成長とも深く結びつく社会的テーマとしてとらえ直されている。2025年、世界経済フォーラムは、性別による健康格差を解消することで、40年までに世界GDPを年間4,000億ドル押し上げる可能性があるとするレポートを発表。日本でも24年、経済産業省が女性特有の健康課題による労働損失などの経済損失が、社会全体で約3.4兆円に上るとの推計を示し、注目を集めた。

オルガノン インターナショナルコマーシャルの統括責任者を務めるニコ・ファン・ホエケ(以下、ホエケ)は、こうした潮流を次のようにとらえる。「労働人口が減少していく社会において、多様な人材が心身ともに健康に働ける環境を整えることは、企業や社会が存続するための前提条件です。そのためには、これまで十分に向き合われてこなかった女性特有の健康課題に目を向ける必要があります」

女性の健康課題が後回しにされてきた背景には、医学研究や創薬の歴史的な構造があるとホエケは指摘する。「総合科学学術雑誌『ネイチャー』で公開された記事によると、世界のバイオ医薬品の研究開発費のうち、女性の健康に関するものはわずか5%。そのうち、がんが4%を占め、がんを除く女性疾患を対象にしたものは1%未満というのが現状です(2020年時点)。また、長年、臨床研究の多くが男性を前提に設計されてきました。例えば米国では、女性が治験に組み込まれることが法律として義務付けられたのは、1993年。その後、性別による違いを考慮した研究設計やデータ解析の重要性が認識されるようになり、近年では男女の参加バランスや性差に基づく分析をより重視する動きが強まっています」

オルガノンは、創業当初から女性の一生を通じた健康に注力して事業を展開。不妊症、月経困難症、避妊、さらには片頭痛など女性に特に影響のある疾患に対する医薬品の提供に加え、必要な治療へのアクセス拡大や政策提言にも取り組み、日本を含む140以上の国と地域で活動を続けている。

日本で顕在化する月経困難症とPMSの課題

日本において、働く女性が直面する代表的な健康課題のひとつが月経困難症とPMSだ。晩婚化や出産回数の減少により、現代の女性は生涯を通して経験する月経回数が増えており、月経関連の症状に悩まされる機会も多くなっている。月経困難症は腹痛にとどまらず、疲労、頭痛、めまいなどを伴うこともあり、日常生活や仕事のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼす場合もある。

「月経困難症は単なる体調不良ではなく、適切な治療を必要とする病的な症状です。症状を我慢し続ければ、労働参加や生産性に影響したり、キャリアの継続が難しくなる可能性もあります」

先に挙げた経済産業省の資料では、月経関連症状による労働生産性の損失額は年間で約5,700億円に上るという。加えてホエケは、日本において女性特有の健康課題が社会全体の課題として取り扱われる背景として、医療制度以前の社会的要因にも目を向ける。

「日本では、月経や体調不良を私的なものと考えてしまい、ほかの人に相談すること自体をためらう傾向が強いと感じます。制度や治療法が存在していても、相談しにくい、受診しにくい、選択肢を知らないといった心理的・社会的ハードルが、結果として未治療の状態を長引かせる一因になってしまっているのではないかと感じています」

少子高齢化と人口減少が進む日本では、働き手の減少は避けられない現実だ。だからこそ、多様な人材が継続的に力を発揮できる環境をどう整えるかが、社会全体の課題となっている。オルガノンは、日本で顕在化する医療課題を、将来各国が直面する共通のテーマととらえている。ゆえに、日本で医療アクセスのあり方を追求する重要性を深く認識している。同社は今、さまざまなステークホルダーとともに課題に向き合い、日本社会の変化を支えようとしている。

選択できる医療が社会のあり方を変える

ホエケは日本の課題に対し、次のようなアプローチがありうると話す。「女性の健康課題を解消するには、女性一人ひとりが自身のライフスタイルや価値観に合わせて、症状を管理し治療を選択できる環境を整えることが不可欠です」

オルガノンは日本市場において、月経困難症治療薬をはじめとする新たな選択肢の提供に向けた施策を強化している。これは、日本が直面するアンメットニーズに応える試みであり、女性がケアを主体的に選択できる社会への転換を見据えた取り組みだ。さらに、女性のライフステージ全体を支える製品の拡充に加え、医療アクセスの向上にも注力。厚生労働省が推進するバイオ後続品(先行するバイオ医薬品と同等の品質・有効性をもちながら、医療費負担の軽減や治療選択肢の拡大につながる医薬品のこと)の活用についても、業界や行政と連携しながら制度上の課題解決に取り組み、患者負担の軽減と医療の持続性に貢献していく考えだ。

ホエケは、日本の経営者に向けて次のメッセージを送る。「月経に伴う不調や更年期の症状、片頭痛など、女性特有あるいは女性に多く見られる健康課題は、職場では語られにくく、見過ごされがちです。しかし、これを放置すれば、生産性や労働参加率に影響することは避けられません。だからこそ、女性の健康増進を未来への戦略的投資としてとらえてほしいのです。組織内に存在する声なき多様性に目を向け、女性の活躍支援の在り方をあらためて考える機会をもっていただければと思います」

健康経営が企業競争力を左右する重要な経営戦略として定着しつつある今、女性の健康課題への対応は、その一部として無視できないテーマと言える。医療や制度、そして働く環境がどのように連動していくのか。女性の健康をめぐる課題に、企業がどう向き合っていくのかが、これまで以上に問われている。

オルガノン
https://www.organon.com/japan/


ニコ・ファン・ホエケ◎オルガノン インターナショナルコマーシャル統括責任者。米国以外の全市場を担当。グローバルおよび地域の統括責任者として約20年にわたり、コマーシャル部門のマネジメントやファイナンス領域を中心に、世界各地で事業の成長を牽引してきた経験をもつ。オルガノンでは欧州・カナダ統括を務めた後、25年から現職。

promoted by Organon | text by Motoki Honma | photographs by Kayo Takashima | edited by Aya Ohtou (CRAING)

AI

2026.03.05 11:30

利益倍増でも従業員4割解雇、ジャック・ドーシーのBlockが断行した「AI代替」の果実と危険な罠

Joe Raedle / Getty Images

Joe Raedle / Getty Images

多くの小売店で利用されている決済システム「Square(スクエア)」をはじめ、複数の金融サービスを展開するブロック(Block)が、大規模な人員削減に踏み切った。同社は全従業員約1万人のうち、4000人を削減した。

ブロックの共同創業者兼会長であり、ツイッター(現X)の共同創業者兼元CEOとしても知られるジャック・ドーシーが株主に宛てた書簡によれば、対象となる4000人の従業員に対し、会社側は退職、もしくは協議への参加を求めたという。これは、一部の人員については引き続き業務上の必要性が認められる可能性があるものの、正社員としての待遇は継続されないことを意味している。

ドーシーは書簡の中で2025年を「好調な年」と総括し、第1四半期から第4四半期にかけて売上総利益が2倍以上に拡大したと述べた。また、あらゆる事業が順調に推移しており、2025年第4四半期には前年同期比で24%の成長、17%の営業利益率を記録。通年でも売上総利益は前年比17%増、営業利益率は16%に達したという。

ドーシーは、好調な業績の背景について、今年推進してきた製品開発スピードの向上がようやく反映され始めたとの認識を示した。その上で、「先日開催した投資家説明会で掲げた財務目標の達成に自信を持っている。我々の戦略は、日々顧客に提供する価値として具現化し始めており、その手応えを実感している」と述べている。

彼はさらに、AIをはじめとする「インテリジェンス・ツール」の進化にも言及し、「現在開発中のツールを活用すれば、従来よりもはるかに少ない人数で、より多くの成果を、より高い品質で実現できるようになる」との考えを示した。

彼は次のような言葉で書簡を締めくくった。「ブロックは、より小規模かつ迅速で、AI活用を前提としたインテリジェンス・ネイティブな企業へと進化することで、今よりもはるかに大きな価値を生み出すと確信している。今後我々が行うすべての施策は、その実現のためにある」。

筆者は、ブロックの経営状況を把握するため、「収益」、「純利益」、「従業員数」という3つの主要指標の推移を確認してみた。なお、財務データはS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの数値を参照し、従業員数については同社の年次報告書の記載に基づいている。

データをみると、従業員数の増加に伴い、売上が拡大し、やがて利益も増加していったことが見て取れる。ドーシーは、2月26日に退職する従業員に向けた公開書簡をXに投稿した。「去り行く皆さんへ──これまでの貢献に感謝するとともに、このような結果に至ったことをお詫びする。この会社を築いてきたのは皆さんであり、その事実を私は生涯忘れない。今回の決定は、皆さんの功績を否定するものではない。皆さんは今後、どの組織においても大いに活躍されるだろう」。

ドーシーは、解雇対象となる従業員が会社の成功を支えてきた功労者であることを、会社としても自身としても認めていると強調した。その上で、人員削減の背景にはコロナ禍での過剰採用があったと説明し、状況に応じて段階的な削減を繰り返すか、早期に大幅な削減を断行するのかという選択を迫られたと明かした。そして、「断続的な人員削減は士気や集中力を低下させるだけでなく、顧客や株主が我々のリーダーシップに寄せる信頼を損なう」との認識を示した。

ブロックは、退職金として約5〜6ヵ月分の給与相当額に加え、5000ドル(約78万7000円)の現金、6ヵ月間の医療保険、さらに会社支給の端末を提供している。

次ページ > 株価急騰の裏で、AI代替が招く経営の罠

編集=朝香実

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事

マーケット

2026.02.28 09:00

「従業員を半分削減」ジャック・ドーシーのブロック、株価は19%急騰で反応

Joe Raedle/Getty Images

Joe Raedle/Getty Images

億万長者のジャック・ドーシーが率いるブロックの株価は米国時間2月27日、時間外取引で急騰した。AIの活用による効率向上を見込み、同社の従業員数をほぼ半分に削減すると発表したことが材料となった。

ブロック株は時間外取引で19.3%高の約65ドルとなった。このままの勢いが続けば、2022年2月以来で最大の日中上昇率となる見通しである。その日の上昇率は26.1%だった。

オンライン決済アプリのCash App、Square、Afterpayなどを傘下に持つブロックは、27日に発表した2025年第4四半期決算において、売上総利益が前年同期比24%増の28億7000万ドル(約4477億円。1ドル=156円換算)になったと発表した。Cash Appの売上総利益が同33%増の18億3000万ドル(約2855億円)に伸びたことなどが寄与した。

ドーシーは四半期決算に併せて公表した株主への手紙の中で、4000人超の従業員を削減し、従業員数をほぼ半減させると述べた。

「インテリジェンスツールは、企業を構築し運営することの意味を変えた」と彼は述べ、これまでより「大幅に小さなチーム」であっても、同社が構築したツールを活用することで「より多くを、より良く」実行できると強調した。また、「インテリジェンスツールの能力は毎週、ますます加速度的に向上している」と付け加えた。

さらにドーシーは、AIによって労働効率が高まっているにもかかわらず人員削減を行っていない企業は「出遅れている」との認識を示し、「大多数の企業」が同様の構造改革を実施することになるとの見方を示した。

次ページ > 米国では11.7%の雇用がAIによって代替との研究も

翻訳=江津拓哉

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事